コンタックスT2ブラックリミティッド
黒塗装の限定版.京セラの発表では国内・海外の合計で2000台だという.
「チタンカバー上に、黒のクロームメッキを行い、さらに一台一台手作業で丁寧に黒塗装を施すことにより、格調高い深みのある黒を実現しました」(メーカーのプレス発表より)
というもので,確かにきれいな仕上げ.
まっ黒である.
話は飛ぶが,私はカメラは黒いのが好みである.どうもあのシルバーの仕上げのやつは格好良くないと思っている.(それでいてレンズがシルバーなのはいっこうに気にならないのだ.黒のボディに白レンズはそれなりに格好いいと思っている)
このT2を買う気になったのも,色が黒いことがだいぶん影響している.
さてそれはそれとして,T2は1990年発売ということで,もう10年前のカメラである.仕様は古い.
最初に長所を挙げる.
- ゾナー38mmF2.8レンズの写りが良い.例えばこの写真は関内を散歩していて何気なく撮った写真だが,とてもシャープに写っているのに一驚した.
なおゾナーは昔のコンタックスのゾナーと名前が同じだが,レンズ構成は全く異なり共通点はない.新ゾナーはテッサーの改良版である.
- 露出補正ダイアル(+/-2EV)がとても使いやすい.リバーサル向きの露出決定がなされるようで,ネガカラーでは+1EVするのが習慣になっている.
- ファインダが非常にクリアで倍率もそこそこ高い.(0.6倍)私は近眼なのだが,T2のファインダはよく見える.カメラの量販店でいろいろなコンパクトカメラのファインダを覗き比べてみたが,ミノルタのTC−1やコニカのヘキサー(もちろん初代のほう)はとても良い感じだった.リコーのGR−1(s)は私には見にくい.ライカのミニルックスはファインダ倍率が小さすぎて,見え以前の状態.これさえなければ黒のミニルックスは魅力的なのだが.
- シャッタの半押しの感触が明確である.この半押しの感触はAF・AEカメラにとっては大変重要なことである.しかし,その割にはあまり感心しないものが多い.
- モータの駆動音(レンズの沈胴・フォーカス駆動,フィルム給送)が静かで高級感がある.ミノルタのTC−1は作動音に高級感がないと思う.TC−1は大変高価な良いカメラなのだから,作動音にも気を配ってもらいたい.
- 自分の意志で絞りをフラッシュポジションにしない限り,ストロボは勝手に発光しない.これは当然のことなのだが,なぜか高級コンパクトと呼ばれるカメラしかできない.露出補正についても然り.なぜユーザはもっとメーカに文句を言わないのだろう.
- マニュアルフォーカスにしたときでも,AFはフォーカスエイドとして使える.他の機種では,AFを使わないとまったくの目測となってしまうのが多い.
フォーカスエイドにして,いろいろな対象を測距してみると,ファインダの測距マークは案外正確なのがわかる.逆にいうと,ファインダの測距マークからわずかでも外れると,決してピントは合わない.
- デザインが良い.ただし,これは好きずきである.
次によくいわれる欠点.
- アクティブ測距式のAFがピントを外しやすい.中抜けしやすい.
- 絞り優先AEではシャッタ速度が最高でも1/200である.さらにシャッタの最高速度は絞り設定値によって異なり,F16だとシャッタ速度は最高1/125にも届かない.感度の低いフィルムを使っていても,日中晴天の屋外では絞り優先で撮れないことが多い.この場合は仕方なくプログラムAEで撮ることになる.プログラムAEモードではシャッター最高速度は1/500である.
- 周辺減光が目立つ.ビハインドシャッタが絞りを兼ねるせいであろうか.まあ私自身はそれほど気にしていないが.
- 露出にクセがある.私自身はあまり気にしたことはないが.メーカー発表の測光分布グラフを見ると,割合スポット気味である.少なくともTVSよりは測光範囲が狭い.これがクセがあるといわれる原因かもしれない.
- 最短撮影距離が0.7mであまり寄れない.これはとても不便.卓上の料理を撮ったりするのにも不自由する.
- フィルム給送が普通のカメラとは逆になる.
- フィルム巻き戻しの速度がとても遅い.
- 絞り優先モードでストロボを使うことはできない.
- 夜景モード(スローシンクロ)のモードがない.日中シンクロは可能.
- シャッタを押してからレンズが駆動されるので,タイムラグが大きい.もともとシャッタ速度があまり速くないカメラであるから,手ぶれには十分注意する必要がある.
- 重量が300グラム前後あって少々重い.また大きさもシャツのポケットに入るほど小さくはない.
- レリーズを付けることができない.コンパクトカメラは大抵そうだ.しかしライカミニルックスにはちゃんとした立派な専用レリーズがオプションで用意されている.流石だ.
注記「ビハインドシャッタが絞りを兼ねる」:
T2では絞りをF2.8にセットすると,プログラムAEモードになる.絞りを他の値(F4,5.6,8,11,16)にセットすると絞り優先モードになる.プログラムAEモードでは3枚羽根のビハインドシャッタが絞りの役目を果たす.プログラムAEモードで撮る限り,せっかくの7枚羽根の手動絞りは全く使われない.ぼけ味などを気にするなら,なるべく絞り優先で撮ったほうがよいと思われる.しかし,T2で絞り優先モードにすると最大シャッター速度が低すぎるので,明るいところでは撮れないケースがでてくる.
ちなみに,絞りをF2.8にセットしている状態で,ファインダ内の「P」表示が点灯しているときは,ビハインドシャッタが絞りを兼ねている.言い換えれば,絞りはF2.8より絞られている.「P」が点灯していなければ,ビハインドシャッタはシャッタ機能だけを果たしており,したがって絞りはF2.8開放のままである.この時の,しきい値はEV10.5である.
おまけ:
あまり役に立たないT2の雑学(出典:T2発表当時の雑誌の記事などから)
- 制御回路のCPUは4ビットCPU,ROM8Kバイトである
- EEPROMを使ってフィルム撮影枚数などのデータを記憶するので,主電池以外のバックアップはない
- 巻き上げ・巻き戻し用モータ,沈胴・バリア・フォーカス用モータの2モータ式
- フォーカシングは全群移動,直進式.AFのステップ数は118ステップ.(なんとTプルーフのほうがステップ数では勝っている.ちなみにTプルーフは160ステップ.Tプルーフはストロボガイドナンバが9,シャッタ最高速度1/700,最短撮影距離35cmとT2より勝っている点が多い)
- フィルム給送センシングは赤外線式
- ファインダ内のLED輝度は明暗2段階に自動切り替え
- ストロボガイドナンバはカタログに明記されていないが,8である
- 電源は起動後8秒間何もしないとOFFとなる
- AF用赤外光はダイアル回転中はフォーカスエイドを行うため,パルス発光を続ける.回転を止めると1/2秒ごとに発光となり,8秒後に消える.シャッタ半押し等のユーザ操作によって再開する
- 赤外光の信号を検出できない遠距離撮影では,フォーカスを15mに設定するようになっている.∞は被写界深度でカバーする.マニュアルにして∞を選べば,ちゃんとフォーカスは∞にセットされる
- ストロボの調光は小絞り優先のフラッシュマチック方式である.したがって,日中シンクロは可能.この時シャッタ速度は1/30からとなる
