ナインスゲートが分からない
ペレス・レベルテの小説である.「呪いのデュマ倶楽部」という単行本タイトルだったのだが,ロマン・ポランスキーが映画化したときに,デュマに関わる部分は削除されてしまった.そのため題名も「ナインスゲート」となり,小説の方も文庫になるとき題名が変わったわけ.
以下引用は集英社文庫「ナインスゲート」大熊栄訳に従う.
- 主人公ルーカス・コルソ(映画ではジョニー・デップが好演)が謎の女(どうも悪魔の化身らしい)にリスボン特急の中で会うシーン
ここで彼女はイレーネ・アードラーと名乗る(もちろん「ボヘミアの醜聞」の)pp207-209
彼女のパスポートもそうなっていることがあとで分かる.住所はなんとべーカーストリート223bだ.pp318-319
- コルソが彼女とシントラのホテルで再会したときの,彼女とコルソの会話
「自分の笑顔を鏡で見たことがないの?まるで老兵みたいだわ」
「老兵がどんな笑顔を作るのかわからないな」
「私は知っているわ.かってわたしは海を探している二千人のひとたちに出会ったの」pp261-262
- パリのセーヌ川のほとりで,彼女とコルソの会話
「ずっと前に聞いたことがあるわ...虹は地上から天へ至る懸け橋なの.悪魔が馬に乗って虹を駆け登っていくと,世界の果てで虹は粉々に砕かれてしまうという話」
「悪くないね.きみのおばあさんから聞いたの?」
「わたしの友だちのビレトから聞いた話なの.彼は馬とワインが好きなの.それにこの上なく楽天的なひとで,あんなひとはほかに知らないわ...いまだに天国へ戻りたいと思っているんだもの!」pp313-314
- パリのホテルで,彼女とコルソの会話
「忠実な軍隊のばかげた忠誠心から,決まり切ったことのように彼らは反逆の指導者に従い,敗北したの」
「クセノフォンの一万人(もちろんアナバシスのこと)のように,か」
「たぶんね.彼らは世界中に孤独に散らばって,指導者が祖国に連れ戻してくれる時を待っているの」
「それらすべての古い塩が海を探しているとは,なんと感動的なんだ」pp332-333
疑問は二点ある.
- 「海を探している二千人の人」とは誰のことか?,
- ビレトとは何者?
わたしの解釈では,1はクセノフォンのアナバシス(一万人の退却)を指すのではないかと思う.「アナバシス」の巻の四に,退却する傭兵たちが山の上から海を見つけ,「海だ海だ」と感激するシーンは有名である.アナバシスのことは,上述のとおり小説のほかの部分でも言及されている.しかし,ここで人数が二千人というのがどうもおかしい.
2のビレトについては,地獄の王侯の一人らしいですね.もとは天使だったらしいし,白馬に乗っているのと,召喚の時にワインを使うとか,それらしい点が多い.
以上が「ナインスゲート」に関する私の疑問点です.こういうのはどうやって調べたらいいんだろう?
