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■期待されたパソコン能力
■SV8000を開発したメーカー このハイポテンシャルなハードを製造したのは、TV-JACK2500など、数々のバンダイテレビゲームの製造を担当してきた科学技研(科研)株式会社。さらに外注先としてロジックシステムズ インターナショナル(以下L.S.I.)というメーカーが開発に参加しています。L.S.Iは、現・ロジック(株)としてネットワーク分野の第一線に立つ有名メーカーですが、当時はトレーニング(マイコン)キットの開発などシステムハウスの中堅として活躍していました。1979年と言えば、まだキット販売のボードでさえ8万円はくだらないという時代でしたから、テレビモニタを利用するようなマイコンボードを低価格で、というバンダイの要求は難しいものだったはずです。ただ、L.S.I.は半導体メーカーとユーザー(ここでは科研を指す)のバランスをとり、性能のよいハードウェアをつくるのには定評がありましたので、バンダイや科研にとっても、まさに渡りに船、といった感じだったと思います。 ■こなれないハードウェア ですが、SV8000プロジェクトは、新ハードゆえの重大なネックを抱えていました。ノウハウを持つ人間が誰もいなかったという点です。プログラミングのコツや、グラフィックの扱い方というものは経験で蓄積されるもの。ましてや、プログラマーにとって、バンダイが要求するインベーダーやパクパクバードといった縦横無尽なアクションゲームは、当時かなりハードルの高いものだったはずです。そのためか、1979年12月(*1)の本体発売時に揃ったゲームソフトは、付属のミサイルベーダー1本のみ。翌年発売予定だったタンクゲームはオセロゲームに差し替えられました。このオセロのできは悪くなかったのですが、それ以外のリアルタイムゲームは、どれも無残な仕上がりでした。 SV8000の展開はそれからおよそ1年半ほど。最後発のビームギャラクシアンのできは良かったようで、後期にはやっとゲーム製作のノウハウが蓄積されてきたのだと思われます。 ■テスト販売に近かったSV8000 SV8000にはもうひとつ弱点がありました。59,800円という価格がそれです。当時の業界誌によると、問屋筋が考える購買ポイントというのは、内容、値段、ブランド、店員のアドバイスだったそうです。ただでさえ第一時ブーム沈下後でテレビゲームが売れなかったこの時期に、この内容と価格では、いくら高機能のマシンとは言え、扱いにくい商品だったのではないでしょうか。バンダイはSV8000を重点商品として見据え、雑誌広告はもちろん、テレビCMまで製作しプロジェクトに取り組んだのですが、さて実際はどれほど売れたのでしょう?開発導入予定とされていた「キイボードコンポーネント」など周辺器機については、結局”企画中”のまま、具体的に告知されることはありませんでした。 SV8000の発売から3年後の1982年、バンダイは米・マテル社から招いたインテレビジョンを華々しく日本デビューさせています。以後、83年のアルカディア、同年夏の光速船と年度ごとに新機種を投入していきますが、それらはすべて自社開発ではなく、輸入販売というスタンスをとり続けました。 自社開発を敬遠した理由についてバンダイは『「インテレビジョン」クラスで3年くらいの期間と、3〜5億円の開発投資が必要である点から、自社開発にこだわる必要はない』(玩具市場の動向と展望 1982年版より)、と判断したそうです。 ![]() 結局「こういった高級マシンを、自社で展開していくのには、まだ時機早々」。それがバンダイが出した答えでした。 最初にも出てきた日本経済新聞9/12の記事に、バンダイのSV8000に対するスタンスを読むことができます。『スーパービジョンの価格は59,800円。従来のテレビゲームが2万円前後だったのに比べかなり高く、当面はテスト販売といった色彩が強い。むしろこれを足がかりに、数年間はホームコンピューター市場の展開をにらみながら、より広い用途をもったマイクロコンピューターとしての商品を開発、マーケティングに力を入れる方針』だったそうです。 スーパービジョン8000は、マイコンテレビゲームというものが自社開発で商品になるか、という試金石だったと言えるでしょう。70年〜80年というのは、まだまだそういう時代だったんですね。 |
![]() 発売のニュース 日本経済新聞1979年9/4刊より。国際玩具市での発表と展開について。当時、ここまで大きく取り上げられたテレビゲームはありません。 ![]() デザイン画 SV8000とミサイルベーダーのデザイン画。当時の玩具業界誌に掲載されたものです。バンダイのリリースの転載でしょうね。 ![]() MP-80 L.S.I.がマイコンの講習用に開発した超低価格キット。LEDこそ4ケタなれど、8080Aをセットした一式の価格は39,500円と市場の半額。驚異です。 ![]() バンダイエレクトロニクスの広告 右上がSV8000。バンダイが1979年頃に発売していたLSIゲームは15種ほど。よく売れたのはLSIベースボールやミサイルベーダーという安価な電子ゲームでした。 ![]() 保証書リターンキャンペーン 「お客様お買い上げの際の保証書1枚につき、1000円のキャッシュバック」 販売店を対象とした珍しいキャンペーン。80年下半期頃のカタログより。販促に努められています。 |