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夏必携の10枚
1.The Beach Boys : Endless Summer 奇跡のような曲がメジロオシ。「これで涼しくなろう」的には筆頭にせざるをえない名盤でしょう。朝昼晩、いつ聞いても違和感なし、っていうのがまたスゴイ。おそるべし。これを聴かずに過ぎてゆく人生なんてさみしすぎる。ポップス職人の面目躍如。神経すりへらして、ボロボロになりながら作った音楽だっていうのに、聞き手にはそんなこと微塵も感じさせない。なんたる屈折、なんたる執念、なんたる快感。 2.Eric Clapton : Ocean Boulevard 461 このひとの音楽の、わりと「たるんだ」「ゆるい」「マンネリ」キャラクターが好きになれないひともいるかもしれないけれど、リラックス感と名人芸の同居してる音楽というのは、聞き手にとっては楽なものだ。夏バテしてても大丈夫、涼しく軽く、お洒落。海辺の風が吹いてきますよぉー、このアルバムからも。なんだかんだ言って、この人はすごいんだ、という気もするし、たいしたことないような気もするし。でもやっぱりやめられないなあ。 3.Gitano (サウンドトラック) ぼくにとってのこの夏の大ヒット。夕方以降、これを聞こう。できれば電気を消して、蝋燭の灯りで。ヨーロッパ人は蝋燭好きだ。カフェやレストランも照明暗めで、テーブルにキャンドルという演出が多い。ボサ・ノヴァもいいけど、スパニッシュ・ポップスは、涼しげだけど陰のあるギターの音色に、情熱的な歌いっぷりがからんで、丁度いい具合にパンチの効いている感じが個性。暑い一日の余韻の残る、夏の夜のそよ風を、ラテン気分で味わおう。 4.Flippers' Guitar : Colour Me Pop 曲名とか歌詞、歌い方など、生理的にダメなひとはダメだろうけれど、聞いているうちに気にならなくなる可能性もあるし、聴かず嫌いにはもったいない音。実はぼくも初めて聴いたときは、「こんな腑抜けた音楽のどこがいいんだろう」と思って、しばらく放ってあったのだが、何年かして聴きなおすと、なぜか素直に「うおー、ナンだこれはー! 最高だー!」という具合に評価が180度変わってしまった。憎らしいほど、コジャレていて、子供っぽいクールさが漂う、器用で軽やかなポップス。音は非常に涼しいです。 5.This is my truth tell me yours : manic street preachers 別に夏じゃなくても、名盤だし、お薦めだし、お気に入りなんだけれど、音が涼しいので、あえてここにも紹介してしまおう。このバンドは歌詞が独特の詩情を湛えていて、ときに政治的だったり、文学的だったり、わりと「重い」のだが、聴いてみると、現世的カッコよさと彼岸的な雰囲気のバランスが絶妙で、とにかく気持ちがいい。ちょっとさみしげな音楽だけど、心も身体もスーっとする。 6.Bruce Springsteen : Born in the USA これは全然涼しくない。下手すると暑苦しい。というわけで、やや脱線してしまっているのだが、夏だから元気に乗りきろう、という音楽もやっぱり欲しいじゃないか、というわけで、青春! の一枚。ポップでロックでノスタルジック。海が出てこない夏があったっていいじゃないか、という気もしてくる、内陸的センチメンタリズム。このひとのアルバムのなかではぼくの一番好きな一枚。毎年、夏から秋にかけて一度は聴きたくなる。 7.Aztec Camera : High Land, Hard Rain 涼しくもあり、元気でもあり、夏っぽいアルバム。真夏の昼間にBGMにしたい。ドライブOK、夕涼みOK、フリッパーズ・ギターが、ややシラケ気味でシニカル、ちょっと照れながらカッコつけてる感じだとすれば、こちらAztec Camera はもうちょい素直で一直線、迷いのない感じがカワイイ。スピード感と、それほど上手じゃないんだけど、初々しい勢いのあるヴォーカルが気持いい。名盤か、と言われるとそうでもないんだけど、夏、青春、っていうことなら、この一枚。 8.Janis Joplin : Pearl あまりにもあまりにも素晴らしいので、余計なことは言いたくなくなってしまうような名盤なのだけれど、このおそろしい一枚もまた、夏に合うのである。どっちかというと、暑苦しい系なのだけれど、そんなこと忘れてしまうような圧倒的迫力。聴いているほうはただ引き込まれて唖然とするばかり。ムチャクチャにカッコいいのである。夏をパンチとガッツで乗り切るならこれだ。彼女の人生を思うと、悲しくなってしまうのだけれど・・・。 9.Huey Lewis & the News : Sports スカッと大味、いい気分! 夏は細かいこと言わないで楽しもう! という感じが魅力のヒューイ・ルイス。大らかだっていうのはいいことだと思う。明るくて、からっとしていて、どこかのんびりしていて、とにかく楽しげなのがいい。気取りがなくて身近。こういうのもたまには聴かなくちゃね。最近、飲んで酔っ払って、近所に住む友人宅に突然押しかけるハメになったのだけれど、そのときこれをかけてもらってジーンときました。人生、気楽に前向きに行こうぜ! 10.The Eagles : The Best of ... もちろん、名盤「ホテル・カリフォルニア」でもいいんだけれど、ぼくはベスト盤をよく聴いている。ズバリ、ウェスト・コースト。水着に着替えたあと、というか、浜辺専門ならビーチ・ボーイズだけど、ドライブ、ツーリングその他カバー範囲の広さならイーグルスだろう。前期の明るいイーグルス、後期の暗いイーグルス双方がまた、それぞれ魅力的。南カリフォルニアというのは、一年の4分の3が夏で、残りが春という気候だから、土着音楽の方もやっぱりどうしたって「夏」っぽくなる。そして美しいコーラスと、濁りのないギターのハーモニーは、「涼しい音」のツボを押さえているのである。歌詞も割とわかりやすくて、素直だし。つい、カリフォルニアに憧れてしまう。
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