形
「旦那はん、それやったら籠は担がれへんで。もっと腰いれて。あっ、あかん。腕で担ごうとしてもあかん。そんなことしたら、すぐにへたばる。腰で担ぐんや。」
さっきから、着物の裾をはしょって、人を乗せた籠を担ごうとしている町人がいる。その横では、仕事をとられた籠かきが、どうしようもないな、という顔をして叫んだ。しかし、その町人、担ぐのやっとで、さっきから全然前に進んでいない。腰がふらついていて、それどころではない。
「旦那はん、いい加減に進みましょうや。」と、後ろを担いでいるもうひとりの籠かきが言った。
「ああ、今進む。」
やっと、籠は前に進みはじめた。と思ったのもつかの間、あまり腰がふらつくので、中にいた客がころがり出てしまった。
「小七さん、これはひどいで。乗ってほうがたまらへん。」
先手の親分の文吉が立ち上がって、泥をはたきながら言った。
「わいはもう乗るのはいやや。正、おまえ乗れ。」
「えっ、わたいが。」と先ほどから籠の横に立っていた、籠かきが言った。「勘弁してくださいよ、親分。」と言いながらも、正は文吉に無理やり、籠に乗せられてしまった。
半時ほどたって、ほてった顔に汗をにじませていた。あのお駒の店のすぐ横の橋を渡りながら、小七は文吉に、
「すまんが、あすはどこか腕のいい大工の棟梁のところに連れて行ってくれへんか。」
と言った。文吉は、小七さんの頼みならしかたがないな、というあきらめ顔で承知した。
十日ほど前、あの春川の話を聞いてた後から、小七の噺に対する客の笑い方が違ってきたのに気がついた。小七が思ってもみなかったところで笑うのである。どうして客が笑ったのか、小七にはわからない。次の日、同じ噺を同じようにしていみる。しかし、こんどは全く笑わない。どうなっているのか、小七にもよくわからない。ただ小七は、お駒の店でのやりとりの後、無理に客を笑わせようとしたり、無理にうまく見せようという気が少なくなっているのは確かである。そうなると、不思議なもので、客の顔がよく見えるようになってきた。さらに、自分の芸の未熟さが、恥ずかしいほど、自分なりに見えてきた。
その中でも特に、大工や籠かきなどの技術を要する職業のまねをするところが、自分でもいやになるほど、真実味がないのに気がついた。考えてみれば、小七はそんな職業を実際にしたことがない。ただ、師匠や兄弟子たちに、そのやり方を教えてもらっていただけであった。今まではそれが落語なんだと思ってきたのだが、どうも納得がいかなくなってきた。実際はどうなんだろう。こうなったら、やってみるしかないと、小七は思ったのであった。
「おとついはうんどん屋、きのうは左官、今日は籠かき、で、あしたは大工でっか。まあ、稽古前のいっときほどでっさかい、同心の旦那には稽古がはようなったと、言えばすむことやけど、いつまでやるますの。」と文吉はやれやれと思いながら言った。
「すまんけどな、もうすこし、たのむわ。それから、稽古の時もまた相手をたのむわ。」と小七。
「え、またでっか。」
今の文吉の腕は、ほとんど小七に仕込んでもらったものである。すくなくとも、文吉はそう思っている。その小七のたのみであるから、いやとも言えない。やがてふたりは、道場に着いた。
稽古が始まると、小七は文吉を道場の隅に引っ張っていき、無現一刀流の形を始めた。五日ほど前、小七が春川に形の稽古だけをしばらくしたいと言った時、春川はただよかろうと言ったきりだった。それ以後、よくもまあ、あきないものだ、とほかの者達が思うほど、ふたりは打ち太刀と仕太刀を交替しながら続けている。
小七は、形稽古をすればするほど、形が難しくなってきた。足はこれでいいのか、手はどうか。小七は無現一刀流の前にも、ある程度他の流派をやっていたので、時々これで無現一刀流になっているのか、不安になる。そんな時、春川に聞く。文吉に聞くときさえある。
無現一刀流の形は他の多くの流派と同じく、仕太刀と打太刀にわかれる。形はすべて打太刀が打ってきたものを仕太刀がさばくというものだ。小七は打太刀が打ってくるのが、馴れ合いにならないように稽古した。しかし、あの春川が感じたという『後の先』の理合はいつまでたっても、伝わってこなかった。
「小七さん、道場破りだっせ。」
汗を拭きながら、一息いれていた小七に、文吉がささやいた。見ると、浪人風の三人が片手に竹刀、背には何やら背負って入ってきた。一人は四十ぐらいであろうか、他の二人の師のようにも見える。その弟子の二人は、小七や文吉とおなじくらいの二十代後半であろうか。ひとりは小柄で、がっしりとしてた。もう一人は、長身でやせていた。
春川の目があの年輩の浪人を認めると、一瞬驚いたようになったのを小七は見逃さなかった。しかし、その浪人の方は何も気づいていないようであった。
「なんだ。ここはまだ木刀で稽古しているのか。」と三人の内の、小柄でがっしりした男が大きな声で言った。さきほどの年長の侍がたしなめるのが見えた。
この時代、ようやく竹刀や防具が普及しはじめたばかりで、大坂ではまだほとんど使われていなかった。今日のような竹刀や防具が使われるようになったのは、幕末のころである。
試合は木刀ですることになった。
先ず、河添源太郎が出た。源太郎の父親は、大坂西町奉行所の同心であったが、次男坊の気楽さからか、同心や与力の子弟達の行く道場には行かず、なぜか、春川の町道場に来ていた。小七より二、三歳年下である。小七の次に、この道場では古く、腕も小七の次にたった。
最初の長身の男を源太郎は、しばらく、はげしく打ち合ったが、最後はたやすく倒した。二人目、小柄でがっしりした男。この時は、打ち合っては分かれ、打ち合っては分かれを繰り返した。しかし、最後、源太郎が勝ったと思った瞬間、源太郎の太刀がわずかに遅れた。春川は小七をよんだ。
他流試合は小七にとって、初めてのことではなかった。ふつう、剣を構えると、相手の技量がだいたいわかった。自分と同じくらいの技量で、わかりにくい時でも、一度打ち合えば、わかった。この相手、小柄でがっしりした男、小七は構えてみて、強いと思った。とにかく大きく感じた。相手の体全体が見えない。自分の視野が狭くなったように、まわりのこともよく見えない。相手の剣の気が読めない。落ち着け、小七は自分に言い聞かせた。すっと、相手が間合いに入って来て、小七の木刀を叩いた。次の瞬間、互いに激しく打ち合ったが、お互い決め手がないまま、すばやく飛び離れた。今の一撃で、ようやく落ち着いた。やっと、相手が見えてきた。その時、小七の頭に先ほど文吉と稽古していた形がかすめた。小七は間合いを詰めていった。間合いに入った時、小七は相手の木刀を払って、攻撃しようとした。相手はそれをねらい澄ましていたかのように、裂帛の気合いで小七の小手を打った。しかし、そこには小七の小手はなかった。一瞬早く小七は飛び下がって、大上段に構えたいた。空を切った相手の木刀が、態勢を立て直そうとするのだが、小七の胴に引っかかって、立て直しが遅れた。そこを小七の木刀が相手の頭の上に下ろされた。もちろん、寸止めである。
浪人達が引き上げた後、文吉が小七のところにやってきた。
「春川先生が呼んでまっせ。きっとほめてくれるんちゃいますか。」
と言った。
小七は肩書きこそなかったが、自他ともにみとめる春川道場の師範格であった。その小七が春川道場の面目を大いに施したのであるから、……。小七はあふれ出る笑みをこらえながら、春川の居間へ入っていった。
ところが、春川の居間にはすでに、河添源太郎が座っていた。別に叱責された様子もない。いやむしろ、なごやかな風でさえあった。それどころか、小七が入って来たことで、居間の気配が少し変わったのを、小七は見逃さなかった。
「小七、今、源太郎とも話していたのだが、この際、道場の仕組みをはっきり決めておこうと思うのだ。というのも、これからしばらく、道場に出られない日が多くなるやもしれんのだ。その時のための手配りだと思ってくれ。」
意外な話に小七も源太郎も思わず顔を見合わせた。
「今は何も聞くな。そのことについては、いずれ折を見て話そうと思う。そこでだ、ふたりに春川道場の師範代をしてもらいたい。道場にいる年数から言っても、技量の点から言っても、誰も文句はないはずだ。問題は、どちらが筆頭師範代になるかだが、これにはおれも大いに思案を重ねた。今日まで心が決しかねた。しかし、今日の試合で両名の太刀筋を見て、ようやく決まった。源太郎、おまえ、筆頭師範代になってくれ。」
「えっ。わたしがですか。」
「そうだ、おまえだ。辞退はあいならぬ。よいか。」
「はっ、はい。」
源太郎は思わず一礼した。
源太郎が去った後も、小七はまだ下を向いたまま、春川の居間に座っていた。
「小七、承服しかねるというのか。なるほど、今日の試合で春川道場の面目をほどこしたのは、小七、おまえだからな。」
「いえ、先生、おいらが聞きたいのはそんなことやないで。おいら、ただの噺家やから、筆頭師範代なんて、とんでもないです。師範代でさえ、ありがたいと思っております。」
「それじゃ、なんだ。」
「先生はさっき、太刀筋から見て、そう決めたと言いはったが、おいらの太刀筋のどこがおかしいでしょうか。それとも、おいら、ただの町人やから、あかんというんなら、そうはっきりと言うてください。そのほうが、おいらもすっきりしますよってに。」
と言って、小七はおずおずと顔を上げて、春川を見た。その春川の目は、怒りの中に、悲しさをたたえたようであった。しばらくして春川が言った。
「形だ。おまえの形は生きておらん。」
春川兵部は、須崎信吾の杖術を破った後も、さらに中津川のあの老人の道場にとどまり、杖の形の教えを請うた。春川は主に信吾から杖の形を学んだ。信吾が教えている間、あの老人はいつも上座にすわり、二人の稽古をじっと見ていた。春川は杖術を知れば知るほど、杖のすばらしさに心奪われていった。まさに理にかなっている。その長さはわずかに剣より長い。そして、刃がついていないということは、杖のどの部分も刃になりえるということであった。これでは、同じ期間、剣と杖を稽古した者同士が立ち合ったら、杖のほうが勝つだろう、と春川は思った。
五日ほどして、杖の形を一通り学び終えた時、春川は老人に呼ばれた。
「春川殿、もうよかろう。さあ、お帰りになって、又、剣の修行に励むがよい。」
「しかし、私はこれからもっと、本格的に杖術を学ぼうと考えているのです。正式に入門したいのです。お許し願えませんか。」
「いや、お主にはその必要がない。信吾に勝てたあの理合がわかっていれば、それでよい。剣も杖も。あの理合を自分のものにすれば、同じことよ。さあ、帰って剣の修行を続けなされ。そして、故郷で道場を開きなされ。」
春川は老人に入門の許しを請うたが、老人はがんとして聞き入れなかった。
春川を見送るために門のところまで来た老人は、言った。
「理合がなければ、形はあくまで形にすぎぬ。剣も杖も道具にすぎぬ。形に生を与えてこそ、剣は生きる。」
「剣が生きる。」
春川は何度もつぶやいた。
名古屋に向かう春川の足取りは、それまでの言葉に反して、はやるものがあった。実は杖の稽古をしている時から、気になっていたのだが、それは信吾に勝てたあの理合であった。春川自身、あおの時使った理合は全く感覚的なものであった。閃きに近いものであった。そのためか、あの理合が急速に失われていくのが、はっきり感じられた。老人が言った、「剣が生きる。」をわかるためにも、あの理合を自分のものにしておく必要があった。
名古屋の小池道場にもどった春川は、道場主の小池彦三郎に、突然出て行ったことをわびた。小池はその理由を全く聞かず、ただうなずいただけで、春川に再び稽古することを許した。
それから春川は、師範代浜田稔之介にたのんで、形稽古をはじめた。春川は信吾に勝てたあの理合を自分のものにしたかった。しかし、稽古をすれば、するほど、あの理合から遠ざかった行くのを感じないわけにはいかなかった。いったいどこがおかしいのか。小池彦三郎の形に見たものは何であったのか。
春川が小池道場にもどって何日目かであった。その日も上座にすわって、門弟たちの稽古を見ていた小池彦三郎は、浜田と形稽古をしている春川を突然自分の居間に呼んだ。
「お主、いったい何をそんなに苦しんでいるのだ。何故そんなに形稽古ばかりするのだ。」
小池に問われた春川は、今までのいきさつをすべて語った。
「先生の形を見た時に感じたあの理合を、自分のものにしたいのです。あの老人は形に生を与えようと言いました。あの理合と形に生をあたえるよと言ったことと、どこかに繋がりあるような気がしてならないのです。私はそこのところがわかないと、無現一刀流をしてる、いや、剣の修行している意味がないと思うのです。」
小池は、筒井殿が……。と口に中でつぶやいた。
「ふうむ。春川、お主わしの形を見て、何かを感じたといったな。それは確かだ。しかし、それを再び求めようとした時、わからなくなったはずだ。そう、あの中には確かに、わしが何十年か、かかって得た無現一刀流の極意がある。お主がそれを求めようとしても、すぐにはわかるはずがないではないか。よいか。あせってはいけない。」
「しかし、一度自分のものしたあの理合だけでも、確かに自分のものにしておきたいのです。」
「それなら、一つだけ教えよう。今のお主はわしの形によって、形を知ろうとしている。それではいつまでたっても、生きた形にはならない。よいか春川、形の理合を知れ。そのためには、自分を知れ。自分の技量を知るのだ。そして、その技量で形をするのだ。それ以上でも、それ以下でもない。できないところはしなくていい。自分のできるところまでを、自分のものとして、するのだ。全部をまねる必要はない。」
「……、でも、どのようにすれば……」
「じゃ、もうひとつ。体の中心は臍下丹田だ。気持ちを臍下丹田に落として、呼吸をはかるのだ。息は吐ききってから、ゆっくり吸うのだ。」
春川は、再び木刀をもって、浜田と形稽古をはじめた。小池の居間を出た時から、吐いて吸う、吐いて吸うを心がけた。すると、不思議なことに体じゅうの力が、抜けていくのが感じられた。それと同時に心の力も抜けていった。何かが腹にぽとんと落ちたようなあの感じが、よみがえってきた。形が始まった。打太刀の浜田の剣をおさえ、打ち込む度に、春川は剣を伝って、自分の心の灰汁が抜けていくようであった。と同時に、形の細部を忘れてしまった。形を初めて何本目か、浜田が上段に構えた。春川はその時、今までの自分になかった何かを感じた。次の何をするべきのか、思い出せない。浜田の上段に対して、春川の剣は、吸い込まれるように高めの中段になった。春川は何かに引っ張られるかのように間合いを詰めた。浜田の殺気が春川に伝わった。その殺気の中を浜田の剣が打ち込んで来たのがわかった。と、その刹那、春川の剣はまるで生き物のように浜田の方へ吸い込まれていった。春川は確かに見た。剣のまわりは澄み切った透明のようであった。そこに向かってくる浜田の殺気も、剣も、何もかも、弾き飛ばして進んでいった。技がきまった、浜田の小手でぴたりと春川の木刀がとまっていた。浜田は動けず、額一面に汗をかいて、その場に座り込んでしまった。すべてが、形通りであった。
そこまで話すと、春川はお茶をすすった。
「小七、今日のおまえの試合は無現一刀流の形を使っているように見える。しかし、あの中に無現一刀流の理合はない。単に形にはめただけだ。わざと隙を作って、相手を誘い込んで、形にはめただけだ。
形は体で覚えるのだ。頭で考えているようでは、だめだ。頭が忘れても、体が覚えているように稽古するんだ。そうすれば、理合が見てくる。
この場合、無現一刀流の理合とは何かわかるか。」
「……」
「小七、おまえだよ。おまえ自身だ。」
「えっ。」
とその時、ふすまの外で、誰かの気配がした。
「先生、文吉でおます。」
「うん、しばらくまて。」
「小七、もうひとつ。源太郎はどうして、勝てるはずに試合に負けたのかわかるか。」
小七と入れ違いに、文吉が春川の居間に入っていった。
「わかったか。」
「へい…」
そんな声を背に受け、どうして、文吉が、と一瞬思ったが、春川に言われたことにすぐ心奪われたしまった。
高座で自分の出番を待っている間も、春川に言われたことをずっと、考えていた。突然、だれかが小七の背中をぽんと押した。
「小七はん、つぎあんたやで。」
しまった、今日何をするのか、考えてなかった。頭の中が真っ白になった。座布団に座って、客席を見ると、えらくざわついている。前の噺がよほどおもしろくなかったようである。いつもなら、少々のざわつきなら、大声で話しはじめると、たいてい収まるのだが、今日は大声が出ない。すっと息を吐いたとき、目の前の客と目があった。
「今日はえらいそうぞうしでんな。どないしたんです。前のがしくじったでっか。」
うん、そうやねん、と言うように、二三人の客が小七を見た。
「そういや、わたいも今朝、籠かきのまねをしたら、えろうしくじって……」
小七が何かいうと、四五人が笑った。次に、十人ほど小七の噺に吸い込まれたいった。二十人ほどが爆笑した。後ろで、てんでに話していた客たちも、何がそんなにおもしろいねんと言うように、小七の噺に耳をかたむけた。小七が羽織りを脱ぐころには、小七の噺を聞いていない客はいなくなっていた。
噺は自然と『住吉籠』になった。客が籠かきをだまして、ひとつの籠にふたり乗ってしまうのだが、そのふたり乗っているとは知らないで、籠を担ぐところで、小七は自分の芸がいつもと違うことに気がついた。いつもなら、籠はこう担いでというのが頭に浮かんで、その通りにしていうのだが、今日は昼間担いだことが、体の中によみがえってきた。小七自身なにも意識したわけではない。まず、気持ちを落ち着けて、呼吸を整え、そして、腰を入れて一気に担ぐ。小七はこの芸をしながら、あっと思った。
そうか、おいら、いろんな人からこの芸を教えてもろうたが、全然うまくいかへんかった。しかし、それはおいらが、形だけを知ろうとして、その呼吸を知ろうとしなかったからなやねんな。
小七は、そう考えると全てのことが腑に落ちた。
寄席が終わると、小七は木刀を持ち出し、寄席の裏の空き地で、ひとり無現一刀流の形をやりはじめた。小七はそうかそうかと言いながら、木刀を振った。春川の言った意味が小七は少しわかってきたような気がした。しかし、源太郎が勝てる試合に負けたという春川の言葉だけはまだ理解できなかった。
小七は木刀を振るのをやめた。明日はやっぱり大工の棟梁のところへ行くことにしようと、思った。
真冬の夜の寒さに、小七の髷のあたりから立つ湯気が、澄み切った月明かりに、ほのかに見えていた。
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