アジアで行われた最初の万国博で、テーマは「人類の進歩と調和」。参加77ヶ国。泥くさい民族文化と、アポロ着陸船やロボットといった最先端テクノロジーを、日本人の和の心をベースに、抽象芸術の世界で見事にこんぜん一体化させた史上最大の大博覧会です。
●電車の運転テスト at 古河パビリオン
国産ビデオゲームの源流にして、これぞまさに電車でGo!のご先祖さま!
出展者は「万国博古河館推進委員会(ばんこくはくふるかわかんすいしんいいんかい)」。かんたんに言えば富士通の親、古河グループです。万博にパビリオを出すことが決まり、テーマは何にしようか?と会議が開かれ、コンピュータを使った夢の世界をショーで展示するという「コンピュートピア」の構想がもちあがりました。そして、コンピュータ分野にとくいな富士通の通信技術者たちが中心となり、当時のコンピュータが苦手とされていた点に挑戦し、だけど子どもでもできるようなやさしくておもしろいものをやろうということになったのです。コンピュータには富士通製FACOM270-30の4システムを使い、30人前後の専門技師が約2年かけて開発した6つのイベント、そのうちのひとつが鉄道運転シミュレーション「電車の運転テスト」です。

- コンピュータによるグラフィック・ディスプレイによるシミュレーション。3D表示。
- オールディジタル演算。ノッチ、ブレーキ操作などで5種類の割り込み処理。解析。加速、減速に応じた表示
- ブレーキの音や、ふみきりや鉄橋を通った時のサウンド。
- 成績は100点満点中、何点で表示される。
- 日本人として最も親しみのある電車ということが採用理由だとか。
その他5つのイベントは次の通り。あなたならどれをプレイしたでしょうね?
- ボイス・コントロール・クレーン(.コンピュータ・ハンド・ゲーム)
・・・コンピュータによる音声認識。UFOキャッチャーを声で行うようなゲーム
- コンピュータ・ミュージカル・ホール
・・・コンピュータによるミュージックの創造と演奏(即興音楽)
- 碁とコンピュータ
・・・名局の再現、棋力判定、詰め碁(つめご)等さまざまなコンピュータ囲碁システム
- キャッシュレス・ショッピング
・・・コンピュータによる音声認識
- コンピュータ・ドレス・デザイナー
●月着陸船(つきちゃくりくせん)ゲームとゴルフゲーム at アイ・ビー・エム館
世界一のビジネスコンピュータメーカーだったIBM社も参加。テーマは問題を解く人間像で、コンピュータの可能性やインタラクティブ性を、ゲームやライトペンを使った遊びの形でわかりやすく示しました。
月着陸船はこんなゲームだったそうです。
- コンピュータとディスプレイモニタを使用
- 操縦(そうじゅう)かんがついている(?)
- 月着陸船が軌道をはずれると、ブザーがなり危険をしらせます
ゴルフゲームの方は、今のところ、映像装置の上に実際のグリーンと同じ条件をつくります(万国博公式ガイド)・・・ということろまでわかっています。
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また、この写真には映っていませんが、このコンピュータ端末の上には、グルリと円を書くかたちでディスプレイが8台天井からぶらさがっていて、ゲームの画面を同時中継しています。プレイする人以外にもゲームが見られるわけですが、これもファイナルラップで使われていた中継システムのさきがけと言えるかもしれません?!
●光学映像装置(同上)
同じくIBM館より。ディスプレイにお題にあわせた選択肢(せんたくし)がいろいろ表示されるので、それを電子ペンで選び組みあわせて、最後にプリンタでプリントアウトするイベント。お題は下の3つ。ビデオゲームというよりは、pico(ピコ)などに近いコンピュータ遊びですが、超人気だったので紹介しておきましょう。
- マンガづくり:これが子どもたちに大人気。鉄腕アトムやオバQなどマンガの登場人物を選んで、その後のストーリーを選択しの中から選でんで物語をつくるというもの。
- ファッション:ドレス。コート、クツ、ハンドバック、ぼうし、色、デザインを選ぶと、そのファッションの女性の絵がプリントアウトされます。
- 旅行:きみだけの旅行プランをたてましょう。行きたい国や都市、名所を選んでいくと、かかる料金が示されます。
この当時はおかたいイメージがあるIBMですが、どっこい、ビデオゲームをもってくるやわらかさもあったのですね。ところで写真で見る限り、月着陸船/ゴルフゲームがプレイだきるマシンは、たった1台かぎり(だから、中継システムで多くの人に見せるというしかけも必要だったのでしょう)。ただでさえ混雑しているパビリオンですから、これではなかなかプレイできません。グラフィックゲームをつくるには、それだけ巨大なシステムが必要だった時代であったわけですが、それならばと、台数も多く、ぱっと見てわかりやすい光学映像装置の方に人気が集中していったのはしかたがないところですね。
●シミュレート・トラベル(模擬飛行)
at 日立グループ館
ものすごい人気だったひこうきシミュレータ。写真だけ見るとビデオゲームのように見えるのでこれもおまけで紹介しておきます。あなたがたはひこうきの運転手。そうじゅうかんコントローラーでコックピットスクリーンにうつる街並みの上空を飛びましょう。あえて言うなら、スケールの大きなミニコプターというところでしょうか。飛行する市街は、50mプールほどあろうかというスペース(もっとある?)に精密につくられたミニチュア都市で、そうじゅうかんでコントロールしているのは実はそれを中継する移動式カメラだったりします。
下の写真のがその日立グループ館で、8人席×16のそうじゅう席のパイロット2名が、交代でリレー飛行していくシステムです。座席がくるりと回転してモニターとドッキングしたり、一部に実写フィルムをつかったり、気分はいやがおうにも盛り上がりました。

UFOのような日立グループ館
また、左のほうに見える七重の塔が古河パビリオンです
【知られざる国産第一号ビデオゲーム?】
大阪万博は、場内の駐車場の空き具合からまい子チェックまで、大きぼな情報処理コンンピュータが導入されたことで有名ですが、建設費に31億円、運用費だけでも4億円くらいかかったんだとか。当時の31億円って今のいくらにあたるんでしょう?!高いわ、難しいわ、金はかかるわで、こんなものでゲームをつくるなんて発想は、そりゃ当時は出てこなかったはずです。
そんな時代に古河グループはやってくれました。万博は通常できない大きな実験のチャンスだ!世界に我々の底力を見せるチャンスだ!と、ばくだいな研究開発と時間の中で、ビデオゲームを生みだしたということは、私たちクラシックゲームファンにとって実にうれしいことです。しかも、これ、ひょっとして国産初のビデオゲームじゃないのかな?!
ところが、ボイス・クレーン・ゲームがあまりにも人気で、お客さんはみんなそっちに注目していたせいか、あまり写真が残されていません。ビデオモニタが写真に写りにくいという事情もあったためでしょうか?でも、富士通のパビリオン広告での扱いも、やっぱりそえものの位置だったりします。ま、最初はこんなものなのでしょうね。
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