消化性潰瘍とヘリコバクター・ピロリ
最近、時々マスコミなどに登場するヘリコバクター・ピロリ(以下、H.pylori)。それと消化性潰瘍との関わりやこれからの展望などをまとめてみたいと思います。爆風スランプのCDにも、載っています。
H. pyloriとは?
1984年マーシャルらが胃の中から発見したグラム陰性桿菌。まさか、この最近が消化性潰瘍の原因とされるとは消化性潰瘍を研究している先生も感染症を研究している先生もだれも思いもしませんでした。
その後、研究が進み、十二指腸潰瘍や胃潰瘍の原因のひとつということがわかってきました。

このH.pyloriは先進国では感染率が低く、開発途上国では感染率が高いという疫学的報告があります。日本ではその中間といえ、40〜50歳以上の方の50%が保菌者であるという報告が多いです。しかし、感染しているから必ず発病する訳ではないようです。宿主の状態や、H.pyloriの種類によって、消化性潰瘍が発病したりしなかったりすると言われています。

感染経路ですが、未だに詳細は分かっていません。しかし、糞便中にH.pyloriが発見されたり家族内で、感染が見られたりするので、恐らく経口感染だということが分かってきました。また、検査のために使う内視鏡(胃カメラ)からも感染することが、問題になっています。

消化性潰瘍とH.pylori
このH.pyloriと消化性潰瘍の関係は昔から疑われていました。しかし、上述の通り感染しているからといってすべて発病するとは限らず、従来の感染症の概念からすると確信は持たれていませんでした。
しかし、確定したのは「H.pylori感染を伴う消化性潰瘍は、潰瘍の治療と共に、除菌をすれば潰瘍の再発が起きない」ということが分かってきました。これは、消化性潰瘍を研究している先生からすると革命的なことでした。というのも、これまでは、消化性潰瘍は「潰瘍症」ともいわれ、必ず再発するものと言われていました。

海外では数年前から「H.pylori感染を伴う消化性潰瘍」は必ず除菌する。という治療方針が取られ、除菌療法が広まってきました。ようやく、日本でもこの考え方が広まってきて学会などでもガイドラインが作成されるようになってきました。

H.pyloriの除菌療法
この除菌療法を可能にしたのがPPI(プロトンポンプ阻害剤:Proton Pump Inhibitor)の登場でした。このPPIは胃の胃酸を出すところを止めて、消化性潰瘍の直接の原因とされている胃酸分泌を強力にストップする働きがあります。これまで、胃・十二指腸潰瘍の治療に使用されていますが、この強力な酸分泌抑制力を利用して、これに内服の抗生物質を併用することができるようになってきました。

この除菌療法が広まれば、前述の通り必ず再発するといわれる消化性潰瘍からの離脱、つまり潰瘍症の離脱が可能になるといわれています。

除菌療法の今後
残念ですが今のところ除菌療法もその検査も保険適用になっていません。(2000年8月現在)
厚生省の柔軟な対応が待たれるところです。

このH.pyloriは消化性潰瘍だけでなく、胃ガンにも関係するかもしれないと考えられています。これは日本人だけの特徴で、こういう背景があって除菌すればどのようになるか、国内外の学者からも注目されています。

一刻も早い厚生省の保険適応が待たれるところです。