第1号~第50号

第1号.H13.2.11

ある地方都市の本屋さん。たまたまそのオーナーとレジのそばで立ち話をしていた時です。
店前には道路をへだてて100台ほど置ける市の無料駐車場があります。
日曜日の午前中でしたが、もう車はいっぱいです。

そこへ年配の女性が入って来ました。
「〇〇ですけども、あそこに置いてある青い車はお宅のでしょう」
丁度その駐車場に置いてあった本屋さんの車を指差しました。
「ええ、そうですよ」
「あの車出ますか」
「なんでですか」
「出るんならあそこにうちの車をおかしてもらおうと思って」
「出ませんよ」
「ちょっと置かしてもらえないかしら」
「できないね」よっぽど腹が立ったのか、年配の女性から目をそらして、レジそばを片付け
始めました。

しばらく沈黙が続きましたが、
「ああそうですか」と言って、女性は外で待っている家族に向かってだめだという
ジェスチャーをしながら出て行きました。
「何虫のいいこと言ってるんだ。なんで、置かすためにうちの車をどかさなければならないんだ。
うちの車をどこに置けって言うんだ」
「誰だか知らないけど、名前を言ってるから、この店の客だから置かせろということだろうけども、
ああいういいかげんな奴にはきつく断らなくてはだめだ」と大きな声で文句を言っていました。

私はそばで見ていて、確かに虫のいいことを言って来るお客様だなと思いました。
でもいくら勝手なお客様でも、乱暴な答え方ではないのでしょうか。
私は聞いていていい感じはしませんでした。

年配の女性は断られてなんと思ったでしょうか。
また本屋さんの中にいた数名のお客様はその場面を見てなんと思ったでしょうか。
そのオーナーは日ごろからリーダーシップを発揮して商店街活動を盛んに盛り立て、
非常に面倒見がいいと評判の人です。
でもその対応だけを見た人はなんて思うでしょう。
面倒見のいい人という評価はしないでしょう。

皆さんはいかがですか。



第2号.H13.2.25

私は子供のころから葛餅が好きでよく買いに行きます。
同じ店が、独立店舗と駅ビル、SCの中にありますが、買うのは決まってSCの中の店です。
理由はただひとつ接客者の感じがいいからです。

すなわち接客者の笑顔がとてもステキだからです。どんな状況でもいい笑顔を見せてくれる
のです。商品を示してお金を渡し、商品を受け取る。ほんの一瞬の単純なやりとりの中に、
ふっと心地よい気分が生まれ印象に残るのです。
笑顔の効果というのは本当に大きいものです。

ところが実際には、笑顔がなかなか出ない人や、わざとらしい笑顔の人が結構多いものです。
なぜだろう。笑顔の秘密は何だろうと思い、素敵な笑顔だなと思える人に会うと必ず「なんで
そんなに笑顔がすばらしいの」と質問してみました。

多くの答えが返ってきましたが、その答えを分類すると大きく分けて3つあります。
1.「ありがとうございます。でもそんな意識したことがないんですよ」
一番多い答えでした。こういう人はとても恵まれていますね。生まれながらにすてきな笑顔を
持っているのですから。
でも、自分の魅力を意識していないと、忙しい時、または苦手なお客様の時に素敵な笑顔が
持続できるのでしょうか。

2.「子供の頃から母が口うるさく、女の子はいつも笑顔でいなさいと言われていたんです」
あるいは「店長がいつも笑顔、笑顔と指導してくれたのでいつのまにか身につきました」
とても周りの人に恵まれています。魅力的な笑顔が身につくように何度も何度も周りの人が
教育くれたために自然と身に付いているのです。周りの人に感謝しなくてはならないでしょう。

3.「昔から笑い顔がよくないといわれたり、写真写りが悪かったものですから、日ごろから自分で
意識して笑顔になるように努力してきました。ほめていただくと努力が報われたようでとても嬉し
いです」少数意見ですが、とても印象深い答えです。とても偉いと思いました。自分の努力で自分
の欠点を克服しているのです。まさに努力というのは報われるものなのですね。

さて皆さんの笑顔はいかがですか。他の人からすてきな笑顔と言われたことがありますか。

人は鏡を見る機会は多いのですが、自分の笑顔について考えることは少ないと思います。
お客様と接する立場の人はやはりすてきな笑顔が最大の魅力になると思います。素敵な
笑顔を身につける努力をしてみませんか。

皆さんはいかがですか。



第3号.H13.3.11

伊豆方面のある研修施設でのこと。そこは山と山の谷間に建てられていて、リゾートホテル並み
の立派な施設で、一般客も宿泊に利用しています。前日に仕事がすんで、翌朝タクシーを呼んで
駅まで向かうことになっていましたが、前日からあいにくの雪でタクシーが施設まできてくれま
せん。

施設は丁度県道から谷下へ車で4,5分ぐらい走る位置。そのため、タクシーが県道までな
ら迎えに行けるけど、雪のため施設までは降りられないとのこと。結局施設の人がジープで県道
まで送ってくれることになりました。施設の責任者、仕事の関係者と3,4人が見送ってくれるこ
とになり、入り口で待っていると、そこの従業員の乗ったジープが前を通過しました。

施設の責任者が「〇〇さん、〇〇さん」とその従業員の名前を呼びましたが、聞こえません。
どんどんジープが道路を上がって行きました。

するとその責任者は「あの馬鹿何やってるんだ」と叫ぶと同時に「馬鹿が上がって行っちゃった
ぞ」と言いながらフロントの方に走って行きました。従業員はタクシーで来た人を迎えに行くよ
うに指示されたのと勘違いをしたらしいのです。すぐタクシー会社に連絡して、県道で待ってい
るタクシーから「客はホテルで待ってるからすぐ戻るように」と伝えてもらったようでした。

しばらくしてジープは戻ってきて、我々の待ってる前に止まりました。すると、乗車するのに雪
の上を歩かなくてはならないところへ止めたので、責任者は「もっとこっちに止めないと乗れな
いだろう」と怒鳴った後、雪をかいて歩きやすいようにしてくれました。

県道までジープに乗せてもらっている最中、従業員は「すみません」と頭の下げっぱなし。また、
県道に着いてからタクシーの運転手にもさかんに謝っていました。

おそらく、施設の責任者は、指示どおりにならないために慌てて、つい従業員を馬鹿よばわりし、
怒鳴ってってしまったのかもしれません。でもやはり客の前での言動ではないでしょう。
また、きちっと聞けなかった従業員にも責任はあるでしょうが、きちっとわかるように指示できな
かった責任者も責任がないとはいえません。

部下をお持ちのあなた、こんな時どんな対応をしますか。
また、部下の立場のあなた、こんな経験はありませんか。
皆さんはいかがですか。



第4号.H13.4.1

親しい友人と酒を飲む時は、気分がすべて全快モードで楽しめますね。
ついつい冗談も多く出てしまいます。吟醸酒を注文した時のことです。接客者が枡の中にグラス
を入れて持ってきて、その場で注いでくれます。グラスからあふれた酒が、下の枡の中に落ちる
瞬間は、いくつになっても童心にもどり「多くこぼれてほしい」と思うものです。そんな時は
どうしても「いっぱい入れてね」と言う言葉が気軽に出てしまいますが、その時の接客者の対
応は黙々とお酒を注いでくれるだけでした。枡に酒がこぼれる演出に喜んだ気持ちが、スーと
引いてしまいました。  

店の雰囲気によるでしょうが、「はい、たくさん入れますからね」と言いながら、別に多く入
れるわけでなく、規定の量であっても、それだけでお客は満足して、一瞬の楽しい時間が過ごせ
たなーと喜べるのに。
他の機会を思い出してみても、同じようにお客の言葉を無視して酒を注ぐ接客者がなんとと多
いことでしょう。
言葉って不思議です。お客は自分の言葉を聞いてくれた、受けてくれたと思えただけで幸せに
なってしまいます。まさに言葉が魔法の役割をします。

先日も
「今日のお勧め何?」
「やりいかの刺身はいかがですか」
「刺身は苦手なんだよ」
「私も食べられないんですよ。まー私何言ってるのかしら。ごめんなさい」
ちょっとした一言が、楽しい雰囲気を醸し出していました。
そんな言葉を意識していますか。
皆さんはいかがですか。



第5号.H13.4.15


先日、友人とコンピューターを話題に会話をしていたら、突然興奮した調子で「00(大型電気
器具販売店)は、いいかげんだよ」と言いだしました。

使っている電話の調子が悪くなり、その店でfax機能つきの電話機を買ったそうです。
店で「faxに詳しい人を呼んでください」とお願いし、その人にいろいろな説明を受けました。
今まで感熱紙を使っていましたが、丸まってしまい、また保存するのに不便なので普通紙fax
機能の電話を買うつもりでいました。

たまたま気にいった機種があったので「これは感熱紙は使えないの」と質問すると、自信を持
って「使えません」との返事。
紙の費用面から考えても感熱紙も使えれば便利なのにと思いましたが、結局気に入ったのでそ
の製品を求めたのです。

ついでに文字を転写するフィルムの予備として、1本あたりの単価が安くなる3本セットを買
ってきました。
しかし、家に帰って説明書を詳しく読むと、なんと感熱紙も使えると書いてあります。

わざわざfaxに詳しい接客者を呼んでもらったのに、何も分かってないじゃないか、いい加減
な接客者だな思ったそうです。

それから1週間ほどして、用事があって同じ店の販売箇所に行った時、普通fax紙+フイルム3
本セットの徳用セットを見つけました。
このセットだと、自分の買った3本セットより、何百円か安くなっています。それを発見した
瞬間、「そういえばこの間もこれあったな、あの接客者なんで教えないんだろう、まったく売
上だけ上げればいいと思って、いいかげんなやつだ」と怒りが込み上げたと言います。

怖いですね、何かひとつ不満があれば、違う不満もその人が意図的にやったように思えてしま
うのです。

お客様への安易な返事一言がすべての出発点でした。
どんなに忙しくても、内容に自信があっても、確認するという基本的な行動を怠たらなければ、
気に入った機種を購入した友人が、後で不満を生じることもなかったでしょうし、こんな風に
連鎖的に恨むこともなく、違った結果になったでしょうね。

皆さんはいかがですか。



第6号.H14.4.29

4月は、新人歓迎会、お花見など飲む機会の多い月です。もっとも酒を飲む人は、何月であ
ろうとも理由をつけて飲む機会をつくるのかもしれませんね。

さて、十分お酒を飲んで帰宅の途につくところでした。ビールが好きなもので、どうして
もトイレが近くなります。地下鉄の乗り換え駅にトイレがあるのを知っていましたから、
我慢してそこまでたどり着きました。すると入口に柵ができていて掃除中のようです。
たまたま掃除係の年配の女性が出てきたので言いました。

「ちょっと入っていい?」
「だめです」
「頼むよ。一寸だから」
「だめです。他に行ってください」
「わかった。そんなら他のトイレはどこにあるの、教えてよ」
「知りません。駅員さんに聞いてください」
「ここは通り道だし、駅員はいないじゃないか」
「知りません、決まりですからだめです」

不思議なもので人間は、苦しみの限界になると相手が鬼のように見えてきます。
きつい口調で言われましたから、世界で1番意地悪な人間のように思えました。
よっぽど強行突破しようと思いましたが、大人げないので「じゃーいいよ」と言って乗り
換えのホームの方へ行きました。しかし、頭の中では「なんで使わせないんだろう。お腹
を壊している人だったらどうするんだろう。全く血も涙もないないやつだ」と文句をいい
ながら、限界に挑戦しながらトイレ探しです。

苦しみにもだえ、他のトイレをやっと探しだしました。駆け込むように入ると今度は混ん
でます。行列です。「なんでよりによって、こんな混んでるんだ」と思いながら見ると、
私の前には足踏みしながら待っている男性がいます。ビールの飲み過ぎが何人もいるんだ
と思いました。やっと自分の番になって、我慢に我慢を重ね解放すると、本当の幸せって
こんなもんだとつくづく思ったものです。

そうなると不思議なもので、「さっきのおばさんも仕事がやりづらくなるから、中に入れなか
ったんだろう。しょうがないね」と思える余裕も出てきたのです。

でも考えてください。人は切羽詰まったとき、代替案がなければ途方に暮れてしまいます。
あの年配の女性も、掃除することだけに一生懸命で、他に余裕がなかったのかもしれません。
余裕があれば、トイレを使えない人のことを考えて、他のトイレの場所を確認しておき、知らせる
工夫をしたでしょう。そうすれば鬼には見られないで女神に思われたのではないでしょうか。

皆さんはいかがですか。
お客様の要求にこたえられない時に代替案を提示できる余裕がありますか。



第7号.H13.5.13


仕事の後で、和風の旅館に宿泊しました。いつもはホテルが多いので和風の旅館もたま
には風情があっていいものです。通された部屋は湖を一望でき、夕日に染まって水面を走
る船が黄色く光っていました。申し分のない環境でした。

しかし案内した部屋係女性の動作が非常に雑です。部屋に案内するとき、ふすまを乱暴
に開けるし、脱いだ履物が八の字に散らばっています。いつも忙しく動いている人なので
しょう。それが完全に体に染み付いているようです。
部屋に入ると螺鈿で装飾された座卓の上には白磁の灰皿がおいてありました。私はタバコ
を吸わないので端にどかせようと何気なく灰皿の中を見ると、1本の長い髪の毛がぐるっ
と底にこびりつていました。それを見て「あっ」と声が出たと同時に、頭の中では先日見
たビデオの貞子の姿が浮かびました。

実は1,2カ月前にCATVで「リング」「リング2」「らせん」の映画が放映されたのでビ
デオに撮っておきました。どれも話題になった映画なので、どんなものかいつか見てみよ
うと思っていたのです。それを見たのがたまたま3日前の日曜日でした。不思議なものでホ
ラー映画は1本見ると次も見たくなり、結局3本とも見てしまいました。この映画は見た方
はご存じでしょうが、井戸の中に何十年も閉じ込められて死んだ貞子の霊が悪さをすると
いう映画です。長い髪の貞子の姿がしっかりと目に焼き付いていました。

夜は窓ガラスのカーテンを閉めるだけです。窓そばのソファーが置かれた小部屋とは障
子で仕切られていますから室内は完全に真っ暗にはなりません。薄暗い状態です。不思議
なもので寝ているときに目を開けると、部屋の中に貞子がぼーっと立っている姿に見えて
きます。いくら目をつぶって寝ようとしてもそのイメージが離れず、気になって何時間経
っても眠れないのです。仕方がないので、電気をつけましたが、普段真っ暗にして寝てい
る習慣のためやはり眠れません。ウトウトしては目が覚め結局朝まで過ごしてしまいまし
た。

翌朝部屋係に「よくおやすみになれましたか」と聞かれましたが「ふぁい」と声もはっ
きり出ない状態でした。まさか灰皿に髪の毛があったから幽霊を連想して眠れなかったと
は、みっともなくて言えません。

たかが髪の毛1本ですが、客の経験、思考によっていくらでもイメージが膨らむものなの
です。日々の清掃のチェックがこんなにも客の満足感に影響してくるものなのです。

日々の清掃を完ぺきにやっていますか。
皆さんはいかがですか。



第8号.H13.5.27

仕事で香川県の高松に行くのに羽田空港でチェックインした時は、搭乗口が24番と
チケットに印字されていました。隣の23番の搭乗口前の椅子に座って雑談をしてい
ましたら、高松行きの便の搭乗口は23番に変更されたと場内アナウンスが知らせて
いました。調度いいねと思っていましたが、出発前になって再び搭乗口が24番に変更
になりますとのアナウンス。何度も目まぐるしく変わると、いらつくもので搭乗のための
移動の時に、やはり移動していたスチュワーデスの一群とすれ違い、その1人に「また
変わったの」と言葉を投げかけてしまいました。

その人は歳の若いスチュワーデスでしたが、その言葉を聞いた途端、肩をすぼめて、少し
腰をかがめていかにも申し訳ない顔をして「すみません」と言い、そのあと短い言葉で状況を
簡単に説明してくれました。どうせ口先だけで謝りの言葉を出すだろうと思っていたのですが、
思ってもみなかったしぐさにびっくりしました。本当に心から申し訳ないと言ってるような表情に
見えました。コトバとしぐさが一致していておわびの気持ちがひしひしと伝わりました。まさに
身体全体でコトバを話しているように感じました。言い表したい気持ちがコトバと身体全体で
表現されていたのです。その返答を聞いていらついた気分がすーと収まりました。

相手の気持ちになる受け答えというのは接客の原則でしょうが、それがお客様に理解してもらう
ことは非常に難しいと思います。どんなにお客様の気持ちになって答えたとしても、そうお客様が
受け取らなければお客様の気持ちなっているとは言えません。

クレームを言ってきたお客様に対して、一生懸命申し訳ないという気持ちで対応しても、文句
いうほど大した事じゃないと思っている、あるいは客を小馬鹿にしているとお客様に受け取られたら
大変です。

特に日本人は非常に表情の乏しい民族ですから誤解されることも多いでしょう。でもプロの接客
者でしたら、理解してくれないお客様が悪いと言っては済まないのです。身体全体でコトバを表
現することが求められるでしょう。

日頃から友人同士の会話でも、楽しい時、悲しい時、うれしい時、怒った時、それを表す言葉と
ともに表情態度がどれほどその気持ちを表しているか意識することも必要でしょう。コトバの意味
内容を本当に理解してもらうためにも。

皆さんはいかがですか。



第9号.H13.6.10

ショッピングセンターの文房具屋で賞品を買い求めてレジで順番を待っていました。
ちょうど前に初老の夫婦が封筒を買っていました。10枚入ったパックを2つ買ったよう
です。

レジの接客者は、商品の金額を覚えているのでしょう。商品も見ずに手早くレジに金額を
打ち込み「210円になります」と伝えて紙袋に封筒を入れてお客様に渡しました。
それを聞いていた男性が「あれひとつ150円じゃないかな」と尋ねたのです。
接客者は無言で袋を開けて確認すると、150円の値札シールが貼ってあったようです。
今度はバーコードをスキャナーに通しましたが、150円と出ません。きちんとした金額
が出ないため、今度は手で金額をレジに打ち込んで袋に入れ直し、「ありがとうござい
ました」と小さく低い声で述べてお客様に渡しました。

受け取ったお客様がレジを離れるときに、連れの女性が「馬鹿みたい、正直に言わな
ければいいのに」と初老の男性に文句を言っていました。しかし、その接客者は何事も
なかったかのように、今度は私の支払いに対応していました。

私はそれを見ていて、随分情のない人だなと思いました。

せっかくお客様が間違いを教えてくれたのに「ありがとう」の一言もないのです。
これでは教えたお客様は張り合いがありません。同じことが2度起こったら今度は知ら
んふりをするかもしれません。お店の商売の協力者を失ったかもしれないのです。

また、この時にバーコードの金額設定が間違っていたのかもしれないし、商品への値
札シールをつけ間違えていたのかもしれません。店内で運営上のトラブルが起こってい
るのかもしれないのです。もしかしたらこの接客者はそうしたことへも無頓着なのでし
ょう。

お客様の情報は必ず店の役に立つものです。その言葉をきちんと受け止めるか、ある
いは無視するかは接客者の意識次第でしょう。その意識というのはやはり接客者が発す
るコミュニケーションに現れるのではないでしょうか。

皆さんはいかがですか。



第10号.H13.6.24


先日デパートで買い物をしていた時に、小さな子供2人の親子連れに出会いました。2人
ともまだ小さく、わんぱく盛りです。デパートのフロアをあっちへ行ったり、こっちへ行
ったり走り回っています。その度に若いお母さんが「ダメよ、そっちへ行ったら」「何やっ
ているの、おとなしくしていなさい」「何さわっているの、こっちに来なさい」などと盛ん
に怒鳴っています。子供たちは言うことを聞きません。しまいには、子供のお尻をたたい
ていました。お母さんが一生懸命興奮しても、興奮するほどに子供たちは言うこと聞かな
いのです。

とてもほほえましい風景でしたが、ふと先日の居酒屋さんの情景を思い出しました。

ある会議の閉会後、たまにはノミュニケーションでもということで、駅ビルの地下の飲
食店街に行きました。参加メンバーは全員中年男性の12人。なかなか全員が入れる店がな
く、やっと1件の居酒屋に入りました。思い思いにおしゃべりをしながら、勝手に席に着
こうとすると、「今席を作りますから」と、他の客が来ても効率的に案内できるように我々
のために席を作っていました。途中で席に座ろうとすると「今案内しますからそこで待っ
てください」と制止します。接客者は年配の女性で、我々がなかなか言うこと聞かないの
でいらいらしてるようでした。

やっと席について、今度は飲み物の注文を取りに行きました。メンバー全員が話をやめ
ずに、勝手に注文します。「生ビール」「チュウハイ」「日本酒」などというように。
中にはつまみの商品名を何品も注文する人が出てきて、接客者はイライラしたのでしょう。
強い口調で「1人ずつにしてください」。そう言われても、思い思いに注文しています。し
まいには頭に来たのか「この紙に書いて渡してください」とヒステリックに言って下がっ
てしまいました。

確かに客がグループになると、賑やかでうるさいし思うようにならないかもしれませ
ん。しかし怒鳴るように言われたら客も頭に来るものです。注文を書いた紙を取りに来た
時は、皆思い思いに「あの接客はないような」「あれは感じ悪い」「何考えているんだか」
と接客者に聞こえるように話していました。その後接客者は終始ブスーとつまらない顔
をしていましたが、客の我々も気分が悪かった記憶があります。

お客様がなかなか言うこと聞かないためにイライラすることもあるでしょうが、怒って
それを声や表情に出してしまったおしまいですよね。

皆さんはいかがですか。



第11号.H13.7.8


先日友人宅を訪れる途中で、土産に酒でもと思い、下町の商店街の中にある酒屋さんに
入りました。あいにく店内には誰もいません。カウンターのところへ近づくと店から通じ
る自宅の方から言い合いが聞こえてきます。

「冗談じゃないよ、せっかく大学出たのに何にもならないじゃないか」
「勉強した知識を役に立たせるのがお前の役目だろう」
「こんな売り上げの少ない小さな店で何ができるんだよ」
「何かというとぐずぐず文句ばかり言ってるんだから、そんなに嫌なら好きなことやれば
いいだろう」
「何言ってるんだいまさら、人を店に無理矢理入れたくせに」
「じゃー勝手にしろ」
「ああ勝手にするよ」

突然若い男性が飛び出してきて、店を通って道路の方にかけて行ってしまいました。そ
の後こわい顔をしたその店の店主らしき男性が店内にできましたが、私の顔を見てびっく
りしたような顔をして、慌てて「あっ、いらっしゃい、何か」と聞いてきました。

言葉のやりとりにその事情が分かったので、会話がしにくく、ビールを後で友人宅に届
けるようにと頼み、住所を教え、支払いを済ませ早々に店を後にしました。

下町の商店街の酒屋さん。商売が大変なのかもしれません。跡取りの息子さんとけんか
をしてしまったのでしょう。でもどんな事情であれ、お客様に店の事情を知らせる必要は
ありません。お客様の耳に入れば店内での楽しい気分は壊れてしまいます。店内での
お客様の空間にはお店の事情は無関係です。

お客様の前で、責任者が接客者を怒鳴って間違いをいさめたり、忙しい時に要領の悪い
のを怒り飛ばすなどの場面に出会うことがあります。良い印象を持つはずがありません。
同様に接客者同士のおしゃべり。これも接客者内の事情ですから、お客様が見て気分がい
いはずはありません。

店の内の事情はいつも分からないようにするのが接客者の務めでしょう。

皆さんはいかがですか。



第12号.H13.7.22

私は電車に乗る時は、自宅から最寄りの駅まで自転車を利用します。約5分間の行程を
のんびりと乗りながら周りの風景を見るのが好きなのです。利用駅は出来てまだ5、6年の
新駅なので、周りには新しい住宅や真新しい店舗が多くあります。朝早くに季節の草花が
きれいに植えられた住宅の前を通ったり、開店前の店舗の窓ガラスを清掃する姿を見るこ
とは、いかにも今日1日が始まるという思いを強くさせます。

不動産屋の前を通ると、窓ガラスを清掃している従業員とよく出会います。30代前半の
長身のスタイルが良く、しかもなかなかのいい男です。全面ガラス張りの店頭には、不動
産情報は内側から数多く貼られています。そのガラスを拭くのが毎日の日課なのでしょう。

でもその拭き方がいただけません。本当に面倒くさそうに、いやいややってるという感
じに見受けられます。拭いている雑巾は、いつも片面だけを使って、なかなか面を変えよ
うとしないし、四角い窓をまわるく拭いています。ひどいときになると、使用していない
片方の手はポケットの中です。

いつもいつも、そのような情景を見ていますと、もしこの不動産屋さんを利用するとき
は、この従業員に相談したくないなと思ってきます。不思議なものです。もしかしたら有
能な人かもしれませんが、普段の掃除の姿勢で、本来の不動産業務の仕事の内容までだら
しなくていいかげんな人のように見えてしまいます。

仕事は怖いですね。お客様に接しないときでも見られているわけですから、その時の姿
勢で能力を評価されるということもありますね。

皆さんはいかがですか。



第13号.H13.8.5


先月7月27日にたまたま東京の末広町を歩いていた時、拡声器を通して男性のはっきり
した声が聞こえてきました。
「販売期間はあと8日」
「今回176本の1億円以上のあたり券」
ちょうど交差点の宝くじ売り場のそばで、若い男性が黄色いTシャツを着て片手にのぼり
旗、もう一歩の手にはハンドマイクをもち、宝くじの宣伝をしています。とおるはっきり
した声のため内容が良く聞こえます。「そうだ、ジャンボ宝くじの時期なんだ」「それに
してもマイクでの売込みとは珍しいな」と思いながら売り場の前を通り過ぎようとすると、
ちょうど信号が赤になったため、立ち止まって聞くとはなしに聞いてしまいました。
「本日は末広がりのあと8日」
「ちょうど縁起の良い日です」
「ここはちょうど末広町」
「176本の億万長者への道」
「どうぞ、大きな当たりが入ってますように」
「今日は縁起のいい日かもしれません」
聞いているうちに不思議なもので、「今日は縁起のいい日」「今日買えば当たるかもし
れない」とどんどん気持ちが変ってきます。コトバも短いフレーズで、しゃれの効いた文
句を畳み掛けるように訴えかけてきます。信号が青に変った時には、「当たるかもしれな
いな、今買わなければ後で後悔する」と気持ちが働いて、後戻りして3000円分買ってしま
いました。
販売員に「いつも呼び込みやってるの」と聞くと「ジャンボの時だけ」と答えていましたが、
ついつい買う気になってしまったお客さんが他にもいっぱいいたようでした。
 コトバを効果的に演出することは、より以上に顧客の気持ちを変化させる力を持ってい
ますね。
皆さんはいかがですか。



第14号.H13.8.19


前回お話したジャンボ宝くじも外れてしまい、がっかりして書いていましたら、パソ
コンの調子が悪くなり、配信が1日遅れました。申し訳ありません。

  接客というと飲食、物販など、サービス業だけのものと思われがちですが、
 お客さんと接する機会のある職人さんの世界にも重要な要因です。

  ある製造業の会社の事務所が築10年以上経ち、外壁ボードの塗料のはがれが目立って
きたので外壁の塗り替えを決めました。やはり信用のあるところがいいと、知り合いの
工務店に依頼して塗装工事をすることになりました。

足場を組んで工事にかかり、職人さんが2人で仕事をしていましたがとにかく無口な
んです。朝と帰りの挨拶以外はほとんど会話をしません。ただ丁寧に仕事をしているの
は素人目にもわかりました。必要なことしか話さないみたいで,依頼主の社長が「今日で
終わるの」と聞いても、歩きながら「ええ」と返事するだけで客と話そうとしないので
す。

仕事が終わり帰った後、一応足場に上って仕事を見ると、塗り方はしっかりしている
のですが、よく見ると外壁ボードに小さい割れなどがあり そのまま塗料を塗ってある
だけでした。今までは足場の周り全体をビニールシートで覆われていたのでよくわかり
ませんでした。また入り口には何枚かの各種検査確認済みの色あせた古いシールが貼っ
てありましたがそのままはがさないで周りを塗装してあるだけです。
 
早速工務店にクレームとして訴え、古いシールをはがして塗料を塗らせ、割れにはコ
ーキングで補修するなど希望どおりにしてもらいましたが、今度頼むときはあそこの塗
料屋はよこさないように釘をさしたようです。
 
社長が言うには、塗料を塗り替えるの目的は、外観がきれいになることも大切だが
一番の目的は雨などがしみこまないで建物の持ちをよくすること。それなのに、ただき
れいに塗るだけでは客の希望を満たさない、と怒っていました。
 
この時もし外装が終わった段階で職人さんが一言「見てください」と言って、客の満
足度を確認していたら、工務店にクレームとして言われ信用をなくすようなことはなか
ったかもしれません。また塗装の最中に入り口のシールをどうしようか、そのままにし
ていいのか客に聞けば、客の希望が理解できたはずです。
 
今の時代は、お客さんの希望も多様化しています。自分で想像しても分かる訳ありま
せん。聞かなくてはわからないのです。どんなに自分は人と会話するのが嫌いだから、
職人の仕事をしてるんだといっても、客から評価を得るためには客とのコミュニケーシ
ョンを怠ってはいけません。客とのコミュニケーションを円滑に行い客の希望に沿う仕
事をする、それが本当の職人技といえるのではないでしょうか。まさに接客技術が重要
になってきます。

皆さんはいかがですか。



第15号.H13.9.2


近所の年配の男性が理容店で経験したことです。
散髪もすんで料金を払う段になりました。
「今月から料金が300円上がって4,500円になります」
「えっつ、今月から上がったの」
「はい」

毎月定期的に来ているのに、先月は何も言わなかった、予告無しの値上げ。
しかもこんな不景気な時代に値上げをする。それを告げるのに、申し訳ないの
言葉もない。などなど
いろいろの不満が頭を駆け巡り、料金を払いながらこんな話になったそうです。

客「最近は1000円床屋が多くできていて結構流行ってるんだってね」
店「ただカットだけなんですよ」
客「でもこう景気が悪いと、やっぱり人は低料金のところへ行くもんだよ。
いままでの床屋さんは大変だ」
店「うちもお客さんがどんどん来てくれれば1000円にしたっていいんですよ」との答。
それを聞いて
「なんだ、客が減っているから売り上げを増やすために料金を上げたのか」と思い
その理容店から気持ちが離れたそうです。

その年配の男性は70歳後半の年齢です。15年ほど前近所にあった理容店が閉店した時
知り合いから紹介を受けわざわざ車で10分ほどかけて毎月1回通っていました。
新興都市ですのでその後理容店が近くにできても、家族から車で行かないで近所にする
ように説得されても、結構頑固でその店を変えようとしませんでした。
でも料金を値上げした時のその対応で店を替えようという気になったそうです。

翌月、歩いても5分ほどの距離にある1年ほど前から開業している理容店に行きま
した。まだ店舗も新しく設備もきれいで、丁寧に散髪をしてくれ、しかも値段が
3,800円です。今では「近くて便利でちょうどいい」と喜んでいます。

店に変化があったときの対応を工夫しないとお客さまの気持ちが離れる要因になり
ますね。

皆さんはいかがですか。



第16号.H13.9.16


知らない町で飲食店に入るには何を目安にしますか。
やはり店構えは大きな要素になります。

夏も終わりです。冷やし中華が食べたくて店構えのきれいな中華料理店へ入りました。
入るとお客が少なくテ-ブル席がいくつも空いています。近くの席に座ろうとすると40
代の女性接客者が「丸テ-ブルへどうぞ」。そこには3人も座っています。
「こっちでいいですよ」と近くの席に座ろうとすると、
「どうせ相席になるよ」
「だってもう2時過ぎてるじゃない」
「でもこれから入るかも知れないから分からないよ」
続いて入ってきた二人客には「こちら、相席して」と私の座ってるテ-ブル席をすすめま
す。その客も「こっちでいいでしょ」と空いてる席に座りました。

後片づけが楽だからかも知れませんが、自分たちの都合で何とか無理矢理に客を1カ所
にまとめようとする姿勢と友達に話しかけるようなコトバ使いにだんだんいらだってきま
した。やはり同年輩の違う接客者が注文を取りに来て、冷やし中華を頼みました。

しばらくして最初の接客者が堅焼きソバを持ってきました。
「冷やし中華食べたくて来たんだから、堅焼きソバなんか頼むわけないでしょ」
「伝票に書いてあるのよ、あたしが注文受けたんじゃないから」注文を受けた従業員に
「ちょっとあんた、堅焼きソバなんか頼んでないってよ」
「なにいってんのよレ-メンって書いてあるでしょ、冷やし中華のことでしょ」
「あ-あたし見見間違えたんだ」
お互いに興奮して大声で、手で持ってる堅焼きソバの上で散々二人がやり合っていました。

その後納得したのかその焼きソバをそのまま他のお客さんのテ-ブルに出しました。
このやりとりを見ていたそのお客さんもいやだったでしょうね。文句は言っていませんで
したが。その後大勢のお客が来ましたが「何人?、5人?じゃこの席」やはり友達コトバ
です。店構えにそぐわない接客者にすっかり興ざめして、その後25分たって冷やし中華
が来ましたがまずくて半分のこして帰りました。

オ-ナ-の皆さん、接客者の教育をしましょう。料理の味と店構えが泣いてしまいます。

皆さんはいかがですか。



第17号.H13.9.30


知り合いの女性が怒っていました。
彼女が自宅の近くの花屋の前を通りかかったら、ひとつの植木鉢に目が行きました。
そこにはオレンジの鮮やかな色の花がかわいく咲いていました。あまりに印象的だったの
で、そうだ友人の結婚10周年のお祝いに贈ろうと思いました。

ただその花をよく見ると、いくつか花が咲き終わっているように見えます。
そこでそこの主人らしき男性に
「これもう終わっちゃったのね」
「いやこれつぼみですよ。11月ぐらいまで楽しめますよ」との答
そんなにもつならと一鉢買い求めました。
体裁よく包装紙で包んでもらってる間、包装してくれている女性に
「まだ花は咲いてゆくの」
「大丈夫ですよ、11月まで持ちますよ。都心ではこんな安く買えませんよ」

いい買い物をしたと思って、「秋中、花が咲いているそうよ」と友人に渡しました。
しかし3日ぐらいしてすっかり花が終わってしまったそうです。葉っぱだけでもきれい
なので友人は毎日水をやり続けたそうです。たまたま近くの花屋を通り掛かったときに
同じ花があったので、接客者に花について質問すると
「この花はもう終わりですよ」と言われたそうです。

その話を友人から聞いて彼女は怒っていました。
「だまされた。もう2度とあの花屋にはいかない」「花が持たないのなら4,5日は花が
楽しめますよ、と言ってくれればいいのに、何とか売ろうとだますんだから」
購入した花屋さんは商品知識がなかったのでしょうか。
それとも確認した花屋さんの知識が間違いだったのでしょうか。
あるいは、確認した花が違う種類の花だったのでしょうか。
事実は、本人から確かめないと分からないでしょうが、お客さんを怒らせてしまって2度
と行かないと言ってますから永久に事実は確かめられないでしょう。

接客者が何気なく伝える「一言」は、大きな影響を及ぼします。よほど意識しないと大
切なお客様を逃す可能性もあります。恐いですね。

皆さんはいかがですか。



第18号.H13.10.14

駅前に用事があって車で行くときはまず駐車場の心配をしたものですが、最近は、小さ
な空き地にもコイン式の駐車設備ができて便利です。ただ数が過剰になりすぎて値下げ競
争がめだちます。20分100円、25分100円など、低料金を訴えた看板が目立ちます。
私も以前はビルの中の駐車場を利用していましたが、今は料金が安いせいでもっぱらコイ
ン式の駐車場を利用しています。

先日も、用事を済ませ、帰りに清算するため、機械の前で「まず駐車場番号を押して、
次に清算ボタンを押して・・・」と操作していると、隣のビルの駐車場の周りを掃除をし
ていたおばさんが声をかけました。

「駐車番号確認してから、押した方がいいですよ。けっこう間違えてる人がいますから」
心配しているように声かけてくれました。
「そーう、ありがとう、26番に間違いないな」と確認して押しました。
「こんど、こちらも20分70円とお安くなりましたよ」
「えーそうなの、知らなかったなー、いつから」
「9月30日からです。屋根がついていますから、車にはいいですよね」
「そうだね、じゃー今度利用しょう、おばさんうまいね」
「いや、同じ商売ですから、車が入るときには勧められないので」
「そうだね」

ただ、値段の安いことを売り物に押し売りのように強引に勧めるのでなく、相手のこと
を心配しながら会話に入るやり方に、今度は隣のビルの駐車場を利用しようという気にな
りました。

今のように競争激化の時代、従業員全員で売上向上を目指す姿勢って一生懸命な感じが
していいですね。

皆さんはいかがですか。



第19号.H13.10.28

先日名古屋駅近くのあるホテルに、仕事で泊まりました。そのホテルのスタッフはとて
も客の名前をうまく活用して感じが良いのです。例えば部屋からフロントに電話をすると
必ず名前を呼んで出ます。「小倉様、何か御用でしょうか」のように。またレストランで
食事をした後、伝票にサインをすると「ありがとうございます。小倉様、〇〇円になりま
す。こちらにサインをお願いします」全社員がきちっと客の名前を呼んでいますから、こ
こは良く教育が行き届いてるなと思いながら、気分良く対応を受けることができました。

ところが、あくる日静岡のホテルに泊まり、朝ワイシャツを着ようとしたら、ワイシャ
ツがありません。前日ホテルをチェックアウトする際、急いでいたものですから、着てい
ないきれいなワイシャツは引き出しに入れたまま忘れてしまったのです。

そこですぐ名古屋のホテルに忘れ物の確認の電話をしました。フロントにかけると、す
ぐベルボーイに回されたのです。「1306に泊まった小倉ですが、ワイシャツを引き出しの
中に忘れてきたようなので、届いていますか」すると担当者が出て「まだまわってきてい
ません。」の一言。そこでもう一度確認して「確かに引き出しに置いてきたはずですが、
ありませんか」すると同じ調子で「まわってきていません」とそっけない返事。こちらも
時間がなかったために、わかりましたと電話を切りました。

後でとても腹が立ってきました。そこに忘れたのは確かなのに、丸1日たって出てこな
いとはどういうことなのだろうか。部屋係りは忘れ物をきちっと確認してるのだろうか、
また、ワイシャツはまだ封を開けていない新品でしたから忘れ物扱いにしないで他へ保管
したのだろうか、等々どんどん悪く疑ってしまいます。また対応の仕方も、ワイシャツが
なくて困ってる客の気持ちになれないのか、あんなそっけない言い方はないじゃないかと。
こちらにまわって来るのに時間がかかってるのかもしれない、もし見つかったら連絡する
などのコトバがあってもいいじゃないか。支配人にクレームの手紙を書こうかと思ったほ
どでした。

2日後帰ってから、もう一度電話しました。するとまたベルボーイにまわされて、
「ワイシャツの忘れ物をしたのですが」
「小倉様、ワイシャツが届いています」
「2枚ですか」
「ちょっと確認して参ります。・・確かに二枚届いています」
着払いで送ってもらうことにしました。今度は人が違うため、客との会話を大切にした適切な
対応でしたが、前の記憶が生々しく不快な気持ちは治まりませんでした。
 
たまたま、最初に電話した時のベルボーイの対応が悪かったのです。でもその対応でど
んなにホテルの評価を下げたことか。クレームの手紙を送るところでしたから。怖いです
ね。どんなに教育が行き届いていても、たまたま遭遇したたった一人の対応でホテル全体
の評価が変わってしまうのです。一人一人の責任は重大ですね。

皆さんはいかがですか。



第20号.H13.11.11

皆さんは買い物をどのようにしますか。

私は特に家電製品を買うときには値切らないと気が済まないたちです。ただそれほどし
つこくない標準的な買い物客だとは思いますが。

先日ホームシアターシステムを買うためにいろいろな機種を探しました。最終的にはあ
るメーカーの7万円程で買えるホームシアターシステムに決めました。やっぱり買うには
アフタサービスを考え、近くの店にしようと思い、休日に近所の大型家電店のチラシを見
ていました。すると1軒だけその機種が他の店よりも8千円ほど安い価格になっています。
よしここにしようと思い、車で15分ほどかけてその店に行ったのです。

私のイメージの中では、他の店よりもかなり安くなってるから、値切ってもあまり安く
ならないだろうと思っていました。少し値切って、だめでもその店で買おうと思って行き
ました。

店に入って近くの接客者にその機種の場所を聞きました。すると親切にその場所まで連
れていってくれたのです。そこで「ねーもう少し安くならないの」と聞くと「ちょっと私
では判らないので担当者を連れてきます」おそらくバイトの接客者なのかもしれません。
他の接客者を連れてきました。そこでその人に同じように言ったのです。
「ねーもう少し安くならない。」
「いやーこれでいっぱいなんですよ」
「そうかもしれないけど、もう少しなんとかならないかな。すぐ買うんだけど」
「いや無理ですよ」
そう言われて「どうしようかなぁ」とその機種を見ていると、その接客者はスーッと私の
そばから離れていなくなってしまいました。

休日でも、まだ午前中の早い時間でしたから、他のお客さんが大勢いたわけではないの
です。私はあと一言、例えば「申し訳ありません。これが精1杯でして何とかお願いでき
ませんか」という言葉があればすぐ買うつもりでした。ところがさっさと目の前からいな
くなってしまったのです。まるで「そんなにガタガタ値引きを言うなら何も買ってもらわ
なくても結構だよ」と言わんばかりです。やはりカチンときました。確かにこの機種は欲
しかったのですが、何もこの店で買うことはないと思いました。

今は便利ですね。よく大型電器店のチラシには「他の店より高ければ係員に相談してく
ださい」のようなことが書いてあります。それならということで、また車で30分移動して
他の店に相談して買ってきました。

 私は、今までもこのように値引きを言うとスーッと逃げられる経験を何度かしています。
ひとつのテクニックとしてやってるのかもしれませんが、接客者が客の前から逃げること
は、客を無視していることになりますから不快にさせない訳はありません。

皆さんはいかがですか。


第21号.H13.11.25

先日滋賀県の近江八幡へ仕事で行ってきました。

近江八幡といえば近江商人の町です。昔からとても興味あるところで楽しみにしていま
した。近江商人「三方よし」の心。すなわち「相手よし、自分よし、世間よし」の理念の
元、天秤棒一本の行商から全国で活躍した近江商人。その考え方は現代でも通用するサー
ビスの原点です。

商工会議所の仕事でしたが、仕事が終わって車で送ってもらうのに、相談所長さんに入
り口で見送ってもらいました。ちょうど会議所は角地にありました。車はいったん道路を
左に出てから、また左折をします。何気なく入り口の方向を見ると、所長さんが車の方向
に体を向けてまだ見送ってくれています。そこで手をあげると、お辞儀を返してくれまし
た。この見送り方などまさに近江商人のサービスに対する意識が残っているのではないか
と感じました。

実際車が見えなくなるまで見送ってくれるというのは多くありますが、最後まで車内を
意識して見送るというのはなかなか難しいようです。どうしても違うことを考えてしまっ
たり、見えなくなる車にまで気持ちがいかないことが多いようです。車内から振り返ると、
立ってはいるけど違う方向を向いていたり、同僚と話しに夢中だったり、などということ
が多いものです。でも先の例のように、注視されていると、本当にうれしいもので、別れ
の余韻が心の中に残るようでした。まさに、ただ形だけで挨拶をするのではなく、心から
別れの挨拶をされた気持ちになり気分良く岐路につきました。

見送りの挨拶の段階はいろいろあります。部屋を出るところまで、エレベーターに乗る
所まで、また入り口までと。でもどの段階であれ、挨拶はただすればいいのではなく、気
持ちが伝わる工夫をしないと効果は半減しますね。

皆さんの挨拶はいかがですか。



第22号.H13.12.9

今年も残すところあと1カ月となりました。
不況色にどっぷりつかった一年でしたが、最後のひとがんばりと歳末商戦まっただ中です。

デパートには、お歳暮用商品を扱っている特設催事場があります。中では、多くの接客
者がなんとか扱い商品を販売しようとあの手この手の方法を工夫しています。

商品説明を聞くと、日ごろちょっと忘れてるような商品ノウハウを教えてもらい、
得した気分になることがあります。ティバックを家庭で使うときは、ついつい色が出たら
すぐ出して飲んでしまいがちです。「お茶の甘みを出すには、ちょっと我慢してティカップ
の中に入れておいた方がいいですよ」と聞いて、実際にやってみると、本当に甘みが感じ
られ、ティバックの紅茶もおいしくなりました。

いろいろな接客者と話をしてみると、客の言葉を受け入れてくれる話し方をする接客者
の説明は、ついつい聞き入ってしまう傾向にあります。
「この海老せんべいは、酒のつまみでお茶じゃ合わないでしょ」
「そうですね、海老というイメージからそう思われますでしょ。でも緑茶にとっても合う
んですよ。ちょっと召し上がってください」
客の言ったことを受け入れてから、違う考えを訴えられると気分良く受け入れることがで
きます。

でも、すぐ否定する接客者は多いですね。まず否定されると何か気分よくありませんか
ら、その売り場から離れてしまうことが多いですね。
「どうですか、ちょっと召し上がってください」
「おいしいね、でも今は時節柄、肉類はね」
「そんなことありません、狂牛病は牛ですから。これは豚肉ですか関係ありません」
「いやー、それはわかっているけどね。まず店内全部回ってくるから」
何か向きになって売ろう売ろうとしているように感じられて逃げてしまいます。

やはり商品を決めるというのは、商品の良さも当然ですが、接客者の印象も大きく影響
しているのではないでしょうか。客の気分を壊さない話し方が必要ですね。

皆さんはいかがですか。



第23号.H13.12.23

あるとき知人との雑談の中でメガネの話題が出ました。縁なしのメガネの話になり、そ
のうちの1人がかけていたメガネを借りてためしにかけてみたら、とても軽くて使いやす
く感じ、また皆も「似合う、似合う」というものですから、ついその気になって作ること
にしました。

メガネを注文して1週間後受け取りに行きました。注文した時の接客者がいなくて、そ
この店長が対応してくれました。その人は長身で細身、顔も細面で、かけているメガネが
とても良く似合っていました。年齢は30代半ばでしょうか。見た感じでは本当にメガネ店
の接客者にうってつけという感じです。

できあがっていたメガネを顔にぴったりと合うように調整してから、最後に使用上の注
意をしてくれました。
「このメガネはメーカーの特注ですから・・・・・」
「えっ、なに?」
「このメガネはメーカーの特注ですから、そんなことはないと思いますが部品が壊れた場
合は、・・・・・」
「えっ、壊れた場合どうするって」
「はい、壊れた場合はこちらからメーカーに取り寄せとなりますのでお知らせください」

声が小さいのです。何度も聴き返さないと聞き取れないのです。別に回りがうるさい訳
ではありません。平日の昼間に取りに行きましたから、お客も他に1人しかいません。
それでも聞こえない。声が通らないのです。

その後もメガネに関する説明をしてくれました。
「説明書にも書いてありますが、プラスチックのレンズはどうしても熱に弱いもので、・・・」
プラスチックレンズの使用上の注意をしてくれていますが、よく聞き取れません。前に何
度も「えっ、えっ」と聞き返してしているものですから、面倒くさくなってどうせ取り扱
い説明書をくれるのだろうからと「はい、はい」と適当に返事をして帰ってきました。

メガネを決める時にこの人が対応したとしたら、きっとこの店では買わなかっただろう
なと思いました。何度も何度も質問しないと、言ってることがわからないとしたら、話す
のが面倒臭くなるでしょう。見た目はテレビのコマーシャルに出てくるような接客者なの
に。もう少し通る声が出せたなら完璧なのにと思いました。

皆さんはいかがですか。



第24号.H14.1.6

新年明けましておめでとうございます。
皆さんはお正月をいかがお過ごしになりましたか。
今年も元気に接客について考えて行きましょう。

昨日近くのホームセンターに防犯グッズを買いに行きました。
どこに売っているのか場所がわからないので、台車を引いて近くを通り掛かった40歳代の
女性接客者に尋ねました。
「防犯グッズはどこにおいてありますか」
笑顔ではっきりした声で「防犯グッズといいますと?」と聞いてきます。
「防犯用の商品、チラシに出ていたでしょ」
「これですね」ポケットからチラシを取り出して指でそれを察知しながら確認して言います。
「うんそう」
「ちょっとお待ちください」
引いていた台車の上にはダンボールの箱が乗っていました。他のお客さんのところに商品を持っ
ていくところだったのです。そのお客さんに商品を渡しに行ってから、私のところへ戻ってきて、
「こちらです。ご案内致します」

案内された場所には防犯グッズが数多く陳列されています。
「チラシに載っていたのはこちらとこちらです。ちょっと動かしてみますか」と言ってそばにあった
コードにコンセントを差し込み、電気を通じるようにしました。体を動かしてみると、センサーが働い
て、チャイムが鳴ったり、ブザーが鳴ったり、照明がついたりとそれぞれの商品が動き出します。
それを確認すると「どうぞご覧ください。失礼します」と言ってその場を離れました。

非常に明瞭な通る声で聞きやすく、しかも笑顔がとても素晴らしいのです。ですからとても楽し
そうに仕事をしているようで、その気分がこちらに伝わってきます。私は今年初めての買い物でし
たが、新年早々素晴らしい接客者に会えたなと気分よくなりました。

何も難しいことはやっていません。本当に基本的なことです。笑顔ではっきりした声。そして求め
る内容を確認して商品の場所につれて行き、機能が理解できるように動作設定する。不思議なも
のでその基本的なことをされただけで客は接客の評価を高めます。

なぜならこの基本をきちっと守れる接客者は多くいないのです。商品を持ってレジに行きました。
やはり40歳代の女性です。つまらなそうな顔して、客の顔も見ないで、金銭の受け渡しです。仕事
がいやでいやでしょうがないようでした。「ったく、こんな仕事やってられないわよ」とでも言ってるよ
うです。そんなこと思っていないのかもしれませんが、そのように見えてしまいます。支払いの後に
「ありがとうございました。今年もよろしくお願いします」と決められた言葉を投げかけていましたが
気持ちが全然伝わってきません。つくづく接客者のレベルの均等化は難しいものだなと思いまし
た。

皆さんはいかがですか。



第25号.H14.1.20

最近は鏡餅もプラスチックのものや、また餅でもコーティングされてカビの生えないも
のもあって便利になっていますね。私のところは年寄りがいるため、そうした目新しい商
品でなく従来からの製法の鏡餅をいくつか飾る習慣にしています。かつては鏡開きの後は
カビで青くなった餅を小さく割って揚げ餅などにしていましたが、今は便利になって購入
した和菓子店に持ってゆくとまとめて延し餅にして届けてくれます。

近くの和菓子屋の支店から購入していたのですが、業績の不振からか、3年前にその店を
閉めました。そこで今は車で20分ほどのその本店から毎年鏡餅を購入しています。昨年の
暮れに届けてくれた時に、その店主と話すと元気がありません。年々客数が減って、売上
も減少してるとこぼしていました。店も遠くなったため、会うのは鏡餅購入の時のだけ、
年に1度になりましたが、支店を出して頑張っているころの勢いはありません。もともと
愛想良くて人間味のあふれる人でしたのに。

今年も鏡開きの後に鏡餅を持っていくために朝の10時ごろ店に電話しました。「はい」
すごく暗い声で店主が出たのです。「鏡餅を延しもちにしてもらうのに、今から持って行
きたいけどいいですか」「はい、いいですよ」やはり暗くて元気がありません。いつもの
雰囲気と全然違います。やはり業績を心配しているのか、それとも何か家庭内に問題があ
るのかなあ、と心配になりました。

どの商売もそうですが、電話の声はお店の印象を与える大きな影響があります。どんな
に頭の中で心配事があっても、お客様には関係ありません。お客様はその様子を見て、お
店の状況を判断してしまうのですから。常に心配事を考えれば考えるほど、それが声や態
度に出てお店にとってはかえってマイナスになります。

ですからどんな時でも、お客様と接する時は、明るく見せる楽しい雰囲気にするという
ように気持ちを切り替えないと悪い影響しか起きないのです。自分がつらい時ほど、もっ
と演出して雰囲気を作らなければなりません。大変でしょうけど、それをできるのがプロ
の接客者なのではないでしょうか。

2日たって延しもちを届けてくれました。受け取った家族の話によると、犬が鳴くので出
てゆくと、黙って立っていて「はい」と渡すだけ。笑顔もなく愛想もありません。今まで
は、「ありがとうございました。また来年もお願いいたします」と笑顔で言っていた人が。
ますます来年まで店をやってるのかなという心配が深くなりました。

辛い時ほど声や態度に演出を心がけていますか。
皆さんはいかがですか。



第26号.H14.2.6

皆さんこんにちは。
おかげさまでこのメルマガも創刊1周年を迎えることができました。
これからも、気楽に読める情報を配信してゆきたいと思います。

世の中がデフレ傾向にあり、町の中で店を眺めてみても、あの店は商品が安いと評価さ
れている店には人が集まっているようです。ある商店街で店主と話していましたら「あそ
この八百屋はわざわざ県外まで仕入れに行って、安く売ってるんだよね。この商店街で元
気なのはあの店だけだよ。お客は何円安いと聞くと飛んでくるよ。価格に敏感だもの」と
嘆いていましたが、「安さ」が商店の魅力のひとつになっています。

その代表的なのが100円ショップです。先日5階建てのビルすべてのフロアが100円ショッ
プになっている店に入ってみました。装飾品、置物、衣料、生活用品、文房具、本、CDま
であらゆるものが揃っています。時間潰しに入ったのですが、あっと言う間に1時間。まだ
まだ時間が欲しかったと思いました。

それぞれの商品の手にしてみると、よくこれで100円で売れるなというぐらいに価値ある
商品が多くあります。お客さんを見ると商品が1つ100円という手軽さからか、手持ちのカ
ゴに何個も何個も入れている姿が目につきます。確かに買ってみて失敗したと思っても、
100円だからしょうがないかというように諦めがつきます。そんなところが人気の秘密でし
ょうか。

 ある広告会社の社長さん。この景気ですので仕事量も減り、また単価も安くなってこぼ
していました。彼は仕事の調子がいいころは、事務所内の装飾に凝っていまたが、「今は
経費節減、無駄な費用かけられないよ。せめてアクセントをつけるために、今は100円ショ
ップからちょっとした商品を買ってきて1週間ごとに飾りをかえてるんだ。事務所の中に変
化がないと面白くないし、また仕事上のアイデアも出ないしね」と言ってました。確かに
装飾用の小物やら造花などちょっとしたもので、部屋の変化をつけています。

 今は景気が悪いから、費用がかけられないから、何もやらない、では気持ちが萎縮して
マイナス思考になってしまいます。気分を変えるためにも、店内に変化をつけたり、雰囲
気を変えたり、フレッシュアップする工夫が常に必要でしょう。今自分の店で、可能な範
囲で、何ができるかをじっくり考え、実行することが大切なのでしょうね。

 皆さんはいかがですか。



第27号.H14.2.17

先日朝から忙しくお昼を食べる時間がなくて、やっと暇を見つけたら午後3時でした。
何か食べておかなければ身体がもたないので、近くにあった回転ずしに2人で入りました。
そこはネタの鮮度が良くてうまいという評判のチェーン店です。

ちょうど3時でしたから、お客はほとんどいなくて3組のみ。お客も少ないせいかベルト
の上にはお寿司が回っていません。カウンターの中には30歳前後の男性がすしを握ってい
ます。バックヤードの方から、「どうぞお好きなもの注文してください。握りますから」
店長らしき人の声がします。周りの壁には、本日のお薦めがPOPで張り出されています。
ヒラメの握り、白子の軍艦巻き、関サバ、タラバガニの内子握り、・・・・等々。

早速頼みました。「ヒラメ、白子の軍艦巻き、アジ、はまち、関サバね」「はいわかり
ました」返事はいいのですが、待てど暮らせど出てきません。見ると、テークアウト用の
寿司を作っているようです。きっと電話での予約なのでしょうか。その要領の悪さを見か
ねてか、奥の方から「それ後でいいから、カウンターのお客さんを先にやって」の声。

その男性は大きな声で「はい」と返事をして、我々の注文の寿司を握りましたが、出て
きたのはヒラメ、アジ、はまちです。他に注文したものをつくる気配がありません。そこ
で「白子の軍艦巻きに関さばは頼んでいるよね」と催促しました。「はい、今やります」
忘れていたのです。頼りないなと思いながら、その後も次々にお好みの寿司を注文しまし
たが、3つ注文すると1つは忘れてます。

「何なんだろうこの人は。ひとつづつ注文しないとだめだよ」と話しながら、他のお客
への対応を観察していると、同じように忘れているものがあるのです。たった3組しかお客
がいないのにです。まだ新米だからお客の少ない時間に、こうやって練習させているのか
なと思いましたが、シャリの大きさは一定してるので、まるっきり新米ではないようです。

でもその男性の仕事ぶりを見ていると一向に工夫がないのです。間違えないようにしよ
うという工夫が見えないのです。同じように仕事して、催促されてもなんとも思っていな
いようです。何回も何回も同じミスをやっている。しかも時折頼んでもいない握りが出た
りします。面倒臭いので、「いいよ」と食べてしまいましたが、いくらでもクレームとし
て文句のいえる要素がありました。折角の寿司の味が台無しです。この店に入らなければ
よかった。やっぱり中途半端な時間には、店に行かない方がいいなと思いました。

仕事に対して集中力がないのでしょうか。どんな仕事もそうですが、この人は仕事上手
かどうかは、その仕事を見ればわかりますね。常に工夫があるかどうかではないでしょう
か。

皆さんはいかがですか。



第28号.H14.3.3

日常生活の中で宅配便は非常に便利に利用されていますね。誰でも宅配便の荷物を受け
取る機会があるでしょう。でもその受け渡しを見ると、そのドライバーによって対応が大
きく違っています。

ドライバーからすれば、短時間に多くのところに荷物を運ばなければいけないので、
大急ぎで作業します。通常は「ちわー、印鑑お願いします」と入ってきて来て、印鑑を押
すと、荷物と伝票をおいて「ありがとうごございます」と挨拶もそこそこに帰っていきま
す。中にはあいさつもなしで帰る人もいます。まともに顔も見ないで、速く荷物を置いて
次の仕事へ、という雰囲気です。顔見知りのドライバーですと、二言三言話をすることも
ありますが、それでも対応は慣れれば慣れるほど省略して雑になってくるようです。受け
取る方もそれが当然のように思えてきます。

ところがある時、Y社のドライバーが荷物を持ってきました。初めての人でしたが「こ
んにちは。〇〇便です。〇〇様からの荷物をお持ちしました」と言って入ってきたのです。
こんなに正確に荷送り人の名前を言って入ってきた人は珍しかったので印象的でした。普
通は荷送り人の名前は省略しています。しかも対応した人の顔をしっかり見て笑顔で話し
ています。印鑑を押した後も、「こちら伝票です」とはっきり言葉に出して笑顔で渡しま
す。終わりにやっぱり顔を見て笑顔で「ありがとうございました」と言って帰ったのです。

歳のころなら20代後半。すごく感じがいいなと思いました。基本的なあいさつ、対応を
しっかりしているのです。当たり前のことを当たり前にやっているのですが、そういうド
ライバーが今少ないもので目立ちました。その後Y社が荷物を運ぶ時は、いつもそのドラ
イバーで、どんなに慣れてきても基本対応は変わりません。やっぱりいつまでも変わらず
に基本対応ができるというのはサービスの基本なのでしょうね。

最近では「荷物を送るのにうちと契約してくれませんか」と誘われています。「そんな
に送る機会はないから、契約してもメリットないよ」と断っていますが「かまいません、
お願いします」と頼まれています。現在は他社と契約しているのですが、そのドライバー
のサービスを見るにつけて、替えようかな、と気持ちが傾いています。

どんなに仕事に慣れてきても、基本がしっかりできているか、どうかということは評価
の大きな要素になりますね。

皆さんはいかがですか。



第29号.H14.3.17

先日、あるビルのエレベーターで降りてきた時、途中の階で止まり、車椅子に乗った老
婦人が乗ってきました。その階には病院があるのです。車椅子を押してる人がピンクの制
服にブルーのカーディガンを着ている若い女性で、おそらく看護婦さんなのでしょう。
老婦人はとても表情が明るく見えました。

エレベーターが動き出すと、看護婦さんに話し掛けました。「これで直るがや」おそら
く、地方なまりなのでしょう。多分「これで直るだろうね」というような意味だったので
はないでしょうか。それを聞いた看護婦さん、無表情にエレベーターの壁を見つめたまま
「直るかなー」の一言。それを聞いて老婦人、今までの明るかった表情がすーと暗い表情
に変わり、それから、エレベーターが一階につくまで終始無言でした。

何かその情景を見ていて、とても辛い気持ちになってしまいました。車椅子が降りる時
に、エレベーターの扉の「開」のボタンを押してあげましたが、知らん顔していましたか
ら、きっと気配りのない看護婦さんなのかもしれません。

降りた後も、ついついその人達を目で追っていましたが、1階では車が待っていて、それ
に乗せていましたから、わざわざその病院にきたのでしょう。それなのにあのコトバ。看
護婦さんは忙しくて、次の仕事を考えていたのかもしれません。またボーっとしていて、
問いかけをきちっと聞かなかったのかもしれません。でも、たった一言の何気ない返事が、
端で見ていてかわいそうになるぐらい、老婦人の表情を変化させることになってしまった
のです。もし「直るよー、でも〇〇さんもがんばらなくては駄目ですよ」なんていうコト
バをかけていたら、老婦人も明るい表情のまま帰れたでしょうね。

何気ない一言の影響って大きいですね。
 
皆さんはいかがですか。



第30号.H14.3.31

ある金属加工会社の話です。得意先から連絡があり、注文製品の数が不足しているとク
レームでした。その会社では配送時に数量チェックは厳密にやっているので、まさかと思
い調べてみると、その製品はいつもは検査部門納入なのに、日程の関係で今回は特別に塗
装部門へ直接納入していました。しかも、1週間前に送っていたのです。

製品が塗装部門に届いた時点での連絡ならわかりますが、1週間経ってからの連絡。自社
では配送時に厳密な数量チェック。どう考えても塗装部門が受け取り時の数量検査をせず
に作業を進め製品を紛失し、後で数量不足が発見した以外に考えられません。そこで今後
同じようなトラブルが起こらないように得意先の担当部長当てにfaxを送りました。

内容は、今回の数量ミスをお詫びし、不足分を特急で納品することを約束しました。そ
の上で配送時の数量チェックの状況を説明し、製品不足の連絡が1週間後で、その原因が
なぜ当社なのかを質問しました。

すると、しばらくして得意先の社員から迷惑をかけたことをわびる連絡があり、今後は
どんな状況でも間違いのないように検査部門に納品することになりました。しかし最後ま
で不足分をどこが責任を持つかはうやむやになったままで、結局下請け企業の悲しさで、
それ以上追求はしないで金属加工会社が負担することになりました。

その対応で一番がっかりしたのは、いざクレームとして訴えた時に、担当の部長さんが
一切関わらず、担当の平社員に任せきりで逃げたことでした。そのため解決もうやむやに
なりました。納期や設計上の相談などわりと気さくに連絡を取る人なのに、いざ肝心な問
題になるとなしのつぶて。すっかり信頼がなくなると共に、トラブル時にきちっと対応の
できない会社、本当の協力関係がつくれない会社なんだと判断したそうです。

もし、顧客からのクレームだったら、積極的に関わったかもしれません。でも、下請け、
仕入先からのクレームだから、仕事を出してる立場だから、面倒だからと社員に任せたの
でしょう。クレームに対する本当の意識がありません。企業の管理者、責任者としての自
覚がありません。会社の下請け、仕入先への考え方も顧客への接客意識と同じではないで
しょうか。

皆さんはいかがですか。



第31号.H14.4.14

先日オフイス街のバーレストランに入りました。午後6時過ぎぐらいでしたが、席は満
席らしく、予約の有無を接客者に尋ねられ、予約していないことを告げると、しばらく待
たされた挙句、バーカウンターに案内されました。最近カクテルに興味を持っているもの
で、ちょうどいいと喜んで端のカウンタ席に座りました。

ちょうど3人のバーテンダーが仕事をしていました。ちょうど前にいたバーテンダーに
「ギムレット二つ」と注文。その人はうなずいて注文を受けましたが、他のバーテンダー
に何かを告げるとカウンターから出て行きました。残った二人のバーテンダーが何か本を
見ながら相談しています。端の席でしたからコトバが聞こえてきます。

「えーとドライジンが〇〇、ライムジュース・・・・」アルコールの種類と分量を調べ
ているのです。ギムレットは作る人によって、だいぶ味が違ってきます。これは困ると思
い、「わからないんなら、いいよ、ビールで。ビールなら簡単だろ」と声をかけました。
すると、調べるのを止めて「今来ますから」とカウンターを離れたバーテンダーを呼びに
行ったのです。よく見ると2人とも日本の人でないのです。戻ってきたバーテンダーは「ギ
ムレットもわからないのかよ」と2人を我々の前で叱ってから作ってくれた後、またカウ
ンターを離れました。その人は忙しい時間帯なのでウェイターとしての仕事をしています。
 
まだなれないバーテンダーはネパールの人で、20代後半、日本に来て3年目とか、まじ
めに働いている若者です。そのうちテーブル席から「マルガリータ」の注文がありました。
やはり二人で本を見て作っています。本当に一生懸命作っています。でもまるで知識がな
いように感じました。時間帯としてあまりカクテルを注文する客がいないようです。でも
少ないから素人同然の人に作らせていい訳はありません。バーレストランと看板に掲げて
いるのですから。それを見て、我々はその後カクテルの注文を止めて、ウィスキー、ビー
ルだけにしました。

 店ではベテランもいるでしょうし、不慣れな新人もいるでしょう。どちらが作っても同
じ料金です。いくら一生懸命でも不慣れな部分を見せられたら、客の立場として不安があ
りますし、それが高じて不満になってきます。不慣れな新人でも、最低限お客様に不安を
見せない工夫をしないとまずいですね。それがいくら不慣れでもプロの自覚でしょう。そ
れがないと店の評価にも関わります。

皆さんはいかがですか。



第32号.H14.4.28

仕事で多くの会社やお店に電話する機会があります。通常はこんな対応でしょう。
「〇〇です」(相手が会社名、店名を名乗る)
「コミュニケーションセミナープロジェクトの小倉です。」
「いつもお世話になっております。」
「こちらこそお世話になっております。××さんいらっしゃいますか」
「少々お待ちください」

最初に出た人が、もしかして知ってる人かもしれないと思っても、年齢が離れていたり、
性別が違うと声だけでは判断しにくいものです。会って話す印象と電話での印象が違うこ
とが間々ありますから。前に知ってる人と思って「△△さんですか」と尋ねたら「違いま
すよ、△△を呼びますか」といわれた経験があり、それ以来無駄なコトバを出さないで、
必要な人を呼び出す義務的な言い方になってしまいます。電話ですから相手が見えないの
で、仕方がないのかもしれません。

そうした状況を活用して、すごく親しみを感じさせるある会社の若い社員がいます。
「〇〇です」(相手が会社名、店名を名乗る)
「コミュニケーションセミナープロジェクトの小倉です。」
「□□です。いつもお世話になっております。」
相手が知ってる人だとわかると、必ず自分の名前を名乗るのです。すると電話をかけた方
も相手が誰だか確認できますから、安心して一言二言会話をします。そのような状況が何
回か続くと、もう前から知ってるような気分になります。仕事ではその彼の上司と話すこ
とが多いため、あまり会話をする機会がないのですが、不思議なもので電話でのちょっと
した会話のおかげで、親しく感じてしまいます。

ビジネスの電話は、簡潔に話さなくてはなりませんが、ちょっとした工夫で相手との心
理的距離を埋める効果があります。活用しない手はありませんね。

皆さんはいかがですか。



第33号.H14.5.12

最近は、雑誌、新聞、TVで料理情報、飲食店情報が氾濫しています。そのせいか、魅力
のある店を探して口コミで広める人が多いようです。私の友人もその一人です。先日電話
で嬉々として「和風の創作料理の店を発見したんだ。雰囲気もいいし行こうよ」と誘われ
ました。

 入口は何本もの竹をはやし、和風の雰囲気を醸し出しています。店内は1階がカウンター
とテーブル席、それに2階もあるのですが、鏡をあしらったモダンな雰囲気で、しかもBG
Mにジャズが流れているのです。いかにも今風のお店でした。値段も手頃のせいか、お客
さんも結構入っていました。

主人はまだ若く40歳ぐらいでしょうか、その他に料理を運ぶのはその弟子なのかなと思
えるような男性二人。作務衣風のユニフォームを着ててきぱきと動いていました。コース
料理を注文しましたが、料理を出す時に、黙って出すのではなく「先付けです」「揚げ物
です」と持って来ます。コトバを添えてはいますが、折角創作料理を売り物にしている店
なのですから、もうすこし料理の説明が入れば、もっと料理の良さが引き立つのになーと
思いながら、工夫された料理と友人との会話を楽しみました。

帰る段になって、店を出る時、主人が「ありがとうございました」と言いながら出口ま
で歩いてきて、我々が1、2歩出たとたんに戸をぴしゃっと閉めたのです。歩きながら友人
に「どうせ見送るなら、もう少し工夫をすればいいのにね、もったいないね」と話し掛け
ると、友人は「えっ、見送りに来たんじゃないよ、戸を閉めに来たんだよ」と言うのです。

しかし我々がレジで支払いをした時に、主人が遅れてわざわざ出口に来た訳ですから見
送りだったはずです。ところがお客の受け取り方が人によって違っていたのです。これで
は折角見送るという工夫をしてるのに意味がないですよね。それにもったいないですよ。

外に出たお客に対して、例えば、しばらく見ているとか、声をかけるとか、お客様全員
が「見送ってくれたんだ」とわかるように行動することも必要でしょう。折角見送ったの
に、戸を閉めに来たんだよなんて思われないためにも。

 接客は受けたお客がどのように感じるかを考えてやらなければ効果はでないでしょうね。

皆さんはいかがですか。



第34号.H14.5.26

陶器などを扱っている店の主人が嘆いていました。
今、大学1年生の姪が社会勉強に店でアルバイトをしているそうです。
彼女は笑顔がすばらしく、誰にでも愛想が良く、会話が好きな子でお客様からの人気があ
ります。とても接客の仕事が合っているように思われたそうです。

ある日、その主人が外回りから帰ってくると、「お客様からクレームがありましたが
きちっと対応しました」と報告を受けました。こんな対応だったそうです。
「前にお宅で買ったお皿だけど、見てよ、こんなにヒビが入っいちゃったじゃない。おか
しいわよ。不良品じゃないの。取り替えてよ」
「すみません、あー本当ですね。ずいぶん細かいヒビですね。いま店長がいませんから、
これをお預かりして見せます。これではちょっとみっともないですよね」

主人がその皿を見てびっくりです。それは「貫入(かんにゅう)」だったのです。貫
入は陶器の場合、窯で焼く時にうわぐすりとの収縮度の違いから起きる細かいヒビ状の模
様です。これは陶器の特徴で、使い込むうちに目出ってきます。陶器の愛好家はこの貫入
の入り具合を評価のひとつにしていて、多く出るようにわざわざ陶器を使うように工夫を
しています。

陶器の味が出てきた皿を、一緒になってクレームの対象と考えてしまったのです。接客
は商品本体を渡すだけでなく、目に見えない商品(ソフト:知識)が一緒にお客様に渡っ
た時に満足度が大きくなります。アルバイトだからと軽く考え、目に見えない部分の教育
が不十分だったと反省し、一生懸命、その子に陶磁器の知識を分かりやすく教え続けまし
た。最近は知識も増えて頼りがいのある接客者に育っているようです。

皆さんはいかがですか。



第35号.H14.6.9

先日、ちょっと酔っ払った後にカクテルでも飲もうと、顔なじみのバーレストランに行
きました。バーカウンターの椅子に座ろうとすると、接客者が止めます。
「すみません、今使わないようにしているんです」
「何、カウンターは座れないの」
「はい、テーブルでお願いします」

カウンターに座るのと、テーブルに座るのでは雰囲気が違います。どうしようか迷いま
したが、連れが「とりあえず座ろう」というのでしぶしぶ座りました。そういえばこの店
にはご無沙汰で1カ月半ぶりだったのです。回りを見渡すと雰囲気が変わっています。
今までは観葉植物で作っていた入り口からの仕切りが、しっかりフェンス状のものに変わ
っていて、テーブル数がかなり増えています。今までは広く、のんびりした雰囲気で食事
ができた店でした。奥にはバーカウンターがあって、バーテンダーと会話を楽しめた店だ
ったのです。

ところが、しばらくぶりの店はテーブル間の間隔が狭まくなり、何か窮屈な感じでした。
しかも接客者が減っています。おそらく、接客者数が減ってテーブル数が増えたためにバ
ーテンダーを専属に置けなくて、バーカウンターをなくしたのでしょう。でもカウンター
の前には椅子がずらっと並んでいます。せめて椅子をどこかに隠してあるのならあきらめ
もつきますが、バーカウンターはそのままになっていて飲めないとは、すっかり興ざめで
す。接客者のひとりは、今まで1人でのんびり飲みに来たお客さんがこなくなってしまっ
たのでさみしい、と言っていました。

この店は店長が半年前に変わってから、短い期間にころころと営業方針が変わります。
コースメニュー中心の店にしたかと思えば、すぐにそれを廃止したりというように。メニ
ュー構成、店の雰囲気などの変化を重視しています。今回もその一環なのでしょうが、本
当にその店の客層にあった変化なのでしょうか。

前の店長は、お客様との会話を積極的にしていた人ですが、今の店長は会話というもの
重視しないで、お客様にあまり接しようとしません。せっかく会話という武器で店の客の
要望を集められるのに。金曜日の夜なのにお客が少なく、増えた空きテーブルがいっそう
目立ちました。私はバーカウンターがなくなって不満を持っていたのに結局、店長からは
はっきりした理由も聞けず、店に対する魅力もだんだん薄れてきています。

仕事をするということは難しいですね。自分がお客様に何をするのか、いま何をしなけ
ればいけないのか、ということが理解できないければどんなに頑張って仕事をしても成果
は出てこないのではないでしょうか。それを理解する最も簡単な道具が会話なのです。
もし、例え人と話すのが嫌いだという人でも、接客を仕事にした人は無理してでも会話能
力を磨かなければ勤まらないでしょうね。

皆さんはいかがですか。



第36号.H14.6.23

日本中がW杯に沸き返っています。先日も仙台までの新幹線の中で、われわれの乗った
車両のほとんどがサポーターで、仕事で乗ってる人がほとんどいなかったという経験をし
ました。ちょうどその日仙台でスウェーデンーアルゼンチン戦があったのです。ほとんど
の人はそれぞれを応援するチームのTシャツを着ています。なんだかスーツ姿は恥ずかし
いような気さえしました。

帰りの新幹線も混雑していました。車両の前の方でしたから、検札に来る車掌さんの姿
が車両に入るところから良く見えます。40歳半ばぐらいでしょうか、細面の車掌さんが入
ってきました。ドアのところできちっときれいにお辞儀をして、「キップを拝見させていた
だきます」とはっきりした声で言います。珍しいなと思いました。通常は頭だけコクンと
さげて、小さな聞こえないような声で検札のことを知らせる人がほとんどです。でもこの
車掌さんは、腰から身体を折ってお辞儀をして、お辞儀そのものがとてもきれいでした。
それだけではないのです。それぞれのお客様から切符を受け取るときに、「ありがとうござ
います」「すみませんね」「拝見します」と座席が並んだ人には同じ言葉をかけないのです。
私の番になりました。たまたま隣席の同僚のチケットもいっしょに2人分胸ポケットに入
れていたもので、それを渡すと「助かります」という言葉が返ってきました。車掌さんが
後ろの客席に移動してから、自然と同僚と顔を見合わせ「助かりますだって」という声が
出てしまいました。感動しました。

今までこんなことは言われたことはありません。せいぜい「ありがとうございます」ぐ
らいでしょう。助かりますということは、2人分のチケットを一緒に渡してくれたので能率
よく仕事ができて助かります、という意味だと思いますが、たった一言でこんなに気分が
良くなるものなのですね。きっとこの車掌さんは仕事が楽しいのでしょう。チケットを受
け取るお客様一人ひとりに、違う言葉で対応する、お客に合った言葉で対応する、そのよ
うなことは仕事が好きで楽しくなければなかなかできません。その車掌さんの表情も楽し
そうでしたから。

多くの車掌さんが、無言でチケットを受け渡しています。つまらなそうに、義務だから
仕事だからやっているというような姿を目にします。それに比べてあの車掌さんは、見て
いるだけで、対応されただけで楽しくなるような雰囲気を醸し出していました。対応され
ただけで、お客が楽しくなるなんてすてきですね。 

皆さんはいかがですか。



第37号.H14.7.7

先日取引先の方々と会食をする機会がありました。名古屋駅近くの割烹料理店でした。
先方は4人、私共は2人です。ちょうど時間が6時半ごろです。乾杯の声とともに宴が始まり
ました。

取引先の方々の中に60歳の男性がいました。その方は宴が始まってまもなく急にとても
険しい顔になって、周りの人の膳の上を見回しています。どうしたのかなと思い声をかけ
てみたのです。「お住まいはどちらですか」すると部屋の雪見障子のガラスの部分を指さ
して「あっち」と答えたのです。しかもろれつが回っていません。ビール1杯ぐらいで酔っ
払ったのだろうか、と思いました。

その後その方を気にしながら回りの方と話していると、その方は急に自分の膳の物を抱
え込むようにしてこぼしたのです。周りの人が洋服をお絞りで拭くのを手伝ったりしまし
たが、見ているとおかしいのです。普通はいくら酔っていても、自分の濡れた服を拭こう
とします。でも全然拭く気配を見せないで目が1点を見ています。しかも一筋のよだれが見
えたのです。すぐ救急車を呼ぶように言いました。救急車がきて病院に運ばれましたが、
脳出血で7時間に及ぶ手術の結果一命は取り留めました。

宴会で意識障害を起こすと酔っ払ったものと勘違いをして、その場に寝かせるなどして
手遅れになるケースが多いそうです。一刻も速く病院へ運ぶことが先決です。これから暑
くなり、暑気払いなどと称し読者のみなさんも飲む機会も多くなると思います。もし皆さ
んがそうした場面に遭遇した時に、参考になるようにその時の状況を、できるだけ詳しく
書きました。

今回問題にしたいのは、その時の店の女将の対応です。

救急車がくる間、取引先の若い人が病人の首筋を冷やしていました。宴会は個室でした
ので厨房にお絞りを取りに行こうとしましたが、取引先の他の若い人は会社に連絡に行っ
ていません。そこで私の同僚がお絞りをもらいに走りました。個室から厨房へ行くのにカ
ウンター席の後ろを通ってからでないと行けない店舗構造になっています。

たまたまカウンターの近くにいた女将に、声をかけました。女将はお刺身を持ってカ
ウンターのお客に出すところでした。
「冷たいお絞りいただけますか。」
女将「いまやりますよ」
「急いでほしいのよ、早くしてほしいの」
女将「いまやってますよ」顔はいかにもこの忙しいのにといった顔
「とりあえず、水でぬらしたのを速くください」
女将は「どうせ酔っ払いじゃないか」と思ったのか積極的に協力する姿勢を見せないよ
うに感じたそうです。

 ちょうどその時外からサイレンの音が聞こえ、救急車から店に電話がありました。
電話に出た女将は「私じゃ、わかんないから出てよ」と受話器を渡しました。電話を替
わると切れていました。店の外に取引先の若い人が待っていたのでしょう。救急車は店の
位置がわかり隊員が入ってきました。その間お客のいるカウンターの後ろを何人もの人が
早足で行き交っていたからでしょうか、「まったく他のお客さんの手前、困っちゃう」と
いうような表情です。

その他のお客様も他の個室から顔をだし心配顔です。病人を運び出すときは、カウンタ
ーのお客さんに悪いと思って私と同僚は挨拶しました。
「申し訳ありません」
「いや、いいですよ、具合悪いんですか」
「はい、すみません。あわただしくて」
「大変ですね」
他のお客さんも心配してくれましたが、店側は若い男性の接客者だけが心配してお絞
りやタオル、氷を運んでくれました。この騒ぎがあったため、会食は中止にしました。

店を出る時に、私の同僚が奥にいた女将に「すみません、迷惑かけて申し訳ありません」
と挨拶をすると、「いいわよ」「どうしたの」なんてすごく気楽な言い方です。この言い
方にびっくりしました。きちっとした言い方をしないのです。この女将はこの騒ぎの中最
後まで部屋に様子を見に来ませんでした。

確かに、店にとっては迷惑です。忙しい時間帯、他のお客様も食事の最中、救急車騒ぎ、
雰囲気が壊れたでしょう。また、もしかしたら女将も救急車騒ぎは初めてでどうしていい
かわからなかったかもしれません。でも、どういう状況でも店内のお客に対する全責任は
責任者たる女将が負うのではないでしょうか。責任者としての言葉のかけ方、行動の仕方
が店の評価に大きく関わってきます。

店構えもりっぱで、料理も美味しいのかもしれません。会食が始まってすぐの騒ぎでし
たので、一口も味わっていませんが、出された先付けを見た限り、素材、色合い、調理に
工夫されてるように思えましたが・・・。残念でした。

皆さんはいかがですか。



第38号.H14.7.21

先日仙台のあるホテルにチェックインした時のことです。時間は午後9時ごろでした。
他に客はいなく、我々と仙台駅から付き添ってくれた取引先の人4名がいました。フロン
トには男性接客者が3名。用紙に必要事項を書いていると、同僚がフロントに、翌日使う
衣装、資料などの荷物が届いているのか尋ねました。フロントの年配の接客者が連絡が
入っていますと伝言用紙を渡しました。そこには宅配便の取り扱い所(スーパー)から、
「荷物を送るのが遅れてしまい明日の到着になってしまいます。大変申し訳ございませ
ん」と書かれていて、連絡先の電話番号が2つと担当者の名前が書いてありました。

その荷物は到着が遅れないように、安全を考え2日前に送っていました。その日地方か
らの仕事の帰りで、夜10時ごろになってしまい、近くの遅くまで営業しているスーパー
に持っていきました。その時店の接客者2人に「必ず着きますね」と念を押し、「大丈夫
です」との答えをもらって安心して送ったそうです。

それを読んで同僚はあわてて、つい大きな声で「何で届かないの、困るわよ」と口走
りました。それを聞いていたフロントは「うちは関係ありません」と表情を変えずに、
つき離したような冷たい言い方をしました。伝言には2つの電話番号が書いてあったため「どっちにかけたらいいの」と聞くと、「ちょっと待ってください」といって伝言表を見て「下の番号がフリーダイヤルですから、料金がかからないのでいいんじゃないですか」といかにも無愛想で、迷惑そうな言い方をしたのです。

「どうしよう、どうしよう」とパニックになっているので、とりあえず部屋から電話
をして、まず状況を聞くようにアドバイスしました。部屋から電話して先方の担当者か
ら事情を聞くと、スーパーの単純なミスで、荷物があるのを気が付いたのが、当日だっ
たのです。最初は「申し訳ありませんじゃ困ります。荷物をすぐ届けるようにしてくだ
さい」と怒っていましたが、結局スーパー側の誠意ある対応に、荷物をすぐに届けると
いうような無理な要求はしないで収まりました。

しかし、フロントの対応の冷たさが気になりました。目の前にあるべき荷物が届かな
いで動揺しているお客様がいるのにです。とにかくこのトラブルには関係ないという気
持ちがありありで、逃げている姿勢なのです。でもあのように露骨に逃げられるとやは
り腹が立ちます。

確かにホテルは今回のトラブルとは何の関係ありません。だからこそ、積極的にお客
様に接した方がホテルに対しての印象はプラスになると思うのですが。「大変ですね。
とりあえず電話をかけて状況をお聞きになったらいかがですか。もし何か身の回りで必
要なものがおありでしたら、〇〇メートル離れたところにコンビニがあります。場所を
お教えしますが」などとお客様の気持ちを配慮し、心配するコトバが出たら、評価はま
るっきり違って、感謝したくなるでしょう。

接客者は、必要事項を記入させるなど定型の仕事では誰でも変わりません。その人の価値が
分かるのは、非定型、突発的な状況での対応なのでしょう。その時のコトバの掛け方、行動
の仕方が重要なのでしょうね。
 
皆さんはいかがですか。



第39号.H14.8.4

暑中お見舞い申し上げます。

夏は時間が結構作れますから、旧知の友と会う機会が多くあります。
先日もある経営者2人と久しぶりに会いました。一人は10年前に中国に工場を進出して
現在とても調子が良く、もう一人は国内の競争力の低下で、やむを得ず今年中国に進出を
決定したという対照的な状況なのです。とても興味深い二人です。焼肉屋で会うことにし
ましたが、こだわりを持っている一人の「焼肉ならM(地名)の○○(店名)にしよう」
という一声で店が決定しました。

週始めの平日にその店に行くと、あいにく店が閉まっていました。たまたま店主が出か
けるところで店前で会いました。経営者の一人が声をかけて
「何だ、今日は休みなの、せっかく来たのに」
「いつもありがとうございます。すみません、あいにく休みで」
「しょうがないね、この近所でどこかお勧めの焼肉さんある。教えてよ」
「焼肉屋ですか、あることはありますが・・・」
「お宅ぐらいうまいところはないかな。でもどこか紹介してよ。それともこれから浅草に
行くんだけど、やっぱりそっちに行った方がいいかな」
「あることはありますが・・・・浅草に行ったほうがいいかも・・・」
「分かった、じゃ-浅草に行くわ。それじゃ-またね」
「すみませんでした。またお待ちしています」

気分よく店主と別かれてから、3人で話しました.
「おかしいな、なんで店を教えられないんだ」
「自分の店に自信があれば教えられるはずだよ」
「もし教えたら店を移られる心配があるんじゃないかな」
「せっかく時間をかけてM(地名)まできたんだから、失敗してもいいからどこか店を探
そう。このまま浅草行くのは能がないよ」

話しはまとまり、近くで店を探すことにしました。往来する何人かの人に、焼肉店の場
所とお勧めの店を聞いてみました。すると「この店はいいよ」「私はよく行く」など皆親
切に教えてくれましたが、結局一番近い店に入ることにしました。食後3人とも満足して、
当初の目的の店○○とそれほど大きな違いはないという感想でした。他にも店構えが興味
を引く店などがあり、今度はこの店に入ってみようと皆で約束して2次会の浅草に向かい
ました。店主の受け答えによって、かえって新しい店の発見が出来たように思えました。

皆さんが店主ならどのように答えたでしょうか。
いかがですか。
 


第40号.H14.8.18

夏真っ盛りです。多くの人が夏休みを取って帰省、旅行と各地に移動しているようです
ね。夏を楽しんでいますか。

 旅行先でタクシーに乗ることがあります。タクシーの運転手さんの対応でその町の印象
が大きく変わることがあります。タクシーに乗るとお客の中にも運転手さんと会話をあま
りしたがらない人と積極的にしたがる人に分かれるようです。私は後者の部類に入ります。
いろいろな話が聞けるので、どこへいっても積極的に話し掛けます。

先日滋賀県のH市に行きました。駅からタクシーに乗ったのですが、いつものように話
し掛けました。
「ねーここは近江牛で有名だけど、どこかおいしい店はないの」
「どこも同じですよ。高いだけ」
「あそう、ここで何かお土産といったら何」
「何にもないんだよね」
なんだか愛想もなくてがっかりでした。それこそつまらない町にきたなーと思ったぐらい
その町で最初に会った人の印象は大きいですね。

帰りもタクシーを利用しました。行きの印象がありましたからあまり話す気がしなかっ
たのですが、運転手さんから話し掛けてくれました。
「お仕事ですか」
「ええ」
「いや今度は観光できてくださいよ」
「ここらはそんなにいいとこなの」
「ええ、H市をじっくり見たあとは、湖北に足を伸ばしていただきますと景色もすばらしいし、
心も洗われますよ」
「どうして」
「お寺を巡るんですが、各寺の仏像がいろいろな表情をしているんです。仏像と対面して
無言の対話をすると、何か大きな悟りが開けたようですばらしいですよ」
続けて、仏像の特徴、比較を具体的に話してくれるものですから、頭の中にそのイメージ
が湧いて、興味が大きくなり、今度ゆっくり訪ねてみたいと思いました。

この運転手さんは自分の住んでる地区が好きなんだなと感じました。好きだからこそ
他と比べて、良い面、優れた場所が理解でき、それを自身をもって人に紹介できるのでし
ょうね。説得力がありました。

皆さんはいかがですか。



第41号.H14.9.1

先日友人と地元のなじみの寿司屋さんで飲み、カウンターで店の主人と共にたわいもな
い世間話をしていました。新たに握りを注文した時、たまたま主人に電話がかかってきて、
その場で電話機の子機を受け取り話し始めました。電話の様子から趣味の会合の件で、結
構長話になりました。注文を受けていることが気になったのでしょう。やっと電話が終わ
ったと思ったら、「お待たせしました」と言って手も洗わず、すぐ寿司を握り始めたので
す。主人は何もなかったように笑顔で話を続けていましたが、私たちの食欲はなくなりま
した。

いつもはそんな不潔なことをする主人ではないのです。しかし客を待たせているという
あせりから、また自分のうちで使っている電話機の子機だから不潔でないと思ったのかも
しれません。でも見ていた私たちはそのひとつの行為をきっかけに早々に店を退散しまし
た。

お客様は店の人の一挙一動を見ています。特に食べ物を扱っているお店では、不潔に感
じる動作がひとつでも出たら致命的です。私は心を込めて、お客様に満足してもらえるよ
うに接客の動作をしています、と考えてもお客様がそう思えなければ何にもなりません。
常に自分の行動がお客様から見たらどう感じるかを意識しなければならないでしょうね。

 接客の動作も、きちっと分析すれば必ず理由があります。その理由を理解してサービス
するのが本当の接客者でしょう。食べ物以外のものを扱った手は不潔に見える、だから必
ず手を洗う、という行動の理由付けが明確になっていれば、どんなに急いでいる時でもそ
の動作を省略することはないでしょう。

皆さんはいかがですか。



第42号.H14.9.15
 
先日仕事で金沢に行った時に、時間を見つけて近江町市場に4人で行きました。時間は
午後4時30分ごろで、多くの店で商品もなくなり店じまいの準備をしていました。せっか
く寄ったのですから土産を買って発送の手配も頼み、最後にぐるっと一回り見学しました。

 そこにどじょうのかば焼きを発見しました。以前泊まったホテルの金沢紹介ビデオで、
金沢の名物のひとつと紹介していたものですから、いつかは食べたいと思っていました。
いつも金沢に来る時は秋から冬にかけてが多かったので、なかなか食べる機会がありませ
んでした。そこでどんなものか、どじょうのかば焼きを購入し、食べながら見学しました。

 ちょうど皆が食べ終わって、残った串を、一人の人が集めていましたら、総菜屋のおば
さんが声をかけました。
おばさん「捨ててあげますよ」
皆   「えっ」
おばさん「いいですよ、どうぞ」
皆   「いいんですか」
おばさん「はい、どうぞ」
皆   「すみません」と渡して、捨ててももらいました。
そのおばさんの親切は無理がなく自然で、ついその言葉に甘えましたが、すごく感じが
いいなと思いました。ちょうど市場を出るところだったので、その行為が近江町市場の印
象の余韻となりました。

 普通、こちらから「すみません、捨てていただけますか」と頼めば捨ててくれるかもし
れません。場合によっては、そのゴミはうちと関係ないからと捨ててくれない人も多くい
る時代なのです。そういう時代だから相手の不便さを見て、自分からその不便を解消して
くれるよう働きかけてくれる行為が目立つのでしょう。助かりましたし、すごく気分がよ
かったと記憶しています。その一人の行為でこの市場全体の評価が上がりました。

 皆さんはいかがですか。



第43号.H14.9.29

私たちは地方に出てお土産を買う時に、ついつい定番なものを買ってしまうことが多い
ようですね。特にその場所で知られている土産の種類が少ないと、どうしても毎回同じも
のを買ってしまいます。

福島県のK市に時折行くことがあります。そんな時はよく知られている和菓子を土産と
して買ってきます。先日、半年ぶりにK市にうかがいました。帰りにやはりいつもの店に
寄って、定番の土産を買ったのです。

その店は、接客を売り物にしている他の和菓子屋さんと同じような対応をしてくれます。
お客様が店に入るとまずお茶を出し、名物の和菓子はひとつ食べさせ、ゆっくり土産物の
種類を選んで買っていただく。そしてお帰りの時は接客者が出口まで見送り、あいさつを
します。その店に寄った時はいつも、そのような流れのサービスを受けていました。

ところが今回はいつもと接客の様子が違いました。別に込んでいるわけではないのです。
お客様は他に1人だけでした。私を担当したのが年配の接客者だったのですが、いつも味見
をさせていたサービスがなくなり、お茶は出してくれましたが、きちっと相談にのってく
れるような対応はしてくれません。また買い物が終わったら、その場で「ありがとうござ
います」と挨拶しただけで、出口まで見送ってくれませんでした。

もちろんこの対応は、通常の小売り店の接客として普通かもしれません。でもやはり方
針を変えて接客のレベルを下げたのかなという印象が残りました。お客様が他に1人しかい
なかったために、またそのお客様は私が店を出る時はまだ店に残っていて、他の接客者の
その客に対する対応は分かりませんでした。

たまたま私に対応した年配の接客者が、いつもの流れを省略したのかもしれません。
でもその人の対応だけで、この店は接客レベルを下げたなという印象だけが残りました。

難しいですね。店の接客に対する考え方は常に一定としてお客様に伝わらなければなり
ません。接客レベルがどんどん上がって行くなら問題はありません。店の方針として接客
レベルを下げたり、また接客者個人の勝手な考えで変更してはならないのです。お客様が
接客レベルを下げたなと思われるような対応は店にとっては大きなマイナス要因です。

 皆さんはいかがですか。



第44号.H14.10.13

ある農家の主人が怒っていました。「足元見てぼったくるんだから」と。収穫の遅い田んぼの
稲刈り作業をしていたら、稲刈り機のキャタビラが片方壊れてしまいました。動きません。
キャタビラを新しいものと換えると15万円するそうです。もう機械も古く、そろそろ買い換えと
思っていたそうですが、ただ新品に取り替えるには、400万円ほどかかるとのこと。業者から、
「もし来年新しい機械を買ってくれるなら、今年は廃車からはずした中古のキャタビラを取り付け
るから、値段も自分の手間が出ればいいから」と言われました。資金的には問題がないのですが、
ただひとつ気がかりな点があったのです。後継者問題です。

長男は農業を嫌い、外に出ています。今は娘夫婦と同居していて、勤め人の娘婿が忙しい時は
手伝ってくれています。将来、娘婿がついでくれることを期待していましたが、そのことについて
話し合ったことがありませんでした。機械が壊れたことをきっかけに意向を聞いてみました。農業
を継ぐ気があるなら新しい機械を買おうと思うがと尋ねると、その気がないから当てにしないでく
れと言われました。田んぼ、畑などもおじいさんの良いように処分してくれとのことでした。

がっかりすると同時に、歳も77歳。あと何年もできない。後継者がいないなら新しい機械を買っ
てもしょうがない。そこで業者に中古のキャタビラをつけてもらうように頼み、業者が来て30分
ほどの作業で取り付けてくれました。廃車の機械からはずしてきたキャタビラを取り付けるだけな
ので、タダ同然のものだからそれほど高くはないだろうと思っていました。作業が終わった後請求
金額を聞くと「新品が15万円だから、その3分の1の5万円もらう」といわれびっくり。いつも
懇意に取引している業者なのにあまりにもぼったくり。こちらの機械が動かなくて困ってるのを見
て、足元を見てふっかけ過ぎ、これからは他の業者を探すと怒っていました。

怖いですね。この業者はお客様とコミュニケーションを取ることの重要さがわかっていません。こ
の値段が高いのか安いのかわかりませんが、きちっと金額の話をしないばかりか、価格のつけ方
の説明が安易過ぎます。これでは農家の主人が怒る気持ちもわかります。なぜこの金額になるの
か、詳細な費用項目の説明がなければ、納得いかない取引になるでしょう。やはり何事も説明す
るには、「なぜ」ということが明確にならなければなりませんね。

皆さんはいかがですか。



第45号.H14.10.27

景気が低迷している現在、加工単価引き下げ、納期短縮など中小製造業を取り巻く環境
も非常に厳しいものがあります。

あるプレス加工業の社長は、毎日営業に飛び歩き経営の維持に努力しています。そのた
めどうしても、型屋など仕入れ関係の取引先は営業時間後、午後6時とか7時ごろに行くこ
とがしばしばだそうです。取引してる型屋さんは2代目社長で年齢も若く、住まいが会社の
上階にあります。営業時間後の訪問もお互い中小企業者は効率良く動かなくては、と快く
協力してくれていました。

ところが営業時間後に行き、事務所で打ち合わせを始めて15分ほどすると必ず、「お父
さんテレビが始まったよ」と子供が迎えに来るそうです。「今仕事だからね、みんなとテ
レビを見てなさい」と追いやっても、また15分ぐらい経つと迎えに来るのです。そのため
早々に話を切り上げて帰ることになります。それが毎回だそうです。いつ行っても15分経
つと子供が迎えに来る、その繰り返しです。

どうも社長の奥さんが営業時間後の訪問を好まず、子供を使ってそのような対応をして
いるようです。奥さんは営業時間中に訪問すると愛想がいいのですが、営業時間後の訪問
では全然顔を出さないとのことです。今ではそのため営業時間後は行かないようにし、最
近ではもっと自社からの距離が近い業者を探し出し、そことの取引が始まったそうです。

確かに、営業時間後の訪問は失礼かもしれません。家庭だんらんを壊されるかもしれま
せん。でも毎日ではなく、月に2、3回とのこと。そのときの短時間の演出、奥さんのちょ
っとした配慮があればまた感じ方は違ったでしょうね。

自分の関係者でなくても、時にはにこやかな対応が必要な時もあるのではないでしょう
か。もしお勤めの方で、会社関係の方が遊びにきたとき、あなたの奥さん、あるいはご主
人、またはご家族は短時間の演出をしてくれますか。いかがでしょうか。



第46号.H14.11.10

先日広島に行きました。着いたのが3時。遅い昼食にお好み焼きを食べることにしまし
た。ホテルのフロントで地元で有名という店「M」を教えてもらいました。

店に入って3時半です。店はテーブル席のみでお客様は他に2組だけでした。メニュー
を見ましたが、どのお好み焼きを食べていいかわかりません。そこで注文を取りに来た若
い女性接客者に聞いてみました。
「何がおいしいの」
「スペシャルですね」
「あーこれだね」
写真つきのメニューの上部にお勧めメニューが3つあり、そのうちのひとつでした。
「私これにネギいっぱいかけるのが好きなんです」そのコトバで、注文したくなりました。
不思議なもので、接客者の一言は効果があります。きっとうまいんだろうと思ってしまう
ものです。お好み焼きのスペシャルもあの一言がなかったら注文しなかったでしょう。し
かも、ねぎのトッピングつきですから100円アップの1,100円でした。

食事が終わって席をたったら彼女が寄ってきて声をかけてくれました。
「おいしかったですか」
「おいしかった。でもボリュームもすごいねぇ」
「ええ、おなかいっぱいになるでしょう。お腹いっぱいになるのも楽しいですよね」
そのコトバでより店の印象に良い余韻を持たせました。とても言葉のセンスのある接客者
だと思いました。

私は東京下町育ちで、子供のころからもんじゃ焼きで育っています。ですから今でもお
好み焼きと聞けばもんじゃ焼きが一番と思います。大人になって初めてもんじゃ焼きを食べた人は
ほとんどが「もんじゃ焼きのどこがおいしいの」と言いますが、やはり子供のころの記憶がそうさ
せているのでしょう。

そのため広島でいろいろな有名店を教えてもらって広島風お好み焼きを食べても、それ
ほど変わんないんじゃないかな、と思うほど味の違いは感じないのです。でも、今回行っ
たお好み焼き店「M」は記憶に残るでしょうね。接客者のコトバがその味をおいしく記憶
させてくれましたから。

皆さんはいかがですか。



第47号.H14.11.24
 
仕事で地方に行ったときの楽しみはなんといっても食べ物です。先日仙台のホテルで、
味の一流の店として教わった牛タン店と鮨店をはしごしてしまいました。そこで笑顔の違
いを感じました。

 地元で人気の牛タンの店「R」。この店は狭く、カウンターに座りましたが隣の客と肩を
くっつけながら食べなければなりません。それでも味のうまさに人が集まり、隣に座った
年配の女性客は、聞きもしないのに「東京から来たの? 仙台にはいろいろ店があるけど、
この店が一番よ。私は地元だけど1週間に一度はくるの。今日はまだすいてるわよ。いつ
も並ばないと入れないもの」さかんにその店の宣伝をしてくれました。地元の人に評価さ
れていて、本当に美味しい店でした。そんな狭い店内ですが、若い男性接客者の笑顔がと
てもいいのです。その笑顔で窮屈な環境も不快になりませんでした。料理を運んで渡すと
きのニコッとする笑顔。生ビールを持ってきてニコツ。そのうち他の客のために席をひと
つ移動しました。そのとき、カバンを預けることにしましたが、それを受け取ってニコッ
とします。まさに笑顔は接客の最高の武器。料理を引き立たせる最高の調味料であると実
感しました。

 その後少し街を歩き、おなかをすかして今度はすし屋に行きました。店構えからして高
級店です。店に入り、カウンターにすわりました。結構ネタもいいものがいっぱいあり、
しかも地のものばかりで、握りの一つ一つを楽しみました。実は前から仙台の「乾坤一」
というお酒はおいしいと聞いて一度飲みたいと思っていましたが、なかなか今まで飲む機
会がありませんでした。そこで板さんに聞いてみました。
「ねー乾坤一ってある」そのコトバを聞いて笑っています。その笑いが感じ悪いのです。
「乾坤一?」「乾坤一だってさ」今度は隣の板前さんに笑いながら語りかけるのです。
隣の板前さんは、馬鹿にしたように笑っていています。
「飲んだことないの、地元の酒でしょ」と尋ねると「ありません」と隣の板さんが答え、
前の板さんは「飲んだことある人、そんなにいないんじゃないかな」と答えました。
何気なく出た板さんの笑いとコトバでしょうが、「あんなもん好きなんだって」と言われて
いるようにとれたのです。

 その後「乾坤一を知ってる人は通ですよ」とさかんにフォローしていましたが、最初に
受けた印象は残ってしまいます。またその板さん、酒は体質に合わずに嫌いだからと盛ん
に話していましたが、何か話が盛り上がりませんでした。帰りにさすが高級店という金額
を支払いました。味は満足でしたが板さんの会話術に工夫がないために、割高に思えたの
は残念でした。

 接客や会話を引き立たせるのは笑顔です。ただし笑顔はただ笑っていればいいのではな
く、笑い方によってはお客様を不快にすることもあるのです。怖いですね。

 皆さんはいかがですか。



第48号.H14.12.8

デパートでは、お歳暮時期には特設催事場が設けられます。日曜日にあるデパートの催
事場を利用したときのことです。今まではお客が送り先の住所を用紙に書いて、品物のカ
ードと共に担当者に渡していましたが、今年から担当者がコンピューターの端末に住所を
直接打ち込む形式になっていて、お客の記入の手間を無くすサービスになっていました。
用事のついでに寄ったもので、あまり時間がなかったのでちょうどいいと思いました。

 品物を決めて受け付けカウンターの担当者の前に座りました。その人は年配の女性で老
眼鏡を使っていましたから50歳前後でしょうか、そつのない対応でした。いざ端末機に
住所を打ち込むときのことです。郵便番号を入力すれば住所まで自動的にインプットされ、
あとは番地と社名や名前の入力だけです。見ていてこれなら便利だし早く終わるなと感じ
ました。

しかしその女性はあまり機械になれていないようです。キーの入力が遅いのです。しか
もちょっと入力を間違えると、直すための操作を覚えきっていません。不幸はすぐ来まし
た。1件目の入力中、番地の入力のときに、数字キーを打ってもうまく入らないのです。
何回やってもダメです。見ていて、あまりもたもたしているのでつい口をはさみました。
「入力の場所はそこでいいの」
「いいと思うんですが、すみません、ちょっと聞いてきます」
そういったまま、どこかへ消えてなかなか帰ってきません。

しばらく待つと、若い女性を連れて帰ってきました。若い女性に、これが入力できない
のですがと事情を説明していました。若い女性は、私を見ても、頭を下げるでもなくニコ
リともしないで、つまらなそうな顔でやってきて、無表情に片手で2回キーを目にもとま
らぬ速さで打ちました。進入角度45度、まるで鳥が水面の魚を取って飛び立つように一瞬
でした。そして「直りましたよ」と言って、直し方も教えず、年配の女性を一瞥して戻っ
て行きました。その姿を見て、「何でこんなのがわからないのよ。まったくやんなっちゃ
うわね。こんな簡単な同じことを何度も聞くんだから」と言ってるように感じたのです。
客の見ている前でこんな姿を見せるのですから、多分何回も操作がわからなくて聞いてい
たのではないでしょうか。年配の女性は「すみません、すみません」と若い女性に声をか
けていましたが、その声が出たときには、もうその場所にはいませんでした。

私をだいぶ待たせましたから、担当者もあせっています。あせると余計打ち込みがうま
くいきません。ひらがな、漢字はいいのですが、カタカナになると引っかかってしまいま
す。ウイ、ウイと何度も打っています。私はまた口をはさみました。「ウェイ」だからWei
じゃないの、「あーそうですね、すみません」とまた打ち込み直しです。今度はカタカナ
の長い文字を入力して、字数が入りきらないのです。「入りきらないのですが」と言うの
で、半角で打てば入るでしょ。「あっそうですね」とは言うのですが、半角に直し方がわ
からないようです。また打ち込みなおすと時間がかかるので、「いいよ、じゃーそのまま
で、最後のフレーズはアルファベットの一文字にしていいよ。もう時間がないから」と言
うと、「すみません、すみません」と言ってます。なんと1件入力するのに20分もかかっ
てしまったのです。

この遅さでは、本当にクレームを言ってもいいぐらいです。お客に怒鳴られても不思議
はありません。でも私は周りに中高年でパソコンに慣れなくて、つらい思いをしている人
を多く知っている関係で、ついかわいそうになってしまい何も言えませんでした。それよ
り安心させるように、「平気だから、大丈夫だから」とコトバをかけましたが、そのコト
バをかければかけるほど、担当者はあせって間違いを起こしてしまうのです。最後は黙っ
て見ているだけでした。その姿を見て、お歳暮商戦最盛期になって、この女性は仕事につ
いていけるのかな、お客に怒鳴られないようにがんばりなさいよと、無言のエールを送っ
ていました。

大変な時代ですね。パソコンの出現で、パソコンを使う職場では、それが扱えなければ
過去の実績、経験なんて何の意味ももたないんですもの。扱えなければ戦力にはならない
のですから。否応なく覚えなければならないのですよね。中高年の皆さんがんばりましょ
う。また、若い人は「年寄り怒るな、行く道や」という言葉もあります。必ず自分も将来
同じことがあるかもしれません。親切に教えましましょう。特にお客の前では、職場の雰
囲気が評価されますよ。

 皆さんはいかがですか。



第49号.H14.12.22

酒屋を営んでいる私の友人が自分の判断を後悔していました。

台風の後、あまりの風の強さに店の一部が飛ばされてしまいました。修理をしなくては
ならないので知り合いの工務店にお願いしました。工務店の社長とは地元のサークルで一
緒でもう15年来の友人だそうです。仕事上、何かを業者に頼むときは何店かに見積もりを
出してもらい、その中で納得した業者にお願いするのが通常でした。しかし仕事の内容が
建築関係ですと、古くからの知り合いでもあり他の工務店に頼むわけはいかないというこ
で、その友人に見積もりを頼みました。

金額が60万円ということで依頼しました。何日間かの工事が終わり、請求書を渡されま
したが、なんと1.5倍近くに跳ね上がっていました。当然理由を聞くと、実際に壁を開け
てみると、状況がひどくてこんな金額になってしまった。それでも、うちは全然儲けがな
いぐらいなんだからとさかんに言い訳をしたそうです。

もし金額が上がるようなら前もって、こういう状態だったらこのぐらいになると、何案
かの金額が知らされていたら納得がいくものを、工事完了後の事後承諾だと納得がいきま
せん。それでは見積もりの意味がない、見積もりミスは向こうの責任なんだから、責任を
取るべきだと。まさにクレームに発展しても不思議はありません。しかし友人ということ
もあり、あまりもめたくないので何も言わずに支払ったそうです。

その経験から、彼は次のようなこと言っています。「いくら友達でも仕事は別だね、こ
んな不景気なときに友達だからと甘えられても困る、今度は何か業者を選ぶ場合は、残念
だけど友達と言う理由は無視しようと思う、甘えられてえらい目にあったよ」と。

景気が悪いときは、知り合いが顧客になってくれると大助かりです。顧客拡大のきっか
けです。しかし顧客になったら、友人としての甘えは禁物です。かえって不満が大きくな
るだけです。逆に通常の顧客よりも、わざわざ選んでくれた感謝の気持ちを伝える工夫が
顧客を増やすコツでしょうね。

皆さんはいかがですか。



第50号.H15.1.5

 新年明けましておめでとうございます。
皆さんのお正月はいかがでしたか。帰省した人、旅行に行った人、家でのんびりした人、それぞれ
新年の思いをもって過ごしたことと思います。さー今年も元気に接客について考えて行きましょう。

  やれ忘年会、新年会と年末、年始にかけてどうしても飲む機会が多くなります。おかげで多く
の接客者に出会い、いろいろな対応を体験します。今回共通して思ったことは、まず声の小さい接
客者が多いということです。有名店、チェーン店、個人店を問わず言えることです。

  料理の注文を復唱しているのに、そばにいる客には聞こえるけれど、その周りの仲間には全然
聞こえない、あるいは一生懸命料理の説明をしているのに、声が小さくて何言ってるのか分からな
いので、結局「ハイ、ハイ」と空返事をして聞こうとしなくなることがざらです。またろれつが回
ってないために、意味がわからず何度も聞き返すなんてこともあります。

  接客者からすれば、一生懸命話してるのに、全然聞こうとしないんだから、いやな客と思うか
もしれません。でも聞こえなければ聞こうとしなくなるのはあたりまえで、聞く気にさせる要素の
ひとつに「はっきり聞こえる声」があることを忘れないでください。

  先日ある居酒屋さんの20代後半の男性接客者。テーブルについて挨拶、注文取りと最初から
接客してもらいましたが、とても低音ではっきりした響きのある声で対応してくれました。その声
の印象に思わず「声がいいね。」とコトバをかけると
「そうですか、ありがとうございます。そのようなことを言われたのは初めてです」
「すごく響いていて魅力的だよ。他のお客さんも言うでしょ」
「いや、いままで声のことは言われたことないですよ」と答えていました。

彼は、他の接客者と比べても、とても気配りのある接客をしていました。またお客さんが彼の苗字
を呼んで話していましたから、おそらく人気のある接客者なのでしょう。接客者を評価するときは、
どうしてもコトバ、態度がその基準になりがちですが、声も大きな影響があります。彼の人気の秘
密のひとつが声の魅力だと思いました。

  皆さん今まで声を意識したことがありますか。お客の立場で店に行ったとき、接客者の声に注
意してみてください。声の魅力の新しい発見がありますよ。それを発見したら自分に生かしてみま
しょうよ。

  皆さんはいかがですか。