マトリックス リローディッドにおける「選択」


リローディッドというと,そのアクションシーンや衣装に関するコメントが多い.しかし,あえてここではその「思想」を問題にする.

ラスト近くのネオとアーキテクト(マトリックスの設計者−もちろん彼もコンピュータ・プログラムだ)の会話の内容が重要である.だいたいの要点は次のようなものだ.

映画をぼんやり見ていると,ネオは@ザイオンを救うかAトリニティを救うかという二択を迫られ,トリニティを取ってザイオンを捨てるかのように思える.そうではない.
ネオがどちらのドアを選んでも,今のザイオンは滅んでしまうのである.ザイオンを救うというのは,前述のマトリックスから23人(16人の女,7人の男)を選び,ザイオンを再建するということに他ならない.

以下からは私なりの解釈が入ります.

ネオのようなthe Oneの存在は偶然がもたらした特異例であるが,システムはこうした存在の出現をあらかじめ予測していた.救世主出現の予言も,予言者がネオに与えたアドバイスも,すべてシステムが計算ずくで与えたものである.the Oneのような存在は,マトリックス全体の一種のガス抜きのような機能を果たしている.つまり,矛盾や不満がある一定以上のレベルに達し,システム全体に危険が及びそうになると,the Oneが出現し予言者に導かれて,ソースの部屋へ(アーキテクトの部屋へ)たどり着く.そこで,the Oneを作り出したシステム矛盾点をプログラムに反映し,ザイオンを全滅させ,新たにまたザイオン再生の糸口を作ってやるのだ.
ネオはこの欺瞞に気づき,トリニティを救うためにマトリックスへ戻った.当然の選択であろう.