favorite tunes and albums*2
哀しみの果てに開けた新しい世界。 その果てしない空間をどこまでも吹っ飛ぶ爽快感、うーん、気持いい。でもその広がり自体がなんだかさみしさ切なさを感じさせる。初めてでもあり、懐かしくもあるような不思議なリアリティだ。 たとえば、クイーンのDon't stop me nowも悪くないけど、こっちは「車よこせ」ってなもんで、砂埃立てて地上を疾走する感じ。でも、マニックスのこのアルバムの場合は、彼岸的な広がりをジェット噴射で引き裂いてく感じ。脳天からツマ先まで、スカッと抜けて空っぽになるような快感がある。そして、この疾走感は、飛んでいく主体の相対的な小ささではなくて、その周りに広がるものの絶対的な大きさに焦点があった状態で生じている。飽くまでも窮屈感がないのだ。 「うるさい」かどうか、というのは、ひとにより、コンディションによって違うのだろうけれど、ぼくの基準で言えば、この音は、パワフルなわりに「うるさく」ない。激しいわりに、暴力的ではない。 ギターとヴォーカルだけですでにぶっ飛んでるのに、この猛スピードで通過していく空間が、ストリングスの響きで、スーッ、と宇宙的に拡大してゆくのがまた気持いい。透明感のあるシャープさと、抑え目のザラつきのおかげで、空のようにまぶしく、悲しいほど明るい場所を飛ぶことができる。 声がいい。歌がうまい。メロディが際立つ。さみしげなのに元気。ある意味泣きがはいってるのに、湿っぽくない。そこがいいと思う。(Mai.02)
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