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美ら夢(ちゅらいみ)

この夏、石垣島へ出かけたとき、飛行機のなかで聴いて病みつきになったのがこのチュライミ。シートの肘掛にヘッドフォンのプラグを差込んで、せっかく沖縄へ向かうんだから地元ポップスプログラムだ、というわけでダイヤルを合わせると、大方の曲はディープ過ぎるというか、渋すぎる、朝鮮半島や本土=ヤマト方面の演歌に近いノリの流行歌で、正直言ってついていけなかったのだが、何曲か無理なく身をまかせられる気持いいナンバーも混じっていたのである。そこに入っていたチュライミは「てぃんさぐぬ花」という沖縄スタンダードなのだけれど、なにしろ声がいい。声の質も独特なのだろうけれど、多分発声も南西諸島の特色が活きているのだろう。「元ちとせ」さんという奄美出身の歌手も、あのサビだけ印象的な名曲でメジャーになったけれど、彼女の声と比べると、チュライミのほうがカラッとしていて、ヌケのいい感じ。乾いているのだけれど豊かな響きがなんとも不思議なのである。

曲のアレンジのほうは、最初聴くと、これでいいのかなあ、と心配になるくらいチープなのだが、だんだんそれでいいような気がしてくる。それとも、声の魅力でほかのことはどうでもよくなるのだろうか。いずれにしても、声の邪魔はしないのだから、よいオケなのかもしれない。最初は「てぃんさぐぬ花」ばかり繰り返し聞いていたのだけれど、ほかの曲のよさもじわじわとわかってきて、今ではまるごと快楽の一枚となった。そうなってみると、とにかく、音楽というものの一般的位置付けが、東京とは明らかに違うということ、かなり深いレベルで異なっているんだな、ということが改めて実感できる。

この寛容で陽気な開放感、ぼくには救いですね。生まれてこのかた30余年、東京にはもう一生分住んでしまったかも、と感じる今日このごろ、「ちゅらいみ」を聞くと、そわそわしちゃうなあ。(24.Nov.02)


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