四月某日(1)
四月某日

デジビも無事に開店と思っていたら、旅に出ているひぐらしさんからトラブル発生のメールがあった。大阪にいるらしい。伝言板のメッセージがぜんぶ文字化けだという。困った。何か解析用のソフトはなかったかとそこらにころがっている雑誌付録のCD-ROMで探しはじめる。時間がどんどん過ぎる。見つからない。次のメールが着く。西宮のインターチェンジにいるらしい。ソースのチェックをもう一度してみるという。ありがたい。しばらくしてまた次のメールが着く。尾道にいるらしい。DLした解析ソフトで問題が解決したという。よかった。お礼のメールを書くとたちどころにまたメール。アップしたので確認してほしいという。むちゃくちゃ早い。パティシエールが日本列島を行ったり来たりしながら、ビスケットが焼きあがる。不思議な世界だ。

四月某日

川柳作家のなかはられいこさんからビスケットのおかわりの催促があった。ぜんぶ読めたので次のを焼いてくれという。すごいな。たぶんあれで同人誌一冊分くらいあったよ。は〜いといい返事をかえしたものの、あんまりがんばりすぎるときっと長つづきしない。取材と自らに言いきかせて、穂村弘の『短歌という爆弾』をひろげていた。既成の短歌史を参照せずにここまで書きあげるとはまたむちゃなことをしたもんだ。しかしこの面白さは比類がない。水原紫苑と大滝和子の作品の分析がすこぶるいい。彼は葛原妙子のように一首で世界を成立させる作家にはほんとに強い。でも寺山修司とか連作がらみのものには弱いのかな。加藤治郎の作品も一首単位でだけ読んでいる。個性というべきか瑕瑾というべきか。疲れたので少し昼寝。結局デジビの方は手つかずのまま。こんなこと書くとサボったのがばれるが、サボったことも日記のネタになったのだからという言い訳をしてゆるしてもらう予定である。苦しまぎれだな。

四月某日

穂村弘×東直子÷沢田康彦の『短歌はプロに訊け!』を読む。面白い。しかしそれにしてもむちゃなタイトルだな。内容はどう読んでもプロっぽくない。だけど短歌を書くのにほんとに役立つという感触がある。そうか、プロとは実はこういうものなのだという宣言か。穂村、東は当然としても、沢田さんは非プロとして参加しているのに実にいいとこをついてくる。いいプロデュースというのは実にいいものだ。読者層はどんなところに広がるのだろう。『短爆』とあわせて反響が気になる。

四月某日

あるまだ句会で桜吟行。名城公園に行った。吟行とはいうものの花見が目的である。桜がきれいならきれいなほど句をつくる気にはならないものである。七分くらいの咲き具合だったが、名城公園の桜はきれいなのである。もちろん句作は進まなかった。句会の時間になってひどい目にあったのは言うまでもない。歌会の場合、エスキースめいたものを準備しておいて当日の属目とミックスするというずるい手もあるのだが、句会の場合はどうもそうはいかない。なぜだろう。そんなことを思案していても句会は待ってくれない。三宅やよいさんの司会でとんとんと進行。原しょう子さん、田中妙子さん、なかはられいこさん、丸山進さんから連打される。無敵艦隊の名を冠しているのもうなづけると毎月思う。二次会の酒宴はさらに盛りあがる。

四月某日

枡野浩一さんのBBS「今出てる枡野浩一」を読んでいたら、『岩波現代短歌辞典』の年表で、歌集『ますの。』をとりあげたことに言及してあった。「もちろん私の短歌集が歴史的名著だなんて最初からわかってたことだが」といういかにも彼らしいコメントをともなってはいたが……。秋には彼の短歌入門書が出るという。先に週刊読書人の時評に書いたこととも関連するが、短歌の世界の内と外を形成する不思議な境界線を消し去ってしまうようなラディカルな本を想像した。楽しみだ。