第101号~第150号

第101号 2004/12/19      

人との出会いは、いかに余韻を作るかということが重要だと思います。先日新幹線
の改札口まで見送ってくれた担当者の方が、私達がホームに行くためエスカレーター
に乗り、姿が見えなくなるまで見送ってくれました。同じ見送りでもこのようにされ
ると、非常にその人に対して、余韻が残るものです。

一方、夫婦とパートさん一人でやっている寿司店でお酒を4人で飲みました。そこ
の奥さんは笑顔で接客し、感じが良い印象を受けました。私達の話が盛り上がってし
まい、時間も経つのを忘れていました。気がつくとお客様は他にもう1組のグループ
のみ。しばらくしてそのグループも帰りました。戸を開けたまま出て行きましたが、
その奥さんは戸を閉めません。

一人が、「寒いなぁ」といっても知らん顔。そして、テーブルの料理が残っている
皿をどんどん片付けます。だいぶ刺身が残ってる皿まで片付けようとするので、「ま
だ残っている」と言うとやめます。結局早く帰れということなのでしょう。「閉店は
何時ですか」と聞くと、「10時です」との答え。丁度10時15分でした。そこで、「あ、
ごめん。気がつかないで」と早々に帰ってきました。

 外からの寒い冷気や、雑に皿を片付ける行為で閉店時間が過ぎていることを、何気
なく知らせようとしたのでしょうが、あのような無言の対応をされると嫌がらせに感
じます。きちっとした言葉で「閉店ですので、ご協力をお願いします。」と言われた
方が、お寿司を食べ、お酒を飲んだ楽しさの余韻が残ったでしょう。最後の対応は、
私達に、もう行きたくないなという気分にさせる悪い余韻を与えてくれました。

皆さんはいかがですか。



第102号 2005/1/2      

新年明けましておめでとうございます。
皆さんにとって、今年もより良い年になることを祈っています。

暮も押し迫ったある日、通りかかったかばん店でバックを見ました。気に入った型
のバッグが見つかりましたが、二つしかありません。ひとつは、新しいのですが、ち
ょっと汚れがあるように見えます。もうひとつはだいぶ陳列しているようで、色違い
のように感じました。

そこで近くで椅子に登って棚の上を拭き掃除していた店員さんを呼びました。
「はい」と返事はしますが、なかなか来ません。すぐ来ないので彼女に目をやると、
仕事を途中で止めないで、棚を全部拭き終わってから、笑顔もなく、面倒くさそうに
やってきたのです。

それだけでいやな気分になりましたが、気を取り直して
「これと同じ型は在庫にないの。これちょっと汚れがあるんだけど」
すると、彼女はバッグをちょっとさわって
「同じのは在庫にないんですよ」
そこで、古く見えたバックを指差して
「こっちは、同じ型だけど同じ色でないよね?」
「いや同じですけど。光線の加減で違った色のみえるんでしょう」
「そうなか、違って見えるけど」
「同じですよ」手にとって光線の加減で色が違って見えることを証明しようとする工夫も
なく、そう言うだけでその場を離れようとしました。

そこで今度は汚れがあるのを示して
「この汚れは消えるの」
「はい、消しゴムで消えます」ただそう言うだけで奥に下がってしまいました。
バッグは気に入っていましたが、なにか気分よくないので結局買わないで帰ってきました。

忙しくやることが多かったため、このような対応になったのかもしれません。でも、
接客者の一つ一つの行為が、お客様に対し、親身になって一緒に希望のものを見つけ
ているように思われなければ、そしてその行為が事例のように何度もされると買うつ
もりであったその気持ちも萎えてしまいます。

忙しい時ほど油断大敵です。皆さんはいかがですか。



第103号 2005/1/16      

庭の手入れをして切った枝葉が多く残っていました。ごみの収集日に出すには多す
ぎるので、まとめてバンタイプの車に詰め込んで、直接清掃場に持って行きました。

入口で所定の場所に持って行くように指示をされ、そこでおろしていると、係の男
性が出てきました。ジャンバーを着てポケットに手を突っ込んだままです。「こんに
ちは」とこちらから挨拶をしても無言です。おろしている枝葉を見ながら、「ビニー
ルは」と突然えらそうに言います。ビニール袋などが混じって入っていると肥料とし
て再利用できないので神経質になっています。「注意してもってきましたから、ない
と思いますよ」と答えると、枝葉をひっくり返して2センチほどのビニールの紐の切
れ端を見つけて「あるじゃないか。」「たまたま入ったんでしょ。すみませんね。注
意してるんですけども、もうないですよ。」他の草木をひっくり返しながら見せて分
からせました。それを確認してポケットに手を突っ込んだまま無言でうなずきました。

なんでこんな高圧的な態度をとるのでしょう。ゴミを捨てさせてやってる、そんな
態度に感じます。役所の対応は最近とても感じが良くなっていると言われています。
ところが役所の関連の施設では、まだまだサービスに対する考え方が浸透していない
ようです。

管理する立場になると、自分は管理するから偉いと勘違いしてこんな対応になるの
でしょうか。そのような対応をされると、やはりカチンと来て気分が良くないですか
ら、今度利用するときはわざと意地悪にビニールを入れてやろうかとさえ思ってしま
います。もしこうした担当の人がサービス意識を持って対応を考えれば、施設を利用
する人も反感を持たず気分よく利用できます。そうなれば管理する担当者も楽でしょ
うに。

がむしゃらに管理することを考えるより、サービス意識を持って管理されやすい雰
囲気を作るほうが自分の仕事もやりやすいでしょう。

皆さんはいかがですか。



第104号 2005/1/30 
     
先日感じがいい接客者が居るからと友人にあるラーメン屋さんに連れて行かれま
した。中年の女性でしたが、通るはっきりした声で気持ちよく挨拶をして、笑顔でて
きぱき動いており、とても好感が持てました。夜9時ごろでしたが、お客さんも多く、
次から次に出来るラーメンをテーブルやカウンターのお客さんに配っています。観察
してみると、その人なりの一つのパターンがあり、そのパターンにお客さんがうまく
動かされているように感じました。

お客さんは、ラーメンを待っている人、水を求める人、注文をする人、レジで会計
をする人の4通りです。その中で、ラーメンを運ぶことを中心に、要領よくその仕事
を配分して、気分良くお客さんに、待ってもらっているように感じました。例えば「水
ください」という声があったとします。大きな声で「はい」と返事をして、まず提供
カウンターに出てきたラーメンを二つ配ります。そして「お待たせしてすいませんね
ぇ」と、はっきりした声で言葉をかけて水を持って行きます。同様に、レジ前にお客
さんが来ても「ありがとうございます。ただ今伺います。」と言って、ラーメンを一
つ持っていき、レジの場所に行き、「お待たせしましたありがとうございます。」と
笑顔で挨拶します。水、会計、注文などラーメンを運ぶ以外の仕事は、連続してやら
ずに必ずラーメンを運ぶ仕事を中にいれます。待っている方も、水を注文しても、長
く待たされるわけでなく、元気な声で「すみませんね」などと言われると、不満は残
りません。

そのパターンを見ていると、あのラーメンを運んだらこちらに来るなと想像がつき、
嫌みなくその流れを受け入れてしまいます。結局、接客者が考えた仕事の流れに、お
客さんが、気分よく乗せられてしまっているように感じます。きっと、接客者の経験
から、お客さんが気分良く待ってくれるぎりぎりの時間を配慮したパターンを作り上
げたのでしょう。接客と言うのは、受動的な対応でなく、能動的な対応を意識し実行
し、お客様が気分良く受け入れた時に、評価があがるのではないでしょうか。

皆さんはいかがですか。



第105号 2005/2/13     

先日お昼に創作料理の店に3人でランチを食べに入りました。ちょうど午後一時ご
ろで、まだお客様さんがいっぱいでした。「いらっしゃいませ」ピンクのTシャツを
着た男性接客者が声をかけ、他の接客者に「早くお客様をご案内して」と言います。
その間に店を出るお客様に「ありがとうございました。お待たせしてごめんなさいね、
またね」「ありがとうございました。狭くてごめんなさいね」高く大きな声。独特の
口調、そしてよく通る声、すべてのお客様に言葉をかけています。唖然としました。
その声としぐさを見てびっくり。おかまさんなのです。

他に通常のユニフォームを着た女性接客者が2名、一生懸命仕事をしています。食
事をしていると今度は隣のテーブルに、派手なマンガに出てくるようなお姫様スタイ
ル、いわゆるコスプレ系の女性接客者が料理を持って来ました。またびっくりです。

このような変わった接客者を見ていて、この店夜はどんな接客になるんだろう、今
度夜来ようか、と連れの人たちと話していました。帰りに店のパンフをもらいました
ら、「落ち着いた雰囲気の中、季節感あふれる料理でおもてなし」と書いてありまし
たが、あのような昼の雰囲気は確実に店のコンセプトとマッチしていません。

もしかしたら、昼だけ人手不足で手伝っているのかもしれませんが、でもそのため
昼に感じた雰囲気と思って夜に来店するお客様もいるでしょう。落ち着いた雰囲気の
中の料理ではお客様の期待が大きく違ってしまいます。固定客の確保もままならない
でしょう。昼も夜も店のコンセプトを意識して対応することが重要ですね。

皆さんはいかがですか。



第106号 2005/2/27      

私の友人が、ある大型店の化粧品売り場でいつも使っているメーカーの化粧品を買
おうとしましたが、ありません。そこで尋ねると、今切らしていて発注しますから、3
日後にはあるとの話。次の週に行って棚を見たらありませんでした。そこでメーカー
の派遣店員に事情を話しました。その店員は一緒に棚を確認して、注文表を確認しま
したが、「すみません、注文しておきます。入りましたら電話しますから。私はNと
申します。私は臨時なのでいつもはAがおります。申し訳ありません。」と丁寧に詫
びて見送ってくれました。

翌日にそのAさんから電話あり、自分の名前を名乗った後に
「棚の奥に箱に入って置いてあったのですが、分かりませんでしたか」
「えー〇〇(化粧品のブランド名)ですよ」
「はい」
「ローションなどの隣ですか」
「はい、その奥に箱に入ったのがあるんです。」
「あそこは化粧ビンが箱に入らないで置かれてるから、気がつかなかったけど」
「見ればすぐ分かります」
「そう、ごめんなさいね、今日はいけないけどそのうち行きます」
「お願いします」
電話を切った後、あの時店員のNさんも一緒に棚を確認してもなかったのに、いかに
も見つけ方が悪いと言われているようで不満に思ったそうです。

きっと商品がたまたま見にくい位置に置かれていたのかもしれません。お客様に商
品がないと言われ、またNさんも一緒に確認したことを聞いていなかったため、短絡
的にお客様の見つけ方が悪いと考え、不満をぶつけたのでしょう。でもどんな場合で
も不満を直接お客様にぶつけたらいい結果にはなりません。コトバの使い方を工夫し
ないと恐いですね。

皆さんはいかがですか。



第107号 2005/3/13      

私の知り合いは、お年寄りばかりのクラブに入っていて毎年旅行に行くそうです。
少し前に伊豆に行ったのですが、今回の旅行の添乗員さんはまだ若い男性で、気が利
かなかったようでした。

今までの添乗員は、お客さんが年配者ということで、歩くときは「足元に気をつけ
てください」とコトバをかけ、何事にも事細かく神経を使ってくれました。ところが
今年の添乗員さん、歩く時も何も言わないで、旗を持って、自分のペースでどんどん
歩いて行きます。後から、お年寄りが、杖をつきながら、フーハー言いながら一生懸
命ついてゆきます。

黙っていようと思いましたが、あまりの配慮のなさに「速いわよ。お年寄りが多い
から、もうちょっとゆっくり行きなさいよ」と話したそうです。すると、素直に「は
い」と言って、止まります。これでわかったかなと思ったら、梅を見に行くのに、途
中で、「ここからは皆さんで行ってください。」と、添乗員さんはついてきません。
まるっきり分かっていないのです。その後もすべての対応に配慮が足りなかったそう
です。

帰りに旅行社からのアンケートをつけることになりました。景色も良く、梅も綺麗
に咲いていて、利用した旅館のサービスも素敵でした。5点満点で、5点をつけました。
しかし添乗員に対する項目には、1点にしようかと、周りの人と、話しているうちに、
添乗員さんは若いし将来があるから、みんなで3点にしてあげようよ、と意見がまと
まったそうです。他のグループも同じような評価だったとのことです。アンケートの
評価と実際の評価が大きくかけ離れてしまったのです。

接客者は、アンケートからは自分の評価が最低とは永久にわからないでしょう。お
客様から何か一言あった時に「一言しかないから」と考えて無視すれば、大きな問題
を見逃すかもしれません。一言の不満もどのように自分に活用するかで、成長のため
に大きな財産になるでしょうね。

皆さんはいかがですか。



第108号 2005/3/27      

先日金沢駅前のあるホテルでセミナーが2日間行われました。2日目が始まる前に、
何気なく水差しに目をやってびっくりしました。水差しの横にピンクの花びらとつ
ぼみをつけた桜の小枝が添えてありました。

前日の会場とはフロアが違います。前日はトレイに水差し、グラス、受け皿に置か
れたお絞りが2本あるだけでしたが、その日は、トレイの中にきちんとナプキンがた
たまれていて、その上に水差しにグラス、受け皿に入ったお絞り二本、その横に桜の
小枝が添えてありました。料理の皿にそのような工夫はよく目にしますが、水差しの
トレイにされてるのは、初めての経験でしたので驚きました。しかし何かとても心が
癒された気持ちになりました。

休み時間に水差しの水を代えに来た女性に聞きました。
「この桜、いいですね、すごく気分が癒されるね」
「ありがとうございます」
「昨日の会場とフロアが違うけど、こういう工夫はフロアによって違うの」
「いえ、担当者によります」笑顔で答えてくれました。
多分この女性の工夫でしょうが、女性らしい細やかな配慮だなと感じました。

昼食をはさんで午後になった時、花が換えてありました。今度は鮮やかな橙色の
花が添えてあったのです。水差しの交換に来た女性に再び尋ねました。
「この花きれいだけどなんていう花?」するとポケットから紙を出し読んで、
「アルストメディオです」(きちっと書き留めなかったもので正確かどうかわかりま
せんが、その花の名前をはっきりと教えてくれました)

もし花の名前を聞かれたらすぐ答えられるようにと書いた紙をポケットに忍ばせ
ておいたのでしょう。もし聞かれなかったら無駄になるかもしれないのに。お客様の
先を読む気配りにとても好感が持てました。お客様に何気なく安らぎを与えようと思
う気持ちが、お客様の満足を考える工夫につながっているのでしょう。

皆さんはいかがですか。



第109号 2005/4/10      

私が利用する最寄の駅に隣接して大型量販店がつい最近オープンしました。夜中も
営業するので、いくつかある車の出入口には朝から晩まで多くの交通整理の警備員が
出ています。彼らは歩道を歩く人々に元気に朝は「おはようございます」、夜は「お
疲れ様」などと挨拶します。

最初遭遇したときは、今は警備員さんも通る人皆に挨拶するんだとびっくりしまし
た。でも行き交う人に挨拶する姿は、気持ちがいいもので、活気があって「ふれあい
の街角」という雰囲気を醸し出していました。

私はこのような習慣はつづいて欲しいと思っていますから、笑顔で相手を見て大き
な声で挨拶を返していました。でも通常は皆ほとんど返事を返しませんから、警備の
人も張り合いがないでしょう。私は駅を利用する時間はまちまちですので、返事を返
すのはいつも同じ警備員さんではありません。警備員さんから見ると変なおじさんに
見えるだろうなと思いながら、笑顔で返事を返しています。

オープンして2週間近くになりますが、最近は挨拶をきちっと続けている警備員さ
んの中に、目をそらせて挨拶をしない人も目に付きます。やはり通る人からの反応の
ない挨拶を続けることは難しいのですね。

このままもっと時間がたつと、「ふれあいの街角」から「無言の街角」に戻ってし
まうのかなと心配しています。街中に何かいい雰囲気の試みがあっても、それが定着
するには、われわれ一般の人たちの協力が大切なのでしょう。一方通行でなく双方向
の工夫がなくては難しいのでしょうね。でもそれにめげずに警備員さんにがんばって
挨拶を続けて欲しいなと思っています。

皆さんはいかがですか。



第110号 2005/4/24      

先日夜9時ごろある量販店に入り、翌日に使う贈答品を購入しました。支払い後、
のし紙をつけて欲しいと頼むと、接客者は、のし紙・包装紙の種類、名前などを聞き
その店の連絡シートに記入し、これを少し離れたサービスカウンターに持って行くよ
うに言いました。商品と連絡シートを持って行き、そこの担当者にお願いしました。

 するとその担当者はレシートを見せるように言います。販売の接客者が書いた連絡
シートを持っていったのに、何で再確認するのと思いましたが、見せると2人の接客
者が手分けして仕事をし始めました。一人が包装し、一人がのし紙に名前を印刷しま
す。

包装する接客者の仕事の遅いこと。まだ仕事に慣れていないのでしょうか。開いた
包装紙の上に商品を置き、包みかけるとまた商品の位置をずらします。何度も何度も
同じことをして、なかなか思うように包めないようです。10~15分ほどかかったでし
ょうか、やっと包めました。しかしいつの間にか、のし紙担当の接客者がいません。
そしてのし紙もつけないで、そのままにして接客者は違う仕事をし始めました。

何でそのままなのか、いらいらして「ねーいつまでかかるの」と聞くと、今までコ
トバをかけなかった接客者が、「申し訳ありません、実はのしライターが壊れていま
して4階のギフトコーナーに行って印刷していますので」やっと説明をしました。そ
れからまた10分も待たされたでしょうか。やっと商品を手にすることができました。

何も事情が分からないで待っているといらいらするものです。何か通常と状況が違
うのであれば、お客様に対して状況説明など、こまめにコトバをかけることが必要で
す。そうしないと怒りに変わってしまうかもしれませんね。

皆さんはいかがですか。



第111号 2005/5/8      

自動車免許の所持者は年齢が70歳以上を過ぎると、更新前に高齢者講習を受けな
ければなりません。先日私の父が近くの自動車講習所で受けてきました。

内容は、教材を活用した座学講習と運転適性検査機材を使用した反応動作や実際の
教習所コースを運転する実技講習を半日かけて受けたそうです。帰ってきてニコニコ
しながら、次回の講習も同じ教習所のN(教官の名前)さんに教わろうと、3年先の
講習を話題にして嬉しそうに語っていました。

話を聞いてみると、その教官は、講習の最中は褒めコトバを多く使っていたようで
した。運転適正検査機材を使った講習中には、
「見てください、40歳代の能力ですよ」
「私は今まで高齢者を200人ぐらい担当しましたが、その中で最高クラスです」
「いやー若いですね。そのコツを教えてください」
とコトバをかけ、コースを走っての講習では、
「さすがですね、基本をきちっと抑えていますね」
「信号の対応が適切ですね。ベテランの人はなかなかできないのに」等々。

確かに私の父は安全運転で、私より運転技術が上手いぐらいだと思いますが、話を
聞くと、事細かく認める部分を、褒めるコトバで上手に表現しているように思えまし
た。

おかげで本人はすごく気を良くして、今まで以上に安全運転に気をつけて運転を楽
しんでいます。教官のコトバの表現方法が講習の成果をより以上にあげているように
感じました。理解させ自信を持たせてそれを持続させるためにも、良いと評価したも
のを積極的にコトバに出して伝えることが重要ですね。

皆さんはいかがですか。



第112号 2005/5/22      

先日、茨城県のK市でタクシーに乗りました。運転席と助手席の間に白い物体が3
個置いてありました。
「運転手さん、これは何?」
「これは石鹸ですよ」
「それでさっきから石鹸の匂いがしていたんだ」
「ええ、私は芳香剤がいやでね、匂いがきついでしょ。お客さんの中にもあの匂いが
ダメという人が結構多いんですよ」
「石鹸を活用するというのは考えたね」
「いろいろ試したんですよ。石鹸の中でも、私は〇〇物語(石鹸名)が一番だと思い
ますし、これもそうなんです」
「でも香りはかすかだね」
「いやこれは3ヶ月が限度です、香りもなくなるし、ぼろぼろになります。これもも
う交換時期なんですよ。新品はもっと香りが強いですし、匂いを強くしたければ天
井のシートにこすり付ければいいんですよ。清潔感のある香りですし、しかも汚れ
ませんよ。」

自分のアイデアから芳香剤に代わるものを発見したうれしさ、その効用を得々と話
してくれました。目的地について、タクシーを降りたら、同乗者が「例えばね、この
タクシー利用して、夜遅く家に帰ってきて、どこでお風呂入ってきたのなんて疑われ
ないかなー」「それでも身体に香りがつく程きつくないんじゃないかな」と賛否両論
でした。

アイデアを実行することはすばらしいことですね。この時注意しなければいけない
のは、いいアイデアだと自分で思うと、客観的に再考することが少なくなります。何
かアイデアが出たら、会社や店の仲間だけでなく、家族、友人など自分と立場の違う
人の意見を聞くことが大事で、多角的な意見があればあるほど、工夫していい結果に
なるのでしょうね。

皆さんはいかがですか。



第113号 2005/6/4      

先日、友人と飲むために居酒屋を予約しました。そこは、マグロ専門を売りにして
いて、何度か店の前を通ったことがあり、いつか入ってみたいと思っていました。

前日に電話で予約を入れました。席のことも聞いてみました。
若い女性で、声のトーンも高く感じのいい受け答えでした。
「落ち着いて話したいんだけれど、テーブルと座敷ではどちらがいいですか」
「座敷だと座卓との間が狭いかもしれません。テーブルの奥の席が一番いいのではな
いですか」
「じゃー、テーブルかな。任せますから取っておいてください」
「それでは、一番奥の席のテーブルと座敷をとっておきますので、いらっしゃったら
選んでいただけますか」
「いいの?」
「はい、かまいません」
わざわざ2卓分を用意してくれるなんて、なんて親切なんだろうと思い、そのコト
バにすっかり喜んでいました。

翌日、昼に電話が入り「本日、グループの宴会が入り、座敷が取れなくなりました
が、一番いいテーブルは用意しておきます」とのことでした。2卓分も用意できない
のが普通だし、しょうがないと納得しました。

約束の時間に行くと、その女性が出迎え、一番奥の席はさっきまで取っておいたの
ですが、席が狭いのでお客様を入れました。奥から2番目をお取してます。でもやは
り座敷に近いので声が響くと思いますから、今空いたばかりですがこちらでどうです
かと、入口のそばを勧めました。

結局その入口そばで飲むことにしましたが、がっかりしました。前日から電話で約
束していたこととかなり違うのです。たまたまそのような結果になったのかもしれま
せんが、客が来て座る席さえ用意すればいいと考えているのではと疑いたくなるぐら
いです。対応は気さくな女性接客者でしたが、素直に評価できませんでした。約束は
大事ですね。小さな約束でも守られないと、第一印象に大きく影響します。

皆さんはいかがですか。



第114号 2005/6/18

たまたま休日でくつろいでいるところに、年配の女性から営業の電話がかかって
きました。

「もしもし、いま畳の表替えなど安くなっていますがどうですか」
「えっ、どんな御用ですか」
「〇〇屋という畳屋なんですが、畳はありますか」
「ああ、畳屋さんですか。はい、畳は多いですよ。お店はどこにあるのですか」
「はい××ですから、車ですぐですから」
「ちょっと距離はあるね。ただ残念ですね、ちょ-どやったばかりなんですよ」
「いつ?」
「3ヶ月前なんですよ」
「一枚残ってませんか」
「全部やったからね」
「あっそ-」
「又今度お願いしますね」
「はい」

おそらく、畳店のおかみさんかなという感じに思えました。得意先の新規開拓を
狙って営業活動をしているのでしょう。ただ、電話を受けた印象は、あいさつがき
ちっとできない、敬語を使えない、語尾までしっかり話さない、など非常になれな
れしくて友達に話している雰囲気なのです。どちらが営業しているのか分からない
ぐらいです。例え、仕事があっても頼みたいという気にさせない対応でした。

近所の顔見知りのお客さんでしたら、なれなれしい雰囲気でも親しさを感じ、
まだ許されるかもしれませんが、見ず知らずのお客さんのところへ電話するにはま
ずいでしょう。商店が積極的に営業活動をすることは、すばらしいことだと思います。
しかし、まずお客様への接する時の最低限のマナーを学んでから行動に移さないと
効果が伴わないのではないでしょうか。

自店にも多くの営業の電話はかかってくると思います。その時の好感のもたれる対
応を記録し、まず真似から始めて、店の営業スタイルに生かせば簡単に基本はマスタ
ーできるのではないでしょうか。

皆さんはいかがですか。



第115号 2005/7/3  

その晩泊まる予定の北海道のある航空会社系のホテルから電話がありました。
「荷物が届いておりますが、宿泊予定の4名全員が〇〇トラベルよりキャンセルされ
ていますが」
すぐ今回予約したセミナーを行う会社の人に連絡すると、びっくりし確認すると大丈
夫とのことでした。

なぜこのような事になったのか事情を聞くと、当初宿泊だけコンピューター(CP)
で予約したそうです。その後セミナー会場の予約は直接電話連絡しました。その時ホ
テルの会場担当者から宿泊もこちらで取りますというので、宿泊者4名分の名前を伝
えてお願いし、前に予約した分は20日前にCPでキャンセルしたそうです。20日前の
キャンセル情報のため今回の混乱があったようです。そこでチェックインしたときに、
フロントの年配の男性に尋ねました。

「今朝宿泊のキャンセルを知らせる電話があって、慌てたんだけど、電話する前に宿
泊客の名簿を確認すればそんな電話しなくても良かったんじゃないの。また20日前の
キャンセル情報はそんなに長く残しておくの。かえって今回のように混乱するんじゃ
ないの」
「申し訳ありません。電話とCPからの予約、どちらも〇〇様他4名と予約が入ってい
たものでお名前が分からず、ご本人に直接連絡すればはっきりしますのでお電話いた
しました」
予約時の状況を詳細に聞こうとせず、「電話とCPでの予約は、どちらも〇〇様以下4
名としか聞いていないので分からなかった」と言い切っていました。

本気になって原因を調べようとせず、ニコニコ笑いながら対応する姿を見て、不信
感を持ち、これ以上話すのは止めました。別にクレームとして言ったのではなく、ど
のようなシステムになっているのか、その事情を参考までに聞こうとしたのですが、
とにかくその場で何とか適当な理由でごまかせばよいという姿勢に思えました。翌日
の夕方まで滞在するのですから、少し時間がかかっても、正確な状況を調べて教えて
もらえたらホテルに対して信用度が増したのに。

小さな出来事も、必ず原因追求すれば、仕事の改善に役立つのに、その場だけを繕
うやり方では何の改善もないでしょうね。

皆さんはいかがですか。



第116号 2005/7/17  

先日仙台に行った折、お気に入りの牛タン店に寄りました。丁度午後6時前、お
客さんが入り始める頃です。たまたま対応したのが店長で、注文時に、商品の勧め
方や説明がしっかりしていて、好感が持てました。

私たちは生ビールと牛タン、その他料理を楽しみながら会話をしていると、店に
電話がかかり「はい、〇〇本店です。何名さまですか」女性接客者の電話に出る声
です。
そのうち「なんだ、店長ですか。びっくりした」の声。
店長の「それでいいんだよ、そうやっていつも出ればいいからね」と褒める声。
「はい、わかりました」
電話に近かったので、店長と若い接客者のやり取りが聞こえました。まだ忙しくな
る前なので、実際の電話応対を試したのでしょう。
 
通りかかったその女性接客者に聞いてみると、いつもあのように仕事をしながら
教えてもらうと嬉しそうに答えてくれました。彼女は高校3年生のアルバイトで、
楽しそうに接客の仕事をしていました。上から命ずるだけでなく、教え方を工夫し
ているようです。

今年は楽天イーグルスも話題になっていますが、お客さんの中には野球帰りの人
も多く、野球が話題になることもあるため、野球のルールも教えてもらったんです
よと一般知識の吸収も面白いようです。31歳の店長に対して「うーんと歳が離れて
いるから何でも知っていて教えてくれるんですよ」と言うぐらい確固たる信頼関係
が築かれているようです。指導の仕方で仕事に対してどんどん興味を持たせている
ように感じました。

皆さんはいかがですか。



第117号 2005/7/31

先日大型の家具店に行きました。2階は応接セット、キッチン用品が展示され
ています。上がってゆくと、奥から「いらっしゃいませ」と男性の響きのある大
きな声が聞こえ、とてもいい声で印象に残りました。キッチンチェアを探してい
ましたら、その年配の店員さんが寄ってきて説明をしてくれたのです。最近の売
れ筋情報、材質まで細かに分かりやすく教えてくれます。また椅子のポイントは
すわり心地だからと、いくつかを選んで座らせてくれました。あまりに対応がう
まいので家具関係のベテランかと尋ねると、元は違う仕事でこの仕事は最近就い
たとのことです。結局その店員さんの説明上手な説得力で予算をはるかにオーバ
ーして椅子を4脚注文しました。

後日配達してもらうので注文カウンターで、用紙に名前、住所、電話番号を書
きました。次にその用紙を見てその店員さんがCPに打ち込みます。さっきのてき
ぱきとした対応と反対にすごく遅いのです。一本指でキーに打ち込みます。ただ
一生懸命速くしようという雰囲気は伝わってきますが、動作がそれに追いつきま
せん。それを見て、平気かな、間違いないかなと心配になりました。打ち込み終
わると、控えの用紙をプリントアウトして渡し、「配達当日お電話します。あり
がとうございました」と大きな声で挨拶しました。

「お願いします」と答えてその場を後にしましたが、どうも心配でその控えを
見ると案の定、電話番号の転記ミスです。これでは配達当日電話がつながりませ
んから、戻ってその点を指摘しました。店員さんは恐縮し修正したものをくれま
したが、店員さんへの評価は下がりました。

人は自分の不得意な部分は、とにかく速くすることのみを考えてしまいます。
この場合も、例え時間がかかっても転記の確認作業を確実にすれば、打ち込み時
間は遅くても、その前の対応のすばらしさで、やはり年配者は頼りになると思っ
たでしょう。でも苦手の部分を速くしようとあせって、大事な確認作業を忘れて
しまったために、対応全体の評価を落とす結果になったのです。

自分の不得意な部分を行う時は、どうしてもスピードを意識してしまいますが、
確認作業を心がけないとうっかりミスが起き、得意な部分の印象も残らなくなっ
てしまいますね。

皆さんはいかがですか。



第118号 2005/8/14  

お盆の時期、花屋さんは大忙しで、たくさんのお客様がいました。自宅の仏壇
に上げるための花束を作ってもらいました。一人の接客者が花を選び、百合の花
も入れてきれいにまとめてくれ、包装紙でその花の周りを包み、茎をこちらに向
けてテーブルに置きました。その間に他の接客者に支払いを済ましおきました。
その時、花束にした接客者が何かまだ花びらを触っているのが見えました。

 会計後、接客者にお願いしました。
「咲いてる百合のおしべの上の部分をとってくれますか」
「はい、もう取りました。」
「えっ、取ったの。ありがとう」
お願いする前に取っていたのです。先程何か花びらを触っていると思った行為が
おしべを取っていたのです。
その時接客者同士で「おしべがあると床や服が汚れるから」「そうよね」
と話していました。

でもちょっと待ってください。了解を得ずにおしべを取ったことをこの接客者
はなんとも思っていないのです。今回は自宅に飾る花ですから、おしべを取って
くれたのは気が利く行為に思えます。でも贈答品として使うとしたら困ります。
おしべのない花は花の価値が下がってしまいます。そのような花は贈り物として
使えません。

最近は百合のおしべは落ちやすく汚れるということから、最初から取ってもら
うお客様が多いので、この接客者は気を利かしたのでしょう。でも人によっては
おしべをとって欲しくない人もいるでしょう。

お客様に行う行為はどんな些細なことでも、必ず了解を取る、聞く習慣を徹底
することが重要です。そうでないと気を利かしたつもりでも、クレームになるか
もしれません。お客様のためにと思う行為が、お客様を怒らせる行為になるかも
知れませんから。

皆さんはいかがですか。



第119号 2005/8/28  

夏の時期は割と時間が取れるので、体調のチェックを目的に、かかりつけの内
科、歯科、眼科、耳鼻咽喉科など医療施設で健康診断をすることを習慣にしてい
ます。待ち時間が多いもので、その間に受付でのやり取りを観察していると面白
い光景を目撃しました。

ある内科の受付で、ここでは来院のたびに受付カードに目的を記入します。そ
れを書かない男性の患者さんに、記入をお願いすると、「3日前に来た時は書か
なかったのに」と声を荒げて文句を言っていました。すると、より笑顔になって
「すみませんね、前の時は保険書を出していらしたので私が書いていたんです。
ごめんなさい。書いてもらえますか」とやさしくお願いしていました。すると患
者さんは表情が笑顔に変わり「あーごめんなさい、毎回書くんだね」といって書
き始めました。受付の人の笑顔の表情を意識しコトバも選んで話す対応に、感じ
がいいなと印象に残りました。

歯医者さんでの出来事です。会計を済ました年配の患者さんに、処方箋を渡し
薬局までの道順を説明していました。何度か説明しても、また患者さんが聞いて
きます。すると、「何でわかんないんだろう」というような顔になり、表情がき
つくなって、最後に「とにかく行けば分かりますから」と語調もきつく話を打ち
切っていました。確かにしつこく聞いていましたから、ずいぶん心配性な患者さ
んだなと思いましたが、その対応に冷たい受付だなという印象が残りました。

人は、ある一定の仕事の流れはきちっとこなしても、突発的な状況の時にその
人の傾向が出てしまうようです。突発的な時ほど、自分はお客様と接していると
いう意識を持たないと恐いですね。表情、声に注意を払わないと。その一瞬の対
応で評価されますから。

皆さんはいかがですか。



第120号 2005/9/11  

ホームセンターに散水用のホースを買いに行きました。収納容器付きのホー
スが何種類もありました。お買い得で、使い勝手もよさそうな商品を見つけま
したが、ホースの巻き取りハンドルなど付属部品が見当たらなかったので近く
の接客者に尋ねました。

すると、収納容器の裏側を開けて「ここにあります」と教え簡単に使い方を
説明してくれ、その後に「私もこれ使っているんですよ。軽くて使いやすいで
すよ。それにホースを巻き取る時に、偏らないで自然と均等に巻き取ることが
できて本当に便利です。なかなかこういう優れたものはないですよ」と使った
感想を教えてくれました。

単に使い方だけの説明だけでしたら、どんなに説明が上手くても「ふーん、
そうか」と聞き流していたかもしれませんが、接客者自身が実際にその商品を
使っていて、その感想を話してくれたおかげで、内容にとても説得力がありま
した。生活で使っていてとても便利という言葉で即購入を決めました。その後
実際に使ってみましたが、言われたとおり巻き取りも楽で使いやすく重宝して
います。

お客様に商品、サービスなどを説明する時に、勧める商品を接客者が実際に
体験することは重要です。もちろん使ったことがなくても勧めることはできる
かもしれませんが、使った時に実感した感想をコトバにして伝えたほうがより
説得力が増します。

説明時の効果をより高めるためにも、日ごろから可能な限り皆さんの取り扱
っている商品、サービスを食べたり、使ったり、利用して、その効用・効を言
葉できちっと言えるように整理することが大切です。

皆さんはいかがでしょうか。



第121号 2005/9/25        

先日、名古屋の中部国際空港に行きました。3人連れでちょっと休憩しようと
ある店に入りました。奥を見ると空席が見えます。入口の接客者が案内してくれ
るのかなと思っていると「ご注文は」と尋ねられました。
「えっ、ここで注文言うの」
「はい」
「じゃ、生ビール、刺身の盛り合わせ」
「かしこまりました」
「この店は入る前に注文を聞くの?」
「はい」との答。どうして入口で注文なんだろう?きちんとした和風レストラン
なのに落ち着かないなと思い、
「じゃー、値段によって席が違うんだ。金額が高ければいい席かな」
と冗談半分に言葉をかけたら
「・・・・」
無視されて席に案内されました。

席に着いて見ていると、後から来るお客様には、すべて席に着いてから接客者
がメニューを渡して注文を取っています。なんで我々だけ入口で注文なんだろう、
といい気持がしませんでした。そのうち他の接客者が注文を取りに来ました。
「さっき入口で言ったけど」
「あっそうですか」
「ここは席に座る前に注文とるの」
「混んでいる時間帯はそうしています」

この店は有名でいつも混んでいるそうです。そこでお客様の待ち時間を短縮す
るために混雑時間帯は入口で注文を取るようです。最初に注文を受けた人は、店
内が混んでいるものと思って注文を取ってしまったのでしょう。接客者がちょっ
と動いて振り向けば店内が見え、混んでいるかどうかわかるのです。そのちょっ
とした工夫が接客の評価を大きく変えますね。

皆さんはいかがですか。



第122号 2005/10/9        

今年の6月ごろ転んで膝を打ってしまいました。その後膝に水がたまったよう
に思えましたが、たいして大きくなかったのでほっておいたのです。それが先月
急に大きくなり驚いて近所に外科に行きました。

担当医から「水を抜きましょう」と太い針の注射器で抜かれました。痛い思い
をして、その後膝を圧迫しなくてはと看護婦さんがテープで固定してくれます。
処置をしに来た若い女性の看護師さんを見てびっくり。明るい金髪なのです。栗
毛色ぐらいに染めている看護師さんを見たことはありますが、こんな明るい金髪
に染めている人は初めてです。

一生懸命テープで固定してくれますが、なかなか上手くいきません。その対応
を見て、「この看護師さん、平気なのかな、経験豊富なのかな」と心の中で疑っ
ていました。別に技術と髪の毛の色は関係ないでしょう。人によってはなんとも
思わないのかもしれませんが、私の年代では金髪の看護師さんとなると、きちっ
とした技術があるのかなと心配し、良い印象は残りません。

その後、膝から抜いた液体は検査の結果、炎症などはなかったのですが、また
水がたまってしまいその後も抜きに行きました。

頭髪を染めることはその人を美しくするファッションの手段ですが、まだまだ
業種によっては奇抜に見えすぎてしまい、関係のないその人の技量までも判断さ
れかねません。周りの先輩、同僚を観察し、それよりも奇抜なファッションでし
たら、その印象が強くなりすぎ自分の技量を正当に評価されない可能性がありま
すね。

皆さんはいかがですか。



第123号 2005/10/23        

先日地方空港の売店でみやげ物を探していたときのこと。気に入った商品を何
品かもってレジに行きました。先客に60歳過ぎぐらいの年配の女性がいました。

売店の接客者に何か頼んでいます。その店で買った商品と一緒に他の店で購入
した商品も自宅まで送付してもらうようです。会計終了後も
「さっきの商品忘れないでね」
「はい、わかりました」
「ちゃんと一緒に入れてね」
「はい確かに」
「平気でしょうね」
「はい、平気ですよ」
「ほんとね」
「はい」
何度も何度も同じ事をお願いしていました。傍で聞いていても「しつこく言い
過ぎなんじゃないの」と言いたいぐらいでした。レジが忙しそうなので、違う店
で買った商品を間違いなく送ってもらえるか心配なのでしょう。接客者に何度も
声をかけていました。

見ていて、接客者の対応がすばらしかったのです。手はこまめに動かしながら
包装作業をしていますが、お客様に言葉をかけるときは、必ず笑顔で一瞬ですが
顔を見ます。どのコトバをかけるときも忘れません。答えることが面倒くさそう
に見えないのです。そのせいか、お客様も安心して「お願いね」と言うコトバを
残して帰っていきました。

あれだけしつこくいわれても、いやな顔ひとつしないで笑顔の対応です。さす
がプロだなと思いました。忙しいときのお客様への対応が、接客技術を評価する
ポイントですね。

皆さんはいかがですか。



第124号 2005/11/6        

 私は東京の下町で生まれ育ちました。子供の頃、親に頼まれてお使いに行くと
商店主から「偉いねー、よーし、うんとおまけしよう」と少し多めに入れてもら
えました。「おまけ」のコトバに引かれて一生懸命お手伝いをした記憶がありま
す。それ以来「おまけ」に関して思い入れがあります。

 最近は店で地酒を頼むとグラスの受け皿が枡になっていて、注いだときに枡ま
でこぼす店が多いですね。先日静岡の居酒屋さんで、やはり地酒を頼みました。
注ぐときに「こぼしてね」と頼むと、グラスから精一杯こぼし、枡から表面張力
で酒がこぼれんばかりです。同時に接客者が「当店自慢の表面張力です」といい
ます。仲間一同で拍手して盛り上がりました。おかげで翌日記憶がないぐらい飲
んでしまいました。

 その後千葉で飲んだときです。半年ぶりに行った店で、顔なじみの接客者がや
はり地酒をついでくれました。前はこぼしてくれたのですが、今回は枡に2、3m
mこぼす程度。「あれこんな少ないの、前と違うんだ」というと、「すみません、
原価が高くなるので」「店長に怒られるんで」こんな言い訳をします。店長が変
わったせいでしょうか。次に頼んでも同じです。気分的に酒を頼むのがいやにな
りました。

 酒を飲むときはやはり気分が大きく影響します。1杯当たり原価が上がるかも
しれませんが、お代わりが続けばそのほうが利益が多いでしょう。特に酒飲みに
は「おまけ」が気分を乗せる効果があります。こぼせないなら、受けを枡でなく
小さな皿にすれば、お客様の感じ方が違うでしょう。

 湯島の寿司店で、ヒレ酒を飲みました。追酒を頼んで器にいっぱいに注いでも、
まだ徳利にはお酒が残っています。「おまけ」してもらったようで、とても得し
た気分です。でも考えてみれば、ヒレ酒の器が小さいだけのことですよね。酒飲
みは単純ですね。

皆さんはいかがですか。



第125号 2005/11/20        

先日、栃木県のU市で、たまたま鹿児島料理の店に3人で入りました。当日は
空いていて私達は離れた奥の座敷に座り、他にはテーブル席に1組のお客様がい
ました。

注文を聞きに来たのは、板前見習いの16歳男性です。接客も慣れていないよう
です。言葉使いは「~でございます」と一生懸命敬語を使いますが、料理につい
ては知識がありません。

何か質問すると「お女将さーん」と女将に聞きに行きます。
「鹿児島の料理で、この店のおすすめは何?」「女将さーん」しばらく聞きに行
っていなくなるのです。そして戻ってきて答えます。
「地酒はなにがあるの」「女将さーん」また聞きに行きます。
「これは冷で飲んだほうが美味しいの、熱燗のほうがいいの」「女将さーん」
1、2回聞きに行くのは愛嬌があっていいのですが、何度も何度も聞きに行かれる
といい加減うんざりします。

質問が多いようだと感じたら、何で女将さんが直接来て対応しないのだろう。
いらいらしてきました。おまけに料理の皿数、お酒の注文数も間違えて持ってき
ます。「いいよ、いいよ」と間違いの対応は許しましたが、お客様への対応を見
習いにだけに任せきったお店の考え方には納得いきませんでした。 

一人前でない接客者を教育することは大切です。でも新人の対応に足りない部
分があったら、他の接客者がすぐフォローする体制ができないのなら、お客様に
迷惑がかかります。教育することで、お客様が迷惑したらそれはサービスとは言
えなくなります。

新人を現場で教育するのであれば、すぐフォローできる人がそばにいないとま
ずいですね。

皆さんはいかがですか。



第126号 2005/12/4        

先日地方のK空港での出来事。空港のロビーまで見送ってくれた担当者2人と
計4人で記念写真を撮ることにしました。時間は午後6時過ぎで、お客さんが周
りにいません。すると担当者の一人が「私が取ります」と言ってくれたのですが、
皆で写らなくては記念にならないからと、誰かシャッターを押してくれる人を探
しました。

そこへ2階から警備関係のような制服を着た女性2人が、顔を見合わせ楽しげ
におしゃべりをしながら、のんびりと下りてきました。そこで「すみません、写
真を取ってもらえますか」と声を掛けましたら、笑顔から突然厳しい表情に変わ
り「業務中ですから」と一言残し、今度はすたすた歩いて行きました。

別に不審者を全力で追いかけている途中に並走してお願いしているわけではあ
りません。のんびりおしゃべりして歩いているので、シャッターを押す、ほんの
わずかな時間があるのではと思っただけです。がっかりして、他にいないか探し
ました。いくらお客がいないからと、まさかカウンター内の職員には頼むわけに
は行きません。

そのうちまた制服を着た今度は年配の男性がこちらに歩いてきました。またダ
メかなと思いながら「すみません、写真を取ってもらえますか」と声をかけると、
「もちろんいいですよ」と快諾してくれました。ほっとしたせいか、写った写真
は全員笑顔でした。そしてカメラを返しながら「楽しい思い出を作って帰ってく
ださいね」と声を掛けてくれました。またまたすばらしい余韻が残りました。

お客様が利用する施設に働く人は、どんな職種でもお客様に関わる機会があり
ます。その時の対応で施設全体の評価に影響しますね。業務中でしたらすべてお
客様の意に沿うことはできません。しかし断るにしてもその表情、コトバの工夫
をしなくては誤解を生じるかもしれませんね。

皆さんはいかがですか。



第127号 2005/12/18       

先日、友人に連れられて東京のI駅そばの全国の日本酒が豊富に置かれている
居酒屋に3人で行きました。肴はコースになっていて刺身や肉じゃがなど順に出
てきます。最初に新酒の十四代、白岳仙、三重錦を注文して飲み比べました。「十
四代はフルーティだね、ちょっと甘い感じ」「三重錦は、飲んだ後につんと来る
感じがちょっとね」「それがいいんだよ」など思い思いに3人が自分の好みを言
います。私は日本酒があまりよく分からないのですが、一緒に行った二人はそれ
ぞれ含蓄があり自分の好みがあります。

そのやり取りを聞いていたマスターが、私に「今度は宗玄を飲んでみたら、き
っと好みなのでは」と勧めてくれました。丁度出された肉じゃがを示して「これ
にも合いますよ」と教えてくれました。飲んでみたらすっきり系で美味しかった
んです。肉じゃがを食べながら飲むと、本当に料理と酒がお互いに美味しさを盛
り上げている感じがしました。

肴が刺身になると、宮城県、静岡県の酒は魚に合いますよと、刺身と相性ぴっ
たりの酒を2種勧めてくれます。酔わないようにと一升瓶の仕込み水をグラスに
注いでくれて、水を飲みながら違う酒に挑戦です。その間、マスターの忙しく動
く中での短いコトバの説明に「なるほど」と納得しながら味わいました。次々と
他の珍しい酒を飲み比べ、3人で感想をワイワイ言いながら楽しみました。最後
は香月が飲みやすく、それを続けているうちにすっかり酔っ払いました。上手く、
納得できる説明が酒の美味しさを増し満足度を増幅したのかもしれません。

商品を熟知して、お客様に合う内容をきちっと説明することができた時、お客
様の感じる商品の満足度が何倍にも増やすことができますね。

皆さんはいかがですか。

今年最後の「接客バンザイ」でした。
今年も読んでいただきありがとうございました。
次回は平成18年1月8日を予定しています。
皆様、飲み過ぎに気をつけて良いお年をお迎え下さい。



第128号 2006/1/8        

正月早々お葬式ができてしまい、香典袋を求めて薬局のチェーン店に入りまし
た。入口近くのレジの女性に尋ねました。学生バイトでしょうか、とても若い女
性でした。
「すみません、ご霊前の袋はどこにあります?」
「ご霊前の袋?・・・・」
ご霊前の袋が何なのか、分からないようでした。
隣のレジの若い男性に「ご霊前の袋って?」と尋ねます。
若い男性も分からなかったのでしょう。
「・・・・」無言です。

ご霊前の袋が分からないことに驚いて、何とか説明しようと、
「ほらお葬式に使う袋あるでしょ」と言い換えましたが、
「???」
そこへ丁度年配の社員らしき人が通りかかったので、若い女性は
「ご霊前の袋ですって」とその人に託しました。
その男性はすぐに陳列場所まで連れて行ってくれました。

後で「香典袋ある?」と聞けば分かりやすかったのかなと反省しましたが、
その後この女性は自分が分からなかった「ご霊前の袋」が何か誰かに聞いたでし
ょうか、あるいは確認したでしょうか。もし、分からないままなら同じ対応をす
る可能性がありますね。

接客の中で分からないことがあったら、必ずその日に確認しておくと印象強く
覚えられます。そうした習慣をつけると、知らず知らずに商品知識が増えてきま
すね。

皆さんはいかがですか。



第129号 2006/1/22       

先日の夜、バスに乗る機会がありました。途中のバス停から、酔っ払っている
お客様が乗ってきました。寒い中長時間バスを待っていたのでしょうか、前払い
のお金を払うと運転手さんに言います。
「寒いな、暖房をもっと効かせろよ。早く!」
「暖房はちょうど良い具合にしていますが」
「寒いよ、もっと暖かくしろよ」
「すみませんね、寒い中でバスを待っていのでしょう。すぐ暖かくなりますから」
「暖かくないよ、それに〇〇〇(店名)は気にくわない。まったく勘定が高すぎ
る。俺は鹿児島から来たんだけど、鹿児島はインチキはしない。早く暖かくし
ろ」
「温度は高めになっていますから」
「寒いよな」他のお客様に聞きました
「暑いぐらいですよ」他のお客様が答えました。
「俺がわかんないだけなのか、それじゃ許してやる」納得したみたいで席に座り
ました。
「すみませんね。すぐ暖かくなりますからね」

とてもすばらしいと思いました。何か面白くないことがあった酔っ払いの無理
な注文にも怒らず、冷静にコトバを選んで丁寧に対応していました。さすがだな
と思い、見ていてとても好感が持てました。

お客様の中にはむちゃくちゃな人もいます。そんな時つい、いらいらして感情
的な対応をしてしまう接客者もいますが、いい結果にはなりません。そのような
時にいかに冷静な対応ができるかが、その接客者の評価になりますね。

皆さんはいかがですか。



第130号 2006/2/5        

先日の寒い日、たまたま近くを通りかかったので、予約をしないであんこう鍋
で有名な老舗の店に行きました。店の前には寒い中2組のお客様がコートの襟を
立て、足踏みしながら待っています。今日はいっぱいなのかなと玄関を開けて中
に入りました。3畳ほどの玄関の中に、年配の下足番の男性がいます。
「だいぶ待ちますか」
「40分ぐらい」
「そんなにかかるんだ」
「整理券を取って待ってもらっているから」
「外は寒いからここで待ってはダメ」
「ここはダメ」
「じゃー外で待つの」
「当たり前でしょ」
「40分ぐらい経ってから、来るのでいい?」
「ダメだよ、ずっと待たなければ入れないよ」

取りあえず整理券を受け取って出てきましたが、乱暴な、しかも語調強く怒ら
れているような対応で、いやなら帰れと言われているように感じました。気温摂
氏2度の外に出て、寒さを感じ、また震えながら並んでいるお客様を見たらあん
な対応されて待つなんてばかばかしくなり、その店で食べることをやめました。
私の連れは、対応の荒さに「2度とこない」と怒っていました。

下足番の男性は、接客をきちんと教育されずに自己流の対応をしているのでし
ょう。なんだか「食べさせてあげるから言うことを聞け」と言われているような
気持にすらなります。店内の接客は分かりませんが、最初に会ったこの男性の対
応から、店全体のお客様に対する考え方のように思えてしまいます。そのため「二
度と行かない」と心に決めたお客様を作ってしまったのです。わずかな人数かも
しれませんが、つもり積もれば大人数になります。味だけでなく、接客も一流で
なければ、本当の一流店とは言えないでしょう。店全体が同じ接客の考え方を浸
透させることは重要ですね。

皆さんはいかがですか。



第131号 2006/2/19      

先日ある金融機関の方と話しました。相手は2名でひとりは46歳、もう一人が
20代半ばの方でした。用件が済み雑談になりました。同期入社の人が何人残って
いるかという話になり、上司の同期の方はあまり辞めていないという話でした。
話題が最近の若い社員の話になり、
「最近の若い人は本当に止めますよね、入社2、3年でずいぶんやめますよね。
特に優秀な人間がやめるんですよ。こいつはできると思って期待しているとやめ
ちゃいますからね。あーもったいないなと思いますよ」

そんな話を聞きながら、何気なく若い社員を見たら目が合ってしまいました。
すると先程までほとんど発言をしなかった若い社員が急に話し始めました。
「そうですね、仲間でやめた人を考えると、優秀な人間と共に、仕事についてい
けない、銀行に合わない人間が多いですね。」
「仕事についていけない人間は、一生懸命資格試験をとることに走って、将来の
転職を考えてますよ」懸命に話します。

きっと上司の話から自分は優秀な人間でないと言われているように感じたので
しょうか。上司に目をやると別に話に入る感じではありませんでした。若い社員
はきっと上司の言葉に過剰に反応したのでしょう。上司が何かフォローのコトバ
をかけてやればいいのにと思いました。

どんなに親しい関係でも何気ないコトバで関係が崩れることもあります。この
上司と部下の関係はうまくいっているのかな、と心配になったほどです

特に対外部との話において、そのコミュニケーションの取り方が、自分たちの
評価に影響されます。気をつけないと今回の例のようにうまくいってないのかな
と思われてしまうかもしれません。怖いですね。

皆さんはいかがですか。



第132号 2006 3/5         

先日ビジネス街にあるウナギ屋さんで昼食を3人で取る機会がありました。50
年ほどの歴史があり、近隣のウナギ屋さんの中でも一番美味しいという評判があ
り案内されました。丁度午後1時ごろでしたが、まだまだ年配のビジネスマンで
混んでいました。

うな重にお吸い物、香の物の小皿を出されて脂の乗った美味しいウナギを堪能
しました。食後それぞれがお重の蓋を閉め、お茶を飲みながら雑談をしていまし
たが、接客者がやってきて、お茶を注ぎ足しながら「お下げしてよろしいですか」
と尋ねました。「はいどうぞ」と返事をすると、突然私の食べ終ったお重の蓋を
開けて、お重の底に重ね、中を丸見えにします。そしてお吸い物のお椀と蓋を重
ね、香の物の小皿の上に置き、全体を横にして、お重の中に入れて厨房に下げた
のです。

その動きの荒さにびっくりして、その接客者を見ていると、またやってきて、
同じように他の二人分のお重の蓋を開け、その中に使った椀、小皿を入れて一緒
に下げてゆきました。

食事を美味しく食べた後は、なんとなくその余韻につかりたい気分になります。
お茶を飲みながら、美味しさの余韻につかってお茶を飲んでいるのに、わざわざ
お客様が蓋をした器を、お客様の前で開けて他の器を入れて持ってゆく行為は、
荒々しく、美しくありません。食後の余韻を台無しにしていました。

確かにそのようにした方が、一回に持って行く器の量が多くなるかもしれませ
んが、ちょっとした接客者の動作が余韻を無くし、総体的な味の美味しさの評価
を下げています。ちょっと下げ方を工夫すればいいのにと思いました。

皆さんはいかがですか。



第133号 2006 3/19         

先日、3人で昼食に行こうと思った店が休みでした。ちょうど海外の小物を扱
った店と一緒に行っているレストランがありました。入口には夏は樹木の下で食
事が取れるようにテーブルが2脚置かれ雰囲気を作っています。店内は海外の小
物が装飾されていてしゃれた感じの店です。テーブル席4つのみ。家族で運営し
ているような感じがしました。

娘さんらしき女性が注文を取りに来てランチメニューを注文しました。ドライ
トマトのスパゲッティとデザートとコーヒーまたは紅茶がつきます。私は紅茶が
好きですので、食後に紅茶を注文し、残りの人たちはコーヒーを注文しました。
順に料理が出てきて、スパゲッティを食べた後に、デザートが運ばれてから、そ
このママさんが突然やってきて
「コーヒー全然だめなんですか?うちのコーヒーおいしいのに。」
「紅茶が好きなんで」
「残念ね。おいしいのに。」
きっと自慢のコーヒーなんでしょう。一生懸命コーヒーを勧めてくれました。

その後お茶を飲みながら雑談し店を出ましたが、店を出た後の話題の中心はあ
れだけ執拗に勧めてくれコーヒーです。
「自慢のコーヒーは美味しかった?」
「普通だったけど。特別おいしいかな、どうですか」
「いやー、普通ですよ。それに機械は最新のものでなかったし」
そんな話をしながら、「一人だけ紅茶をポットで出すのが面倒だから、コーヒー
に替えさせようとしたのかな」なんて考えもチラッと浮かびました。結果として
あのママさんの対応でコーヒーの評価が下がってしまったようです。

もしコーヒーの紹介を、注文を取る時に言っていたら、自慢のコーヒーを勧め
てくれたんだなと好意的な面が印象に残ったことでしょう。場面によって表現の
仕方で印象が変わってきますね。

皆さんはいかがですか。



第134号 2006 4/2         

関東地方では桜は今が見ごろです。先日、東京千鳥が淵近辺に行く用事があっ
たので、帰りに2人で寄ってみました。時間は4時近く。平日だというのに大勢
の人にびっくりしました。「平日だというのにどこから人が集まってくるんだろ
う」なんて話ながら歩いている人がいましたから、考える事は誰も同じようです。
やっぱり桜の時期だから一目見ようと考える人が多いのでしょう。

「花より団子」といいますが、やはり花を見るならちょっと一杯という気分に
なります。その日は風が強くて寒く、ビールを飲む気がしません。そこで温かく
なる日本酒のカップと少しのつまみをコンビニで買いました。

「カップ状の温かくなる日本酒あるよね」
「今日は結構出ていて、これだけになっております。」
陳列箇所に連れて行ってくれると、数個残っていました。2個とそのほかつまみ
を選んでレジに持って行きました。

精算した後、袋に入れながら話しかけてきます。
「今日は昨日と違って本当に寒いですね」
「気温の差が激しくて」
「体に応えますよね」
「寒いと温かいものでないと・・・」
「お待たせいたしました。ありがとうございました。楽しんでください」

レジは年配の男性でした。当日の気候が話題の何げない会話でしたが、この店
で買ってよかったなという余韻を感じさせました。当日の気候の変化から、お客
様の行動に同感する内容に移した話の持って行き方に、余計感じの良さが際立っ
たのでしょう。短い会話の中でお客様へ満足感を与える話題は非常に効果があり
ますね。

皆さんはいかがですか。



第135号 2006/4/16       

西日本の瀬戸内海に面している〇市に行ったときです。ここは観光地ではあり
ませんが、せっかくだからと帰りに3時間ほど時間を作って見学することにしま
した。

見学場所を決めるのに一番手っ取り早いのが駅前の観光案内所です。
「半日ほど観光したいんだけど、どこかいいとこありませんか」
「このあたりはたいしたものがないんですよ。これを見てもらえますか」
といいながら、市内の観光パンフをくれました。パンフを読むと元海軍基地跡や
市内を一望できる山などがあり「〇市は見るのに一日では足りない」なんて宣伝
文が書いてあります。

私は海と縁のないところで住んでいますので、海は魅力を感じますから、船に
乗って元海軍の基地跡を見ようと船着場に行きました。
売店の年配の女性に同じように聞きました。
「このあたりでお勧めの場所はある?」
「ここは何もないよ。ねー」丁度宅配便の男性が荷物を取りに来ていましたが、
その人に話しかけます。
「ここは何にもない」その若い男性も同じように言います。
それを聞いて行く前から何かがっかりしました。すべて答えがマイナス思考にな
っているのです。なんだかつまらない街に来たんだなという印象が残りました。

でも私は船から見た瀬戸内海の海に感動しましたし、基地跡も印象深く、感慨
にふけました。確かに有名な観光地からすれば劣るかもしれませんが、それでも
市内ではここが一番、その次がここ、というように、必ずその地域での優劣はあ
るはずです。それを教えてくれたらその街の印象も違ったことでしょう。それが
サービス意識ではないでしょうか。

仕事も同じですよね。皆さんの扱っている商品、サービスで、一番得意なもの、
魅力なものは何ですか。その次は?はっきり言えますか?

皆さんはいかがですか。



第136号 2006/4/30       

先日、急にピザが食べたくなって、よく行くイタリアンレストランに2人で行
きました。その店は石窯でピザを焼くことが売りで、しかもパリッとして美味し
いのでピザが食べたくなると良く行きます。

入店するとたまたまピザフェアを開催していました。全種類のピザをいつもの
価格の半額ぐらいで提供します。そのせいかいつもは年配のお客様も多いのに、
その日は若いお客様がとても多く店内は混み合っていました。

ピザは「ホワイト」と「小エビとバジル」を注文し、その他1品料理を何品か
注文し、ワインを飲みながら談笑していました。いつもと同じものが半額程度と
は銘打っていますが、やはり多少味は落ち、いつもと違ってぱりっとした感じが
ないかなと思っていました。

そこへ突然店長がやってきて、「今日のピザはどうですか。見た感じ窯に置く
時間が足りないように感じるのですが」と尋ねます。「値段を考えればおいしい
よ」と答えると、「いつもと同じピザを提供しなければいけませんので、作った
者に一切れ食べさせてもいいですか」と了解を求め、一切れ持って行きました。
しばらくして「申し訳ありません、調理した者も、窯から早く出しすぎたと言っ
ています」と別に一皿提供してくれました。今度はいつもの美味しいピザでした。

店長は提供した料理をきちっと観察し、変化を見逃さなかったのです。そして、
馴染客の注文品を活用して調理作業のチェック、修正に生かしたのです。
私は、たまたま今日は低価格だからと味は期待していませんでしたが、その行為
から店の姿勢、店長の真摯なサービスの姿勢に好感が持てました。

サービスは予期しないことをされると感動を覚え、余計好感を持ちますね。
皆さんはいかがですか。



第137号 2006/5/14       

土曜日の昼間に、JRのある駅に降りました。土曜日で多くの人が歩いています。
そのお客様に対して明るい大きな声で呼び込みをしている接客者がいました。

駅構内の臨時売店でクッキーを販売していたのです。はっきりした声で、ケー
キの材料、味などを説明していますから、遠くでも目立つのです。聞きながら歩
いていましたが、美味しそうに感じ、どんなクッキーか、近くで見てみようかな
と思いました。すると「まだご賞味いただいていない可哀相なお客様、いかがで
すか」と言っている表現が耳に入りました。その瞬間、「じゃー買ってみようか
な」という気持が消え、通り過ぎました。

この接客者は、おそらく「こんな美味しいクッキーは食べないと損だよ」と言
う意味で言ったのでしょう。買わないと損だよと言うことを逆説的に表現したの
でしょうが、人間関係の出来ていない通りすがりのお客様にそのような表現を使
って、はたしてどのぐらいの人が共鳴するでしょうか。もちろんそのコトバが面
白いと感じる人もいるでしょうが、私のように何か違和感を感じた人もいたでし
ょう。

コトバとは難しいですね。自分の使うコトバが人によってどう感じるか、ちょ
っと考えなければ効果がでないでしょう。特に呼び込みの場合は商品が多くのお
客様に好感を持たれなければならないのですからね。

皆さんはいかがですか。



第138号 2006/5/28       

先日うどんで有名なT市に行きました。T市に行ったときは必ず入るうどん屋
さんがあります。その日も夜遅く店の前を通りました。すると電気が消えていま
す。そばによると、「貸し店舗」の札がかかっていました。閉店していたのです。
びっくりして、店主のことが心配になりました。

その後地元の人に聞いたり、有名店でしたからインターネットの掲示板で調べ
ると、昨年末に店を閉め、店主は腱鞘炎でうどんを打つのはきついらしいけど元
気だとのこと、ほっとしました。

5年程前に地元の仕事先の方に教えてもらってから、T市に行ったら必ず立ち寄
るうどん屋さんなのです。店は店主と他1名でやっていて、夕方早く行くと、う
どんを打っている姿を目にするときもありました。何回も行っていますから、顔
を覚えていて、入店するとニコッと笑顔で迎えてくれ、カウンターに座り話をし
ます。

別に活気があって元気がいいという雰囲気でなく、おとなしい感じなのですが、
言葉使いも丁寧で、話す話題には真摯に対応してくれました。もちろんうどんも
美味しいのですが、店主の人柄にも魅かれ数あるうどん屋さんの中で毎回その店
だけに行ってました。どうしても夕食前あるいは、酒を飲んだ後に寄っていたの
で、T市から帰ると必ず体重が増えていました。

その店がやめたことはすごくショックでした。T市の魅力がひとつなくなった
気分です。それぐらい好きな店でした。店の魅力は、商品の魅力と接客者の魅力、
人の魅力が相乗効果を及ぼし絶対的なものになるのですね。

ちょっと思い描いてください。あなたのファンであるお客様が何人ぐらいいま
すか。多いと素敵ですね。

皆さんはいかがですか。



第139号 2006/6/11       

 私は日本の城の美しさが好きです。また天守閣から見る景色のすばらしさはど
この城も満足させてくれます。現存している城から再建されている城まで、仕事
で近くに行く機会があれば、時間を見つけて登るようにしています。

先日も千葉県のある城に何人かで登りました。そこはその地域の資料館になっ
ていてコンクリートで再建された城です。上階に当時の地域の街を1/500で再現
した模型がありました。城の様子、住民の住まい、商業地区、寺などが配置され
ています。皆で話しながら見ていると家来が何人ぐらいいて、住居はどこか疑問
が生じました。帰りに入口で聞こうということになりました。

年配の男性に聞いてみました。
「ここは家来は何人ぐらいいたのですか」
「さーここの殿様は時代によって石高が違いますから。最初は10万石。その後5
万石、・・・・と替わっているんですよ」
「じゃー、10万石の時は何人ぐらいいたのですか」
「私はそういうことは知りません」

知らないのなら最初から言えばいいのに。いろいろ話すので答えを期待してし
まいました。確かに仕事と関係ないことを聞かれても答えられないことが多いで
しょう。でも知らなくて当たり前という態度にサービス意識がないなと感じまし
た。

来城したお客様はいろいろ質問することもあるでしょう。それらの質問はおそ
らく似通ってるのではないかと思います。もし質問されたことをメモにしておい
て、後で関係機関に確認する習慣をつければ、知らないうちに情報が集まり答え
られるのではないでしょうか。答えられない質問に対してはどこで調べれば分か
るのかの情報を知らせることも出来るでしょう。

自分の仕事の役割以外であっても、接するお客様の要望を出来る限り満たすよ
うに意識し努力するのが、これからの接客者に求められるサービス感覚ではない
でしょうか。

皆さんはいかがですか。



第140号 2006/6/25       

今日はトイレの話です。先日清掃中の看板が入口に掲げてあったある駅のトイ
レを利用しました。中に入って、清掃している年配の男性に声をかけました。
「使っていいですか」「どうぞ」快く返事をしてくれました。

他にお客さんは誰もいません。小便器の前に立つと、今まで個室を掃除してい
た男性は、小便器の掃除にかかりました。私は一番端を利用していたのですが、
その男性は反対側の小便器の清掃にかかります。掃除の仕方もひとつの小便器を
上から下まですべての箇所を掃除するのでなく、まずすべての小便器の上部の平
らな部分の埃をハンディダスターではたき下ろします。端から順にやってくるの
です。その男性は右利きらしく、右手で右から左にはたき下ろしますから、埃を
便器の左側に落としているように感じます。

すごいスピードで順番にこちらに近づいてきます。いやだなーと思いました。
もし隣をやられたら、隣の小便器の上部の見えない埃をかけられるような気がし
ます。何も上部だけやらないで、1個1個完全に清掃してから隣に移ればいいも
のを。そんなことを考えているうちに、ついに隣にやってきました。私はまだ終
っていません。

 参ったなーと思ったその時です。突然その男性は、ハンディダスターを左手に
持ち替え、左から右へはたき下ろしたのです。こちらに見えない埃は飛んできま
せん。最悪の状態を想像していたのに、その心配がまったくなくなったせいか、
男性の行為に私はなぜか小さな感動を覚えました。

この年配の男性は自分の行為が周りの利用者にどう感じるかを意識したのでし
ょう。ですから不快にならないように、動きを反対にしたのでしょう。ちょっと
した心配りです。おかげでよりすっきりした気分でトイレを後にしました。

 仕事をするときは、同じ行為をしてもその行為によってお客様がどう感じるか、
瞬時に判断して対応する。これがサービスの本質なんでしょうね。

皆さんはいかがですか。



第141号 2006/7/9          

先日、あるコンサートに行ってきました。かつて一世を風靡した人です。見て
いて、昔感じたエキサイティングさがなく、何か違和感を感じがっかりしました。
演奏にしても歌にしても、アンコールまですべてが予定通りのパターンをただこ
なしてるだけという感じがしたのです。

もちろんアンコールにしても決まった構成はあるでしょうが、目の前にいる観
客に対する思いが感じられず、淡々と決めた流れをこなしているだけの感じがし
たのです。かえって弟子といわれる人の演奏のほうが心に響く感じがしました。

本人は一生懸命やっていたのかもしれません。でも観客と一体となった心の通
じ合い、音楽にのめり込んで演奏するスリリングさをまるで感じなかったのです。
何か事情があったのかもしれません。でも恐いですね、仕事はそれを受ける人間
が判断するのですから。

帰りにある居酒屋で酒を飲みながらそんな話をしているとたまたま隣の席のお
客様が帰ったので、接客者が片付けに来ました。食器を下げた後で、テーブルに
洗剤を拭きかけ、ダスターで拭いていましたが四角いテーブルを丸く拭いていま
した。ただ決められた事をするだけという動作で・・・。

確かに同じ仕事をしていると、慣れてきて流れだけの作業になりがちですが、
何のための作業なのか、そこに気持ちを入れないと効果はでないでしょうね。

皆さんはいかがですか。



第142号 2006/7/23          

私の家には柿の木があり、毎年甘く美味しい実が多くなります。ただ実を取る
のが大変です。梯子でよじ登り取るのですが、柿の木は折れやすいのであまり細
い枝には乗れません。そこで毎年取りきれずに実が多く残ってしまいます。

あるとき農家の人とそんな話をしていたら、高枝バサミは便利で、柿を取って
も落とさずにきれいに取れるという話を聞きました。本当に取れるのか半信半疑
なのですが、今年は用意しようと考えていた矢先に、ちょうど柿の実を取ってい
る映像が流れたTVCMを目にしました。早速電話で申し込みました。

担当の女性は、とても聞きにくい話し方でした。電話番号を伝えます。
「04・-・・・-・・・」
「繰り返します。テン、ヨン、・・・」と聞こえるのです。
「ちょっと聞き取れないけど」
「テンヨン・・」
「ゼロヨンですよ」
「はいテンヨン・・・」
「最初ゼロだけど」
「はいテン、ヨン・・・」
初めて気がつきました。「零、4・・・」と言ってることが。しかも聞きにくいた
めそのように聞こえず、何言ってるんだろうと思えたのです。
「良く聞こえないけど、分かりますね」
「はい」

その後、住所の確認などをしても、すごく聞きにくいのです。何とか申し込み
が済んで最後に、担当者が名前を名乗りました。
「私は担当の・・・・と申します」
「えっ、聞き取れないんだけど」
「・・・」
また分かりません。でも面倒になって、「お願いします」といって電話を切りま
した。

おそらく担当者はヘッドセットマイクを使っていて、口を近づけすぎて、しか
も小さな声でモゴモゴと話すので明瞭に聞こえてこなかったのでしょう。それと
同時に繰り返すとき、「ゼロ」を「零」と違う表現に言い換え、しかもそれが最
初の音だったため、私も理解してもらえないと不安に感じ過剰に反応したのかも
しれません。

電話は相手が見えず声だけで伝達する手段ですから、より慎重に正確に伝える
事を意識しなければなりません。聞き返されたときに、なぜ聞き返されたか、そ
の原因を瞬時に判断して、工夫対応しなければ、話すことだけで信用低下、不快
感を招く恐れがありますね。

皆さんはいかがですか。



第143号 2006/8/6

私の知り合いがマンションの6階の端の部屋に住んでいます。丁度隣のビルの
1階にあるハンバーガーショップの店内改装工事が始まりました。その工事の音
が部屋まで響いてきます。しかも夜中の2時過ぎぐらいまでやっているので、眠
れません。1日で終らず、次の日も、またその次の日も同じようにうるさくて眠
れません。

あくる日その会社のお客様相談室に電話したそうです。女性の担当者が出て、
対応してくれました。苦情の内容を話すと、
「大きな金属音がするんですよ」
「申し訳ありません、金属音ですか」
「2時過ぎまでやっているんでね」
「えっ、2時過ぎまでなんですか?申し訳ありません」
話し手のコトバを繰り返す相づちによって、聞く姿勢を演出する基本的な対応
でしたが、その担当者の表現技術のすばらしさから、「音が大きくて眠れなくて
大変でしたね」といたわる気持ちが伝わって来たそうです。

そのせいで、怒りも収まり落ち着いて話し合いが進みました。午後10時以降は
大きな音がしないように、その店の店長と工事責任者に伝えて対応すると約束し
てくれました。女性担当者の話し方から、その後の対応もしっかりやってくれる
だろうと安心したそうです。

それから2日間は静かだったのですが、3日目はやはり、午前2時過ぎまで騒
音で眠れませんでした。翌日に前と同じ担当者に電話したそうです。すると「店
長と工事担当者に申し伝えたのですが」と、今度はちょっと早口で、おどおどし
ているような話しぶりで対応するのです。いかにも「関係者に話したのに何で
きちっと対応しないのだろう」という気持ちが出ていて、その担当者の一生懸命
な感じに共感を持てたそうです。その後すぐ店長から事情説明の電話がありまし
た。

どんなに相手から心配するコトバをかけられても、そのコトバに気持ちが入っ
ていないなと感じると心には響きませんね。多くのコトバをかけられても左の耳
から入って右の耳から抜けてしまいます。気持ちを伝える工夫が大切です。その
工夫のひとつに表現技術があります。日頃から接客者は表現の技術を養うことも
大切ですね。

皆さんはいかがですか。



第144号 2006/8/20          

毎日暑い日が続きます。こう暑いとやはり冷たい生ビールを一杯と言う気持ち
になりますね。今居酒屋さんはそんなお客様でにぎわっています。

私が毎月、必ず立ち寄るお店があります。別に料理が素晴らしい、お酒の珍し
いのがおいてあるということではありません。店長の魅力なのです。

まず通る大きい声です。
「いらっしゃいませ」
聞いていて気持ちよくなる声です。同時に他の従業員の挨拶が聞こえてきますが、
店長の挨拶は群を抜いています。

その時のお客様に向かう顔が気持ちいいんです。言葉で表現するのは難しいの
ですが、「あっ」と何かびっくりするような表情から笑顔に変わるのです。です
からその顔で「あっ、また来てくれたんだ」と思われてるように感じさせ、勝手
に嬉しくなってしまいます。そして、どんなに店が混んでいても、料理を運んだ
り、器を下げたりの用事を必ず作り、テーブルによってきます。そして30秒ほど
話をしてゆきます。

観察していますと、どのテーブルにも同じような対応をしています。そのため
皆がその店長さんのファンになっているようです。たまたま隣のテーブルの人と
話していましたら、「店長のファンだから」と話してくれました。

先日その店に行ったら、ガラガラなんです。「店長は?」と聞くと、今日は休
みとのことでした。その後もお客様が入ってきません。また店の雰囲気も店長一
人いないだけで活気が違います。やはり店長一人が店の雰囲気を引っ張っていた
のです。

でもこれだと困りますよね。店長には多くのファンがいるけれど、お客様は店
のファンではないということになります。店長の個人的な魅力も大事でしょうが、
お客様すべてを店のファンにするように、他の従業員への店長の指導力も重要で
すね。

皆さんはいかがですか。



第145号 2006/9/3   

私の友人が家に帰って傘のないことに気がつきました。当日の行動を思い起こ
してみると、医者に行った後に傘を手に持って薬局に行っています。そこで翌日
薬局に電話しました。若い男性が出たそうです。
「昨日伺ったのですが、傘の忘れ物はないですか」
「ありません、傘の忘れ物はありません」
他の人に確認するでなく、ただ一言で「ありません」と言われると、一生懸命探
していないように思え非常に感じが悪かったそうです。

その後の自分の行動を思い出すと、近所の店に寄っているので、すぐに行って
レジで聞いてみました。
「昨日傘の忘れ物ありませんでしたか」
「ちょっと待ってください、傘はここにあるだけですが、この中にありますか」
「ないですね」
通りかかった店員さんに
「事務所に傘の忘れ物ありませんでしたか」
「いやーないですね」
「もし出てきましたら、取っておきますね」
一生懸命探そうとする姿勢に、また他の店員さんに聞いてくれる行為に、この店
に忘れたのではないと納得したそうです。

どちらの店にも傘はありませんでしたが、対応の差で店舗に対する印象は違っ
たそうです。今、薬は処方箋を出せばどこの薬局でも手に入れることはできます。
今度は別にあの薬局でなくてもいいと思っていると話していました。

直接商品の購入とは関係のない出来事でしたが、その対応の差が今後の関わり
に大きく影響したようです。

皆さんはいかがですか。



第146号 2006/9/17         

コンビニでアルバイトをしている女性が話してくれました。彼女は接客が好き
でなるべくお客様に気分良く買い物をしてもらおうといつも一生懸命です。

かごに商品をいくつか入れた年配の女性客がレジにやってきました。「〇〇円」
「〇〇円」と商品を一つ一つ声をあげて確認しながらスキャンをします。「〇〇
円になります」と合計金額を請求します。そしてお金の清算が終ったあとで、袋
入れにかかりましたが、一つの袋に全部入りますが、大きくなってしまうので、
袋を2つにした方が持ちいいかなと瞬間的に思い、「袋を分けますか」と言った
そうです。
すると年配の女性は突然怒鳴ったということです。
「冗談じゃないわよ、開ける必要ないわよ」
「はっ・・・???」
「何であんたが開けるのよ」
「・・・・」
「今開けますかって言ったでしょ」
「すみません、袋が大きくなりますから、二つの方がいいかなと思いまして「袋
を分けますか」と言ったのですが」
「〇〇(別のコンビニチェーン名)はいつもそうなんだ。まったく」
なんか意味不明なことを怒鳴って、袋をひったくるようにして帰って行きまし
た。一瞬ポカーンとしましたが、変わっていた客で不愉快だったと怒っていま
した。

もし友達同士の会話ならどうでしょう。「袋分ける?」「何言ってるの、開け
なくていいよ」「えっ違うよ、袋を分けるって言ったんだよ」「なんだ、あっは
はは」で済むのではないでしょうか。

接客って不思議ですね。友人となら笑い話で終るようなことも、お互いが怒っ
て興奮してしまいます。それだけ他人同士の瞬間的な出会いですからお互いに余
裕がないのでしょう。

接客は接客者が主導権を握る瞬間的な人間関係作りと理解すれば、変わった客
と考えてまた同じようなイライラを経験するより、事柄の原因を考えて、発音が
悪かったのかな、言い方がわるかったのかなと考えた方が得でしょうね。

皆さんはいかがですか。

第147号 2006/10/1          

I県のある町に行きました。ここは毎年、3回ぐらい来ます。そして必ず駅から
タクシーを利用して同じ目的地に行くのです。大体同じような道順で行きますか
ら、景色も覚えています。

先日も駅から同じようにタクシーに乗りました。このタクシーの運転手さんは
愛想が悪いのです。乗る時にまともに挨拶をしません。「〇〇〇までお願いしま
す」と行き先を告げると、「〇〇〇?」と行き先を繰り返して、何かを考えてい
ます。分からないのかなと思い、住所の書いてある資料を見せました。無言で受
け取り、ちらっと見て無言で返します。そのまま車を動かし始めました。

駅から走り始めてから、しばらくすると何か見慣れない景色です。平気かな、
遠回りされているんじゃないかなと心配になり、話しかけました。「近くに沼み
たいな所があったよね」「えー知らない」不安になりました。そのうち細い道に
入り始めましたので、「行き先は〇〇〇で間違いないよね」と確認しました。する
と「ええ」「いつもは大きな看板の前を通るけど、今日も通るの」「通らない」
こんなぶっきらぼうな対応に、わざわざ遠回りされているのかなと疑いました。

そのうち沼の前を通らないで、目的地に着いたのです。請求された料金はいつ
もより400円ぐらい安かったのです。おそらく最短距離を通ったのでしょう。料
金に関して言えば、お客様のことを考えた最大限の工夫だったのです

でも、無愛想な対応から、目的地に着くまで、最悪なタクシーに乗ったな、料
金も高くなるのではと不安な気持ちが続いていました。せっかく工夫しているの
に損ですよね。やはり自分はサービス業ということを意識し、お客様に対する対
応を考えなければ、自分の工夫が誤解されてしまいますね。

皆さんはいかがですか。



第148号 2006/10/15 

人は仕事をしていると、忙しい時ってありますね。そんな時に用事を頼まれる
とやることが多くて大変だという気持ちになります。でもその時の気持ちが表情
や態度、声に出てしまうと意地悪な人という印象になります。

先日病院に知人の見舞いに行きました。2人部屋で隣のお年寄りの患者さんに
はその時付き添っている人がいませんでした。その人がナースコールを押そうと
していましたが、場所が遠くなっていて押せない状態です。ナースセンターもす
ぐ近くなので看護士さんに伝えてあげました。
「〇号室の〇〇さんが呼んでいらっしゃいますよ」
「えっ、〇〇さん、もう」露骨にいやな顔をしました。そしてきつい口調で
「今行きますよ」この忙しいのに、なんなの、と言っているように感じました。
病室に来ると、わざわざ患者さんの耳元で「〇〇さん、またなんですか」ものす
ごく意地悪そうに言葉をかけます。聞いていて残酷な看護士さんという印象を持
ちました。

そのうち夕方になって、夕飯が届けられます。担当者がトレイに乗った食事を
置いてゆくのですが、トレイがテーブルにつく1cmぐらい前から手を話すので、
バンと大きな音がしてトレイがテーブルを滑ります。隣の患者さんにもそのよう
な置き方です。トレイがテーブルについてから手を離したって0.5秒も変わらな
いでしょう。それなのに食事を運ぶのが忙しいからあのような動作になるのでし
ょうか。

そこの病院関係者の対応を見ていて、一生懸命仕事をしているのでしょうが、
忙しいから気持ちに余裕がなくなっています。でもその対応から一生懸命仕事を
せずに雑に仕事をしていると感じてしまいます。

忙しい時ほど自分の動作、表情、声に気をつけないと相手に不快感を与えてし
まいますね。

皆さんはいかがですか。



第149号 2006/10/29     

私は、新しくお店が出来ると興味を持って入ってみることが多いのです。新し
くチェーン店の居酒屋が出来ていたのでたまたま入ろうとした時、店を出る年配
の男女の二人連れとすれ違いました。「何で居酒屋に小さな子供を連れてくるん
だろう、うるさくて落ちつかない」と話しているのです。

店内は込んでいて賑やかです。「ちょっとお待ち下さい」と待たされたので、
店長に「子供のそばの席はやめてね、今すれ違った客がうるさいと言っていたか
ら」と告げると、我々のために片付けている接客者のところに飛んで行き耳打ち
し、離れた別の席に案内しました。2人なのに6人席です。
「2人なのにこの席でいいの?」
「ありがとうございます。何かありましたらまた教えてください」とお礼を言う
のです。

お客様の希望を大事にする店長だなと、とても気に入り、その後も何度か寄り
ました。行く度に、アルバイトらしき接客者の対応も感じが良いのです。店長の
指導の良さなんだろうなと思っていました。

先日久しぶりにその店に行きました。たまたま料理を持ってきた店長と話をし
ました。店長の指導で接客がいいからこれからも来るのが楽しみと伝えました。
すると
「今日で僕はこの店終わりなんです」
「えっ、だってオープンしてから3ヶ月ぐらいでしょ、立ち上げから頑張ってき
てお客様の入る店になったじゃない」
「でも指示ですから」
「じゃー1週間ぐらい前から動く準備してたんだ」
「いや昨日言われて、明日は次の店に行かなければ行かないので」
「そんな急なの」
「いられるのは今日だけなんです。」
「常連のお客様ともご挨拶できないね」
「そうなんですよ、お世話になったお客様にご挨拶も出来なくて。今回のような
こういうやり方を考えると、もう店を辞めたいです」そんなことを言っていまし
た。

最近はチェーン店も接客に力を入れているところが多く、人間味あふれるサー
ビスを提供していますが、肝心の働いているスタッフを機械のように振り回して
いたら、働くことの魅力を維持することが難しいでしょうね。

皆さんはいかがですか。



第150号 2006/11/12 

かつて学生時代からの友人3,4人が集まると必ず利用していた店がありました。
下町の焼肉店が軒を連ねるエリアの一軒です。当時70歳代の女性店主を中心に家
族で経営していた店でした。女性店主の明るい飾らない太っ腹な性格が気に入り
いつもわいわい賑やかに食事していました。最近はそんな仲間と集まる場所も変
わってきたため、足が遠のいて10年ぐらいになります。風の便りに女性店主も亡
くなり、今も家族で頑張っていて相変わらず人気があると聞いていました。

先日たまたま仕事でその近くに行きましたので、2人で訪れました。店は昔の
ままです。テーブル5卓の店です。我々が入って丁度満席になり、一人の若い女
性接客者が注文を受けたり、料理を提供したりで忙しく動いていました。

私達のテーブルに注文を受けに来ました。
「いらっしゃいませ、飲み物は何にしますか」
注文をした後に、ちょっと話をしました。
「おばーさんは、もういないんだね」
「はい5年前になくなりました」
「気さくな人だったんだよね」
「お待ちください」と注文を厨房に通しに行きました。

その彼女はきりっとした表情で、テキパキとした行動です。でも笑顔がないの
です。しかも今のように愛想の言葉もありません。ただ必要な接客用語だけを言
います。しかしその姿を見ていて2人でこんな会話をしました。
「あの子いいね。感じがいい。何でかな」
「そうね、笑顔がないし、必要意外な言葉はしゃべらない。でも感じ悪くないな」
「やっぱり、声だね」

そう、声なんです。声だけ意識して聞いていると、適度に抑揚があり、明るい
温かい感じがします。「すみません」と呼んだ時「ちょっとお待ちください」と
の返事も、テキパキした動作と合って「忙しいから待ってあげなくては」と思う
気持ちに自然となってきますから、不思議です。動作と声の感じがとてもマッチ
して彼女の魅力を作り上げているのです。

もしあのテキパキした動きで、平坦な話し振りや語調がきつかったりしたら、
ものすごく感じが悪いでしょう。笑顔、愛想の言葉も無いけど、早く料理を楽し
んでもらおうという姿勢に感じてしまうから不思議です。声の影響は大きいもの
です。

声の魅力って大切ですね。皆さんはいかがですか。