DMC-12に関する知恵袋
1:DMC-12の実態
DMC-12の足回りは、チャップマン氏の設計による。フレームはロータス・エスプリのものを大型(重量)車用にモディファイしている。コイルバネを用いた4輪独立サスペンションであるが、前輪は不等長の上A型ウイッシュボーン/下Iバー式にスタビライザーを加えたものであり、後輪は上下リンク付きのダイアゴナル・トレーリングアーム式である。一部ロータス・エランの部品の流用であるとも言われている。リアブレーキ・キャリパーはフォード・コルチナの部品の流用品であり、フロントウインドウとリア・ルーバーはロータス・エスプリのものを流用していた。ドアハンドル(内側)は、オースチン・アレグロからの流用である。フロントタイヤに比べて大きいリアタイヤは、リアヘビーのDMC-12の操縦安定性のために、ロータス社のエンジニアが設定したものである。横窓は機構上少ししかあかないので、横転時にはランボールギーニ・カウンタック同様にフロントガラスを蹴り破って脱出することが推奨されている。
Austin Allegro (1977-83)
Ford Cortina (1979-1983)
Lotus Esprit(1979)
生産段階で頻繁に設計変更がなされたこともあり、内装を除く車全体の完成度は初期のものでは「異常」に低かったことが知られている。たてつけは悪く、路面からのショックを受けるとダッシュボードなどはガタビシする(当初のできの悪さは、ほとんどのものが販売前に対応されており、さらに後にかなり改善されたので、現在走行可能なDMC-12は極めて完成度の高い車である)。
インテリア・デザインは当時のものとしては上質で、十分に現代でも通用すると言われている。室内は広く、デロリアン氏がこだわった「ゴルフバッグが1セット入る」スペースは座席後部に準備されている。そのかわりに、フロントのラゲッジスペースは浅くて使い物にならない(すぐ下をフレームが走り、その間にはガソリンタンクが設置されている。役に立たないスペアタイヤ(小さなテンパータイヤ)を取り除けば、そこには少し深いスペースが得られるので、そこにステレオ用パワーアンプを設置しているユーザーもいる。
当時の英米のモーター・ジャーナリストによれば、「乗り心地は良く、タイヤ・ノイズが気になる以外は、極めて静かで快適」である。現代の基準からすれば、若干うるさいエンジンであるが、車好きにはたまらない刺激を与えてくれる。
2:DMC-12の現状
記録によれば、DMC−12はわずか8582台だけが生産されたが、破産後買い取られた部品を用いてConsolidated International社で製造された分(1983年製)を加えると、さらに918台が世に出たと言われている。ほとんどが米国内で販売されたが、Dunmurryの工場内での使用のために数台の右ハンドル車が生産されたという記録がある。開発当初の予定販売価格は12000ドルであったが、実際の販売価格は26500ドルであり、最後には37000ドルまで上がってしまった。これは製造販売に際して生じた損失を埋めるためであったと言われている。
走行可能なDMC-12が、実際に世界で何台あるのかについては誰も正確に把握していないようである(ほとんどの登録車は北米にあるが、走っている姿を見かけることは北米でもほとんどない)。米国DMCグループ(テキサスが本社)が米国内で商売できる規模(それぞれは従業員数の少ない小さなショップにすぎない)であることから、「そこそこ動く状態」の車は北米で300台以上は存在すると推測される。北米のユーザーは自分で直すことを基本にしているので、中途半端な状態で乗っている人も多く、「まともに動く」ものはかなり少ないと思われる。オランダにあるDMC-EUも小さなショップであるから、英国も含めたヨーロッパの全DMC-12の数は高々200台程度ではないかと言われている。北米同様、本当に程度の良いものは非常に少ないと思う。日本にはバブル期を中心に100台程度のDMC-12が、投機目的で輸入されたと聞いている。その中で、現在走行可能な車両はほとんどない。修理にお金をかけるユーザーも少ないので、本当にまともな車は非常に少なく、町中で走っている姿を見かけることはめったに無い。まともに走るDMC-12は日本国内では20台未満ではないかと考えている。
北米市場では、普通に動くDMC-12は30000ドル前後で買える。走行距離にかかわらず、程度の悪いものは15000ドル程度から手に入る。ヨーロッパでは程度の良い車両が50000ユーロ以上の価格で取引されることもあるという(欧州での車検取得は日本より楽なのだが、日本と同様に北米から輸入されると車両価格が倍くらいになるから、もともと高い)。北米では150万円程度の中古車が結構多いが、もちろんまともなものはこの価格では絶対に手に入らない。日本と違って、欧米のオーナーは何年もかけて自分で走れる状態にするのが普通だが、これらの車は、まともな工場(DMCグループ傘下かPJGradyなどの工場)で直してもらった車より格段に程度が悪い。途中でレストアを投げ出すオーナーも多く、そのような車両でも、まともに走る中古車だと最低でも20000ドルくらいはする。もちろん、売りに出される車両は「オーナーがさじを投げたもの」であるから、そのあといくらかかるかは自分の目で確認する以外方法はない。本当にまともな車はよほどの事情がない限り誰も手放さないので、ネットで探して個人輸入する際には覚悟が必要である。従って、個人輸入は予算に限りのある人にはおすすめできない。日本に個人輸入しても修理不能な場合があるので、必ず現地で程度を確認しておく必要があるから、そのための旅費や技術的知識も持ち合わせている必要がある。DMC-12は冷やかし半分で所有できる車ではないのだ。
DMC-12は日本ではヨーロッパ並みの価格になる。理由は輸入と車検にかかわる費用が膨大になるからである。その結果、日本で300万円未満で販売される中古DMC-12は「動くと言えば動くけど、まともに走らない」と考えた方が良い。私の車がこれに相当した。購入当初は、エンジンは動くし、ミッションはそれなりにシフトするが、エンジンノイズは(エンジン音ではなくタペット音などもある)妙に大きいし、シフトタイミングはちゃらんぽらんであった。少し気温が高いとすぐにオーバーヒート気味になるし、内装全体も、ダッシュボードとビナクルが綺麗なだけで、ピラー類のカバープラスチックはヘロヘロであり、全体的に妙にやつれてみすぼらしかった。この車で、無事に御殿場から名古屋にたどり着けたことは、ある意味奇跡であるが、その陰にはこの車両を譲ってくださった前オーナーの努力があった。DMC-12の中古車を個人から買うときには、必ず前オーナーの顔を見て買うべし~~中途半端な修理状態で置いてあったDMC-12を「動くところまで」という約束で修理して渡してくださったのは、御殿場のスズキ自動車ディーラー社長のK氏である。契約後、ミッションOHなど、予想外の出費があったにもかかわらず、最初の約束の値段で譲って頂いた。K氏のお店は、老若男女を問わず、いつでも賑わっている。やはり、すてきな社長と腕利きのメカニック、親切な従業員のいるお店には、自然に客が集まるものである。大規模な修理と調整の記述でも述べたように、このあと150万円以上の費用をかけて、ようやくまともな車に仕上がった。ミッションの方は、K氏のおかげで健全になっているオートマミッションに、DMC-Jで新しいミッションコンピュータを付けて頂き、ついでにエンジン並びにミッションマウントを交換して頂いたおかげで、シフトショックも小さくなって完璧になった。シフトアップ時にスムーズなだけで無く、減速時には軽快に(華麗に)シフトダウンするのである。
200万円以下で購入したDMC-12は「非常に難あり」であることが多い(ボディーやシャシーに問題があるか、修理に多額を必要とする)。この価格帯の車両は、かなりの経験と技術的知識のある人が探せば掘り出し物もなくはない。ストレス無く乗れる中古DMC-12はすべて、日本では車両価格と修理費用を合わせて400~500万円程度のお金がかかっているといわれている。もちろん、DMC-12をほしい人がそれ以上の厚さの札束でほっぺをたたけば手放すオーナーも出てくるであろうが、この国では程度の良いDMC-12は400万円以内では絶対に手に入らない。経済状態が好ましくないときでも、「売り手市場」という珍しい車である(正確には、大金を積まれても、まともなDMC-12を手放すオーナーは皆無に近い)。ストレス無く乗れる再生車のお値段は、400万円より「かなり高い」と考えておいて間違いない。
DMC-12 をきちんとメインテナンスできるのは、日本では豊橋市にあるDMC-Jだけである。ご近所の修理工場でも、ある程度の簡易補修は可能であるが、発売以来何件も出されているクレーム部品の交換や電気系/インジェクション系/エンジンの分解修理などの完全な修理と調整はこの店でしかできない。その意味では、自分の住んでいるところから豊橋までの陸送費用などが軽く負担できる人でないと、この車を所有してもいずれ疲れ果ててしまうであろう。豊橋市にあるDMC-Jでは、車両の輸入やレストアを行っているので、日本国内でまともに走るDMC-12の数は毎年数台ずつ増えている(購入希望の方は直接DMC-Jまで連絡してください)。個人売買で購入できる車ではないので(まともに走る車は市場に出ない)DMC-12の保有を考えている人は、将来のメインテナンスを考えると、絶対にDMC-Jから購入すべきである。日本国内でまともに走るDMC-12は全てDMC-Jのお世話になっていると考えて良い。
世界にはエンジンをキャデラックのノース・スターエンジンに積み替えたり、電気自動車化したりしたDMC-12があるが、このような改造車には大きなリスクがあるので注意したい。オリジナルのDMC-12のエンジン関係の部品の供給が滞ることはないが、最近の車の部品は10年程度で供給が停止されるため、結局長く乗ることができないからである。このような改造は、DMC-12の普遍性を損なうので避けるべきであるし、中古車が出ても手を出すべきではない。長い目で見ると高い買い物についてしまうからだ。
ビンテージ・カーを維持するという文化は日本ではほとんど根付いていない。日本ではふんだんに資金がなければ難しいからであろう。DMC-12はビンテージ・カーというほど古くもなく、9000台以上製造されて、しかもかなりの個体が世界中に残存する(走行可能か否かを問わなければ6000台以上残っていると言われている)という意味では希少車でもない(とはいっても、世界中に残っている「程度の良い車」が少ないという意味では立派な希少車である。おそらく、まともに走る車は世界中に500台もない。ほとんどは中途半端な状態で乗られていると思う。DMCグループ各社は、これらの車両のメインテナンスのみならず、不動車を復活させてファンのもとに届ける事業も行っている。
現代の若者にとってDMC-12を所有する理由はデザインが気にいっているためか、あるいはBTTFへのこだわりくらいしかないかもしれない。しかし、DMC-12が「車と人」のつき合い方の一つの理想形として、J. Z. De Lorian, G. Giugiaro, C. Chapmanという三人の天才が作り上げた「奇跡の車」であることを理解していただければ、その歴史的価値がわかると思う……..30年を経過した今でも、きちんとメインテナンスされたDMC-12が何台も元気に(普通に)走っているという事実を認識し、「今日作られた車」が何年か後にスクラップにされて朽ち果てるときが来ても、1981年に販売されたDMC-12がまだまだ元気に走っているという光景を想像していただきたい。時と共に朽ち果てていくことがないというだけでは、大金をかけて存命させているただのビンテージカーである。「奇跡の車DMC-12」はデザインも、走りも時代と共に陳腐化することがないだけでなく、「程度良く仕上げられた」DMC-12は維持費用さえも(部品交換だけでなく、車検費用も!)現代の自動車並という世界で初めての究極のエコカーとして、自動車文化史にその名を刻み続ける。
3:DMC-12の実際の大きさと仕様
大きさなど:
全長×全幅×全高 4216×1857×1140mm (一般に紹介されている2m近い車幅はミラー間)
ホイルベース 2408mm
トレッド(F/R) 1590/1588mm
車重 1230 kg (総重量)
全軸/後軸重量配分 35 : 65
最小回転半径 5.35 m
ステアリング 2.65回転(lock to lock)パワーアシストなしラックアンドピニオン式
タイヤ/ホイール 195/60/R14(front) 235/60/R15 (rear)
エンジン: アルミ合金製 90度 V6 OHCチェーン駆動(PRV ZMJ-159)
排気量 2849cc
ボア&ストローク 91×73mm
圧縮比 8.8:1
出力 130 hp/5,500r.p.m 北米仕様(欧州仕様は触媒なしで150hp)
トルク 208 Nm/2,750r.p.m
燃料/排気 ボッシュKジェトロニック燃料分配方式、
酸素センサーを用いたラムダシステム/三元触媒による排気ガス浄化
ドライブトレイン:
位置/駆動 リア マウントエンジンによる後輪駆動
トランスミッション 5速マニュアルまたは3速オートマチック
ファイナルレシオ 3.44:1
ボディ構造:
形式 ガルウイングドア(トーションバーによる)による2ドアクーペスタイル
(トーションバーはグラマン社の冷間成型)
ドア開閉には車体と横の壁の間に264mmのみ必要
外装 ステンレススチール304
アンダーボディー FRP(一体成型グラスファイバー強化プラスチック)
シャシー構造: エポキシ樹脂による耐腐食コート済み鉄製ダブルY型バックボーンフレーム
サスペンション:
フロント 不等長ダブルウィッシュボーン、コイルスプリング、アンチロールバー
リア トレーリングラジアスアーム+アッパー&ロアリンク、コイルスプリング
標準装備: 本皮シート/トリム、エアコン、4スピーカー、ステレオ、パワーウインドウ、
チルト/テレスコピックステアリング(パワーアシスト無し)、電動ドアミラー、集中ドアロック
4:車両の構造
DMC-12は、下の図のようにシャシの上にFRPのシェルを載せ、その上にステンレスの薄い(といってもかなり堅い)スキンを貼り付けたものである
5:デロリアンDMC-12のインプレッション
この車に乗り込むには若干のコツがいる。基本的には右足を先に入れてからお尻をシートに滑り込ませるか、先にお尻を入れてから足を入れるかのどちらかである。着座位置は非常に低く、地べたに座る感覚である。必然的に足を前方に投げ出す形になるが、着座姿勢は自然で長時間のドライブでも疲れない。シート座面はお尻の幅に比べてシート両端のアンコの量の加減が良くないので、太り気味の人にはフィット感は今ひとつである。背もたれの形状は座面ほどには不満を感じない。180cmの身長のドライバーでも普通に座れるデザインなので、コクピットは余裕の広さである。ただし、頭上の空間はあまり大きくないので、傾斜の大きなウインドシールドのせいもあって、コクピットに座ると圧迫感がある。時間と共にその感覚は麻痺してくるが、コクピットからの見晴らしはあまり良くない。着座位置が低くウインドシールドの傾斜が強いこととドアミラーが小さめなことから、車両の見切りが悪く、車線変更時には確実に首を回して右横後方を確認しないといけない。 シート固定ねじを外してスペーサーを入れてシート高をあげれば、座高の低い日本人にも見晴らしが良くなる。 曲率半径の小さいアウトバーンミラーをつけると右横後方視界はずっと良くなるが、値段が高すぎる。後方視界はルーバーがあるにもかかわらずさほど悪くないが、リアウインドウが小さいので、圧迫感は否めない。車幅は、一部のウェッブ上で197cmなどと書かれているため非常に大きい車であると誤解されているが、実測すると185cmしかない。これはリアフェンダー位置における車幅であり、車幅だけであれば現代の車としてはそれほど広くないので車両感覚はつかみやすい。ドアミラーも入れると197cmあることは確かである。実際に乗ってみると、2010年型ムスタング(車幅だけで195cmくらいある)よりもずっと小さく感じるので、左ハンドル車ではあるが、日本でも乗りやすい大きさである。
マニュアルミッション車のクラッチは重く、パワーアシストのないステアリングも、すえ切りでは非常に重く感じるが、最近、電動パワステが発売された(本HPの電動パワステの項を参照)。オートマミッション車では、シフトショックは若干大きめであるがスムーズに加速する。すえ切りは非常に重いが、走り出せばステアリングの重さは平均的なものになり、高速ではしっとりと落ち着いた感じになる。ステアリングの遊びは普通であるが、ギア比は極めてクイックである。しかし前輪の切れ角は小さいので、小回りが利かない。5mを超える最小回転半径はこのサイズの車としては異常に大きい。フルサイズのアメ車やランドクルーザー並の回転半径なので、片道2車線の道でも反対車線のセンター寄りからでは切り返しなしではUターンできないし、低速でのハンドルの重さもあり、狭いところでの取り回しは腕力のない人にはかなりきつい(最近DMC-EUとDMC-Jで電動パワステが開発されて製品化された。ファンの間では不評(不要という人が多い)であるが、女性が運転するなら必要であろう)。
ブレーキは現代の車のそれと比べれば重く、踏んだ分しか効かないので、最近の車に慣れた人は最初はびっくりするかもしれない。 しかし、ペダルの踏み込み量と制動力のリニアリティーは絶妙であるから、慣れれば頼もしく感じるはずである。 足回りは堅めであるが、細かい振動はFRPシェルが分散してくれるせいで乗り心地は良い。しかし段差を超えるときのショックは比較的大きい。特に、車高を下げるユニットを導入した車はサスストロークが短く、かなりの突き上げ感がある(北米仕様では規制の関係で車高が高く、オリジナルデザインと走行性能が犠牲になってしまっているが、日本やヨーロッパでは車高を低くするユニットを組み込んだ車両も存在する。私の車も、そのユニットを装着している)。独立したシャシを持つため剛性感は高く、ステアリングの切り角に対する車の回頭性はリニアである。現代の車と比較するとノーマルのDMC-12のエンジンは排気量の割に出力は控えめである。絶対的な加速性能も絶対速度も大きくはないが、レスポンスの良いPRVエンジンのおかげでスポーティーな走りを楽しむことができる(公称最高速度は200km/hを超えるが、よほど長い直線距離でもなければ達成できない)。不等爆発エンジンのおかげで排気音は低くて勇ましく、コクピット背後のエンジンルームからの進入音は官能的である。特に、DMD-Houstonで開発したStage
I 排気ユニットを組み込めば、より官能的な排気音と15馬力程度の出力向上が得られる(このHPのStage I 装着の項目を参照)。
5:デロリアンDMC-12の購入に際してチェックすべき項目
(1)ブレーキディスクは曲がったり削れたりしないかぎり、リサーフィスする必要はない。二三回削れば、ディスクは交換するしかないことを知るべきである(ディスクは厚さが11.7ミリ以下になったら必ず交換すること)。
(2)タイヤは、できれば高性能なものにするべきである。性能の低いタイヤは危険である。RRレイアウトの機能を十分に発揮し、低速でのリアの早期ブレークを防止するためである。
(3)冷却系ではアルミパイプの二箇所に注意する必要がある。一つは左側のステアリングコラム付近(タイヤをはずしてチェックする)で、ハンドルを左右に目いっぱいにまわして、アルミパイプと十分にクリアランスが保たれていることを確認すること。さもないとアルミに穴が開く。もう一箇所は、エンジンルームのリサーバータンクから車両の前方に向かうアルミパイプが、エアフィルターボックスの右側に沿って走るフレキシブル蛇腹チューブに触れていないことを確認すること。もし接触していたら、ゴム板をはさむ等しておかないと、エンジンの振動でいずれアルミパイプに穴が開いてしまう。
(4)一般的なリコールポイントとして、ボールジョイント、サスペンションボルト、イナーシャスイッチ、スロットルスプールは交換/対策済みかどうか確認すべきである。
(5)忘れられている可能性があるのは、ラジエタークーリングファンの下を通っているスタビライザーバーである。このバーはインパクトエクステンションに4個のボルトで固定されているが、インパクトエクステンション部は12ゲージの薄い鉄板でできており、メインフレーム部よりもはるかに弱い。この部分は駐車ブロックなどに当てたり、ハードコーナリングで曲がったり、路面のあなぽこにはまったショックで変形しやすく、その結果取り付け部ごと曲がってしまう。そうなれば、アラインメントが狂って調整することができなくなるなど、危険である。この問題については生産段階で発見されたので、いったんリコールで処理されたが、その後それでも不十分であることがわかった。現在では強化ブラケット(パーツ#11140, 11141)が取り付けられていないといけないことがわかっている。VIN6650以降の車であればこの対策がなされているはずであるが、事故経験車では正確な処置がなされているとは限らないのでチェックするべきである。VIN6650より前の車では、処置済みの車両はエンジンルームのエンジンカバー蝶番の左側(カバーをあけたとき)のファイヤウオールに青色のペイントがマークしてある。このマークがないときには、前部の下から、二本の黒い強化ブラケットが付いていることを確認しておくことが望ましい。
7:デロリアンDMC-12に使われているオーバークオリティーなパーツと
普通のパーツ
(1)PRVエンジンは基本的にフェイルセーフである。ただしオーバーヒートの経験のあるエンジンは気をつけるべし。
(2)一般的にスターターは壊れやすいといわれているが、DMC-12のスターターはParis-Rhone製であれば軍事規格のものなので、壊れることはない。スターター故障を疑うようなケースでは、リレーあるいはソレノイドの問題であることがほとんどなので気をつけるべきである。
(3)同じフランス製でも、ホーンやオルタネータは軍事規格ではないので壊れやすいことがわかっている。
(4)DMC-12用のGirling製のショックアブソーバーがダメになることは稀である。
(5)もともと付いていたBosch製のフュエルポンプは、チェックバルブの設計不良のためホットスタートできないというような問題が生じることがわかっている。ただし、この問題はプロダクションンモデルでは解消されているので、フュエルポンプ自体が壊れることはまずない。
(6)Bosch製のイグニッションコイルもできが良く、壊れることはない。
(7)CVブーツは壊れにくく、その結果CVジョイントのグリス抜け/故障は非常に稀である。ただし、ステアリングロッドのブーツは標準的な壊れやすさなので、点検/交換が必要である
(8)デロリアンのマフラーはもともとステンレスなので、錆びたり穴が開いたりすることはない。
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DMC-12はきちんとメインテナンスすれば20万キロ以上メジャーな修理を必要としないという例が既に何件も報告されている。