2010/11月・・・小笠原諸島遠征記『母島』

文:クラブ・サウスアイランド 三島 泰蔵/編集 MOON

東京では秋の気配も深まり、北からの寒気が押し寄せようとしている中、
まだまだ温暖の小笠原諸島。竹芝より南方に1000Kmあるだけに、気候が 違うのもうなずける。
今回も毎度の事ながら、A氏と二人の遠征である。

朝5時半に秀洋丸で出航。
船長H氏、母島一の腕利き漁師でもあり釣りに関してもかなり精通している こともあり、毎回お世話になっている船。
 港を出て間もなく、昨日までの天候とはうって変わり風とうねりに歓迎される。
この時期は天気予報も当てにならないらしい・・・


乗れる可能性のある場所を探しまわり、ようやく見つけた姉島の離れ。
磯際で激しく上下する波の中、磯に飛び降り道具を運ぶ。

船を着けるのも船長 の腕。
流石である。
景色を眺める暇もなく、忙しく動き回り準備をする。
今回用意してきたルアーをセットし暫く様子を探るが反応が今一で、興味を 持ったカスミアジやダツが着いて来る程度。


 道具を変え、ムロアジのデッドベイトを放り込むと、コツコツと食い付く感触が伝わり 、上げると頭だけになっている。
恐らく、イスズミの仕業であろう。
この海域のイスズミは、体色が黄色く南国にいる気分にさせてくれる。


 そうこうしているうちに、潮が動き出し小型のギンガメアジや毎回おなじみのハタ類、 そしてサメ・・・が相手をしてくれ、久しぶりの小笠原の磯を楽しんだ。
時合いもそろそろだろうと、ムロを泳がせてみるとA氏にヒット!ハエ根がきついこの 磯も難なくかわし、20オーバーのイソマグロを引きずり上げる。
経験がものを言うので あろうが、ハエ根の位置・寄せのタイミング・取り込み等と数分間に頭を回転させ なければならない。
時折、「この人の記録を超えられるのか?」とも思う。
しかし、時間と費用をかけて来たからには私も多少たりとも結果を残したいもの。
気持ちを切り替え、限られた時間に集中する。

水面に向かっていくラインを程よく サミングし、小気味良く動くムロをロッドで確かめる。 その時、急にムロアジが暴れた瞬間水面近くで何かが引っ手繰った。
リールのクラッチを入れ、グッと重みが伝わったところで合わせを入れる。「乗った!」
と同時に左のハエ根に突っ込む。
こちらは30bl。ギリギリまでドラグを絞るが止まって くれない。
  ラインを出しながら、左の岩の裏へと回り込もうとしている。行かせない様に
竿を溜め踏ん張るも、魚に周り込まれてしまった。
ラインは、目視出来る位置であるが小笠原特有の 火山岩に擦れ、その下ではハエ根とも擦れているだろう。
 「まずい・・・」
岩まで15m程。
岩をかわそうと、押し寄せる波のうねりを横切り“自分が動こうか”とも頭 を過ぎったが、生憎その余裕がない。
 その間A氏は、アドバイスをくれる。 がしかし、「このまま耐えれば沖へ回ってくれるはず」と判断し、耐える。
すると、堪忍したかの ように少しづつ寄ってきながら沖の方へと動き出した。

“今のうちに出来るだけ寄せておかないと状況が不利になる”ゆっくりと竿を起こしながら リールを巻く。
見えた相手は、良型のロウニンアジ。

 

もう余力がないと思ったが、あともう少しというところで最後の走りを見せ、丁度目前右下にある、大人が両手をまわせるくらいの突き出た 岩のしたへと潜り込もうとするのを強引に押さえ、
こちらに向かせる。
  もう磯際。
波に乗せ、磯際のテラスに上げる。
A氏がリーダーを掴み、エラに手をかけ引きずり上げてもらった。
20kgオーバー。
A氏が呆然とする私の前で手を出してきた。がっちり握手。
磯釣りの師匠でもあり、とても刺激になる存在。
私一人ではこう言う感動は無かったであろう。


 余談ではあるがこのロウニンを上げる直前、針がかりした魚の後ろから間違いなく2倍
以上はあるロウニンが興味深そうにゆらゆらと追い掛けてきた。あまりの大きさに、A氏と
大きさを確認する様に暫く顔を見合わせ、笑うしかないひと時があった・・・


1202-Um6p 2pcs 30lb class Shore model

今回使用したロッドは、ご存知MOON・工房月さんのライブベイト仕様オリジナルロッド
30blクラス。
キャスティング時にエサの身切れを防ぐ為、竿先がグラスで非常に柔らかく感度もすこ ぶる良い。
全体的に柔らかい印象だが、今回の20kgオーバークラスのロウニンアジくらいでも、まだまだパッドが 残りためも効く。
また、私的だが非常に感じが良い曲がり具合でとても気に入っている。

 

ありがとう小笠原の海。

2010年11月吉日