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雑文 E/G-[1] 「プータロー」といふこと

 子供の頃父は「プータロー」という言葉をよく口にしていました。男一匹、若くても、ちょっと年を食っていたとしても、とりあえず会社に入るなりして働き自立するのが正しいあり方だという意識からか、プータローというのはいい若いもんが就職もせずにぶらぶらしている、という文脈で使っていたようです。

 そのうち、しあわせウサギとカラオケザルが登場する「クマのプー太郎」というマンガが出て(作者:中川いさみ)、思わず、プータローだと思ったのですが「クマのプーさん」のもじりのようだったのでがっかりした記憶があります。

 一方、プー子という言葉は残念ながら父の口からは出ませんでした。嫁にもいかず家事手伝いでぶらぶらしているという文脈もあったろうと思うのですが、その頃はまだ男は外で仕事という通念だったからそういう言葉がなかったのだろうと納得しておりました。

 そのように自分にとってはしごく当然のよう思える言葉なのですが、話の途中で、今言ったプータローってなんのことですか、と聞かれることがありました。果たしてこの言葉は広く世間に認知されているだろうか、と思い買ったばかりの SEIKO 電子辞書の広辞苑にあたったところヒットしない。プータロー、ぷうたろう、ぷう太郎、プー太郎。どれでも出てこない。こうなると意地になるのが畜生のあさましさ。三省堂の大辞林を引いてみる。ビンゴ!ぷうたろう「風太郎」A定職もなく、住居も定まらぬ人、とある。

 うーん、でもイメージがちょっと…ということでさらに追求すると「現代用語の基礎知識」1998年版別冊付録 現代用語20世紀事典の1988年のキーワードにある。プーする/プータローする、のように使うらしい。

「失職や無職ではなく、フリーのアルバイトなどで気ままに暮らしていることをさす。会社や仕事に縛られることを積極的に拒否している。」

1988年は、消費税が初めて導入され、となりのトトロが上映され、ドラクエと光GENJIが流行った年とありますが、この頃、昔の「プータロー」のイメージと異なった使われ方が出てきたのかもしれません。

 ではフリーターとどう言葉としては違うんだろう、と疑問がよぎる。フリーターの言葉の由来を調べると、80年代後半に就職情報誌がこしらえた造語で、「何らかの目標を実現するため、あるいは組織に縛られない生き方を選ぶ若者」を念頭に置いたものとあります。(自由の代償フリーター 小杉礼子 日本労働研究機構)フリーターは80年代末から登場し90年代に急激に増加し、2010年には400万を越すという予想もあります。

 やっぱり昔風の意味でのプータローという言葉かな、ぴったりするのは。

 「向上心のない男は嫌いです」と言った女優がいましたが、2年前に他界した父ならそう言ったかもしれないと思うのでした。

おしまい (2004年 4月6日)

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雑文 E/G-[2] 痩せたソクラテス

 お受験の話題で「T大」の話になった。親も子も知的レベルがそれほど高くないからT大を目指せという話題ではない。当然一般庶民家庭だから KO とかは意識の端にも上らない ― 「経済」「階級」の点で英国のような異国と思っているから。知・富・身分の三重苦でない分T大がネタになりやすいのである。むろん、身内に関係者はいないから想像の域を出ないのだが。

 たいした話じゃなかった。本郷に下宿していた同級生からずいぶん昔に聞いたT大生の生態やら、知り合いのT大出身者の人物評とか与太話をまじえ、ぴんからきりまでいるしね、とよせばいいのにT大論をぶっていたのである。

 嘲笑うような調子でぴしゃりとひとこと。
「負け惜しみはみっともないわよ。自分が入れなかったからって。はずかしい」
 鶴の一声というのだろうか(鶴にはとてもみえない)。会話は起承転結の「転」も「結」もなく終わり、子供の興味はほかに逸れていった。

 またやられた、もう二度とこういう話に乗るのやめよう、見苦しい、と何度もだまされるばかな犬のような自分を後悔するおやじ ― あまりに人間的な、ありふれた家族団欒。

 T大に関して物申す*には、最低でもT大に合格していなければならない、という不文律を忘れていたがゆえに起こった惨事。まあ、外国の有名大学を出ているなら物申しても許されるのだろう。いくら名門でもこの国で知名度がなければいけないが。(*物申す:注文をつける、抗議する)

 物申すには権威がいる、という単純なことをここで言いたかったのである。(T大出身のひとごめんなさい、有名税だと思ってください、慣れているでしょうけど)一般的に、お墨付き肩書でまずふるいにかけ、それから発言に耳を貸し、往々にして考えたり判断したりするのもめんどくさいし先方の方がエライと思うから、内容はそのまま追認してしまう。ひどいときは話はそっちのけで、ただうっとり聞きほれる。1ラウンドで試合は決まってしまうことが多いのだ。

 評論家はいいよ、お気楽で、というステレオタイプの言い方もあるが、TVや雑誌に登場する評論家の経歴をちょっとみればわかるように、もとXXとかT大とか、昔とった杵柄や看板をひっさげて物申すのが正しいありかたなのだ。

 この道30年。この道40年。
 「道」というのはどうだろう。

 これは無限の地獄だ(無間地獄じゃありません)。つきつめると人間国宝になっていないとその分野で物申すことはご法度になる。頂点にはその道50年いや60年70年がいて、その下には数年刻みで準名人や職人がいるピラミッド。神に近づくのは途方もなく長い階段を上らなければならない。

 いっぱしのこと言いやがって一〇年早いぞ、おとといこい、顔洗って出直せ、身の程知らねぇやつだ、きいたような口をききやがって、何様のつもりだ、青二才め、三下のくせしやがって。

 「道」の場合は奥義を極める修行年数に比例した序列、到達したレベルの序列が存在するようにみえる。

 その道のプロ。専門家。
  「プロ」がついたらどうだろう。奥義より技能指向が強そうだから経験年数に比例した階段は少しはゆるやかで短かろう。

 外野はすっこんでろい、ど素人に何がわかるんでぇ、俺はこれで長く飯を食っているんでぇ、しのごの言うんだったらてめぇでやってみろい。
 職人のおやっさんの言い回ししか出てこない。貧困だ。

 いずれにせよ、その道に関わっていないと物申す資格がないと言われるようだ。

 当然、逆手にとったマーケティングもある。お笑い系に多い。自覚的に門外漢として物申すのだ(だからマーケティング)。芸達者なら庶民が喝采を送り、爆笑問題のようにブレークし、やがてタモリやたけしのように正当な権威に近づき、ギルドに入る。

 要は物申すにはメンバーシップが要るということが言いたい。どんなメンバーシップが必要かというのは物申す対象によるだろうが「一芸に秀でること」というような無根拠の越境がよろこばれることもあるので、とにかくメンバーシップなのだ。

 自営業だとクレジットカードも作れない(ことがある)のだ。
 正当なメンバーシップを所有する、しかもその中で序列の上位の親分が物申すのはどうだろうか。

 ああ、やっぱり貫禄が違うわね。さすがその道のプロが言うことは重みがある。やっぱりえらい人は言うこと違うわね。なかなかああは言えないわよね。
 貫禄、重み、過去の実績、看板。

 うーむ。わからないでもない。この道40年、この道のプロ、或いは所属組織の看板(一流企業でもよし、官庁でも、学校でも)をもって、その依って来るところについて物申す場合、それは自己批判のような気もするが。或いは、自分のしてきたことを棚に上げた無責任な発言だってあるような気がする。冒頭のT大の例をあげると、T大出の社会的成功者がするT大批判のようなものは、自分の依って立つところを批判する潔さなどと思われ好感をもたれるようだ。

 何かに似ている。
 キリスト教の懺悔(ざんげ)だ。
 懺悔のスタイルがアピールするのだ。

 そりゃ当然だろう。一億総懺悔したわけだから。
 開国してから欧米化が速かったこと、鬼畜米英がすぐ親米になったこと、終身雇用や年功序列がアメリカ型成果主義にあっさりと変わってしまうところ − すべて合点がいく。

 みんなかくれキリシタンだったのだ。

おしまい (2004 4.17)

[ゆとり教育を受けてきた比較的若い読者のための注]

<やせたソクラテス(1964)>
 太った豚となるよりやせたソクラテスたれー東京大学総長の大河内一男総長が、卒業講和で言ったとされ有名になったジョン・スチュアート・ミルのことば。<現代用語20世紀事典・自由国民社>

<一芸は道に通ずる>
 どんな芸でも、その芸の最も大切な点を極めたものは、物事の道理がわかるようになる。<故事ことわざ名言名句・主婦と生活社>

<ギルド>
 〔経済〕中世ヨーロッパの都市でつくられた、商人と職人の自治団体。同業の発達を目的として11世紀に発生したが、近代産業の発達によっておとろえた。きびしい徒弟制度を採用した。<学研国語大辞典>

<一億総懺悔(1945)>
 敗戦処理にあたった宮様内閣の東久邇首相は、8月28日に記者団と会見したとき『国民はことごとく反省しなければならぬ』と発言。報道陣もこれを受けて、”敗戦の責任は国民ひとしく負わねばならぬ”などと伝えていたが、その後、戦争責任をうやむやにするものだ、との批判が強くなり、東久邇内閣は1ヶ月半ほどで退陣した。(現代用語20世紀事典・自由国民社)

<懺悔(ざんげ)>
 キリスト教で、罪悪を自覚し、これを告白し悔い改めること。<広辞苑>

<懺悔(ざんげ「さんげ」)>*
 〔仏教〕過去に犯した罪過を悔い改めること。また、過去の罪過を悔い、神仏や人々の前で告白すること。《参考》古くは「さんげ」。仏教では正しくは「さんげ」という。<学研国語大辞典>

*懺悔というとき、1957年生まれの筆者は、キリスト教の懺悔しか思い浮かばないのだが昔はそういう使い方でなかったようだ。

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雑文 E/G-[3] ゲンさんの寓話 − 分身譚

 とりあえず主人公の名をゲンさんとしておきましょう。

 ゲンさんには妻と娘がいました。とても仲の良い家族でした。ある日のこと、ゲンさんは兵隊にとられ戦闘が激しさを増す南方戦線に送られてしまいます。外地では激戦が続き兵を補充するのも追いつかない状態だったのです。ゲンさんが行ってからも長く戦争は続き、便りも途切れ、そのうち南方に展開していた軍が相次いで玉砕していったことが知らされます。やがて戦争が終わり、命からがら逃げてきた兵や一時捕虜となった兵も戻ってくるのですが、ゲンさんの生死は分からないまま時が過ぎていきました。

 ゲンさんの妻も娘も、無事帰ってくることだけを信じて、二人けなげにずっと待っていましたが、月日は流れ待つことにも疲れ果ててしまいます。そうしているうちに、親切に世話をやいてくれていた隣村の権造に心が惹かれていき、やがて自然の流れで一緒に暮らすようになりました。権造は働き者の心優しい男で、娘もよくなつき、実の親子・夫婦のようになっていきます。

 そんなとき、変わり果てた姿になったゲンさんが戻って来る。南方での過酷な体験がゲンさんをすっかり別人のように変えてしまい、村人もゲンさんだとは分からなくなっている。運良く戦闘を生き延びたゲンさんは、一目でも妻子に会いたいと思い続け、ジャングルに逃げ隠れしながら、帰るチャンスをうかがい、ついに戻ることができたのでしたが、最愛の家族が幸せに暮らしていることを聞き及び、せっかくの幸せを壊すことはならぬと、ついにその前に姿を現さずに去っていったのでした。

 ディテールはさておき、こういうモチーフの話が映画やドラマに結構あったかと思います。原型はテニスンの「イノック・アーデン」という散文詩のようですが定かではありません。同じような実話もあったようです。

 この死んだはずの亭主が戻って来たら…というイノック・アーデンの話をとりあげ「分身」の悲劇を書いた本を最近読みました。分身の悲劇とは以下のようなことだそうです。

「いまここに自分が占めている場所は、いつか他のだれかによって埋め合わせることができる。 ことによると任意のだれであってもよいかもしれない。自分が果たしている役割は、簡単にとりかえがきく。ということは、自分はなんの固有の役目も担ってはいないということだ。つまり自分が自分であることの必然性などない。(思想としての孤独、清水学)」

 分身譚の語るところは、自分と寸分違わぬ存在が現れ、自分が唯一かけがえない一回限りの存在という「認識」が崩れるところかと思います。自分のかけがえのなさは自分で決めるわけにいかない − 自分で決めるというひとはそれでいいのですが − 他者の承認があってこそそれが実感される。その他者が承認しているはずの「自分」の居る場所に自分とそっくりな他の者が居座ることがいとも簡単に行われてしまうのを悲劇と言い、誰にでも起こり得ると言うのです。

 冒頭のゲンさんの話はあまりにも救いがないかもしれない。別の展開はないでしょうか。たとえば、ゲンさんの帰りを待てず、権造と新しい生活を始めるうちに実の親子夫婦のようになっていくところまでは同じとします。

 権造との暮らしにも慣れ、妻と娘の記憶の片隅にすらゲンさんのことは浮かんでこなくなっていきます。平穏な、終わりなき日常が続きハッピーエンド、と思いきや、ちょうどその頃、南方からの帰還兵が村にやって来ます。ゲンさんの消息を携えて。

 ゲンさんはジャングルに逃げ込んでから、病に倒れ今にも死にそうだったところ土地のひとに助けられたというのです。土地の娘の、看病の甲斐あって一命をとりとめ、これもよくある話のように、お互い情が芽生えてしまい一緒になってしまったと聞かされます。今は子供も生まれ一家を成し、その土地にもとけこみ、もう戻ってくる気もないようだ、というものでした。

 こういう展開もドラマで馴染み深いものかと思います。これだと分身譚にならないじゃないかって?

 分身譚となる場合もあると思います。

 どこが分身かというと、ゲンさんの心の中にかけがえのない存在として位置しているはずの「妻子」の分身です。最後までゲンさんの心の中に自分たちが居た、と妻と娘は信じていたのですが土地の娘(と生まれてきた子供)が本来の自分たちの場所に居ることが分かり、心が穏やかではいられなくなる。これまで待っていたのは一体何のためだったのだろう、ひとのこころはそんなものか、と自分たちを棚に上げて思うことになります。気の毒なのは善意のひと、権造かもしれない?そこのところは横に置くことにして。

 むろん、権造と幸せに暮らしている「妻子」が、ゲンさんがどうであろうと知ったこっちゃない、過去は過去と見事に切り捨てるならば分身譚にはなりません。けれど、そもそも長い間ゲンさんの帰りをけなげに待っていたわけですから、常識的には「割り切れる」と考えるのはおかしい。だからこういう分身譚もあるのではないか。

 まあ、往々にしてひとは魔物ですから、たやすく割り切って平然としているひともいるでしょう。関わりたくない類ではありますが。

 どちらの場合でも人間なんて所詮そんなもんだ、とうそぶき口笛でもふいてニヒルをきどる(いい女を気取る)のが今風なのかな、と思いますが、当事者になると心が穏やかでなくなるというのが分身譚の語るところかもしれません。

 「ええ、ご新造さんエ、おかみさんエ、お富さんエ。いやさ、お富、久しぶりだなぁ。」
―死んだはずだよお富さん。

おしまい(2004 4.24)

注:

[イノック・アーデン]
有名なので、関連サイトがいっぱいあります。検索してあらすじを読んでみましょう。岩波文庫のサイトは http://www.iwanami.co.jp/.BOOKS/32/X/3222610.html

[分身](ドッペルゲンガー)
ドッペルゲンゲル[Doppelganger] @生き写し、分身 A自身の姿を自分で目にする幻覚症状(おなじみ SEIKO 電子辞書広辞苑より)。

[お富さん] 歌舞伎「与話情浮名横櫛」(よはなさけうきなのよこぐし)] 三世瀬川如皐(せがわじょこう)の作。「お富さん」は春日八郎のヒット曲。

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雑文 E/G-[4] なぞの行商人

 今を去ること30数年前、修学旅行で京都に行きました。当時京都には、今やわが国ではほとんど絶滅した感のある木彫りの人形がいっぱいありました。あくびだるま(だるまがあくびをしている)を始めとして、いろいろバラエティーに富んだ品揃えで、中学生の割に渋い趣味のある私は、お土産は「木彫り」と決めていたのでした。

 ちょうどそのとき、木彫りの観音像(高さ 20 cm ぐらいのミニチュア)を見つけ、不覚にもアイフルのオヤジのように目が潤み、買おうか買うまいか店の前を何度も行ったり来たりしたのを憶えています。6,000 円と結構なお値段で、小遣いを全部はたいて買ってしまおうか逡巡した挙句、泣く泣くあくびだるまと布袋様を買って帰ることになったのです。

 それから随分たって、会社に入り京都再訪が実現しましたが、時は流れ、森林伐採の影響か、渋い木彫りじゃペイしないのか、どこを探しても木彫りは見つからない。土産屋のおばちゃんも、そういえば昔はあったわね、などという調子、なんでそんなもんという反応。かつて定番の土産品であった「ペナント」もそういう運命をたどったらしいと先日TVでやっていましたが。

 私には「木彫り」のトラウマがあったのです。

 そして、トラとウマはアフリカで出ました。(トラはアジアですね)

 会社の仕事で西アフリカのナイジェリアに駐在していた頃のこと。

 ナイジェリアの3大部族のひとつであるヨルバ族に、木彫りの伝統工芸みたいなものがあると聞いたのです。ヨルバ族というのは、山口昌男という文化人類学の偉い先生が『アフリカの神話的世界』―岩波新書、絶版ーという本でとりあげている部族で、思わず、え、いい木彫りがこの国にあるんですか、と術中にはまっていきました。(誰のだ?)

 ヨルバ族の地にゴッドツリー(神の木)と呼ばれる神聖な木があり、一部の選ばれし者だけがその木を伐ることができる。伝統工芸というのは、その選ばれし者が彫る人形で、先祖代々、その芸術性の高いデザインと彫刻技術が継承されており、欧米でも評価が高い。そして、選ばれし者の最高峰にいるのが FAKEYE(ファケイエ)という職人で、今も、ゴッドツリーから人形を彫り続けているという。

 駐在していた商社マンはそう説明し、これがそのファケイエの作品だ、と自慢げに木彫りの人形を見せるのです。

 そう言われると、これはありがたい芸術かもしれない。デザインが独特で面白い。待ってましたと目に涙。東アフリカにもマコンデという黒檀芸術があったしな、などと少ない知識を総動員して、思いはゲージツに走るのでありました。そして、神の木で彫ったファケイエのものかどうか鑑定するにはこうするのだ、えいや、見るがいい!その人が木彫りをひっくり返すと台座の裏に FAKEYE と名前が彫ってあるではないか。なるほど素朴に説得力がある―いかにもうさんくさいところが本当っぽい。

 では、どうやって手に入れるか。おみやげを売っている木下商店(木の下で原宿のアクセサリー売りみたいに商品を広げて売っている)やホテルにあるみやげ物屋ではお目にかかれない。

 ヨルバの地からはるばる売りに来る行商人から買うのだ、その行商人は審美眼のあるひとにしか売らないのだ、神の木には限りがあるしファケイエ師も寡作なのだ、まいったか、と意地悪く言うのです。

 うーん。ファケイエの木彫りが欲しい…。ぜひとも自分のところにも来るように伝えてください―いや、君みたいな若造を相手にするかな、ふん―そこのところを―などというやりとりはなかったのですが、とにかく、今度上京したら、新しく来た若いのが興味あると伝えてもらうことにしました。

 ある日のこと。

 とんとんとん。とかとんとん。

 私の住むアパートにやってきたのです。麻袋を肩にしょった大国主命(オオクニヌシノミコト)。彼は、木彫人形や絵などの商品が入った大きな袋をサンタのようにかついで行商しているのです。あごの先にうっすらとひげをはやし、栄養状態が悪そうにやせていて、背丈は165cmぐらい。失礼ながら貧乏神とでも呼びたくなるような行商人。

 それから2年弱、ほぼ毎月やってくる行商人からローンで木彫りを買っていくことになろうとは神のみぞ知ることでした。(お金がなかったので分割払いにしたり闇ドルをブラックマーケットで換金して払ったりと苦労しました)

 さて、オオクヌシノミコトの持ってくる人形は、確かに商社員宅にあったものと似ています。素人の自分には区別がつかない。ということで秘伝鑑定法を使うしかない。えいや!

 裏をみたら Odekunle―オデクンレ? ファケイエじゃねえ!贋物をつかませるつもりか、わりゃ!来たばかりだからと足元みやがって、俺を誰だと思っているんでぇ。逆上する私にオオクニヌシノミコトはこう言います。

 ファケエ師は偉くなってからめんどくさい人形なんか彫っていない。ヨルバの地には、イギリスのプロレスラー養成所・虎の穴のような(タイガーマスクという漫画に詳しく出ている)工房があって、今は弟子たちが人形を彫っているのだ。弟子たちの作品で出来の良いものがあると、ファケイエ作として名前を彫り世に出してしまうので、弟子たちは世に出ることもなく、お金ももらえず、生活も苦しい。だから、こういう風に市場に出まわるのだ。隠れたバイトといえども、弟子には自分の作品には自分の名前を彫るというプライドがあるのだ、と言うのです。

 なるほど。

 この国では、というよりもわが国にだって、いかにもありそうな話ではないか。これは説得力がある。

 とまあ、オオクニヌシ君が持ってくる木彫りで気に入ったものがあると月賦で買うということになったきっかけはこのようなものでした。不思議とオオクニヌシ君は「オデクンレ」の作品ばかり持ってきました。近代化の波が押し寄せ、伝統工芸を継ぐひとも少なくなったのだろう。日本と同じだ。

 あるときこんなことがありました。 

 とても欲しい!と思う作品を持ってきたのですが、運んでいる途中の事故なのか、まぶたのところがちょっと欠けてしまっているではありませんか。欲しい―でも人形は顔が命だ。とても気に入ったけれど、まぶたのところの傷、ただその一点が気になってしょうがない。どうしても決めかねる。半端じゃないお値段なので、半値なら引き取ってもなどというやりとりが続き、結局、今度来るとき善後策を練ってくる、とりあえず今日のところは置いていくと言うのです。値引きはなし。がっかり。

 それから2週間ぐらい経ちました。

 とんとんとん。とかとんとん。

 やっと来たか。

 オオクニヌシはトレードマークの袋をしょっていませんでした。なにやらポーチのようなものを手に持っている。

 おい、善後策はどうなったんだ、と言う間もなく、つかつかと人形のところに歩み寄り、そのポーチからなにやら取り出す。何するんでぇ!と思いながらも呆然と、ただ見ているだけの数分間。仕上げはオイルらしきものを塗ってと器用に欠けた人形のまぶたを手直しし、すっかり目立たなくしてしまいました。

 オデクンレとはお前か?

 尋ねても返事はなく、だた自慢げに"good"とうなづき、金払えと手を出すのでした。

 ナイジェリアのなぞの行商人。

 いまごろどうしているだろう。

雑文 E/G-[5] 肝(きも)の話

 今年の夏は35度を越す日が続くというとんでもない夏だった。家内労働者になると暑さが本当にこたえるのだ。
 酷暑…。ねっとりとした空気の中、悶々と、成すすべもなく、仕事もなく、ただただ体力を消耗しながら、夢も希望もなく過ごす毎日。シジフォスの神話(*)、賽の河原(**)、炎熱地獄…。

 初仕事が来た。地獄に仏。なんと和食の翻訳。畑違いだ!どうしよう。断ろうか?
 と言っても、よく考えたら専門分野・得意分野があるわけではないのだ。(英訳ですから、すべて畑違いと言っていいかも)
 ということで、オリンピックも始まろうかという頃、汗まみれ意識朦朧で引き受けてしまった。だが、酷暑の中の初仕事、前途多難が予想された。

 「魚介類のワタや肝(きも)の珍味」
 おおおおおおお。
 のっけから「きも」。肝はやっぱり肝臓だろうか?
 三省堂大辞林はこう語る。
 肝:肝臓 肝和え:タラや鳥の肝、鮑の腸(わた)などをすりまぜた味噌で、魚や野菜を和えた料理。
 和英辞典はどうだろう。
 ワタと肝 - the guts and liver
 うなぎの肝…「きも吸い」ってのがあったな。やっぱり肝臓だね。肝臓。
 魚の肝臓。イメージが湧かないが図鑑の解剖図を見て一応納得はした。

 「アワビを肝とワタと一緒に和える」
 ん?
 磯の鮑(アワビ)の片思い。「(鮑が片貝であることから)自分が相手を思うだけで、相手が自分を思わないことをいう。−広辞苑」
 そんなこと考えている場合ではない。
 アワビ:ミミガイ科の巻き貝のうち大形の種類の総称。
 困った。
 貝の肝臓? 鮑の肝とわたを一緒に和えるは、 dressed with the guts and liver of abaloneでよいのだろうか。釈然としない。
 小学館英語図詳大辞典に貝の解剖図があった(***)。 どれが肝なんだ?わからん。そもそも哺乳類や魚類という脊椎動物に肝があるのは何となくわかる。うなぎも、アンコウも、鴨も。牛だって、人間だって(あめんぼだぁって…)。
 貝類は軟体動物(無脊椎動物)だよね。貝のきもは肝臓すなわちレバー (liver) でいいんだろうか…
 あ、暑い。脳みそが煮え立ってきた。

 魚介類のわたと肝を使った料理。
 Dishes using the guts and liver of fish and shellfish と訳してみる。
 ほんまかいな。しばし考える。
 ポーン(じゅうす)とひざをたたいて、貝は英語で shellfishではないか。fish だからいいのだ − 迷わず liver of abalone でインターネット検索する。

  Abalone mixed and seasoned with liver
 (鮑の肝和え)
  Taking out liver of Abalone, patting it by kitchen knife, or mashing it in motor, and then fried it giving miso, sake, and seasoning, and also giving chopped leek and Japanese pepper.
 (鮑の肝を取り出し、包丁でたたくか、器械ですりつぶし、味噌、酒、調味料、それに刻んだネギと唐辛子を加え油で揚げる。)
 Tourist Information Fukushima というサイトが出てきた。

 あー、きもちが落ち着いた。
 ということでのっけから肝を冷やした初仕事だった。
 (無知をさらけだすようですいません。)
 

おしまい。2004 8.25


(*) シジフォスの神話
ギリシャ神話。コリント王は、ゼウスから怒りを買い死神を送られたが、死神をだまし捕らえたため、しばらく死ぬ者が絶えたという。重なる悪業の罰として、地獄で、たえず転がり落ちる大石を山頂へ押し上げる永遠の空しい苦行を課せられた。 (大辞林)

(**) 賽の河原
冥土に至る途中にあると信じられている河原。親に先立って死んだ小児がこの河原で父母供養のために小石を積んで塔を作ろうとするが、石を積むとすぐに鬼がきてこわしてしまう。転じて、際限のない無駄な努力のたとえ。(大辞林)

(***)
終わったあと、調べてみたら 古本屋で買ったTIME LIFE Visual Dictionary <通信販売絶版>に巻き貝の構造というのがあり、貝の奥、頭のてっぺんの、身のところが liver と図示されていました。さすが。

雑文 E/G-[6] サイクロペディア

 「普通にしゃべったら、アメリカ人じゃ聞き取れないからね。」

 興奮するとどもる癖のあるマイクおじさんは、シカゴの空港近くのマリオットホテルでこう言うのでした。
 英国人の彼は 10 年ほどアメリカで働き、帰国後はロンドンに電子部品関係の会社を設立し手広く仕事をしています。
 自分はアメリカに長くいたから彼らの英語は問題なく分かるが、自分が「ちゃんと」英語を話したらね―真顔でこう語るのです。会議でアメリカ人同士が時折かわす会話をうまく聞き取れなかったわれわれ日本人ご一行に、ホテルに戻ると詳しく解説してくれたときのこと。

 津軽弁や鹿児島弁は確かに聞き取れないよな、などと思ったらばちがあたりそう。
そういえば、デジタル腕時計とかラジカセとかを見ると、Is it an original? (オリジナル<本物>?)と昔アフリカでよく聞かれましたが、当時「オリジナル」は「日本製」という意味でした。
Is their English original?(あの英語は本家・本元?)

 ついこの間、バーゲンでイギリス人向けのこんな本を手に入れました。
Pears Cyclopaedia 112th Edition 2003-2004 (Penguin Book)
(ピアーズ百科事典 112版)

Historical Events (歴史年表)

  • 866 Fujiwara period begins in Japan.
    (日本で藤原時代始まる)

  ん?

  • 1543 Death of Copernicus
    (コペルニクス死去)
  • 1999 February 1 Monica Lewinsky testified.
    (モニカ・ルインスキー証言する)
  • 1999 April 20 15 killed in High School Massacre in Littleton, Colorado
    (コロラド州リトルトンの高校銃乱射事件で15人死亡*)

  んん?

Prominent People (著名人の部)

  • Baden-Powel, 1st Baron, founder of Boy Scouts (1908) and Girl Guides (1910) to promote good citizenship in the rising generation.
    (バーデン・パウエル。ボーイスカウト[1908年]とガールスカウト[1910年]の創設者。次の世代をよき市民に育てようとした。)

Special Topics (特集)

  • America's Global War (アメリカの世界戦争)

The World of Science (科学の世界)

  • (表)地球からの距離
    • 太陽           1.6 x 10-5光年
    • アンドロメダ星雲   2.2 x 106 光年
    • 大熊座星雲      10光年
      ......

  んんん?

 112年の歴史が信頼を保証する**「家族みんなで使える事典(A Book of Reference and Background Information for All the Family)」とあります。

一家に一冊。

 きっとみんな真顔でこれを引くんだろうな。

 マイクおじさんを思い出したのでした。


おしまい。 2004.11.01


* マイケル・ムーアの映画「ボーリング・フォー・コロンバイン (Bowling for Columbine)」 の題材となった高校銃乱射事件
** 英国王室御用達の石鹸会社 A & F Pears Limited が PR のために 1897年に発行した小冊子が始まりと書いてある。そういえば、大手翻訳会社が化粧品販売で大成功というのもあったっけ。

雑文 E/G-[7] イカ

  お酒はぬるめの、燗(かん)がいい
  肴(さかな)はあぶった、イカでいい*

 「肉厚で足の吸盤が吸いつくぐらいのものがうまい。」
 今年も和食の翻訳していて、活きのいいイカの見分け方についてというくだりでこんな説明が出てきた。イカの吸盤ってのは探してもみつからない。タコで検索するとsuckers on its tentacles と言うらしい。では「吸盤が吸い付く」はどう言うのだろうか?

suckers sucking ?

 サ行が続いてよくない気もするし、夢を夢見たみたいだし。「吸い付く」を和英辞典であたると stick to ともある(ほんまかいな)。
  Squid having a thick flesh and suckers on its tentacles sticking is delicious.
と書いて出した。なんだかしっくりこないけど仕方ない。

 “suckers on its tentacles sticking”ノ、イミガワカリマセン?
 キュウバンガ、ハガレナイデツイテイル、トイウイミデスカ?

 ギャッ。やっぱり通じなかった。sticking は吸盤がとれずにくっついているという意味ととれるらしい。迂闊だった。
 韓国とかではですね、タコの踊り食いというのがありましてね、生きたまま食べるから顔とか手にキュウバンがくっついて(stick to) 食べにくいということがありまして、ここでいうイカの suckers on its tentacles sticking ってのは、それぐらい活きがいいってことを言いたいのですが…「あたかも構文」(as if) みたいなもので表現したらいいでしょうかね?
と返信した。

  “suckers still on its tentacles” (キュウバンガノコッテイル、デスネ)

 …説明が通じていないのだろうか?

 Squid or octopus, caught and brought to the market, has suckers still on its tentacles. Even after some part of it is dead, suckers on its tentacles “suck” ? probably owing to the nervous system, like the tail of a lizard. With this in mind, the writer describes that good squid has suckers on its tentacles still sucking.

 (水揚げされて市場[魚市場]へもちこんだものは、イカであれ、タコであれ、吸盤が付いた状態です。体の一部が死んだとしても、神経系のせいか、吸盤が吸い付くことがあるようですートカゲの尻尾みたいな感じで。そういったことを踏まえて筆者は、活きのいいイカは、吸盤がまだ吸い付くぐらいの状態であると言っています)
今度は分かってもらえただろうか?

 ワタシタチセイヨウジンニトッテ、リョウリデ、マルゴト、ソレモ、イキタママヲミルト、トビアガッテシマイマス。テッパンヤキデ、テッパンノウエデ、イキタエビガ、マップタツニサレタトキハ、オドロキノアマリ、トイレニカケコンデ20プンモデテコラレマセンデシタ…

 なるほど。

 トイウコトデ ”with still-reactive suckers” (マダ吸盤ガ反応スル)− イカガデショウカ?

 おお!科学的だ!

おしまい 2005 8.26


 *舟唄 作詞/阿久悠 作曲/浜圭介 歌/八代亜紀

雑文E/G-[8] SPAM

始まり

 遠い異国の地から(と思う)スパムメールが来るようになった。いわく:

TRADING ALERT(商い注目!)
Stonebridge Resources Exploration, Ltd.(SBRX)
Rador it for Monday's Open now! Go SBRX!!!! (月曜相場が開くから、さっそくアンテナを張れ!SBRX買い!)

 とか、

Best New Stok for Year 2006 (2006年イチ押しの株)
Get Riverbank Invt Corp (RRBK) First Thing Monday, This Is Going To Explode next 2-3 days!!! (月曜いの一番に買いだ!2〜3日中にブレークするぞ!)

 など、投資を煽るニュースが何度も何度も違う名前で送られてくる。記事は毎日新しいものに変わるようだ。
 送信者、タイトルなど毎度でたらめな名前がついてきて、本文は添付されている GIF(画像)ファイルに書かれている。 html メールなので画像がフルスクリーンで表示される構造。
 用意周到だ!

 とにかくウェブで調べてみた。
 翻訳屋は調査熱心なのだ。
 カナダ、オンタリオの University of Waterlooというところの掲示板サイトにそれらしい情報が出ていた。

New virus worm [gibberish mail with attached gif]?? (GIF 添付のでたらめメール)

I wonder if anyone knows what's going on. We've seen a number of systems start spewing e-mail (most on resnet). When this happens they're quickly isolated. I've seen some of the mail they were spewing (AOL kindly bounces it back as spam) and have received the same mail from other sites around the world (I assume therefore a massing mailing worm of some sort and not a local problem). 

The mail is multipart mime, seems to have been generated by Microsoft
Outlook Express
, with a forged Received header (for the same network), forged From: (off site address), random gibberish Subject and content using real English words (in both plain text and html) and an attached .gif with various names.

I assume the gif is malicious -- else why would they send it and why am I seeing machines spewing mail?

The mail is getting past our ClamAV mail checker (it's getting to my mailbox) and Norton/Symantec AV on the workstation so it doesn't *look* malicious... my guess is it must be.

Anyone seen this or something similar?
 本文が GIF 画像だから自動スパムチェックをかいくぐる賢い奴。こりゃ、本腰を入れてスパムの基本を勉強しなければ。

構造

 トレンドマイクロのウイルスバスター2006に迷惑/詐欺メールの判定というのがある。中レベルに設定しておくと GIFスパムメールは迷惑判定され件名に[MEIWAKU]が挿入されるのだ!
 したがい、メールソフトのフィルター機能で振り分けできる(ダウンロードしない、削除する、ダウンロードしてゴミ箱行きなど)。Biglobe のスパムブロックサービスだとたま〜にスパム判定されるが、大半がすり抜けてしまう(Biglobeはマカフィーの Virus Scanベースじゃなかったっけ)。

 スパム対策というのは、中継しているメールサーバー(スパムサービスやっている札付きサーバーや、ブラックリスト入りサーバー等)から判定するのと、メールの中身(ヘッダー情報、メール本文)から判定する方法に大きく分けられるという。最近は乗っ取られたゾンビPCやらゾンビサーバー?を使う手口が頻繁なので、メールの中身でスパム判定するのが効果的で、ベイズフィルタ (Bayesian Spam Filtering)*ってのがあるんだそうだ。

* 特定の単語はスパムに高頻度で出現し、それ以外の単語は非スパムに高頻度に出現するということで、過去のスパム、 非スパムメールに含まれている単語のデータベースと比較することでスパムかどうか判定する。

 なるほど。

 メールの中身がテキストベースであれば使えるわけね。
 本文が添付GIFだとベイズフィルタが有効なのはヘッダーだけになるからすりぬける確率が高くなるんだね。

 賢い!

 時々スパムフィルタに引っかかる理由は、ヘッダー部分のでたらめなネーミングがたまたまスパム語彙データと一致したということなんでしょうね。
 ではなぜウイルスバスター2006で100%迷惑判定されるのだろう?企業秘密だろうか。。。(メンドクサイから質問しないけど)

ぬりかべ

........
From: "Doll Saunders" (ngint@yourhatc130n.mar.Imco.com)
Subject: [MEIWAKU]jumpsuit
MIME-Version: 1.0
Content-Type: multipart/related;
........
X-Mailer: Microsoft Outlook Express 6.00.2800.1106
X-Antivirus-Status: Clean
X-Biglobe-spamcheck: 0.00%
........
 
 ヘッダーはこんな感じであった(一部分のみ引用)。他のスパムでは、"X-mailer: Microsoft Outlook Expresss 6.2900" とかいくつかパターンがあるものの、"Microsoft Outlook Expresss 6" がヘッダーで不動の4番を占めているのだ(バース、掛布、金本!)。

 やったね(^-^)V。

 したがい、メーラーのフィルター機能を使いヘッダー X-Mailer: Microsoft Outlook Expresss 6 をブロック設定しとりあえずダウンロードしないようにしたのだ。 

 有効であった。

 当方はセキュリティホールの嵐で狙われやすい IE + MS Outlook は使わないのだ(もじら組、Firefox!)。ということで、Outlook Express 6 のことはよく分からないが、Microsoft のサイトをみると Outlook 2300 が現行製品で、1つ前の Outlook Express はもはや過去の製品扱いとなっているようだ。

 htmlメール形式で、Outlook Express 6 なんかで送ってくる化石のような知り合いいないから、「即サーバーから削除する」を設定してもいいのだが、何となく「ダウンロードしない」としておいたら...

 1通だけ非スパムが来た。

 忘れたころに有志飲み会通知を送ってくる奴。
 ああ、あいつか。やっぱ化石だった。ぬりかべ。

一日だって...

 
 本屋にスパム本を探しに行った。

 「スパムメール大賞」
 「スパム秘宝館」

 みうらじゅんが好きそうな本が並んでいた。空耳アワー的とも言えよう。
 その手の本を読みたいのではないのだ。

 新刊書籍はやっぱりだめだね、古本がいいね、ということでブックオフで「スパマーを追いかけろースパムビジネスの裏側 作者ブライアン・マクウィリアムス」(オライリージャパン―アメリカのソフトバンク出版部門みたいなところですね)というのを見つけたのだ。
 スパムビジネスの手口はフィッシングやら、携帯ワンギリやら、の詐欺と同じなのだが、スパムメール作成ソフトウェアパックというのが売られているそうだ。

 そういえば、Microsoft Outlook Express 6 html spam などと入力して日本のサイトを検索すると、出会い系やらエロサイトやらのスパムやフィッシングで困っているという話が結構出てくる。GIF画像の添付という新手法以外は同じようだから、似たようなソフトウェアが出回っているのだろう。

 で、ソフトウェアパックというのは何がパックなのかというと、プロバイダやらDM業者から流出したメールアドレスとスパム配布ソフトがパックということで、闇市場にはそういったお得なセットが流れているのだそうだ。

 やばい。。。

 早速今日来たスパムメールをチェックしてみた。

 「今ならお得。バイアグラ。この url をチェックしてください」
 (-_-メ)

 Not a Day Passes Without Receiving Spams...(1日だってスパムを貰わない日はない。)

おしまい

* ココログより転載 http://machine-manitou.cocolog-nifty.com/(5月22日)

雑文E/G-[9] オクトの腱

   恒例の寿司カレンダーの仕事が来た。

 今年は(2007年度分)「タコのさばき方」なのだ。
 タコをすりこ木で叩いて柔らかくしてからボイルするというレシピ。

 アフリカで仕事していた頃、元気の良い(或いは粗食で身がしまりまくっている)牛をそのままステーキにするとわらじステーキとなるので(噛み切ることができないのでそう命名されていた)、トーマス君という調理人が(Thomas Cook) よくトントンと肉叩きで柔らかくしていたのを思い出したのだ。

 ちなみに肉たたきは、tenderizer/tenderizer mallet という。

 そうやって肉をたたくことを日本人は筋切りをすると呼ぶみたいだが(筋引包丁というのがありますね)、色々調べると、叩いて肉を柔らかくする (tenderize the meat)、筋肉を柔らかくする (tenderize the mustle (tissue) /make the mustle soft) というのが一般的な言い方のようである。
 筋(腱)はどうするのだ!というと、remove sinews (腱を取る、取り除く)と言うらしい。

 筋は食わねど高楊枝。

 さて、原稿には叩いてタコの繊維質を切ると書いてある。
タコの腱と筋肉?を見分けるのは大変だろうな...だからタコの場合は腱は取らないで筋切りするんだなとは思うが、はて、どう表現するのだろうか。
 幸いなことに、タコは色々な国で食されている生物なのでレシピ資料はいっぱいあるのだった。やれやれ。

 が、殆どの資料は tenderize the octopus/octopus meat と書かれているのみ − やばい。

 で、漸くイカ(以下)を見つけたのだ。

 beat the tentacles so that they lose their stringiness (足を叩いて筋っぽさを無くす cf. stringy meat: 筋っぽい肉)

 一件落着。

 タコよ、お前は死んでいる。

おしまい (7月31日 2005)

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雑文E/G-[10] オトクな夏

 今年の Native Checker(Editorと呼んでいるようだ)さんとのやりとりはしんどかった。日程的に猛暑がかぶったし。
 メールで山ほどやりとりをし、モデムの調子が悪いとやらで1時間も電話でやりとりしたりといろいろであった。(英語を話したのは何年ぶりだろーか)

 コメントの応酬(単語の使い方やら、スタイルやら、意味やら、ああでもない、こうでもない、とやりとりをし、四方山話もまじりいろいろ聞かれるので、それも回答する)がほぼ終わり、最終確認の校正原稿も全部受け取りほっとしたとき、ふと気づいたのであった。
 チェッカーさんは最近英文ライティングの上級講座を担当しているとか言っていた。上級講座ってひょっとして...

 なな、なんと「英訳出版ワークショップ」という講座の先生の1人ではないか!
 この講座は、「英文ライティングスキル強化講座」、「英訳実力養成講座」という講座の成績優秀者しか受けられないのである。

 ちょっと「英文ライティングスキル強化講座」のウェブ・ページを覗いてみたら、その担当講師もやっておられた(敬語になってます)。ワークショップ参加資格は平均評価点が(課題6回分)17超/20 なので敷居が高いのだ。

 ひぇーっ、知らなかった

 最初から分かっていたら、びびってたかもしれない(が、知らなかったので普通に対応していた)。後の祭り―非礼なところがなかったことを祈るしかない。
 先生はどーも英語を教えているだけでは物足りなくて、現場業務で倭人翻訳者と仕事したかったよーで、「自分は本当は翻訳家になりたかったが、1つの外国語をじっくり勉強するより、いくつもを勉強したいというタイプだったから結局夢が叶わなかった」などと仰っていたのだ。

 お忍び旅行
 ローマの休日
 気まぐれ社長、社員食堂で昼食
 といったイメージが頭をよぎる。

 しかし、初期の英訳実力養成講座の劣等生(第3回です)が、恐れ多くも講師先生にマンツーマンで親身の指導をしていただいたってことになる。つまり、講座1コース受講に相当するってことで、マンツーマンだから特典付なのだ。
 だからして、今回の仕事は、原稿料+講座1コース及びマンツーマンオプション追加費用無償供与、と考えるべきなのかもしれないぞ。

 おいしい仕事なんて滅多に来ないのだ。
 お得な仕事だったと思いたい。

 と、めずらしくポジティブシンキングなのでした。

* ココログより転載 http://machine-manitou.cocolog-nifty.com/(8月8日)