まるやきくん ボーナストラック 05 つっぱり大相撲

蔵出しまるやきくんです。すでに実験は終わっていたものの、ラインナップの関係やあまり面白くない、などの理由で、原稿にならなかったものをこのたびテープやメモから起こしてみました。
今回の実験は、3年前の2002年に行われたものです。

――今日は相撲ゲームの名作、『つっぱり大相撲』! 相撲は見る?
まるやきくん(以下ま):ぜんっぜん見ない。だっていつやってるか、わかんなくない? 急に始まって、いつの間にか終わってる。
――年六場所、定期的に行われてますけど。
ま:あっ、そうなの? でも、ルールとかよく知らないし。
――ルール!? もっともルールがシンプルなスポーツなのに?
ま:手をついたら負けとか、そういうことは知ってるけど、なんていうか……。戦う前に足を上げたり、塩をまいたりするじゃん。あれがイライラする。
――そうか、そのことかぁ……。まあ、相撲はいろいろ伝統的な儀式があるからね。ではさっそく、ゲームスタート!
ま:“しこな”って?
――しこな知らない? 力士の名前のことだよ。まずは自分の名前を決める。
ま:選べる漢字が少ないんですけど。他にないの? “風”とか、“祭”とか。風祭くんがいい。
――誰それ? でも、ファミコンのころは容量の関係で、漢字はなかなか使えなかったんだよ。
ま:へえぇ〜。じゃあ、頭海さんにしよう。
――何、そのネーミング!?
ま:だって頭よさそうじゃない? あんまり相撲の名前に“海”とか“頭”って使わない?
――“頭”は使わないと思うよ。
ま:でもいいや。これにする。行け! あたまうみ!
――とりあえず最初の対戦だから、頑張って。
ま:うおおぉぉー、相手の名前、見た? なんて読むの? まえあたまじゅうぞう?
――??? ……それは、名前じゃないよ。前頭十三枚目。番付だから。
ま:ばんづけ?
――横綱とか、大関とか、あるでしょ? それの低いほうが前頭。
ま:ビックリした。オレの名前、パクられたかと思ったぞぉ。で? どう戦うの? うおぉぉぉぉ〜。ていっ、ていっ! つっぱり、つっぱり!!
――すごい。特に説明しなくても遊べてる。
ま:イェーイ、勝った〜。強いぞ、頭海!
(押しだけで2勝するまるやきくん)
ま:Bボタンは何?
――Bボタンはつっぱりとか、組んでるときは投げとか。
ま:投げ? 投げてみたい。
――だったら向いてる方向と反対に十字キーを入れて、Bボタン。
ま:とりゃあ! 
(相手がおっとっととバランスを崩す)
ま:おおぉ〜、投げたぁ。今だ、行けっ! ウッソ〜、すぐに体勢を立て直された! フラフラしているときに後ろから殴れよなあ!
――殴れと言われましても。下に体力のゲージがあるでしょ? あれを減らさないと、相手を投げ飛ばせないよ。
ま:とりあえず最初はガンガン押すか。結構減らしたけど、いいかなあ。……うう〜、いい勝負、いい勝負! つっぱり、つっぱり!! ここだっ! 投げろ、うおぉぉぉ〜! ……はぁっ? 見た? すげぇよ、すげぇ。天井まで投げたぞぉ。落ちてきた。どすーん。痛そー。今の見た? 頭海。異常な力の持ち主だぞぉ。すぐに横綱になれるんじゃない?
――自分が投げられたときも、諦めずに空中で操作して相手の上に落ちれば、勝てるから。
ま:えっ!? ウソっ。すげぇ、そんな技あんの? 普通の相撲でもやる人いる?
――いないいない。
ま:その技やってみたいね。っていうか、自分もかなりダメージを食らうよね、きっと。鼻が折れたり。
――どう? 『つっぱり大相撲』は。
ま:簡単だけど、結構燃えるね。押してるって感じがする。力を入れてる気がするのが相撲っぽいかなあ。でも、ずっと同じ相手なんでしょう?
――厳密には同じ相手ではないけどね。
ま:体の色は違うけど、大体同じカッコじゃん? 最強の敵とか、もっとデカい人とか、出ないんでしょ?
――……そういうのはないね。
ま:これ、何戦続けてやるの?
――15戦。
ま:ええ〜っ! なんでそんな長いの?
――なんでって……。15日でしょ、相撲は。
ま:そっか。これ、友達と遊ぶわ。ひとりでやってもいまいちかも。友達みんなでやったら盛り上がりそう。

考察
 相撲のゲームといえば、『つっぱり大相撲』を思い浮かべる人も多いだろう。突き押しやつっぱり、投げといった基本的な技だけだが、土俵際で投げを打って、体を入れ替えたり、相手の突進をはたき込みで交わしたりと、試合展開には駆け引きがあった。何よりまるやきくんの言ったとおり、本当に力が入っている感じがするのが、名作たるゆえん。転がる、投げ飛ばされる、吹っ飛ぶ……と、当時としては演出もデフォルメされていて面白かった。
 ただ、まるやきくんにとっては、単調に続く力士との戦いは、少々辛かったようだ。実は、これは現在かなり進化したと言える格闘ゲームでも、工夫の余地がある部分だと思う。次々と現れる敵と戦い、ひたすら勝ち抜いていく。このスタイルは非常にゲーム的だが、少年マンガのように、ストーリーをメインにし、一戦一戦大きな意味を持たせれば、さらにモチベーションが高まるのではないか。思えば現実の格闘技は、カードの組み合わせに心血を注ぎ、その盛り上げ方も、実にうまい。そういう意味では、まるやきくん世代が相撲から離れるのもわかるような気がする。といってもそこは伝統と格式ある大相撲。やたらに派手な演出をされても興ざめだが。


つっぱり大相撲
メーカー:テクモ ジャンル:スポーツ 発売日:87・9・18 価格:4900円

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