2002/11/04

日本で一番売れている薬

さて、日本で一番売れている薬は、どんな病気の薬でしょう?勿論、お医者さんのところで、貰う(実際は貰っているのではありません。買っているのですよ)薬《医療用医薬品といいます》の仲での売り上げです。

それは、高脂血症の薬のメバロチン(一般名:プラバスタチン)という薬です。このメバロチンの売り上げが、大凡1200億円。同じ範疇の薬剤であるものをいれると、2000億円もの市場になります。

高脂血症のところにも書いたかと思いますが、確かに、コレステロールが高いと、心筋梗塞や狭心症のような所謂「虚血性心疾患」の原因になることが明らかで、これに、糖尿病や高血圧症、それに、喫煙習慣等が加わると、そのリスクが高まることは、誰も否定しません。国内外のいろいろな研究から明らかになっています。

さらに、遺伝的に血中のコレステロールの代謝ができない人は、そうでない人に比べ、心筋梗塞などのリスクが高く、薬剤に頼らずアフェレーシスという方法で、血液を濾過し、コレステロールを除去します。

では、薬剤で、コレステロールを下げると心筋梗塞などの虚血性心疾患のリスクを低下させることができるのでしょうか?

それを明らかにしたのが、WOS試験というものでした。この結果、メバロチンを使って、コレステロールを下げても、虚血性心疾患を減らすということが明らかになりました。こういう風に、ある疾患に対して、薬剤を使った群と、使わなかった群とを比較して、有効性と安全性を明らかにして、今までの経験的な治療ではなく、証拠を元にした医療というのを、Evidence based medicine(EBM) といいます。

果たして本当にそうなのでしょうか?このWOS試験というのは、もともと虚血性心疾患の多い、スコットランド地方の40歳以上の男性を対象にした試験で、女性を対象にしたものでもありませんし、ましてや、日本人を対象にしたものではないのです。ですので、日本人のトータル・コレステロールが250〜260mg/dLくらいの軽症の高脂血症に対して、本当にこの薬物が効果的かという検証は全くされていないのが、現実なのです。(正常値は、240mg/dL、医療機関によって違う可能性があります)

僕と同じ疑問を持っている偉い先生もいて、YAHOOなどで検索すれば、その内容を見ることも出来ますが、「全く不必要!」というかなり断定的な論調で書かれていますが、こういう書き方はあまり好きじゃありません。

やはりこういうEBMを活かすのは、先生方の経験だと思います。検査値が異常値を示しているから、直ぐ、薬剤を使うのではなく(勿論、トータルコレステロールが、300mg/dL前後の中等度以上の高脂血症や、一度以上、狭心症や心筋梗塞の既往のある方には、直ぐ、薬剤投与をすべきだと思いますが)、全く過去の既往のない患者さんには、年齢・性別や、また、糖尿病や高血圧症、喫煙習慣などを勘案して、使うべきだと思います。

Evidence based medicine for the patients.っていう考え方が必要だと思います。

本当に必要な人に、最高の医療を提供するために、情報は活かされるべきだと思います。