星と蜜柑



冬陽あびて世界ほろぼすひとことを配りわすれた郵便車たち


坂に名をあたへるやうな声色できみをのぼつた日に戻れない


あの日々の歪んだ時間ととのへてゐるかたはらで檸檬を齧る


二日月の眉ひくきみの内側の見えざればただ照らされてゐる


雲はだめ風もだめ虹も夜もだめ、ここにあるものだけを信じろ


星と蜜柑がおなじ貌してきらめいて二人は触れながら遠ざかる


きみの貘は美食家にしてあさかげに残すテレビと鸚哥とわれを