ホワイトデイ・キッス1 −きばらの白い日−(by墓堀節子)
3月のある休日。エプロンをかけて台所に立ち、甘い香りをさせているのは、リリアン学園の麗人。
支倉令、その人であった.。
同じくダイニングのテーブルに広げた新聞の社会面を熱心に読んでいるのが、
そのいとこで、令のプチスールの由乃だ。
ご満悦といった表情の令がオーブンから取り出したのは、山百合会では伝説に
もなっている御手製クッキー。
「どれ?ひとつ。」
いつのまにか、令の後ろに立っていたよしのは、天板の上の狐色の一粒をつま
み、口の中へほうり込んだ。
「あっ!!あついよ!」
慌てた令の静止を振り切って、由乃は、もうひとつつまみつつ、令と自分のた
めにお茶を入れ始めた。
「おいしー、おいしいお礼にお茶いれる。」
「あ、ありがと。」
もうひとつと伸ばした由乃の手から天板をガードしつつ、令はケーキクーラー
の上にそれをあけた。
「気をつけてね、やけどなんかしないで。」
「はいはい。」
由乃ののいれたお茶を一口すすって、令は次のクッキーたねを型で抜き始めた。
「ちゃんと14日にもホワイトデーでクッキーあげるから、いま、一生懸命たべなくてもいいよ。」
「・・・わたしは、チョコ上げてないでしょ?チョコくれたのは令ちゃんじゃない?」
由乃は、もうひとつつまんで続ける。こんどは星型のだ。
「道理から言って、私があげるもんじゃない?」
「・・・・そりゃそーだけど。」
令は、再びオーブンに火を入れる。
「由乃は私のチョコをうけとってくれただけでいいんだから。ホワイトデーも受け取ってくれるだけでいいよ。」
「そんなこといってもさぁ。後のクッキーはチョコくれた下級生にお返しで配るの?」
「え?・・・ちがうよ。全部由乃の分。」
由乃のことばに意外そうに答えた令に、今度は由乃がびっくりする番だった。
「!!こ・・こんなにたべきれるわけないじゃない?!」
テーブルの上には、すでにてんこもり状態のクッキーなのだ。
「いや・・だから、これは練習。」
「・・・練習?」
「今日は新作の開発もしてるの、本番はそれを生かして、気合入れてつくるから。」
さらっととんでもないことを言う。
「令ちゃん・・。」
学校では「お姉さまと妹」の関係であっても、いとこ同士。まして家のキッチンでは、
妹の由乃があきれた顔をして つぶやいたのは、そんな気安さからだった。
「こういっちゃなんだけど・・・。令ちゃんちょっとどうかしてない?」
菓子職人を自認する令は、性格が見た目によらず乙女チックなので、
それとあわせて暴走している、と由乃ははっきり思った。
「由乃、クッキー嫌い?」
「いや、そうじゃないけど。」
由乃は目の前に広げられていたままの新聞をとじて、令の顔をじっと見てつづけた。
「こーゆーイベント事は楽しいんだけど、令ちゃんそれじゃあまりにも大変でしょ?」
「・・うーん、そんなにたいへんじゃない。」
「・・・・・まぁ、このことに関してはそうかもしれないけど。」
悲しそうな令の顔を見て、由乃は困ったように令の手を引き、自分の隣へ座らせる。
「ねぇ、令ちゃん。」
「・・なぁに?」
由乃は、お茶を一口飲んで、唇を湿らせた。
「あたしたち、生まれてからほとんどいっしょじゃない?」
「うん。」
「だから・・・。」
そこで、令が慌てたように由乃の顔を見て、真っ青になった。
「まさか・・!・・まさか、もう由乃のそばにいられないの??!!」
「へ?」
一瞬虚をつかれた由乃は、言葉を失った後に笑い出した。
「なにがおかしーの?」
「いや・・・・(くくくくっ・・)令ちゃん、どーしてそーなるの?」
わけがわからない令は、ただ由乃がひとしきり笑い終わるのをじっと待っていた。
発作的な笑いに教われたため、顔を赤くした由乃は、やっと息をついて心配そうに見守る令に続けた。
「先回りしすぎよう・・。あのねあたしが言いたいのは。」
由乃は令の頬にキスをした。
「これからもずっといっしょにいるんだから、わたしに贈り物なんかしなくていいってこと。」
令は、由乃が自分の何をしたのか、把握するのに5秒かかり、その後耳まで真っ赤になった。
由乃の唇の跡が暖かい頬をしっかりと押さえ、うなずく。
「令ちゃんがいてくれなかったら、わたし、今まで生きてなかったかもしれない。
ずっとたくさん贈り物をくれたんだから、そんなに無理しないで。」
「・・む・・無理してるんじゃないよ。」
「それは、わかってるけど。」
由乃は微笑んで、諭すように令に言った。
「こんなに、贈り物をくれた人はほかにいないよ、令ちゃん。
そんなにいっぱいもってきてくれても、わたし持ちきれなくなっちゃうよ。だから・・。」
令の肩に、由乃のきれいな額が押し付けられた。
「贈り物はいらない。そのかわり、ずっといっしょにいてね。」
「・・うん。」
令は、由乃の柔らかいおさげの端をそっと持ち上げて、そこに口付けた。
「それだけでいいの?」
「それしかいらないのよ。」
菓子の焼ける香ばしい香りが立ち込めてきたキッチンで、二人はいつまでもそのまま寄り添っていた。
あとがき(ぶしこからのめーる)
こんばんわー。ブシコです。
さっき帰ってきてところ。
高速道路眠くて眠くて、もうちょっとで死ぬかと思った。気をつけないとね。
その眠いさなか、よしちゃんと、れいさまのおはなしをかんがえたので、ちょっと送ってみるよ。
ところで、さっきから続く文章が、全部といっていいほど、彼我が名なのは(もしくは誤字が多いのは)
寒くておきているのがだるいから、キーボードだけ抱えて、画面を見ずに、書いている(うっている)からです。
<紫姫がなおしました。まだあったらお知らせください>
パソをコタツの上にいじゅうさせようかなぁ・・・。
おはよーブシコです。
どーすか、君の書けないといっていた、令ちゃんと由乃。
私としては由乃×令なんですねー。
バレンタインの時期も逸してきたことだし、ホワイトデーに向けてみました。
君一人で楽しむもよし。誤字脱字、設定ミスは心で修正してね。
<やっといたよ>
ところで、このあと、あの大量のクッキーがどうなったかというと、
翌日の山百合会の皆様が、おいしい御茶請けとしていただくわけです。じゃ。
コメント(toぶしこ)
またまたさんきゅー(はあと)さすがは壊れ系リリカル作家!!!
令×由乃(由乃×令か?)は君にまかせたー!!!
そういえば、由乃ちゃんって「スカタチ」なのかしら?