トップの画像旅公演の足跡

人形師・若手2人の日記です。




咲祭多聞と蛍純の日々の恥は書き捨て


多聞の写真03.5.19_咲祭多聞

ブラジルは遠い。苦行のような30時間がようやく過ぎ、飛行機はサルヴァドール空港に到着した。無事に、ではもちろんない。だれもが言うことだが(その後も何度も聞かされた)、トラブルなしなんてブラジルではありえない。僕らの場合は「組み立て式舞台」が問題だった。成田空港で僕らの便と一緒に積まれた舞台が、乗り換えのサンパウロ空港で税関を通らなかったのだ。舞台がなくては上演ができないが、空港で待つガッツは残っていなかった。目的地サルヴァドールまで、あとわずか数時間のフライト。松野君をひとり残し、予定通りの便でサルヴァドールにたどり着いた。よれよれだけど、胸はってブラジルの大地を踏みしめた。そして舞台と松野君は…、次の便でも届かなかった!

 空港からホテルまで、目に映る風景はワイルドだった。ろくに舗装されてない道をバスは往く。上半身裸の男達が歩いている。建築を途中で放棄したんだか、崩壊寸前なんだか、とにかくまともじゃない建物が多い。この街でライヴができるのだろうか? それでも壁に貼ってあるポスターに「pichipichi(ピチチ)」の文字を発見したときは正直ホッとした。間違った場所に到着したような気分になってたからだ(しかも舞台なしで)。

 東京から地球の裏側ブラジルのバイーア州サルヴァドールまで飛んで、着いた夜に上演。「フェスティン・フスエ」というイベントの前夜祭だ。時差ぼけになるヒマもない。リハーサルの予定は、舞台が届かないので1時間刻みにずれていく。夕方5時には、リハーサル中止、出演時間を変えてもらい、真夜中12時(フェスはオールナイト!)にスタートということに決定した(舞台は夜9時に到着した)。植井御大は空いた時間を利用して、ブラジルの新聞と雑誌の取材を受けている。飛び交う日本語とポルトガル語の中、緊張はマックスに!

会場はすごくピースな雰囲気。バイーア式の握手とやらを繰り返しているうちに、友だちがどんどんできる。ピチチの登場時間は結局午前1時半。記念すべき南米一発目は「カウボーイ侍バイキング」だった。一之瀬君の第一声「嘘じゃない!俺の産声がぁ…」で大歓声。すごい、なんだろう、この興奮は。たった25分間のあっという間の上演は、植井御大のポルトガル語による感謝の言葉で締めくくられた。もっともっとやりたい。観客だってこんなに興奮しているのに。 明日はまたサルヴァドールで上演なのだ。
写真深夜に集まる人々をパチリ

純の写真03.5.019_蛍純

今年の慰安旅行はブラジルかい!ってことで、完全にバカンス気分で到着、ブラジルのどこかに。着くなりすごい雨で、滝?って思ったっす。
んで空港からホテルまでの道中、大忙し。ポルトガル語が話せるのが私しかいないので、みんな私に頼る、頼る。便所くらい絵みりゃわかるだろ!バカばっか!しかもブラジルに来るのは私も初めてなので、言葉がわかるからって頼られても困るわい。
途中、お腹が減ったというので中華料理屋を探して連れていく。皆、ブラジルの料理が食べたかったらしいが、知らん。世界中何処へいっても美味しく食べれるのはチャイニーズなの!エビチリ食って、会場へ。

とにかく開演までは大騒ぎの連続。訳あって皆と違う便で到着した一之瀬☆保母大好き☆なんかは、よっぽど不安だったのか、皆の顔を見るなり泣き出し直後に爆睡という行動に出て、甘えんな、死ね!と思った。

もう書くの面倒なくらい、いっぱいトラブル(会場で合流した通訳のマルコスの顔が生理的にむかつく等)があって、やっと開演。深夜1時過ぎにやる人形劇観て大喜びのブラジル人。私の訳したポルトガル語の台詞は通じてるようでよかった。

終演後、クルトゥーラ(教育テレビ)からクレームが。夕方に植井さんにインタビューしたらしいが、局に戻って訳したら無茶苦茶な事しか言ってねぇじゃないか!という事で御立腹。謝りたいが、言葉がうまく出てこなくて、結局「日本人が謝罪する時は腹を斬る時だ!」って言ったら納得して帰りました。

ホテルまで帰る気力がなく会場の機材の隙間で、おやすみちゃん!


03.5.20_咲祭多聞

今日は朝から散歩しました。松野君と一之瀬君と一緒にガイドのマルコスさんが運転する車に乗せて、下町にあるメルカド(市場)に向かった。車を降りると同時に、物売りが寄ってくる。やれ、ミサンガを買えだの、ネックレスを買えだの、カセットテープを買えだの、まあ世界中どこの観光地に行っても同じことだ。3人ともTシャツや民芸品を大量に買い込みました。

 昼食を終えると、突然雨が降り出した。道路のくぼみにすぐ雨がたまり、ホテルに戻るために僕らが乗った車は、前の車が飛ばす水をフロントガラスいっぱいに受け止めながら走る。なんて書くと、読んでる方はここが南米の田舎町と思うだろうけど、サルヴァドールは二百万人の人口を抱える都市。16世紀から17世紀にかけてのポルトガルの植民地時代はブラジルの首都だった町だ。文化的にも、アフリカから連れられてきた黒人(砂糖産業に従事させられていた)が独自の文化を作り出している。サルヴァドールがあるバイーア州は、ブラジルの中でも他と違う「国」と言われているらしい(他のブラジルの地を知らないので比較できない)。とにかく魅力溢れる街だ。喧伝されていた恐ろしさよりも親しみやすさの方がずっと強い。

 夕方、若手チームだけで出かけたボンフィン教会は、ホテルから車で1時間ほど離れた、街を見下ろす丘の上にある。カトリックと現地宗教カンドンブレが同居した奇妙な教会で、ミサンガ(リボン)発祥の地でもある。願をかけて手首に結んだら、自然に切れるまではずしちゃいけない。自然に切れたときにその願いはかなう、というものだ。この教会の特徴はまだある。マネキンの手足だけが吊された特別室(何と呼ぶか知らないけど)の存在だ。手足だけじゃない、臓器や頭部をかたどったプラスチックの模型も吊されている。写真も壁一面に貼られている。祈りたい場所を(例えば足の病気を治してほしいのであれば足の模型を)吊したりして神にお願いするらしい。マルコスさんの説明によると、ただの観光客も写真を貼っていってるらしいけどね(優勝祈願のサッカー選手や、またふたりで訪れたいという恋人同士とか)。

 教会からの帰り道は海沿いのコースを選んだ。あまりの夕日の美しさに車を停める。コロニアル風の古い建物が並び、中からボレロを練習する女性の声が聞こえてきた。岬の先端には小さなテーブルが並べられたオープン・カフェがあり、若いカップルは堤防の上でくっついたままの姿勢でじっと動かない。なぜか急に遠くに来たなぁって思う。

 今夜の会場は僕らのホテルに隣接する特設会場。特にトラブルもなく(スタッフに後で聞くと、この日も山ほど問題があったそうだ)予定より1時間遅れの午後8時に開演した。観客は有料ということで(昨日は前夜祭のため無料)、正直なところ予想より少ない(始まるといつの間にか増えたけど)。
演目は「空想義経〜」。まさかブラジルでこの作品をやるとは…。お客さんの反応はダイレクト!というより、うるさい(笑)喜んでくれてるのか、芝居そっちのけで雑談してるのか、わからない…。

 しかし「オブリガード!(ありがとう)」、と植井御大が挨拶してからも、アンコールを求める声が5分間も続いていた。喜んでもらえたのでしょう。

 会場のすぐ近くは海。会場の隣りで芝の上に寝転がり、星空を眺めながら飲んだビールがどんなにうまかったことか!
写真美味しいブラジル料理をパチリ

03.5.20_蛍純

寝たりない!が、朝から頑張ってカポエィラを見に行く。えー、格闘技、ダンスみたいな、でも宗教的な意味合いもある、それがカポエィラ。たぶん。

試合を観たかったけど、とりあえず練習見学。かなり面白かったけど、蚊が多くてすぐ退散。他にもいろいろ観たいが、時間なくてあきらめる。今日は「義経」やるので、出番の多い私はみんなより早くいろいろ準備。

リハ終了後、会場のホテルの料理がイマイチだったので隣にあったイタリア料理屋へ。一人で食べてたら、通訳のマルコスが入ってきて店の人と知り合いだからっておごってくれた。いい奴じゃん。顔、変だけど。

終演後はもう眠くてしょうがない。お、おやすみちゃん!


03.5.21_咲祭多聞

サルヴァドール。晴れ。今日は公演もなく、劇団員は自由行動日。僕は散歩だ。カメラぶら下げて初日に上演を行なったペロウリーニョ広場近くをぶらぶら。

 途中で昼食を。バイーア特有の魚料理を注文。食べてる最中に今日はなんと僕の誕生日であることが思い出した。自分で自分に「おめでとう」と乾杯。

夕方は多々野君とボンフィン教会へ。ちょうどミサの時間で、讃美歌を聴くことができた。丘の上に建つこの教会は不思議な魅力があります。

 教会から車で10分ほど離れた、昨日発見した夕日が見える岬へ。観光客ではなく、地元の恋人同士が集まる場所らしい。街灯もなく(小さな灯台はある)、まわりは最小限のあかりを灯したカフェだけ。星空の下に木製の丸テーブルと、椅子が並んでいる。潮風が吹いている。
 ビールを注文した多々野君の隣のテーブルでは、ギターを手にした青年が、サンバやボサノヴァを弾いていた。

 少しして、古びたフォルクスワーゲンがやってきて、僕らから数メートルの距離で停車した。夕日を眺めているのだろう。カーステレオからは、ボブ・マーリィの曲が流れている。ブラジルでも人気らしく何曲も続けて流れる。ウェイティング・イン・ヴェイン、ゲットアップ・スタンダップ……。僕らはビールを飲みながら、ラジオにあわせてずっと彼の歌を口ずさんでいました。

しかし、あっという間にブラジルツアー終了。坂内氏曰く「もちろん赤字。大赤字。」だそうである。サッカー好きの植井さんの思い付きでブラジルまで来たのでは…。でも濃い時間を過ごせて楽しかったー!
写真日本語ペラペラカフェ店員をパチリ

03.5.21_蛍純

サルヴァドールの休日。サルヴァドールで私が思い付くのって、せいぜいサッカー選手のエジウソン・ダ・シルバ・フェレイラのことくらいだす!

誰それって人ばかりの中で、植井のおじいちゃんだけが反応したので、珍しく2人で外出。最初はエジウソンの生まれた家でも見に行こうということになったけど、家見て楽しい?楽しくない!ってことで、「植民地時代の建物が並ぶ石畳のペロウリーニョ広場、黄金の教会と言われるサン・フランシスコ寺院、山の手にある上町と下町を結ぶエレベーターがあるソウザ広場など、古都サルヴァドール歴史地区を」…って観光パンフ通りの見事な一日を過ごす!

途中で見つけた日本料理屋で生姜焼き定食を食べる。

食事中に急に植井の爺様が、これまたサッカー選手のレアンドロ・ド・ボンフィンの事を思い出し、ボンフィンの名前のルーツ、ボンフィン教会へ。

教会でボケーと過ごす。外国来ると、景色みてるだけでも新鮮なので行動力半減。ボケーっとしてしまいますわ。なーんもないです!こうして文章にしてみると、なーんもないね!

地球の裏から、おやすみちゃん!