煙 草

「え?たばこを吸うことは病気?」という声が聞こえてきそうですが、ニコチン中毒というだけでも、立派な病気ですし、狭心症や心筋梗塞などの「虚血性心疾患」のリスクファクターのひとつであることがわかってきました。また一部の肺癌や咽喉頭癌の直接的な原因とされているのは、今更いう必要もないえでしょう。

ここでは、癌との関連の話は別の機会にするとして、虚血性心疾患との関連について、話を進めていきたいと思います。

さて、僕たちの体中に酸素や栄養素を運んでくれているものは血液です。その血液が流れる管は血管です。今まで、その血管は単なるパイプの機能しかないと思われていたのですが、血管の内側の壁に当たる「血管内皮」という部分が、大変重要な機能を果たしていることがわかってきました。

血管にかかる圧力を血圧というわけですが、血圧が高くなったり低くなったりする変動をとらえて、血管を弛緩させたり、収縮させたりして血圧を調節する機能があったり、また、長い間負荷がかかる血管を守ろうとして、様々な増殖を促す因子を出して、血管を厚くさせたり、逆にそれを阻害する因子を出したりしています。

言い換えれば、絶えず安定して血液を送る微調節を血管内皮が行っているということがいえます。

しかし、その血管内皮は非常に薄い構造をしていて、絶えず傷がついてしまっています。長い間、高血圧が続いたりするとそれだけで、傷だらけになってしまいます。また、糖尿病になると、血管内皮が傷つきやすいということも知られています。そうするとうまく、その微調節機能が働かなくなります。

さて、たばこを吸うと・・・この、高血圧や糖尿病と同じく、血管内皮に傷をつけることがわかっています。海外で行われた大規模な臨床試験においても、喫煙習慣がある人の方が心筋梗塞などの虚血性心疾患による死亡率が高かったということが示されています。

少しぐらいの傷であれば、内皮であっても自分自身で修復しようとする機能が備わってます。しかし、長年、高血圧や糖尿病、そして喫煙によって内皮が慢性的に傷つけられていると、その機能すら破綻してしまい、最初に申し上げた狭心症や心筋梗塞などの虚血性心疾患につながってしまうわけであります。

たばこは止めるにこしたことはありません。