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ご多分にもれず夏になるとぼくもたくさんビールを飲む。友達や家族とも飲むが、ひとりでも飲む。 異常に暑い一日が終わりに近づき、たまたま家人が留守で、夜、自分ひとりというようなとき、ぼくはとりあえずビールを飲むわけだが、そこで考える、なにを聞きながら飲むかだ。 数日前試したところ、Horace Silver の Blowin' the blues away はいい。さあ、ビールだ! 飲んでくれ! って感じのノリのいい曲と演奏。歌ぬき、つまり言葉ぬきのジャズで、こういう威勢のいい、ツボを押さえた、小難しくない類の音楽は、なにも考えずに音や旋律に身をまかせて脱力したいときにはすごくいい。こういう猛暑の夏は、昼間の暑さからくる疲労で、日が暮れてからも、ほっとくとなんか気分がスッキリしない。そういうモヤモヤを吹き飛ばすためには、理屈、セリフ抜きで、愉快な気分にさせてもらいたいわけである。 ロック系だと、T‐REXもいい。過剰なオーラが発散されている一方で、曲のほうはあきれるほどワンパターンでバカバカしいのだが、どういうわけかカッコいい。歌詞は徹底して意味不明なのだが、その意味不明ぶりからは、芸術っぽい気取りなどまったく感じられず、「ただ変なヤツがデタラメ歌ってるんだな」ってなもんで、こっちも構えず、リラックスしていられる。 真昼のビールと言えば、大学時代の友人が、Winton Kelly の Kelly Blue を評して、「これはホテルのプールサイドで、ビール飲みながら聴きたいね」と言っていたのを思い出す。これも悪くない。でも、実際にプールサイドに音楽なんか流れていたら、湘南の海水浴場なみに最悪だから、きっと頭のなかで鳴らすんだろう。あるいは、自分の部屋でひとりビールを飲みながら、レコードをかけて、目を閉じる、そうすると、そこがプールサイドになるわけだ。(8.Aug.02) |