第51号~第100号

第51号   2003/1/19

最近は非常に商業関係が厳しくなっているのが肌で感じます。私の住まいのすぐ近くの
スーパーが今月で閉店になります。また、大型家電店だったところがCD・ビデオ店に変
わったり、元ホームセンターが、本屋→ビデオ店→リサイクルショップと業態がめまぐる
しく変わっています。業態が変わると必ず行ってみるのですが、接客の視点で観察すると、
もう少し工夫をすればいいのにと思えることが目に付きます。

先日も新しく出来たリサイクルショップに入り商品を見ていました。なかなか興味のあ
る品物があって飽きずに時間を費やしていました。その間とても気になることがありまし
た。商品を乗せたカートを引いた女性接客者が、もう一人の接客者と立ったまま、ずーと
話をしているのです。

不思議なもので、短い時間の立ち話は、仕事のことを話しているんだなと好意的に考え、
さほど気になりませんが、15~20分間話を続けられると目に付くものです。非常にうっと
うしくなります。どうせ私用の話なんだろうな、さぼってるんだろう、と勝手に思いなが
ら、商品を見て回りながら、たまたま彼女たちの側に近づきました。

すると一生懸命陳列の話をしているのです。あの品をあの場所に朝置いたけどあまり売
れ行きがよくなかった。やはり場所を工夫しなければ、などとそれぞれの意見交換をして
いるのです。まだ出来たての店ですから、接客者も試行錯誤して一生懸命売上に貢献しよ
うとしているのでしょう。

ただ話の内容からして、今すべき話ではなさそうでした。特に長い時間話していれば、
話の内容がわからないお客様からすれば、無駄話に感じます。仕事に一生懸命な接客者は
見ていて気持ちのいいものです。だからこそ、話す内容、話す時間、話す状況を考えて工
夫をしなければ、一生懸命な議論も、単におしゃべりと思われてしまうでしょう。それで
はもったいないですよね。

皆さんはいかがですか。



第52号   2003/2/2

 知り合いの女性がソファーとテーブルを買い換えました。家具屋を何件も見て回り、気
に入ったソファーを注文しました。ところがテーブルに関しては、どうもこれといったも
のが見つからず、家具屋さんの薦めるものも気に入らなかったそうです。帰ってからたま
たま目を通した通販の雑誌に自分のイメージにぴったりのものがあって、それを注文する
ことにしました。

 仕事の都合で家具屋さんの配達をだいぶ遅くしてもらいましたから、通販のテーブルが
先に着いてしまいました。大理石をあしらったしゃれたテーブルでしたが、足の部分は自
分で組み立てなくてはなりません。悪戦苦闘してなんとか取り付けましたが、どうも足に
ガタがあったようです。不良品なのかなと心配しているところへ、家具屋さんからソファ
ーが配達されました。

そこで配達した男性にテーブルを見てもらいました。すると、「これはネジの締め方が
弱いだけでなんでもありません。締めてあげますよ」と一生懸命作業をしてガタのないよ
うにしてくれたそうです。そして「このソファーが生きる、いいテーブルですね」という
コトバと笑顔を残して帰ったのです。

彼女はとても感動していました。自分の店で買った商品ではありませんから、ネジの締
め直しはしてくれないと思っていたそうです。それを予期せぬサービスをしてくれたおか
げで、喜びが何倍にも大きくなって感動してしまったそうです。

でも、この配達した人は、自社の商品のソファーの良さを引き立てる工夫をしたのかも
しれません。もしガタをそのままにして帰ってしまったら、テーブルの不満にばかり気持
ちがいって、ソファーの良さなんか考える暇もないかも知れません。お客様が商品を購入
することは、商品と共に商品が醸し出す雰囲気も購入していることを理解していたんでし
ょうね。ですから自然と無理のない予期せぬサービスが提供できたのでしょう。

皆さんはいかがですか。



第53号   2003/2/16

皆さんは健康診断を定期的にしていますか?
私は、毎年1月か2月に健康診断をしています。先日も1年ぶりに胃カメラの検査を受
けました。あの検査は、ほとんどの人がつらい検査と言いますよね。私も好きではありま
せんが、ここ3年ほどはそれほどつらくありません。

以前は、20年以上のかかりつけの病院で検査をしていましたが、ものすごくつらかった
のです。病院の検査機器が古いせいもあって、カメラが太くて、のどに入れるのに地獄の
ような思いでいました。あまりにつらいので、新しい検査機器のある所なら、もっと細く
て楽なのではないかと思い、近所で新しく出来た病院に移りました。

案の定、カメラも細く、前の病院よりはだいぶ楽でしたが、やはり胃カメラを喉に通す
ときの不快感と言ったらありません。しかし、ここの看護師さんの態度が違うのです。検
査を始めると同時に、「力を抜いて楽にしてください」と言いながら、私の背中をポン、
ポンと一定のリズムで軽くたたくのです。それを続けられると不思議なもので、非常に深
い安心感に包まれ、体から力が抜けて胃カメラの挿入がスムーズに行きました。その後2
回そこで胃カメラ検査をしましたが、同じ看護婦さんが同じようにやってくれるので、ス
ムーズに検査が終わります。

 その対応の良さから、友人に話すのですが、誰も背中をたたかれた経験のある人はいま
せん。積極的に多くの友人に聞いて見ました。いままで20人に聞いて誰もそんなことは
されない、かえってと怒鳴られるのがおちだと言います。とするとあの看護師さんの対応
は、彼女自信が考えた方法なのでしょうか。直接聞いてみようと思ってますが、まだその
機会がありません。

彼女の対応は、人間の心の奥底に潜む郷愁、安心感に響かせる何かがあったのでしょう。
同じ行動でも、ちょっとした工夫で相手に深い満足感を与えることが出来るのでしょうね。
ちょっとした動き、ちょっとしたコトバ、ちょっとした表情が効果を発揮するのでしょう。

 皆さんはいかがですか。



第54号   2003/3/2
 
先日東京ドームで開催されている世界ラン展に行って来ました。平日に行ったのですが、
会場は多くの中高年であふれていました。それでも色とりどりのランの花の美しさに見と
れてきました。会場には展示スペース以外に出店ブースがあり、各お店が競争でお客にラ
ンを販売していました。いろいろな販売方法がありますね。

バイトでしょうか、ミニスカートの女の子が笑顔で「いらっしゃい、アワチドリいかが
ですか。2,000円で4つ、お徳ですよ。」また違うブースでは「胡蝶蘭、2鉢で1,500円で
すよ。絶対お徳です」など一生懸命連呼していますが、なかなか買う人がいません。他の
ブースでは、男性スタッフが一人のお客に一生懸命ランについてのウンチクを語っていま
したが、結局売ることが出来ません。

そのうち、ある出店ブースの前を通りかかると、50歳前後の小太りの男性が、スペシオ・
キングアナムというランの種類の鉢がいくつも並べられている販売台の後ろに、台をおい
て立ち上がりました。何をするのか見ていましたら「ランの取り扱いは簡単です。これだ
け覚えてください」といって説明し始めたのです。「暖房の効いた部屋に置く場合は、この
ようにさーと霧吹きで水を毎日上げてください。」と実際に霧吹きで水を吹きかけます。
「玄関に置く場合は、乾燥しないから水をかけなくていいですよ。土が白く乾くまでは絶
対に水をやらないようにしてください。根腐れしますから」

説明を続けるにしたがって、どんどん人が集まってきます。内容が初心者向きでわかり
やすく、とても興味を引きます。2~30人が集まって聞いていましたが誰もその場を離れよ
うとしません。その後、花が咲いた後の枝の処理、株分けの方法などを説明した後「今か
らこの2,000円の鉢を1,500円にします。いかがですか」というと今まで聞いていた人々が
順番を争うように買っていきました。あっという間にその台の鉢がほとんどなくなりまし
た。しばらくして同じ場所を通りかかったら、新しい鉢を並べていました。そのうちまた
人を集めて話をするのでしょう。

 他の販売方法と比べると、ランの扱い方を大勢対象に分かりやすく説明しているだけな
のです。でも売れ方が他のブースと全然違っていました。まさに「説明することの効果」
ですね。お客が納得して満足して買っていたようです。皆さんは自分の扱い商品をわかり
やすく説明することが出来ますか。

皆さんはいかがですか。



第55号   2003/3/16

先日地元で気の置けない友達と飲む機会を持ち、会話が弾み気がついたら午前2時でし
た。タクシーを呼んで、それぞれ順に岐路につきました。私は最後の方のタクシーでした
が、他の皆は地元で事業をやっていますから、呼ばれたタクシーの運転手と顔なじみです。
「今日は、久しぶり」などと言いながらタクシーに乗り込んで帰って行きました。

私はタクシーに乗るときは、いつも運転手さんに話し掛けて会話をすることが多いんで
す。そのときも自分から話し掛けました。
「景気はどーお」
「いやー最低でね、先月は手取りで10万ちょっとですよ。これでは食えないですよ」
「景気悪いからね、他の人もみんな悪いの」
「悪いなんてもんじゃないですよ、もう食べられないですから、うちはかかあが働いても
借金が残る状態ですからね」
「大変だね」
「先月も同僚の鈴木さんが首吊り自殺でしょ。その前が菅原さんが死んだから」
「へー、つらいね」
私は、その人たちは知りませんが、運転手さんは良く知ってると勝手に思い込んでいる
ような話ぶりです。
「昨年は高橋さんも死んだからね」
「病気で?」
「いやー皆自殺」
「ホームレスになったのもいますよ」
「働きながら?」
「いやーサラ金の取立てが会社に来るんで結局いられなくてタクシー会社をやめたんだよ
ね。この間かかあと橋の下に会いに行ったら、寒くていやになっちゃうとこぼしていまし
たから」

 まさかこんな悲惨な話を聞くとは思っていませんでした。家の前でタクシーを降りた時
は、すっかり酔いもさめてしまいました。同時に大変な時代だから、遊びでふらふら夜遅
くまで飲んでたらだめだな、無駄にタクシーを使ってはいけない、とつい反省してしまい
ました。

 お客様と会話をすることは、友人同士の会話ではないんですよね。なんでもいいから、
話材を提供することでは困ります。その話材から、お客様がまたそのサービスを受けたく
なるような話材を提供する工夫が必要ですね。そうでないと、その一言でお客様の気持ち
が変わり、離れていくこともあるでしょう。

皆さんはいかがですか。



第56号   2003/3/30

20代の女性の看護師さん、勤務の帰りに仲間の看護師さん3人と居酒屋に寄ったそうで
す。今流行のそば居酒屋で、お酒を飲んだ後に日本そばを楽しもうという人で、結構他の
お客様も多かったといいます。店に入ると大きな10人掛けのテーブルに案内されました。
そのテーブルには他にも3人の先客がいて相席です。

席に着くと看護師さんたちはそれぞれがタバコを吸い始めたのです。それを見た先客は
接客者に声を掛けました。
「私たちタバコ吸わないのよ、そばで吸われるとけむいから席を替えてくれる?」
すると接客者は
「そうですよね、こんなところでタバコなんか吸うから。今向こうの席が空きますからち
ょっとお待ちください」と答えたそうです。その声は看護師さんたちにも聞こえてしまい
ました。自分勝手にこの席に来たのではない、接客者に案内されたのにという気持ちもあ
りますから、さすがにムカッとしたと言ってました。そんな事を言われたせいか、飲む気
分でもなくなりそばだけを注文して食べました。

食後、さてタバコを一服と思ったら、接客者が食べ終わった様子を見て、「他のお客様が
お待ちですので、食事が終わったらご協力お願いします」とさっさと空いた器を片付け、
ついでに灰皿までも持っていってしまいました。結局タバコを吸うことが出来ず、さらに
頭に来て「もうあんな店は2度と行かない」と怒って教えてくれました。

怖いですね。お客様に言ったたった一言が連鎖反応を呼び、最悪な結果になってしまい
ました。お客様との会話で相手の気持ちに共感するコトバは、満足感を与える効果があり、
非常に大切なことです。ですがこの事例のように、そのコトバが他のお客様の感情を逆な
でする内容ですと逆効果になります。

この接客者は日頃タバコを吸わないのかもしれません。ついお客様の言葉に同調し、タ
バコを吸っているお客様を非難するコトバになってしまったのかもしれません。待ってい
るお客様もいるのだから、食事が済んだら協力して欲しいという気持ちがあったかもしれ
ません。喫煙者の食後の至福の一服の感覚を知らずに、灰皿まで片付けたのかもしれませ
ん。でもそんな言い訳は通用しません。気分を壊したお客様はもう行かないのですから。

接客時のコトバは常にどのように聞かれ、どう理解されるかを考えなくてはお店にとっ
てマイナスの結果が出るでしょうね。

皆さんはいかがですか。



第57号  2003/4/13

先日偶然に街で知り合いのご婦人と会いました。年齢は80歳ぐらい。でも元気に買い物
の途中でした。久しぶりでしたので何分か立ち話をしました。その時今利用してきた店の
ことを話していました。

最近ちょっと疲れやすいので、大事をとってしばらく外出を控えていました。元気にな
ったので久しぶりにその店に行ったとのことです。レジで、なじみの30歳代の接客者と次
のように話をしたそうです。
「お久しぶりです。お元気でしたか」
「久しぶりね」
「心配してたんですよ」
「いろいろあって来なかったの」
「あら、どうしたんですか」
「この歳になるといろいろね」
「なんか悩みあるんですか。私聞きますよ。聞くのが商売だから」

このように言われて、別に悩みはないけど、仮にあったとして80歳の人間が30代の人
間に悩みを打ち明ける訳ないじゃない。体調を気にしてくれるのが普通なのに、コトバを
知らないんだからと言ってました。この接客者は何気なく、母親をいたわるように親切に
コトバを出したのかもしれません。でも年配のお客様はそう取らずに、年齢が多く離れて
るのに無礼な言い方と取ったのでしょう。

最近は各業種の接客者が非常に会話を活用してお客様との関係をつくっています。しか
し中にはお客様との会話=おしゃべりと勘違いしている人がいるようですね。とにかく話
をしさえすればいいんだとばかり、考えずに一方的に話をしている接客者を見受けます。
でもお客様はいろいろです。よほどお客様を考えて話さなければ上記の例のように好感は
もたれないでしょう。あくまでもお客様に応じた会話することが接客における会話術なの
です。おしゃべり=会話術にはなりません。

皆さんはいかがですか。



第58号   2003/4/27
私の友人がGWの家族旅行のために、旅行会社を利用しました。毎年利用しているのです
が、今年の担当になった若い女性の接客者は特に印象が良かったと話していました。

「どこかいいところないの」
「ここの宿とここの宿は、アンケート調査でもいい成績をとっています」
 まず2,3候補を決めてその良さをアピールします。
「実は高原のいい宿をと考えてるんだけど」
「こういう高原の宿は料理、施設など若い人向きになっていまして、年配の方の旅行には
合わないかもしれません。こちらのお宿は温泉もありまして、料理も和食中心で しっと
りしていていいですよ」客の参加状況に応じて適切に説明をしてくれたそうです。

従来までの人も、客の要望を聞いてそれに応じて候補地を提案してくれるのですが、今
回の人はお客様との会話を弾ませ、話していると本当に楽しい旅行になるようなイメージ
が湧いたと言います。

聞いてみると、彼女も旅行好きで、各地に行っているそうです。そしてそのときの体験
談を話の随所にはさみ説明してくれるもので、より説得力があったのです。そのため話す
内容が、会社側から薦めるお仕着せの利点でなく、客の眼から見た利点となって説明され、
興味が引かれたといいます。「この仕事が楽しいから、お伝えしたい内容が多すぎて、時
間がかかってすみません」と語る彼女の笑顔が印象的だったといいます。

お客様は接客者と話していて、あからさまに商品・サービスを売るための接客だと思う
と購入・利用する気持ちが萎えてしまいます。商品・サービスの価値を楽しんでもらうた
めの接客と思えたときは、お客様は購入意欲がどんどん湧いてきます。そのためには、自
分の扱っている商品・サービスが好き、仕事が好きということが一番大切なことでしょう。

皆さんはいかがですか。



第59号   2003/5/11

皆さん、ゴールデンウイークはどのように過ごしましたか。各地に旅行に行った人、あ
るいは家でのんびりした人、いろいろな過ごし方があったと思います。私の知り合いの40
代の女性。今年はどこへも行かず家でのんびりしたそうです。しかし夜は家族で外食を楽
しんだとのことです。

楽しみにしていたカニの専門店に行った時、コース料理を頼みました。最後のデザート
が来る前に伝票が運ばれました。「えっ、デザートがまだでしょ」「ごめんなさい」と接
客者は謝りましたが、同時にアンケートも渡したそうです。アンケートの中には「サービ
スはよかったか」「料理の説明はされていたか」などの質問項目がありました。料理の味は
そこそこでしたが、何かベルトコンベヤーに乗せられて食事が終わったら、はいおしまい、
という感じがして、サービスが悪いと印象に残り、後味の悪い思いをしたそうです。

あるラーメン店。夫婦でやっている小さな店ですが、店に入ると「いらっしゃいませ」
と元気の良い声をかけてくれます。閉店時間は午後10時30分と店内に書かれていました。
入ったのは午後10時過ぎでしたが、ラーメンが出来て食べている最中に、お冷に水を足し
てくれる気配りをしてくれました。この店は水を飲むにはセルフサービスでポットがテー
ブルにおかれています。しかも、ポットに氷と水も補給してくれました。彼女はこの行為
に感激しました。

もう閉店間際、お客もあまりいないから、片付けを始めてもいいのに。氷と水をポットに
補給しても無駄になるかも知れないのにやってくれた。ついつい普段の主婦感覚で考え
てしまいますから、無駄になることもわざわざやってくれたと感激したのです。とても後
味さわやかな気分になり、また来ようと思ったそうです。

サービスとして考えればあたりまえの行為です。営業時間真っ只中であろうと、閉店間
際であろうとお客様からすれば、食事環境は同じでなければなりません。閉店間際だから、
あからさまに片付けを始めたり、ポットに氷と水がなくても良いなんてことはありません。
サービスが不平等になってしまいますから。

お客様からすれば、サービスの評価は些細なことから生じます。当たり前のことを当た
り前にすることでも感激の材料になります。閉店間際の対応はお客様に感動を与えるチャ
ンスかもしれませんね。

皆さんはいかがですか。



第60号   2003/5/25

先日香川県の高松に行ってきました。香川県といえば讃岐うどんです。東京育ちのせい
か、そば好きでうどん嫌いだった私も、初めて讃岐うどんを食べてからうどん好きになっ
たぐらいおいしい食べ物です。何度も高松に行きますと、よりおいしい味を求めて店を探
すのが習慣になっています。1番の情報源はやはり地元の人です。今回も仕事先の金融機関
の方から聞きました。その方が良く行くおいしい店を教えてもらいました。

夕食前にちょっと味見をと思い、5時ごろ行くと、昼の営業が終わって、まだ開いていま
せん。戸を開けると、カウンター10席ほどの店内で主人が一人で準備をしていました。「何
時からですか」「5時半からです」との答え。しばらく回りを散策して時間をつぶしました。
ちょうど5時30分に入りました。私共が初めての客でした。暑かったので釜揚げうどんで
なく、他のものを注文しようと、メニューの内容を聞きますと、非常に丁寧に説明してく
れます。きちっと「です・ます」体の丁寧語です。

しばらくして、地元の常連客が入ってきて、カウンター前の天ぷらを取ってビールを飲
み始めました。「競馬場に行ったらうどん祭りやってて・・・」なんて世間話を始めました
が、常連客は地元の方言で話していますが、主人は丁寧語で受け答えをしています。

わりと、観光客相手でない店では、お客様との会話が地元言葉で気楽なところが多いの
ですが、一元の客はほっておいて、常連客には地元言葉で親しげに話すことがあります。
なにか差別をされてる感じがしますし、一元の客に地元言葉で対応されても、地域の雰囲
気を味わったという実感がわいて、いい場合もあるでしょうが、コトバが分からなかった
りすると違和感を感じることもあります。

ここの主人のように、誰にでも同じ言葉遣い、同じ雰囲気の対応は、来店したお客様は
すべて同じお客様としてみなし、一元の客も常連客も平等に扱ってくれていますから、不
満を与える要素がありません。まさに、店側とお客様との立場の差をきちっと理解してい
る対応でしょう。うどんのうまさはもちろんのこと、何気ない接客の対応のうまさに、ま
た近いうちに来ようと思って店を出ました。

皆さんはいかがですか。



第61号  2003/6/8      

先日車に乗ってるときに、ふとメーターを見るとガソリンがもうわずかしかありません
でした。帰るまでの距離とガソリンの量を考えると、ガス欠の危険もあるので、近くにあ
ったGSに飛び込みました。20代前半でしょうか、笑顔の良い若いスタッフが、明るく大き
な声で挨拶をし、誘導してくれます。そのしぐさは、てきぱきしていてとても感じが良か
ったことを記憶しています。

私はいつも利用するGSが決まっているので、今回のように緊急に給油するときは、10リ
ットルしか入れません。車を止め窓を開けると、そのスタッフが寄って来ました。
「10リットルお願いします」
「はい10リットルですね。カードでの支払いでしょうか、現金でしょうか」
「現金」と答え、横の座席に置いてあったかばんから財布を出して、札を用意し、身体を
元の体勢にして何気なく横を振り向くと、さっきのスタッフの顔が目の前にありびっくり
しました。スタッフもびっくりしながら「カードでしょうか、現金でしょうか」とまた聞
きます。

そのとき一瞬思いました。聞こえなかったのなら、すぐに聞き返せばいいものを、なぜ
じっと側でそっちを向くのを待っていたんだろう。気の利かないやつだな、もっとましな
対応があるだろうにと。

でも良く考えると、さっきの私の返事が聞こえなかったんでしょう。それで近づいて、
私の体が助手席の方に動いていたもので、良く聞こえるように窓の中まで顔を入れたので
す。しかも、私が財布を用意していたものですから、その動きを遮断してはいけないので、
その動きが終わるまで待っていたのでしょう。そこで偶然顔を鉢合わせしてしまったので
す。

最初見たときから、丁寧なしっかりした動きのする人でしたから、接客レベルの高いス
タッフなのだと思います。彼は本当はお客様の立場にたった工夫をしていたのだとおもい
ます。でもタイミングが悪いと気の利かないスタッフという評価になってしまうのです。

接客って難しいですね。ある程度お客様の次の動きを考えて対応しなければ、どんなに
お客様に向かう気持ちがあっても、それが分かってもらえないことになってしまいます。
観察し相手の動きを読む技術は気配りという評価になります。先日居酒屋さんで、立ち上
がったらハンガーを持ってきて上着をかけてくれましたが、何で人の考えが分かるんだろ
うと感心したことがありました。きっと今までの経験からいろいろな行動パターンを分析
して、その人のサービスノウハウにしているのでしょう。

皆さんはいかがですか。



第62号  2003/6/22      

福岡から飛行機に乗っての帰り。出発前の機内で何気なく前に目をやると、3列ほど前の
お客様とスチュワーデスが話をしています。こちらを向いて話していたスチュワーデスの
顔が見えます。どうも馴染みの客らしく親しげに話しているのですが、飛行機のエンジン
音で会話は聞こえません。ところがスチュワーデスがなんて返事しているのかが、なんと
なく分かるのです。

なぜかと言うとスチュワーデスの表情がとてもいいのです。お客様との会話の返事に表
情の変化が大きく、いわゆる顔の表情筋を十二分に活用しているため「はい」「そうです
か」「本当ですか」「良かったですね」などと返事をしているのが、声は聞こえなくても
良く分かるのです。決してわざとらしくなく自然です。表情ってすばらしいなとその時
思いました。

ビールをもらおうと思って呼んだ時も、「お呼びですか」の返事がすばらしい表情でし
た。その後の会話も表情豊かで、とても分かりやすい対応だったと記憶しています。よく
日本人は表情が乏しいといわれ、実際に接客者の中にも、しぐさはきれいなのですが能面
のような表情の人いて、親しみが感じられず冷たい印象を受けることがあります。そんな
時、せっかくサービス動作がきれいなのにもったいないなと思います。これからは意識し
て表情筋を活用して会話することも必要かもしれませんね。

皆さんも自分の表情は豊かかどうか試してみたらいかがですか。鏡の前で「はい」「そうですか」
「本当ですか」「良かったですね」等と言ってみて下さい。そのコトバを表す顔になっていますか。
なかなか難しいですよ。

皆さんはいかがですか。



第63号  2003/7/6       

先日の朝、香川県高松市のホテルから、届け日を翌日に指定して荷物を宅配便で送りま
した。あくる日いつまでたっても荷物が届かないので、一緒に送った同僚に確認すると午
前中に届いたとのことです。控え伝票を見ると指定時間の項目が12時から16時、16時か
ら19時の両方に丸がついていましたから、地域の関係で遅れてるのだろうと考えていまし
た。

ところが19時30分を過ぎても来ないのです。そこで伝票に書かれた問い合わせ先に電
話をしてみました。「まだ荷物がとどかない」旨を伝えると、伝票番号、名前、受け取る住
所、電話番号、及び宅配を依頼した場所を聞き、折り返し電話するということになりまし
た。しばらくして返事がきました。前日の静岡地方の大雨のため、荷物が届かなくなり、
中継所も仕分け不能な状況で、品物が確認できないことを説明し「お届けが明日になりま
すがよろしいでしょうか」というのです。

それまでのやり取りでは「すみません」「申し訳ない」という侘びコトバを全然言ってい
ません。しかも荷物が届かないための不便さ、迷惑を聞こうともしません。状況説明のみ
です。明日使う予定の資料が入っていたのでますます怒りが大きくなってきました。話を
進めているうちに、大雨という特別な気象条件を言い訳にしているようで、不可抗力なん
だから仕方ないと言われているように感じイライラして
「ちょっと待ってよ、同じに出した人間は午前中に届いてるんだよ。なんでうちだけに届
かないの」すると絶句した後に
「同じ千葉県〇〇市ですか」
「いや××市だけど」
「配達地域の関係だと思いますが」
「だってほとんど同じ場所じゃない。それに、日程を指定したんだから、静岡地方の集中
豪雨の影響で本当に混乱していて届かないのなら、そちらから連絡があるのが普通じゃな
いの。明日使う予定の資料が入ってるのにどうするの。お宅はそういうシステムにはなっ
ていないの? 」
「ええ、ちょっと・・・」今度はコトバに詰まって沈黙の時間が続きます。
「こんな状態ならもう信頼してお宅の会社は使えないね」
「それはしょうがないですね」
使わなくて結構と言われてるようで、そのコトバでまたまたムカッとしましたが、単にマ
ニュアルどおりの対応しか出来ない相手に怒り狂ってもしょうがないので、翌日荷物が紛
失していないかどうかの確認の連絡を朝一番でしてもらうことを約束して電話を切りまし
た。

クレームの時はお客様も興奮状態です。お客様の気分を静める工夫をして話を進めてい
かないと、火に油を注ぐようなことにもなりかねません。状況説明は非常に重要なことで
すが、お客様の気持ちを考えない状況説明は単に言い訳に聞こえ、怒りがますます大きく
なる可能性があります。怖いですね。

皆さんはいかがですか。



第64号  2003/7/20       

先日、日曜大工で塗装するため、金属用のクリアラッカーを探していました。ホームセ
ンターでは木工用は置いてありますが、金属用は扱ってないのです。そこで電話帳で調べ
た塗料店に電話をし、置いてあることを確認し買いに行きました。店に入ると、20代半ば
ぐらいと思える若い男性が出てきました。その店の息子さんでしょうか、ユニフォームは
着ていましたが、まだ仕事の経験は浅いようでした。
「先ほど金属用クリアラッカーの件で電話したものです」
「はい、出しておきました」
「何軒か塗料店に電話したんだけど、金属用ってなかなかないんですね」
「金属用っていうより、車両用ですから」
「なるほど、板金関係で使うものなんだ。鉄以外でも問題ないでしょ」
「さー、多分」
「屋外に置いてあるアルミ鋳物の置物につやを出したくて塗るんだけど。銀粉とクリア
ラッカーとシンナーを混ぜて使うのに、割合はどのくらいが標準なんだろう」
「割合って、それは人それぞれですから、やってみて調べるしかないですよ」
「調べるしかないか。金額的にもっと安いのないの」
「ありません」
「分かった。とりあえずこれ下さい」
買っては来たのですが、その対応にがっかりしました。

あまりに商品知識がなさ過ぎます。不安になってきます。内容をもっと聞きたかったの
で社長はと聞くと、出かけているとのことでした。後で社長に確認して連絡してもらおう
とも思いましたが、自分で調べた方が速いし正確だと思い、クリアラッカーの容器に書か
れたメーカーに直接電話し、標準の混合割合、使用上の注意点を確認し、塗装することが
出来ました。

店での販売って単なる商品の受渡しではありません。特に工業用商品の効果はその使い
方に大きく影響します。その知識を商品と一緒に与えることが出来て初めて店の存在価値
があるのではないでしょうか。店の従業員全員が客に対して適切な知識を与えられ、もし
その時、分からなければ後で調べて責任もって伝えることが出来なくてはならないのです。
それが出来てプロのいる店としての評価になるのでしょう。そうでなければ、ファックス
あるいはインターネットで注文し、単に商品を配送してもらうシステムを利用した方が便
利ですよね。

 皆さんはいかがですか。



第65号  2003/8/3       

先日、夏の暑いときでも汗をかく事もいいだろうと、シャブシャブ店に入りました。高
級店ではなく値段も手ごろな大衆店です。案の定客は少なく、我々以外に2組でした。奥
の四人席に案内してくれ、料理を頼みました。4、5人程の接客者がいるのですが、彼ら全
員がお客様と接するときはすごく笑顔がいいのです。

あまりの笑顔のよさに、料理を運んできた接客者に聞いてみました。
「皆笑顔がいいけど、特別に笑顔の練習をしているの?」
「そうですか、ありがとうございます。別に笑顔の練習はしていませんが、仕事が面白く
楽しいんです。皆もそう言っていますね」こんな答えが返ってきました。彼らの接客を見
ていると本当に仕事を楽しんでるのが分かります。料理を運ぶのに、必ず説明を付け加え
ます。難しいことは言う訳ではないのです。時には材料の説明、時には簡単な作り方など
です。それを一言付け加えることで料理に価値付けが加わります。

そんな状況で私共も気分良く食事をしていました。そのうちシャブシャブの材料が盛ら
れた皿を動かそうと思って皿を掴んだとき、火のそばだったために皿が熱くなっていて親
指を軽く火傷してしまいました。びっくりし、すぐそばにあったおしぼりを巻いて冷やし
ていました。一緒にいた仲間は、冷やした方がいいよ、氷もらえば、と言っていましたが、
「いいよ、これで平気」とそのままにしていました。

そのうち空いた皿を下げにきた男性の接客者がその皿を持とうとして熱い部分を触って
しまい驚いていました。「熱いでしょ。同じように触っちゃったんだ。」というと皿を下
げた後に、すぐ氷を入れた袋を持ってきて「これで冷やしてください」と出したのです。
「ありがとう」と受け取り、親指を氷で冷やしながら食事を続けました。時間がたって冷
やしていた氷が溶けた頃、どうぞお使いくださいとまた氷を持ってくるのです。とてもタ
イミングがいいのです。またそれが解ける頃に同じように持って来てくれました。指の状
況は氷をつけていればなんでもないのですが、氷から話すと痛くなるのです。氷が離せな
い状態でした。そのため氷が溶けた頃、別の氷袋を持ってきてくれるのには本当に助かり
ました。

食事を堪能し帰るときです。新しい氷を持ってきて、「これをお使いください」と出し、
お絞りも渡されました。お絞りは氷の袋をそれでカバーするようにということでした。
これはいいよ、とおしぼりを返そうとすると「雫で濡れますから、お持ちください」と無
理やり持たせてくれました。

このように私が望んでいることを言う前にやってくれるサービスには感動すら覚えまし
た。やってくれたことはそれほど特殊なことではありません。当たり前の対応でしょう。
もしこちらから頼んだ後にやってくれたとしても感謝はしますが、感動はしないでしょう。
言う前にこちらの望むことをやってくれることが感動を与えるのです。お客様の希望を察
し自分から働きかけることが効果を生むのでしょう。仕事が楽しいからこそ、そうした工
夫ができるのでしょうね。またすぐこの店に行きたいなと思っています。今度はどんなサ
ービスを見せてくれるでしょう。

皆さんはいかがですか。



第66号  2003/8/17       

これからおいしい果物のひとつに梨がありますね。私の地元の梨農家は積極的に直売を
行っており、鮮度の良さとおいしさから多くの固定客がついています。自宅の近くには梨
の直売所がずらっと並んでいる道路があり、この時期は多くのお客様で賑わっています。
私もお盆の時期は贈り物として梨を利用しますので、行きつけの農家があります。

今年も前もって電話で予約をして店にうかがいました。店の中は家族総動員で働いてい
ます。小学生、中学生の子供たちが梨を大きさごとに分けていたり、その店の主人が箱詰
めをしています。奥さんやおばあさんはお客様と何やら話していて、親戚の人も応援で手
伝っているようでした。梨を購入したお客様の帰り際に、そこのおばあさんが2、3個の梨
を別にサービスとして渡す姿を見ると、農家の直売所のほほえましい雰囲気を感じ取るこ
とができます。

店に入ると何組かの常連の人で込み合っていました。お客さんはほとんどが年配の人で
した。レジも行列で自分の順番を待っていました。私の前で年配の女性客が支払いをして
いましたが、レジを担当しているのが小学生高学年の女の子です。「12,600円です」「じ
ゃ大きいお金ね」と1万円を2枚渡しました。それからその年配の女性はしばらく、財布
の中身を指で探していました。その子は預かり金額の入力を省いて、最終キーを押しレジ
のドロワーを開けて2万円を中に入れて、その状態で待っています。すると年配の女性が、
「あ、細かいのがあるから丁度2,600円渡すわよ」「はい、」お金を受け取ってドロワー
の中に入れました。そしてレシートを取ってお客様に渡したのです。しばらく考えていた
お客様は「さっき1万円札2枚を渡してたわよね」と女の子に言いました。女の子は忙し
いせいで忘れてしまったのでしょうか、首をかしげています。するとそこの主人が飛んで
きて、事情を聴いて1万円札を返し、問題が大きくならず、事なきを得ました。

子供が一生懸命手伝いをする姿はとてもほほえましいものです。でも手伝わせる以上は、
店のスタッフです。子供だからしょうがない、というコトバは通用しないでしょう。もし
レジをまかせるなら、必ず預かり金額を入力してから最終キーを押す、そしてお客様のお
金は金銭授受が終わるまで別に一時保管する、等のレジの基本的な約束ごとをしっかり覚
えさせてから仕事をさせないと大きなトラブルを引き起こすかも知れないのです。もし出
来ないのであれば、金銭授受など問題が起こる可能性のあるところには手伝わさない、等
の店のルールは徹底しないといけません。子供であっても店のスタッフとして見られるわ
けですから。

大人も子供も家族全員で働く姿は、お客様から見ると、ほほえましい情景であり、その
店の魅力になりますが、一歩間違えると甘えに感じられ、弊害に変わることもありますね。
特に金銭授受時のトラブルはせっかくの固定客を逃がしてしまう危険性をはらんでいます。

皆さんはいかがですか。



第67号  2003/8/31       

この夏は法事や葬儀で何度かお坊さんの対応を見ました。

群馬県の真言宗のお坊さんです。まだ20代半ばの若いお坊さん。父である住職が急逝し
て急遽寺を継いだそうです。お経が始まる前に「これから〇〇の一周忌法要を・・・」な
どと挨拶をしていましたが、声が小さくてほとんど聞こえないのです。しかも皆を見ない
で天井を見て言うものですから、話す気持ちが全然伝わって来ません。お経の声も小さく
もごもご10分ぐらいの読経の後、法話もなく、終わりますと言うやいなや、早々に退散し
ました。集まったその地域の人が、頼りない坊さんで困ってるんだ、前はピアスしてたん
だけど、檀家のクレームで今はやらなくなったとさんざん嘆いていました。

同じ地域のお坊さん、この人は高校の先生もしています。お経の後の法話が人気があり
ます。今読んだお経の意味を丁寧に説明し、あの世での故人の状況、現世の人と故人との
心のつながり、心の持ち方を分かりやすく話されるととても心が洗われた気分になります。

東京の曹洞宗のお坊さんも参列者とコミュニケーションを一生懸命取る人がいました。
通夜のお経が始まる前に、故人の人となりを話した後、戒名の意味を解説しました。そし
てお経を始める前に行われる清めの儀式の行動とその意味を、また通夜に読まれるお経を
解説してから、お経に入ります。不思議なものでそうされると、お経を聞くにも意味を追
いながら聞けるようで、まるで意味がわからない物を聞くより気持ちが集中するように感
じました。

コミュニケーションの工夫は、知らずにその人の世界を身近にさせることが出来ます。
どのような仕事でも人への対応の優劣はコミュニケーションの取り方でしょうね。

皆さんはいかがですか。
 


第68号  2003/9/14       

飛行機を利用して帰る時は、最寄の駅まで空港からのリムジンバスを利用することが多
いのですが、先日すばらしい運転手さんに出会いました。

午後8時45分発のバスがなかなかやって来ません。首都高速道路で混雑がありその影響
が出ていると何度もお詫びの連絡をアナウンスしていました。後発のバスが2本行った後
にやっと来ました。結局9時10分に出発というようなだいぶの遅れが出てしまいました。

バスが出発すると運転手さんは、出発が遅れたお詫びとその原因を説明してくれました。
説明する彼は響きのあるいい声をしていてはっきり聞こえてきます。ついついその声に引
かれて聞いてしまいました。「首都高速の渋滞の影響で出発時間が遅れてしまって申し訳
ありません。ただ現在その渋滞も解消されましたので、このバスの運行にはそれほど影響
がなく、おおよそ通常の時間で運行できるようです。」遅れた原因、運行状況、そして万
一のためにシートベルトの着用をお願いしていました。

最初の停留所に近くなると、「車の前方は通路が緩やかなスロープになっておりますの
で、歩かれる時は十分にお気を付けください。またお降りになる時に、階段の段差が大き
くなっていますのでご注意ください。なお収納トランクに荷物をお預けになったお客様は、
荷物の紛失あるいは荷物の取り違えの防止のため、すべてのお客様がお降りになった後に
荷物を取りだしますので、しばらくお待ちください」と丁寧にバスを降りる時の注意点を
説明しました。

バスが止まるとまず自分が先に降りて、降りるお客様の一人ひとりに、足元を見ながら
「ありがとうございます」とお礼のあいさつをし、「段差がありますのでお気を付けくだ
さい」「スカートのすそを踏まれますと危ないですから注意してお降りください」という
ように一人ひとりのお客様に声をかけて安全を確認しています。そのお客様の安全を配慮
する姿にとても好感を持ち、この運転手さんの名前はなんていうのだろうと知りたくなり
ました。

この動作はマニュアルを忠実に行なっているのかもしれません。でも今までこのような
運転士さんを見たことがありません。通路を歩く時の注意も大幅に省略し、たいていは先
に降りると真っ先にトランクを開け、降りたお客様に荷物を渡し、とにかくスピード優先
で次の停留所へ早く行こうとする姿勢がありありでした。中には、3,4人降りるまではお客
様にあいさつし、トランク前で待ってるお客様がでたら、トランクでの荷物引渡し作業に
かかってしまいます。最後近くに降りるとあいさつもされません。そういうものだと思っ
ていましたが、きちっとした対応を見るとはやり気分のいいものです。


人は仕事に慣れると、マニュアルを自分の都合のいいように勝手に直して行なうことを
しがちです。でもお客様の満足度を考えたら、自分の仕事スピード優先の姿勢は怖いです
ね。

皆さんはいかがですか。



第69号  2003/9/28       

近くに建物の建設工事があると、関係車輌の出入により交通量が増えるだけでなく、駐車の問題も
でてきます。大きい現場では関係車輌の駐車場を確保しますが、小さい現場ではなかなかそうもい
かず、道路を駐車スペースとして利用していることも見受けられます。また午前、昼、午後の休み
時間などは作業員がコンビニなどに買い物に行く姿も見え近隣が騒々しくなります。

 ある駐車場経営者が話していました。そこは入り口が2個所あり、裏の入り口は幅5m
の道路を4m程進まないと駐車場スペースに入れないような立地になっています。裏口は
緊急の時に使うようにして、普段はチェーンを張って入れないようにしていました。この
スペースは丁度回りの建物の陰になっていて、雨天や好天の日に、雨や日差しをよけるた
めに、自転車やバイクに乗ってる人がわざわざチェーンをくぐって入ってきてちょっと一
休みしたりすることが多いのです。

ある朝作業服を着た青年がバイクを置いて立っていました。駐車場内を掃いていた経営
者と目が合っても知らん顔です。近くの建設現場に行く途中、時間調整で一休みかと気に
もとめずにいましたが、しばらくしたらバイクだけがありました。結局一日中無断で置か
れたまで、夕方にはいつのまにか帰ったようでした。

翌朝また同じ場所に止めようとした青年がいました。そこで声をかけました。
「あそこの現場の人?」
「ええ」
「ここは有料駐車場なんで、もし置くなら手続きをしてくれないと困るんだけど」
「あっ、はい」と素直に車を動かしてどこかに移動しました。でもなんて常識のない従業
員なんだと怒っていました。工事が始まる前に現場責任者が周辺の家に挨拶に回ったそう
です。でも工事関係者があんな迷惑なことをしているんだから、あの挨拶回りも単に形式
的なもので迷惑かけようが本気に考えていないよと話していました。

 彼自身は他の車の邪魔にならないし、バイクが日差しにあたらないし好都合と勝手に判
断して置いたのでしょう。若者ならやりがちな非常識な行為も建設会社の工事姿勢と思わ
れてしまうのです。怖いですね。工事関係者一人ひとりの行為がいかに周辺に影響がある
か、いかに年齢が若い関係者でも、その行動言動は会社の姿勢なのです。そうした意識を
持たせないと、知らないところで周辺住民に誤解されることも起こるでしょう。

 サービス意識はどの業種にも必要ですね。

皆さんはいかがですか。



第70号  2003/10/12     

先日福岡市のあるホテルで、総勢8名で楽しく会話をしながらランチコースを食べまし
た。食事の最後にデザートがでますが、3種類から選べます。
「ココナツミルク、シャーベット、アンニンドウフからお好きなものを選んでいただけま
すか」との接客者の呼びかけに、それぞれが好きなものを選びました。見ているとシャー
ベットを選んだ人が1番多く4名でした。

それぞれのデザートを運んできた男性の接客者に
「普段3種類のデザートの中で一番人気のあるのはどれ?」
「シャーベットです」
 私はシャーベットを選んでますから、平均的な好みなんだなと納得しながら、次の質問
をしました。
「じゃー1番人気がないのは?」
「皆さんそれぞれお好みがありますから」とコトバを濁してしまいました。

 うまい答え方だなと思いました。もし人気のない商品名を言ってしまえば、その商品を
注文した人はあまり良い気持ちではないかもしれません。実際にその場でココナツミルク
を注文した方が「いやーココナツミルクが一番人気がないと言われたらどうしよう」と笑
っていましたが、会話はその場の人々の人の心理に大きく影響します。

もしかしたら、残りの商品の人気の程度が同じだったために言えなかったのかも知れま
せん。でも不思議なもので周りにいた人は反応のいい接客者だな、さすがホテルの接客者
と言っていました。

お客様との会話は、対象にしているお客様以外のその場にいるお客様全員の気持ちを配
慮することが必要なのです。お客様に尋ねられたことは、正確に答えなければいけません
が、そのコトバの周りへの心理的な影響も考えなくてはならないのです。会話することは
ただコトバを発することでなく技術の要ることですね。

皆さんはいかがですか。



第71号  2003/10/26       

ある旅館で常連のお客様から電話がかかりました。受話器を取った女性スタッフが
ひと通りの世間話をして、日程のことに話が及びました。
「来年になるのですが、7月13日の火曜日は空いていますか」
「ずいぶん先ですね」
「そうなんですよ」
「ちょっと待ってください、はい、空いていますよ」
「その日にお願いしたいのですが、抑えておいていただけますか」
「はい、わかりました」と電話を切りました。その時は7月13日であると確信をもって電
話を切ったのです。

その後、旅館の主人に連絡事項として伝えました。
「7月13日の火曜日に予約がはいりましたけど」
「ずいぶん先だね、本当にシチガツ(7月)なの、シガツ(4月)あるいはイチガツ(1月)
と言うことはないの。発音が似ているから」
「ずいぶん先と言ったら、そうなんですよとお答えになりましたから、1月じゃないと思い
ますけど、13日の曜日を調べてみましょう」
調べてみると1月も4月も13日は同じ火曜でした。

不思議なものです。人に言われると先ほどまで確信をもって電話を切った内容も自信が
なくなってきます。確かにそう思ったのに、聞き間違えかな。考えれば考えるほど不安に
なってきました。あの時コトバを言い換えて「ナナガツジュウニニチの火曜ですね」と確
認しておけばと悔やんだと言います。もう一度伺うなんてサービス業としては恥じだなと
思いながらも、最終的にはお客様に確認の電話をして、間違いないとの返事をもらったそ
うです。

つい話し込むと肝心なビジネスルールを忘れがちになりますね。どんなときでも基本は
はずせません。聞いたらそれを言葉に出して確認する。似た音を確認する際はコトバを言
い換えるか、ゆっくりと一音づつ発音するなどの工夫が必要です。それがないとわざわざ
もう一度聞き直すような無駄な時間が必要になります。常にコトバは注意深く扱う必要が
ありますね。

皆さんはいかがですか



第72号  2003/11/9       

お酒を飲んだ後に、ちょっともう一軒で終わりにしようと思う人は多いですね。

先日も広島のすし店で、3人で飲んで、食べて、楽しく会話をして、帰る時間になりまし
た。広島の人は飲んだ後はお好み焼きでしめると聞いていますので、我々もと板さんに近
所のお好み焼き店の場所を聞いてみました。有名なお好み村を教わりましたが、ちょっと
遠いのです。おなかは一杯ですから、わざわざ車で行く気にはなりません。ほんのちょっ
と、一切れでいいから食べてみたい気分だったのです。帰りにレジの接客者にも聞いてみ
ましたが、わからないとのことでした。

歩いて3分ほどのホテルに帰る途中、ホテルの横の通り、20mほど奥に赤い暖簾のかか
った店があったので、行ってみるとお好み焼き屋でした。偶然の発見についてると思いな
がら、私が入ってゆきました。カウンターだけの店で、客は誰もいません。奥にいた年配
の主人に
「3人ですが、いいですか」
「もう終わりですよ」と振り向きざまに教えてくれました。
「はい、どうも」と店を出て、連れの二人にそのことを伝え、再び店に戻り
「この辺にお好み焼き屋はありますか」と尋ねると、仕事をしたまま、私を見ないで
「わかりません」との返事です。

しょうがないな、太るから食べないほうがいいということなんだなと、勝手に納得の理
由を考え、でもこの店を発見したんだから、もしまたこのホテルに泊まることがあったら
今度はこの店に寄ってみようと店の発見を喜びながらホテルに戻りました。

翌日、雑談の中でその話をしたら、その場にいた地元の人が、あのあたりの裏にはお好
み焼き屋が結構あるんですよ、人気の店もあるんですよ、ただ10時ごろはどの店も閉まっ
ていたでしょうね、と教えてくれました。その話を聞いて、不思議なもので、昨日は発見
を喜んでいた店に対して不信感を持ってしまいました。

店を見ても新規開店ではなさそうですし、同業者の存在は知らない訳ないのではないか、
同業者は競争相手だから儲けさせたら損だ、店の場所を教えることはないと考えたのでは
と思えたのです。

 もしかしたら、本当にわからなかったのかもしれませんが、でも愛想のないたった一言
だけの返事でわざと教えないと思えてしまったのです。人は自分にとって都合のいい考え
方をしてしまう傾向がありますから。

もし、あの場合親切に店を教えてくれていても、10時過ぎの遅い時間でしたから、同じ
ように閉店時間を過ぎていて、競争相手に客を取られることはなかったでしょう。でも次
に来た時は、親切だったこの店に寄ってみようと思うかもしれません。また本当にわから
なくても、もしあれば町会の地図を見せるとか、一緒に考えてあげてると言う工夫をすれ
ば、やはり、感じ方は違うでしょう。それに費やす時間だって1分ぐらいしかからないで
しょう。

 今回のように、嘘をつかれたような印象をもってしまうとマイナスイメージが大きいで
すね。自分の営業時間内のお客様との会話だけでなく、営業時間後の会話も意識しないと
怖いですね。

皆さんはいかがですか。



第73号  2003/11/23       

廊下のアルミ雨戸の開閉時のすべりが悪いので調べてみると、戸車が壊れているものが
数箇所見つかりました。結構修理するのが好きですので直そうと思い、雨戸と戸車の寸法
を測り、近隣のホームセンターに問い合わせの電話をしてみました。

家から2km離れた中型のホームセンターA店にかけると
「実は、223cm×91cmの寸法のアルミの雨戸で、裏に〇〇(メーカー名)7723という記
号の書かれたシールが貼ってあります。戸車は、簡単に言うと17mm×46mmの板に17
mm×31mm×14mmの箱が乗っていて、その中に樹脂の車が入っているような形です。
 それをネジ1個所で雨戸にとりつけられているのですが、そのような戸車ありますか」
「メーカーに問い合わせて連絡します」との解答でした。その後電話があり
「連絡いただいた番号は品番ではないので、ちょっとわからないのですが。戸車の寸法を
測って、店にある商品と比べて同じようなものを使っていただけますか。」という連絡
でした。実際に現物を持って行ってみても、同じ物はありませんでした。また現物を接客
者に見せても「すみません」とないことを謝るのみでした。

今度は5kmほど離れた大型のホームセンターB店に同じように雨戸と戸車の寸法を教え
て問い合わせました。
「実は、戸車を探しています。223cm×91cmの寸法のアルミの雨戸で、・・・・」
「寸歩を言われてもわかりません、現物をお持ちになり、展示している戸車から同じサイ
ズを探していただけますか」と私の話を終わりまで聞かないで、話の腰を折って説明し
ました。そのホームセンターは在庫種類も多いので、あるかもしれないと期待をもちまし
た。

 店内には、大小さまざまな戸車が50種類ほど在庫として展示されていました。しかし目
的の戸車がありません。そこで担当者に現物を見せて
「先程電話したものですが、この戸車はないんですが」
「あーこれですか、この手の種類はないんです。よくお客さんが聞きに来るんですが、
もう製造中止になっているんですよ」
「製造中止?じゃーどうしたらいいの」
「この中で形の似てるようなものをちょっと直して利用したらどうですか」
「えー、直して?じゃー大変じゃない」
「それしかないんですよ」

その話を聞いて、製造中止になってるというコトバが信じられず、そのまま帰ってきて、
メーカーのホームページのアドレスを探し出して、ホームセンターに問い合わせた同じ内
容の情報を書いて、お客様相談室にメールで直接問い合わせてみました。すると、「お求
めの戸車の在庫はあります。金属部分が鉄かステンレスによって1個270円と500円にな
ります。お申し込みは直接電話でお願いします」と返事が返ってきました。電話をしてみ
ると、戸車は金属部分より樹脂部分が壊れやすいので、270円の戸車がいいですよと、低価
格のを勧めます。すぐ12個分の戸車を注文し送料を含めて4000円強でした。しかも宅配
便であくる日に届いていました。

同じ情報を提供しても、金物専門店の従業員は探せず、一般の消費者が探し出せた事実。
これは怖いですね。もしかしたら、売上金額も少ないから一生懸命探さなかったのかもし
れません。または年配でパソコンを使うのが苦手なのかもしれません。パソコンを活用す
れば、専門業者なのですから簡単に情報は引き出せたでしょう。でも商品の問い合わせは
卸業者の知識にだけ頼ったのかもしれません。実体はわかりませんが、店に問い合わせた
り、店に行って探した時間的ロスは大きいものです。今回の経験から、メーカー名がはっ
きりして、サイズがわかれば、直接メーカーに問い合わせる方が正確な情報が集まるし、
時間的労力的なロスはなくなると確信しました。パソコンが存在する以上、年配だからパ
ソコンが苦手だからという言い訳をして、積極的にパソコンを活用しようという意識がな
ければ、お店の信用力は低下するのではないでしょうか。

皆さんはいかがですか。



第74号  2003/12/7        

先日都内のデパートに行きました。受付の女性に
「特別催事会場はどこですか」
「6階と7階でございます」
「エレベーターは?」
「そちらの奥にございます」
きちっと教えてくれるのですが何か冷たい、事務的な感じがしました。

エレベータの前に行くと、案内の女性がいて、声をかけてくれました。
「こちらは6階と7階のみに止まります」
「特別催事場行きなんだね」
「はいそうです」
「じゃーこれに乗ろう」とそこの位置で待ちましたが、案内してくれた女性に、すごく親
しみを感じました

不思議です。どちらも同じ年齢ぐらいでかわいい女性です。でも同じ説明する行為でも
感じが全然違います。その差はなんでしょうか。笑顔なのです。会話は人と人の一瞬の人
間関係を作る行為です。単に情報のやり取りだけでなく、あなたと人間関係を作る意思が
あることをコトバ以外のもので表現しなければ、気分よく受け入れられないのでしょう。
接客の最高の武器は笑顔だと言われる所以でしょう。

すぐにエレベーターがやってきて私たちが乗り込むと、案内した女性も一緒に乗り込ん
で、エレベーター操作の女性と交代しました。先ほどの笑顔で親しみを感じているので、
不意に疑問に思ったことをつい聞いてみました。
「こういう仕事は何往復すると交代なの」
「1時間半で交代です」
「これから1時間半、大変だね」
「ありがとうございます」
やはりニコニコしながら答えてくれます。すると一緒にいた同僚から「他にもお客さんが
乗ってるのに迷惑でしょう」というので「でも、みんな聞きたいことじゃないかな」と答
えました。

このエレベーターには他に3人のお客さんがいましたが、年配の女性2名はこちらを向
いてニコニコしてうなずいていました。もう一人年配の男性は知らん顔、各階の案内板を
見ていました。年配女性の笑顔をみて、質問した行為を認めてくれたとほっとし、男性の
姿に迷惑だったかななんて感じました。

人は相手の表情でその気持ちを判断しますから、どんなときでも笑顔を工夫することで
一瞬の会話でもスムーズに運ぶのではないでしょうか。

皆さんはいかがですか。



第75号  2003/12/21        

今年も後10日ばかりになりました。忘年会も多い時期で、なおさら何かとあわただしく
感じられます。

不景気だ不景気だと言われてる割には忘年会の数が多く、毎日飲みくたびれていますと
言う人が私の周りには多いようです。

特に飲食店ではかき入れ時期とばかりに、いろいろな演出、サービスに工夫をこらし
お客様を楽しませています。

私の知り合いが10人ほどの仲間とあるホテルのレストランで忘年会を開いた時のことで
す。コース料理で前菜が出て食べ終わった頃に、そのレストランのシェフが出てきて、挨
拶をし、今日の料理の説明をしたそうです。それぞれの前においてあるコースメニューを
見てもらいながら、何と何の材料でどのように作ると一生懸命に説明してくれました。
一通り話を済ませた後に、「どうぞごゆっくりにお過ごしください」のコトバを残して立ち
去り、次のグループに説明に行ったそうです。それから料理の再開だったとのことです。

一生懸命の説明をしてくれ、料理の内容もそこそこ理解したのですが、かえって不満が
残ったと言ってました。食事をしながら、どんな材料だろう、どんな作り方だろうと想像
するのがうれしいのに、その楽しみが半減したとのことです。何組も忘年会のグループが
あったのでしょう。シェフは仕事の合間にどの順番で回ったらいいか工夫したのかもしれ
ませんが、もし料理が終わった後に説明があったらこのような不満はなかったでしょうに。

最近の接客においては、料理の材料、作り方などを聞かれる前に説明することを持ち味
にしているところが多くあります。しかし、どんなにいい内容でも、その内容がすべての
お客様に気持ちよく受け入れてもらうように工夫しなければ、そのサービスがかえってマ
イナスになることもあるのです。

説明をすることは、話すべき内容にばかり気を取られないで、聞いてもらいやすい状況
づくりをしなければ折角の努力も効果が薄くなりますね。

皆さんはいかがですか。



第76号  2004/1/4        

暮も押し迫った30日の夕方に群馬県に住む親戚が危篤という連絡が入り、すぐに
車で病院に向かいました。約3時間かけて着いた時には午後9時をまわっていまし
た。この時間ですから、通用口から入り守衛室で病棟を確認し、長い廊下を通って
病室の場所にたどり着きました。入口のナースセンターに声をかけました。「〇〇
の見舞いに来たのですが」ちょうど若い女性看護師が2名いて、テーブルに向か
って何か書類を確認していました。そのうちのひとりが無表情に私たちを一瞥し
「ちょっと待ってください。」と何か調べに行きました。なかなか帰ってきません。
遅いのでいらいらしていると「514号です。その廊下をまっすぐ行って突き当たった
右側にあります」と言いにきました。病室まで見舞いが来たことを確認に行ったの
かも知れませんが、黙ってしばらく待たされたためいらいらしました。

病人に会って、病状も持ち直したようなので、1時間ほどいて帰ることにしま
した。帰りもナースセンターに声をかけました。
「お世話様でした」
「はい」とかすかに聞こえる小さな声でコトバを返してくれましたが、こちらを
全然見ないのです。これからまた3時間かけて帰らなければと思っていた時でし
たから、その対応に疲れがどっと出たように思えました。

同行していた父も同じに感じたのか、その態度を見て
「愛想のない看護婦だ」
「そんな大きな声で言うと聞こえるよ」
「聞こえたほうがいいんだよ。反省するから」
と言っていましたが、果たして聞こえても、反省などしないで口うるさい見舞い
客だと感じ、その気分を入院している患者やその家族にぶつけられたら困るなと
思いました。

看護師さんは日々病人を治すために神経を集中していますから、いちいち人との
対応にまで気を使えないと思うかもしれません。しかし、病院での仕事は人の喜び
や苦しみ、悲しみに直面しますから、病院関係者のコトバや態度は相手の情緒面へ
の影響が大きいのです。それを考えたなら対応のサービス意識は必要でしょう。

最近ではそうした面に力を入れている病院も多くあると聞いていますが、先日お話
したある病院の婦長さんも「〇〇さん、院長先生もそうおっしゃっていますから、
手術を決断したらどうですか、なんて通常のサービス業なら使わないような敬語の
間違いを平気でしていますから、まだまだサービス業の認識がないんですね」と
言っていましたが、不安感を与えないで、信頼して患者やその家族に治すことだけに
集中させる雰囲気を作るためにも、対応の仕方が重要になって来るでしょうね。

あの時も「今病室に確認を取ってきますから」のように待つ理由を一言付け加えて
くれれば、いつ会えるんだと不安にならなかったでしょうし、きちっと聞こえる声
でこちらを見て返事をしてくれたら、もし可能なら「お疲れ様でした」のコトバでも
かけてくれたら、帰るときの気分も変わっていたでしょう。対応のちょっとした
工夫で感じ方が変わるはずです。

皆さんはいかがですか。



第77号  2004/1/18        

デスカウント店の出現により、街の酒屋さんは、状況が厳しくなっています。客側
からしても、昔からなじみの酒屋さんだから、注文したいけれでも、価格があまりに
違うからと、取引をやめたり、あるいは取引をだいぶ少なくしている例が多いようで
す。

 そんな中で私の知人は、それほど量は多く飲まないのだからと、ディスカウント店
は一切利用せず、近隣の酒屋さんと昔ながらの取引を続けています。その彼が、ある
時ギネスビールを注文したそうです。すると、取り扱ってないとのこと。そこで
「ドラフトギネスはあのクリーミーな泡がたまらないんだよね。取り寄せてもらえ
ないかな」
「うーん、あれは価格が他のビールと比べて高いですから・・・・」
しばらく沈黙があったそうですが、
「わかりました、取り寄せます」
と言って願いを聞いてくれました。

その後しばらくして、配達してくた時に、喜喜として話を聞かせてくれました。
『いやー、前にねギネスビールを取り寄せてくれといわれた時に、あれは高いから
どうせ売れないなと思っていたんですが、店内に陳列したギネスビールを見て
「あれ、ギネスがあるんだ、珍しい、これください」とか、「おたくでギネス売って
るって聞いてきたんですが」とお客様が増えて大助かりですよ。これビールのおつ
まみに召し上がってください』と、注文品の他にサービスとしてピーナッツの袋を
置いていったそうです。

店の人は毎日良い店にするために努力し、勉強していることでしょう。しかし、
一番のヒントは、実際に店を利用しているお客様なのです。接客時における何気
ない会話からマーケート調査ができ、それをどう判断するかが大きなポイントに
なるのでしょうね。接客時はただ商品の受け渡しだけと考えていると大きなヒント
を失いますね。

皆さんはいかがですか。



第78号  2004/2/1        

歩きなれた街を歩くと、見慣れた店の変遷を見ることができます。

子供の頃からよく通った道路沿いに、中華料理店がありました。その店は夫婦
でやっていて、裏道の平屋の店でした。地方から出てきた感じの夫婦で、その主
人は厨房から外に出たときは、会う人に誰にでも元気よく挨拶を交わし、店内で
の奥さんの接客も、明るく気配りのある対応でした。そのせいか評判もよく、
そのがんばりでその後建物が3階建てのビルになり、従業員も何人か増えてい
きました。お店が成長する姿を見るのはとても気持ちのいいことで、その店の
前を通るたびに心の中で「がんばれ」と応援していました。

今でも月に1度ぐらいはその店の前を通ります。先日何年かぶりに、そこで食事
をしました。主人と従業員との大きな声の会話が聞こえてきて分かったのですが、
今では主人夫婦以外の従業員は、息子と娘だけの3人になっていました。

食事中に、出前の器を取りに行った息子が帰ってきました。外から厨房に入る出
入口があるのに、わざわざ店の入口(素通しのガラスの引き戸で自動ドアにはなっ
ていません)から入り、しかも手に器を持っていてふさがっていたので、右足で
ガラスドアを押し開けました。戸のすべりがいいので簡単に開きましたが、入る
なり店内にいる常連らしき客にだけ、「あっ、どうも」と挨拶をし、町内で旅行
に行ったのでしょうか、旅の話をしばらくした後、他にも何人か客がいましたが、
その前を素通りして厨房に消えていきました。食事が済んで、レジで会計をしま
したが、担当の娘さんは、厨房にいたそこの主人と家庭内の話をしながら、ただ
お金を受け取り私に対して無言で対応していました。

かつて、この店はマニュアルなどないけれど、親しい人を持てなすような暖かい、
感じのよい接客、店内の客すべてに配慮した、不快な気分を与える接客ではなかっ
たと記憶していましたからびっくりしました。まるで、その店の家族の生活空間の
中で食事をしているように感じられたのです。

経営者がよく言います。自分の子供を教育するのは難しい、どうしても厳しすぎ
るか、甘やかしすぎるか極端になりやすいと。小さな甘やかしが慣れてしまい、今
のような接客が普通になってしまったのでしょうか。とても昔の店の雰囲気しか知
らない私にとって、同じ主人夫婦がやっている同じ店に思えませんでした。

 代替わりを進む中で、味を伝えるのも大切ですが、味を引き立たせる接客のノウ
ハウをどう伝えるか工夫しなければ魅力は半減しますね。

皆さんはいかがですか。



第79号 2004/2/15     

地方に入った時の楽しみは、なんと言ってもその地方の名物を食べることですね。
ホテルのフロントで店を聞くと、情報として教えてはくれますが、その教え方はまち
まちです。 

ホテルでは、情報として多くの店を教えてくれます、また地図に店別にきれいにま
とめたものを渡すところがあります。それぞれ情報としてもらえることはうれしいの
ですが、本当に感謝し記憶に残るのは、それに何かもうひとつサービスを積極的につ
け加えてくれた時です。

先日、西日本の海沿いのT市に行った時です。仕事が終わって9時にホテルに戻っ
てきたのですが、何かまだ休む気にならずフロントで、夜遅くまで地酒の飲める店
を尋ねました。
「このあたりでは、〇〇と△△が人気がありますが」
「あっそう、ここから近いの?」
「〇〇は右を出て、〇メートル行った左側にあります。△△は歩くとちょっとかかり
ますね、15分ぐらいです。車を利用される方が楽かもしれません。今席があるか
両方の店に聞いてみますね」
といって2軒に電話をかけてくれました。

その対応に、そこまでしてくれるのか、とかえって恐縮しました。
不思議ですね、こちらから、「今席があるか問い合わせてくれる」とお願いしたら、
もちろんやってくれますが、でも当たり前のサービスと感じ感動はしないでしょう。

人が次に行うであろうステップを、接客者側から先に行う事は、当たり前のサービス行為を
小さな感動に変えることができますね。

皆さんはいかがですか。



第80号 2004/2/29        

地方の宿泊先ホテルのラウンジでのことです。夜の9時を回っていました。ちょっ
とワインが飲みたくなって、ウェイターさんにワインについて尋ねました。二十歳代
半ばの男性でとても一生懸命答えてくれます。

でもちょっとコトバが気になりました。何か尋ねると「さようでございます」を連
発します。いわゆる敬語でも最上級に近いコトバです。一生懸命で真剣に答えようと
する気持ちは伝わってくるのですが、そのコトバ以外は、「ちょっと、わからないの
ですが」「知りません」「聞いてきます」。話をしていて「それをいうなら、わかり
かねますだろ、存じませんだろ、調べてまいりますだろ」と突っ込みたくなってしま
うのです。

「はい、そうです」という内容の時だけ「さようでございます」のみです。話をし
ていて彼自身の対応と言葉が一致していないように思えたのです。「さようでござい
ます」と言ってる時の彼は、敬語を使ってるというよりマニュアルに書かれた表現を
話しているだけという感じがしたのです。かえってお客様に対する気持ちが伝わらな
いように感じます。何も「さようでございます」という表現を使うより「はい、そう
です」のコトバを使ったほうが、彼のお客様に対する真摯な態度が伝わるのにと思い
ました。

先日乗った観光バスのガイドさんも同じことが言えました。年齢は30歳半ばでな
かなかの美人です。ガイドする技術も優れていますし、よく勉強をしていると見えて、
日常の話題もさりげなく話の中に入れます。そんな彼女ですが、個人的に話をすると、
とてもがさつに感じられるのです。なぜかなと思いましたが、やはり話し方なのです。

 ガイドする時は、丁寧語できちんと話しますが、個人的に話す時はすべて友達コト
バなのです。「そうよ、金がかかるの」「あたしも、趣味で熱帯魚は飼ってるんだけ
どね」こんな調子で。

 親しみを演出しているのかもしれませんが、初対面の客に向かって、会って時間も
経っていないのに、そんな風に話されると、品がないなと思ってしまいます。もしか
したら品があって、親しみのある人なのかもしれません。でもそうは見えないのです。

コトバって難しいですね。たとえ自分がどんなに工夫しても、そのとおりに相手が
受け取られなければその努力は無駄になりますから。コトバ遣いは、まさに話す相手
に対する思いの表現とみなされてしまいますから、怖いですね。

皆さんはいかがですか。



第81号 2004/3/14        

先日帰宅途中の電車の中で偶然友人に会いました。3年ぶりぐらいでした。話をし
ようと二人とも途中下車して近くの居酒屋に入りました。店はお客さんで賑わってい
ました。

酒の飲み方は、飲む時はつまみがないほうが酒が上手いと言う人もいれば、食べる
ものが多くないと酒は上手くないという人がいます。私も友人も後者のほうです。最
初につまみを10品ほど頼みました。そして生ビールを飲んでいたのですが、最初につ
まみが2品来ましたがあとは全然来ないのです。また生ビールのお代わりをして話を
していました。それが終わるころにもまだ来ません。

あまりに遅いので通りかかった接客者に催促しました。すると「すみません。すぐ
お持ちします」と返事はいいのですが、やはり来ません。次にたまたま通りかかった
店長らしき40歳代の男性に催促しました。残ってる生ビールの量を示しながら「もう
生ビールはこれしか残ってないんだけど、まだ注文した料理が8品も来ないよ」「す
みません、催促してきます」そしてやっと料理が出始めました。そのうちビールがな
くなったのでまたお代わりを注文しました。あまりの料理の遅さにいらいらして、せ
っかくのなつかしい話も台無しでした。二人で「ダメだ、こんな遅くちゃ、来たのは
失敗だったな」などと話していました。

非常に不満を持って、レジで会計をしていると、先ほどの店長が寄ってきて、謝り
ました。
「申し訳ありません、本日は料理が遅くなってご迷惑かけました。」
「いや、忙しくて繁盛して結構だよね」
「申し訳ありません。今日はいつもよりお客様に多く来ていただいて、時間がかか
ってしまいました。迷惑をかけてしまって申し訳ありません。またお越しくださ
い。次回はそのようなことがないように気をつけますので、もう一度チャンスを
ください。申し訳ありません」
とペコペコ謝りながら、このような挨拶をしてくれました。不思議ですね、もう来
たくないなと言っていた二人がそのコトバで「また来るよ」なんて答えていました
から。

接客はやはり終わりの対応が重要ですね。そこでお客様は最終的な店の評価をし
ます。この時もし店長のコトバがなければ、最悪の評価になっていたでしょうし、
もう行かないでしょう。でも店長の真剣な対応があったために、苛立ちもまぎれて、
友人と来月来てみようと、それを理由に会う約束をしたほどです。最終評価は次回
に延びました。次回は果たしてどんな評価になるでしょうか。

皆さんはいかがですか。



第82号  2004/3/28       

各地で見本市、展示会が開かれていますが、先日ある展示会に行ってきました。ち
ょうど製粉会社のブースを通りかかったら、その会社の製品を使った料理実演が始ま
るところでした。イタリアン料理でしたから興味深く見学しました。

そのステージの前に長いすが2個置かれています。12人ほど座れます。丁度席が空
いていたので座って始まるのを待っていました。すぐにコンパニオンの紹介で何店か
支店のあるイタリアン料理店の総料理長が出てきて、料理を説明しながら作り始めま
した。そのうち観客が集まって黒山の人だかりになってきました。

前の長いすに座ってる客を見ると、20歳前半の若い男性です。ちょっと場違いな感
じがしていましたから、関係者みたいだなと思っていました。実演が始まる時のコン
パニオンとのやり取りで、総料理長が客を見て「知ってる顔ばかり」と言ってました
ので、きっとお弟子さんだったのでしょう。にぎやかに騒ぎながらその実演を見学し
ていました。実演も終わり近くになったら、舞台の裏でお客さんへの試食用の料理を
作っていたコック姿の男性が出てきて、前席の彼らの横に無理に座って隣の後輩と肩
を組みながら何かを話していました。

実演が終わって試食用の料理が配られ始めたら、前に座っていた彼らが我先にと配
布料理を受け取り、食べて「うまい」などと叫んでいました。この光景を見ていてこ
の店へは行きたくないなと思いました。

彼らにとっては非番の日なのかもしれません。一般の見学者として自由に楽しんで
いいのかもしれませんが、しかし料理長の関係者だと分かるようでしたら、彼らの姿
勢がその店の接客姿勢と思えてしまいます。もし一歩下がって、他の見学している人
たちを優先する配慮が見えれば、一度この店に行ってみようかなと思ったかもしれま
せん。例え店の外でも自分は店の広告塔であるという気持ちが大切ですね。

皆さんはいかがですか。



第83号  2004/4/11        

「〇〇(店名)、〇〇、〇〇は最高ですね」と突然話し始めたのです。ある会合で
Hさんが興奮して話してくれました。

彼女がホームセンターの〇〇で、価格が5000円ほどの直径40~50cmぐらいの大
きな鉢を買いました。支払い時に、接客者が他の商品は周りを網で囲われているカー
トの上の段に置き、その鉢はカートの下の段に乗せてくれました。カートの下の段は
周りが網で囲われていなく平らですから「上でなくて平気かしら」とカートから落ち
る不安が一瞬よぎりましたが、接客者の「気をつけてお帰りください」のコトバを聞
いて、接客者が乗せてくれたから大丈夫だろうと思いました。

カートを押して駐車場に行きましたが、エレベーターから降りて、すこし段差があ
るところを通ると、あっと言う間もなく、鉢がカートから落ちて割れてしまいました。
びっくりすると同時に、あーあ、5000円分、違うものを買えばよかった。もったいな
いことをしたと悔やんだそうです。

どうしょう、店に相談しても何の対応もしてくれないかもしれないと思いながら、
思い切って接客者に話してみました。
「カートから落ちて割れちゃったんですが」
「いいですよ、代えますよ」すぐに気持ちよく言ってくれたのです。誰かに相談した
りするんだろうと思っていましたからHさんにとっては予想外の反応です。
「これと同じの在庫があるかしら」
「ちょっとお待ちください」と調べてきて、そこから新しい鉢を持ってきてくれたの
です。

その喜びを誰かに話したくて、私に会うなり「〇〇,〇〇、〇〇」と店名を3度も
続けて教えてくれたのです。接客者はきちっと店の対応ルールをしっかり頭に入れて
いたので、即断で対応できたのでしょう。例えば時間をかけて誰かにアドバイスを求
めて同じ対応をしても、喜びは小さく、店名を連呼して誰彼にこのことを言いたいと
思うような喜びにはならなかったかもしれません。やはり時間をかけない即断即決は
お客様の記憶に残りますね。

皆さんはいかがですか。



第84号  2004/4/25        

先日急に不祝儀用袋が必要になり、たまたま近くにあったスーパーに入りました。
レジに並びましたが、丁度夕方の買い物時間帯で混んでいて、私の前にお客様が3人
いました。

何気なくキャッシャーを見ていると、お客様の精算をしている途中で「いらっしゃ
いませ」と次のお客様を見て笑顔で挨拶します。混雑しているので待っている次のお
客様に気を配っているな、と思いながら見ていました。

順番が次のお客様になりました。商品をレジに登録している途中で、やはり待って
いる次のお客様に「少々お待ちください」と笑顔での挨拶です。なかなか感じがいい
んですね。

私の番になりました。私の買い物は袋一枚でしたから、すぐに金銭授受が済みまし
た。笑顔での「ありがとうございました」の挨拶が感じよく、気になってそのキャッ
シャーをその後もしばらく観察しました。すると対応している途中で、はやり必ず次
のお客に挨拶しているのです。

マニュアルかなと思い他のキャッシャーに目をやると、そのようなことは誰もやっ
ていないで、ただ目の前のお客様にだけ夢中で対応しています。彼女だけの工夫なの
です。そのせいか、彼女のレジのお客様は精算が終わると「ありがとう」あるいは「お
世話様」など言葉をかけている割合が多いように感じました。

ちょっとした接客者の働きかけが、待っているお客様との関係を良好にさせ、仕事
がスムーズに運んでいるのではないでしょうか。

皆さんはいかがですか。



第85号  2004/5/9        

先日ある駅の改札口で午後7時30分に友人と待ち合わせをしました。10分ほど早
く着いた私は、時間つぶしに改札口付近でチラシ配りをしている3人の男女を観察し
ていました。3人とも飲食店の接客者のようでした。

改札口から出てすぐのところで長身の男性と小柄な女性が配っています。男性は、
あるところを起点にして、お客様と一緒に2mほど歩きながら無言でチラシを配りま
すが、チラシを出すタイミングが遅いせいか、受け取ってもらえない率が多いのです。

女性は、移動はしないのですが「お帰りなさい」「このチラシで2割引になります」
と笑顔で挨拶や店の特典を声に出して配っていました。チラシを提示する動作も大き
く、チラシを出したところへ、1~2秒後に丁度歩いてきたお客様の手が届くようなタ
イミングになるのです。結構お客様が受け取っていました。

もう1人の男性は、照れくさいのでしょうか、改札口から少し離れた、ちょっと暗
くて人通りの少なくなったところで配っています。その人は顔中にヒゲをはやしエプ
ロンをかけています。店の中で見たら雰囲気を作れるかもしれませんが、改札口付近
で見るとなんか不潔な感じです。配り方も無表情で、肘から下だけしか動かさず、動
作が小さいのです。すぐそばに来たお客様しか受け取れない状況です。そのせいかあ
まりチラシを受け取る人がいませんでした。

チラシ配りは店に来てもらうための作業ですから非常に大変です。チラシを受け取
ってもらい、店に興味を持ってもらうためには、店内での接客以上に工夫をしないと
効果が現われないでしょうね。

皆さんはいかがですか。



第86号  2004/5/23        

ダイエットを無視していくつになっても、飲んだ後にラーメンを食べるのが好きな
人は多いですね。先日友人と飲んだ後に、なんか物足りないからどこかでラーメンを
食べて帰ろうと、いうことになりました。

店がわからないので、近くで閉店準備をして、シャッターを閉めていたエプロン姿
の女性に尋ねたのです。
「この辺にラーメン屋ある?」
「ありますよ」
「どこか店を教えてくれない」
「どうせなら普通のラーメンじゃなくて、おいしい店のほうがいいですよね」
「できたら、人気のある店のほうがいいね」
「ちょっと待ってください、中に詳しい人がいますから」
店内に戻って事情を話し、若い男性と一緒に出てきました。その男性が
「〇〇〇があります。有名です。駅からまっすぐ行ったところです」
そして女性が付け加えて
「二つ目の角を過ぎると右側にあります。赤い看板ですからすぐ分かります」

閉店時で忙しいから分からないといっても済むでしょうし、また適当な店を教える
だけでも親切さは伝わります。それにも増して、せっかくだからおいしい店がいいで
しょうと、わざわざ時間をかけて紹介してくれました。ただ教えるだけでなく、教え
る内容の価値を上げる工夫がありました。そのせいか、その友人と次に会った時も、
あの店の接客はきっといいだろうねとその店の対応が話題に上りました。記憶に残る
対応って重要ですね。
  
皆さんはいかがですか。



第87号  2004/6/6        

ある組み立て加工会社の担当者が、電話でネジ販売店に必要部品を注文しました。
「ユニクロメッキのキャップボルト6×10が800本、6×15が600本。明日の朝間に
合いますね。」
「はい、間に合います」
翌日、配達された時に、配達者はいつものよく知ってる人なので、世間話をしながら、
受領書にサイン。中身は確認しなかったそうです。午後になってそのボルトを使って
の作業が始まると、寸法が違うことに気がつきました。6ミリのボトルを注文したの
に、5ミリのボトルが配達されていました。

すぐ電話しました。
「6ミリのキャップボルトを注文したのに、5ミリのがきてるんだけど」
「5ミリと注文を伺いましたよ。私も、いつも6ミリなのに5ミリでおかしいと思っ
たんですけどね」
「そうかな、5ミリって言ったかな。でもおかしいと思ったということは5ミリと言
ったのかな。5ミリのボルトは使わないから、そんなことないけどな。まーいいや、
すぐ替えてもらえますか」
「いいですよ。でももう配達は全部出ていますから、月曜になってしまいます」
「困ったな、今日中に組み立てて月曜に納品しなければならないんだけど」
「もし取りに来ていただければ、用意しておきます」
「分かったこれから取りに行く」
ボルトを取りに行ってなんとか、その日のうちに組み立てあがったといいます。でも
店まで時間をかけてわざわざ取りに行くのは、ずいぶん無駄な動きですね。

通常注文はfaxでするのが面倒なので、いつも電話で済ませているそうです。です
から、このようにトラブルになったときに証拠が残りません。工場側が悪いのか、店
側が悪いのか、本当の原因は分かりません。5ミリといわれておかしいと思ったとい
われれば信用するしかないのです。

店の電話を受けた人も本当に5ミリでおかしいと思ったら、「5ミリでいいんですか」
と確認をしてあげたら、間違えなかったでしょう。納品された時も、必ず商品を見て
確認してから受領印を押せばもっと速く分かったと思います。

仕事は、その流れに慣れてくると、面倒だったりして本当にやるべきことを省いて
しまい、それを修正するために無駄な仕事や手間が発生してしまいます。いつもこの
動きは何のためにやっているのかを意識しないと怖いですね。

皆さんはいかがですか。



第88号  2004 6/20          

人気のある店、行列のできる店って誰でも入ってみたくなるものです。その代表格
がラーメン店。どんな味かなと思って、入る時があるのですが、いつもまた並んで食
べたいと思わないのです。

その理由は、接客なのです。行列のできる店は話の種に入ってみようと思いますか
ら、誰か必ず連れがいます。店側とすると、短時間に多くのお客様を回転させため、
必ず相席です。お客様になるべく早く食べていただく配慮かも知れませんが、お客様
の立場で考えますと、相席は目の前に知らない人がいますから落ち着かないし、あわ
ただしく出ることになり、おいしいものを食べたという余韻が生まれないのです。

先日、H市で有名なラーメン屋に入りました。カウンター20席弱と4人掛けのテー
ブル5つの店でした。2人で入りましたが、たまたまテーブル席が空いていて、そこ
に案内されました。次の2人連れのお客様も隣のテーブルへ案内され、相席にはしま
せん。

入口では順番を待つお客様が並んでいます。接客もすばらしく、忙しいのに笑顔で
お客様に焦らせない対応をしてくれ、混雑店特有のあわただしさが無いのです。お客
様がいっぱい待っていて悪いなと思いながら食べていましたが、相席にならないため
に落ち着いて食べられ、しっかりラーメンの味を堪能しました。店を出る時に、今秋
この街に来た時にまた絶対に来ようと強く思いました。

短時間で多くの客回転を選ぶか、お客様の食事の雰囲気作りを選ぶかはお店の考え
方でしょう。でも受け取るお客様の印象は大きく違ってきます。

皆さんはいかがですか。



第89号  2004/7/4        

先日機内で買い物をしました。領収書をもらい忘れていたのに気がついて、飛行機
を降りる時にその旨を伝えました。しばらく待つようにいわれ、乗客が下りるまで待
っていました。

若いスチュワーデスがそばまでカートも運んできて、そこで書こうとしましたが、
肝心の領収書がありません。探している間、年配の女性チーフパーサーが、私共
に笑顔で「申し訳ありません、もうしばらくお待ちいただけますか」と丁寧に挨拶
をし、すぐ振り返って、若いスチュワーデスには、きつい口調で「領収書ないの!」
「向こうにあるんじゃないの!」と飛行機の中ほどのギャレーを指差して指示しました。

すぐ取りに行かせて書かせていましたが、その間、私たちにはニコニコと笑顔で、
やわらかく「申し訳ありません」、そして振り返って「領収書あった?」「急いで!」
きつい口調です。きっと怖い顔をしていたのではないでしょうか。あまりの落差に、
そんなにきつく言わなくてもいいのに、と思いました。そのせいか、若いスチュワー
デスさんは、よけい慌てだして、急いでいるのですが、逆に無駄な動作が多くなって
いるのです。何とか書いて渡そうとした時に、またきつく「ちゃんとかけた!」「金
額は確認した!」。若い彼女は「は、はい、申し訳ありません」と一生懸命詫びてい
ましたが、見ていてかわいそうになりましたし、かえってチーフパーサーのそれまで
のサービス時の笑顔がわざとらしく思え、意地悪そうに感じたものです。

部下に指示をしたりする場合は多くあるでしょう。部下に対する指導の意味であっ
ても、その指導の仕方を工夫しないと、外部の人間がそばにいる場合は影響が大きい
ですね。

常日頃ていねいな言葉使いで紳士的な人と思っていた方が、目前で「〇〇(名前)、
どうなっているんだ、いつまでにできるんだ!」「平気なのか!」などと、部下にき
つく怒鳴る調子で会社内部の連絡情報のやり取りしているのを見ると、その人の見方
がすこし変わって、がっかりすることがあります。

反対に、指導する時も「あー、違う、違う、そうじゃないんだよ、これはね・・・」
なんて言葉を選んで、やさしく諭している姿を見ると、第三者にとって、妙にその上
司に好感を持ててしまいます。

同じ組織の人同士の連絡行為も、周りの人にいろいろな印象を与えます。難しいで
すね。

皆さんはいかがですか。



第90号  2004/7/18        

先日、仕事で目的地に行く途中に、風邪気味で少しのどが痛くなっていたので、薬
局で薬を求めました。その店はドラッグストアのチェーン店でなく、商店街の中の昔
ながらの薬局です。年配の主人が一人いて、事情を話したら風邪薬、消炎剤など3種
類の薬を薦めてもらい購入しました。

主人の対応を観察すると、入店時の「いらっしゃいませ」の挨拶コトバも小さい声。
薬の説明もまさに蚊の鳴く声。自信を持って薦めているように感じられませんでした。
商品を無言でスキャンした後、「〇〇円です」と金額の請求をしますがはっきり聞こ
えません。「えっ」と聞き返しました。でも無視して商品の袋入れにかかります。仕
方がないのでレジのディスプレイを見て金額を渡しました。「じゃー2500円ね」返事
もなく、無言の作業です。その態度にまじまじとその主人を見てしまいました。しか
し決して目をあわさないで袋に入れ、おつりとレシートを渡す時に一瞬チラッと私の
顔を見たぐらいです。笑顔のない表情で終わりの挨拶もありません。

 余程何か悩み事があるのでしょうか、それとも体調が悪くて仕事をするのが辛くて
しょうがないのでしょうか、でもお客様にはそんな事情は関係がありません。チェー
ン店の接客者はマニュアル教育をされていますから、若い接客者でも商品、金額の読
み上げ、挨拶コトバの呼びかけなど基本的な対応ができます。どうしても比較してし
まいますから、もし同じ状況になったら、今度はチェーン店を探して行こうと思って
しまいます。

年配の主人は長年商売をしているのでしょうから、当然お客様と会話をして人間関
係を作ったり、説得する技術は持っているかもしれません。でも油断をするとたった
1回の対応で、お店に対する評価を下げてしまいます。怖いですね。接客は常に気が
抜けない高度な技術なんでしょうね。

皆さんはいかがですか。



第91号  2004/8/1         

先日、時計の皮のバンドを換えようと店に入り、サービスカウンターで自分の
時計を見せてサイズを尋ねました。
「この時計のバンドの幅サイズはどのくらいですか」
「17ミリです」
種々のバンドが置かれている陳列スペースから好みの17ミリのバンドを探して
カウンターに持って行きました。

「これお願いします」
「取り付けますか」
「はいお願いします」
接客者はバンドを見て、無言で陳列の場所に行って、何か比べて違うものと換
えて持ってきたのです。せっかくあれこれ迷いながら気に入ったものを選んで持
って来た商品を勝手に換えて来たのです。その動きを不信に思って
「何か問題でもあります?」
「留め金が銀だったもので」

バンドを選ぶ時に、最初は時計の色(金)を意識しながら選んでいたのですが、
皮の色、模様に気を取られているうちに、銀色の留め金のバンドを持って来たよ
うです。そこで接客者は、同じ色、模様のバンドを探して留め金が金のバンドと
換えてきてくれたのです。お客様の購入商品を確認して、適切なものに換えてく
た親切な行為だったのです。

しかし、自分が納得して選んだ商品だからこそ、無言でされると何か自分にと
って不利益なことをされたり、不都合な商品と取り替えられているように感じ不
快感が生まれます。お客様も接客者もお互いに知らない人間です。そこにお客様
の分からない行為が加われば誤解されることもあるでしょう。

接客においては、自分の行為が常にお客様に分からせる工夫が必要です。
「お客様申し訳ありません。留め金のお色が銀になっています。同じバンドで金
色の商品に換えてきましょうか」
このようなコトバをかけてくれたら、不信感が起きず気配りのある接客者と無条
件で評価が上がったでしょう。コトバって大切ですね。

皆さんはいかがですか。



第92号  2004/8/15      

先日仙台に仕事に行った時に、最近特に気に入ってる牛タン店に行きました。生ビ
ールと牛タンを少量楽しんでから夕食に行くつもりでした。店に着いたのが午後7時
ごろになってしまい、あいにく満席でした。店前で空くまで待つか、それとも次に行
く予定の寿司店に行くか迷っていたところ、年配の女性接客者が私たちに気づき「少
し待ってください、すぐ空きます」と声をかけました。

次に移動しようと考えていましたが、声をかけられたので、待ってもいいかなと思
い、しばらく立っていました。10分ほど経っても空く気配がありません。ここで時間
をつぶすのはもったいないと思い、「あくる日に帰りの新幹線の時間を遅らせて食べよ
う」と決めて、寿司店に行こうと歩き始めたのです。

すると店から慌てて出てきて、「今空きますよ、もうちょっとです」と言いながら、
親指と人指で「コの字」の形を作って、「少し」ということを強調して話しかけます。
不思議ですね。コトバだけでなくジェスチャーを使って表現されると本当にすぐ席が
空くように感じ、帰れなくなってしまいました。その後しばらく待たされた後、店に
入り牛タンを堪能しました。

この年配の接客者は非常によく動く人です。店内忙しく働きながら、常に外で待つ
お客様の様子を細かく観察しています。だからこそタイミングの良い説得ができたの
でしょう。

店前で迷っていた私たちに気がつくと、すぐ声をかけたのです。そのために待つ気
になりました。しばらくして私たちが、店を替えようと気持ちが変化したことを察知
すると、今度はジェスチャーを活用しながらのより強い説得で、私たちの他の店に行
こうとする気持ちを変えさせてしまいました。

このタイミングが少しでもずれて説得されたら気持ちは変わらなかったでしょう。
タイミングの良いコミュニケーションは仕事をしながらの細かな観察があるからこそ
成り立つのでしょう。

皆さんはいかがですか。



第93号  2004/8/29 
     
今年のように暑い日が続くと、何かの理由をつけて飲む機会が多かったのでは。
飲み方もいろいろありますよね。
皆さんは賑やかに飲むほうですか。
あるいは静かに飲むほうですか。
私は賑やかなタイプ、というよりうるさいタイプかもしれません。
人との会話がないと酒もおいしく感じません。
酒場の片隅で一人静かに好きな酒を飲む、何か絵になりますが、
私にはできませんから一人では絶対に酒場にはいきません。

そんな飲み方のせいか、結構顔を覚えてもらうことが多いのです。
先日も1年ぶりに都心のレストランバーに行きました。

席に案内された後に、注文を取りに来たのが店長でした。
その顔を覚えていたので、声をかけました。
「こんばんは、覚えてる。1年ぶりなんだ」
「はい、覚えてますよ。このあいだは向こうの部屋の真ん中の席でしたよね」
イヤーびっくりしました。店内は3つのスペースに分かれています。
そのスペースとテーブルの場所まで覚えていてくれたのです。
「覚えてるんだ」
「はい覚えてますよ。いついらっしゃるかと待っていたんですよ」
「ごめんごめん、なかなかこっちに来る機会が無くて」

そんな話をした後に、通常に注文を受けて下がっていきました。
食事をしながら飲んでいると、他の接客者は時々寄ってきて、
サジェスションサービスでお勧めや追加注文を促します。
結構しつこいぐらい来ます。店長も寄って来て話はするのですが
サジェスションサービスはしません。勧めるのは他の接客者のみです。

もったいないなと思いました。自分を覚えてくれたり、
うれしいことがあると気分が良くなり、財布の紐も緩みがちになります。
お客様とそうした関係を作った接客者は来ないで、知らない接客者が工夫しても
あまり効果は出ないでしょう。

サジェスションサービスもただすればいいのでなく、受け入れやすい人がいるのなら、
その人がやったほうが、効果がでます。そうした状況を判断することは重要な
ことですね。

皆さんはいかがですか。



第94号  2004/9/12  
    
先週仕事で徳島県徳島市に行ってきました。大型台風の影響で、当初行けるかど
うかやきもきしましたが、運良く台風が通過した翌日でした。おかげで当日は日差
しの強い残暑になりました。

昼食をあるホテルの最上階で取りました。テーブルに座ると市内が見渡せます。
他に高い建物がありませんから一望の下、海まで続く風景を楽しめます。すばらし
い眺望の中での食事は、料理の味を何倍にも引き立たせてくれます。

途中でお茶のお代わりが欲しくなって、私の座った席から、ウェートレスさんを
呼ぼうとしましたが、ちょうど待機している場所は、客席からは横格子の仕切りで
隔てられているため、直接姿が見えないようになっています。とても雰囲気を考え
たつくりになっています。

「お願いしまーす」と呼びました。すると声の方向からお客様を探すために、こ
 ちらを見るのですが、その姿がとても滑稽でした。仕切りに顔をつけて横格子の隙
間から、声の出ている方向を探しているのです。まるで横格子から何かを覗いてい
るような姿に笑ってしまいました。

ちょっと身体を横に40cmほどずらせば、仕切りがなく、そんな姿をお客様に見
られないものを。ちょっと動かすのが億劫になってしまったのでしょうか。でもや
はり、覗いている姿は美しくありません。滑稽にしか映りません。自分では気づか
ないのでしょう。勿体ないですね。

接客者の姿も雰囲気作りの要因ですから、きれいに見られたほうがいいですね。
そのためにも常に自分の行為がお客様から、どのように見られているか考えること
も必要ですね。

皆さんはいかがですか。



第95号  2004/9/26 
     
最近はどこの駅にもおしゃれな店があって、乗降客が便利に利用しています。

私がよく利用する駅にも、改札口の隣にガラス張りのパン屋さんがあります。テイ
クアウトもイートインもできるので、朝の時間帯にはカウンターテーブルに座って、
改札口を行きかう人を見ながら朝食を食べるお客さんが多くいます。私はまだ一度も
利用したことがないのですが、店内を何気なく見ながら、店前を通り改札に入るのが
習慣になっています。

ある時、いつものように店前を歩いていましたら、店の入り口の自動ドアの横に一
抱えもあるような白い布の塊が無造作に置かれていました。ガラス張りの店の前には
他に何もありませんから目立ちます。なんだろうと思って立ち止まって見ました。す
るとなんと店員のユニファオームが、何着かまとめられて紐で縛って置かれていたの
です。

おそらく洗濯に出すユニフォームでしょう。洗濯屋さんが店内まで取りに来なくて
もいいように、どうせこれから洗うものだからと、ドアの横のコンクリートの床に無
造作に置いたものと思われます。でもその様子を見ると、この店の物の扱い方を勝手
に悪く連想してしまいました。身支度は清潔にしているかな、商品も清潔に扱ってい
るのかなと。

洗濯物を扱う行為と接客姿勢は関係がありません。でも人は店の何かを見ることに
よって、店の印象に大きく影響を及ぼします。もし洗濯物がバスケットなどに入れて
置かれていたら違っていたでしょう。

皆さんはいかがですか。



第96号  2004/10/10 
     
今年は本当に台風が多いですね。皆さんの中にも台風の影響を受けた人が多かったのでは。

先日の台風21号の時、仕事の都合で、丁度H市から四国のT市に移動することに
なっていました。関係者が交通機関は止まっていないということをHPで確認し、H駅
まで送ってもらいました。駅に着くと午後3時55分発の新幹線が2時間止まっていま
す。そこで案内所の男性に尋ねました。

「このチケットの新幹線は何時に来ますか」
「いつくるか分かりません、急ぎなら今とまってる新幹線の自由席に乗っていってく
ださい」
「でも乗客で一杯でしょ」
「ええ」
「席が決まってるのに何でこんな大きな荷物抱えて立っていかなければならないの」
「しょうがないでしょ、台風なんだから」

埒が明かないので今度は改札口の駅員に聞きました。
「今とまってる新幹線は何分ぐらいで走りますか」
「10分後に走るかもしれないし、3時間後に走っていないかもしれない」
「えー乗って立って待ってるのはつらいな」
「速く行きたいならそれしかないですよ」
「マリンライナー(T市に行く列車)は走ってるの」
「ここは改札なんだから、何も機械がないからわかんない」
「情報が伝わらないなら決めようがないじゃない」
「しょうがないでしょ、そんなこと言ったって、台風なんだから」

必ず「しょうがないでしょ、台風なんだから」といいます。このコトバはカチンと
来ますね。すべて責任を台風のせいにして、情報管理ができていないなどの責任は棚
に上げている感じがします。確かに台風のせいかもしれません。でもそれを直接お客
様に言えばますます怒りが大きくなる可能性が高くなります。ちょっとしたコトバの
心理作用です。そんなことを言わないで、お客様を心配したり、一緒に困ってあげる
コトバを多用すれば怒りも増大しないでしょうに。

結局、先が読めないのでその日はH市に止まり、翌朝T市に移動することにしまし
た。関係者に迎えに来てもらい、チケットの変更を頼みました。彼が緑の窓口で替え
ている時に、文句を言う客に駅員が何かと言うと「台風なんだからしょうがないでし
ょ」と言っていたということです。その結果ますます多くのお客様が怒っていたとの
ことでした。

皆さんはいかがですか。



第97号  2004/10/24  
    
先日金沢のある老舗のホテルの上階の和風レストランで7名ほどで昼食をとりまし
た。店に入ると中年の男性接客者が奥のテーブルに案内してくれました。非常に感じ
の良い対応でした。そして話をした後に必ずニコっとします。素敵な笑顔で最後にこ
っと笑う男性接客者は珍しくとても印象的でした。

注文した昼食のセットメニューには天ぷらが付いていました。しかし天つゆのみで
薬味の大根おろしは付いていません。そこで一人が「大根おろしは付いていないので
すか」と男性接客者に尋ねました。すると「ただ今お持ちします」と言って奥に下が
りました。なかなかやってきません。隣のテーブルのお客様に料理を運んでいるので、
忘れたのかなと思っていますと、小皿に大根おろしを円錐形で親指大の大きさに固め
たものを4つ乗せて持ってきました。

その形からして元々天ぷらの付け合わせにするものを持って来たように感じまし
た。7人で食事をしていたのに4つです。そこでもう3人分くださいと頼みました。
通常は天ぷらといえば、天つゆに大根おろしはつきものです。金沢という土地は大根
おろしを薬味として使わないのかなと思い、持ってきた男性接客者に尋ねました。
 
「普通、天ぷらには大根おろしはつかないのですか」すると「ハイつきません」と答
えたのです。そういうものかと思って気にしなかったのですが、一緒に食事をした人
がそのやり取りを聞いて、帰り際に入口に表示されていたメニューの写真を見たそう
です。するとその写真には天ぷらの横に円錐形の大根おろしが写っていたとのことで
す。

結局付け合わせに乗せるのを忘れたのでしょう。この時「すみません」と一言あれ
ば済むものを、尋ねられて「ついていません」と何気なく嘘をついたのかもしれませ
ん。その結果今まですばらしい対応だと思っていた良い記憶はどこかにすっ飛びまし
た。それより、簡単に嘘をつくんだ。なんという店なんだろう、なんというホテルだ
ろうとあきれてしまいました。この店はホテルとは直接関係がないのかもしれません
が、ホテルのイメージがすっかり下がってしまいました。

仕事において、いい加減な対応でごまかそうとするとダメージは大きいですね。

皆さんはいかがですか。



第98号  2004/11/7
      
福岡市に行くとどうしても飲んだ後に、博多ラーメンが食べたいと思うのです。で
も最近は屋台でなく必ずあるラーメン屋さんに行きます。ここの接客者が皆感じが良
く気に入ったもので、せっかく福岡に来たんだから寄ってみようかという気になるの
です。

先日も店に入り、出された冷たいお茶を飲んでみましたら、飲んだことのない味で
とてもおいしかったのです。そこで通りかかった接客者に聞いてみました。
「このお茶は味も変わっていておいしいと思うんだけど、何のお茶?」
すると、立ち止まって、しゃがんで我々に目線を合わせて説明を始めました。
レストランなどでは、お客様と話すのにしゃがんで目線を合わせて話す接客者はいま
すが、ラーメン屋では初めてでした。
「これは、南アフリカのお茶で、ルイボスティといいます。」
「エー南アフリカなの、どおりで普通のお茶と比べると味が違うよね。興味がわくね」
「そうですか、皆さんがお飲みになっているお茶に比べますと味が変わっているかも
しれませんが、このお茶を飲んでいただくと脂肪を落とす効果があります」
その後、お茶の効用や入れ方をきちっと具体的に話しました。そして、説明が終っ
たらサーと奥に引っ込み、小皿にお茶を数グラム乗せて来て、「これですよ」と見せ
てくれました。

この行為には感激しました。現物を見せてもらうと非常に分かりやすく、情報を正
しく伝え理解してもらおうという気持ちが伝わってきました。この接客者は話をきち
っと聞いてもらいたい、正しく理解してもらおうという気持ちから、目線を合わせた
り、現物を見せたりする行為が加わったのだと思います。

本当に目的を達成させようと思えば、コトバ以外にも何か動作や行為を加える工夫
をすると効果が上がりますし、その気持ちが伝わりますね。

皆さんはいかがですか。



第99号  2004/11/21      

先日神戸で、夜食事をしにタクシーを利用して繁華街に出ましたが、往復に利用し
たそれぞれのタクシーの運転手さんが非常に愛想が悪いのです。まともに挨拶もしま
せん。コトバをかけたのは降りる時に料金を提示された時だけでした。

翌朝利用したタクシーの運転手さんは、明るく挨拶をし、乗り込むときに、気をつ
けてくださいねと言葉をかけ、行き先の確認もきちっとしてくれました。感じがいい
ので「昨夜2度タクシーを利用して感じが悪かったけど、今日はいい運転手さんで良
かった」と話し掛けると「申し訳ありません」「たまたまそのような人にあったった
のかもしれません」「うちの会社の同僚にも、話しかけても全然挨拶しない人はいた
んですよ。でも会社から、皆で話しかけて、そういう人を直すように言われているん
です。皆で一所懸命話すようにしています。最近は、だいぶ変わってきていますよ」
「今度お客さんがタクシーを利用する時は、しっかりした対応の運転手にあたります
よ。また神戸にいらした時は、これに懲りずにタクシをご利用下さい。お願いします」
と違う会社の運転手なのに一生懸命かばっていました。職業意識のある人だなと思い
ました。

3日前に京都で仕事が終わった後、夜の8時ぐらいになっていましたが紅葉のライ
トアップを見に行きました。ホテルやタクシーの運転手さんから情報を得て永観堂に
行きました。道の両脇に点々と並ぶ誘導灯とライトアップされた紅葉は、幻想的な雰
囲気を醸し出していて、別世界に入り込んだような独特な美しさを演出していました。

帰りに乗ったタクシーで、紅葉の美しさを語っていると、「私ならE寺を勧めまし
たね。音楽と光の演出があっていいですよ」「またJ院はこの時期は紅葉と桜が楽し
めますよ」「タクシー運転手の使命は短い距離で目的地にお客様運ぶことと、正確な観光
情報教えることですから。でも最近は観光情報をきちっとと知らない運転手がいるんで
すよ」とその寺を紹介した運転手さんを避難しているように聞こえました。

地方でたまたま乗った運転手さんとはまず2度と会うことはないでしょう。ですか
らどんなに自分の良さを訴えてもあまり効果がありません。それよりも同じ地域の同
業者をかばう姿勢の方が、好感が持てますし、その運転手さんの心の大きさを感じま
すね。

皆さんはいかがですか。



第100号  2004/12/5      

先日久しぶりに石川県の鉄道に乗りました。JRのK駅から能登半島に行く特急に乗
ったのですが、改札を通るときに年配の駅員さんが「いらっしゃいませ」と挨拶し、
お辞儀も背筋を伸ばし腰からきれいに折るのです。駅員さんが挨拶することはありま
すが、お辞儀をするのは珍しく、お辞儀しても首だけコクンと折るぐらいです。腰か
らきれいにお辞儀をするのを見たのは初めてでしたから、感動しました。しばらくそ
の場で駅員さんを観察していましたら、どのお客様にも、きちっとコトバをかけてき
れいなお辞儀をしていました。改札を出るお客様には「ありがとうございます」と言って
お辞儀をしています。その姿を見ているだけで気分が良くなりました。

 帰りのH駅で、改札に入るときは若い女性の駅員さんでしたが、やはり「いらっし
ゃいませ」といってきれいなお辞儀をしてチケットに検印をしてくれました。思わず、
その駅員さんに「いつもいらっしゃいませと言うの?」と尋ねると「はい」と答えま
した。お辞儀もきれいなことを伝えると、いつも当たり前にやっているからでしょう、
挨拶について質問されることが不思議そうな顔をしていました。

きれいなお辞儀で接してくれると、挨拶の気持ちが伝わって大事に対応してくれた
ような気分になります。まさに人と人との気持ちの良いふれあいを感じます。このよ
うな対応なら、駅が自動改札に変わらないで欲しいと思いました。

皆さんはいかがですか。