糖尿病

古くは、エジプト文明のころにも存在してきたというのがこの、糖尿病です。この病気について詳しく紹介すると、複雑多岐に渡るので、「糖尿病にならない」という観点(1次予防)と「糖尿病になったら」(2次予防)という、観点で、話を進めていきたいと思います。さて、この糖尿病には大きく2種類あって、もともと体の中でインスリンを作ることができないインスリン依存性糖尿病(IDDM)と、体の中でインスリンを作ることはできるものの、それが量的に不十分であったり、正常の人と分泌のタイミングがずれてしまったり(分泌不全)、そのインスリンがうまく作用しない(インスリンの感受性低下)というタイプのインスリン非依存性糖尿病(NIDDM)とがありますが、日本人には、NIDDMの方が多いので、NIDDMについて話を進めていきます。

では、どうすればNIDDMが発症しないか?(1次予防)です。

家族歴つまり、両親兄弟はもちろん、血縁に糖尿病の方がいらっしゃる方は、糖尿病の遺伝的素因があると思って、注意をする必要があります。事実、そういう人は、「糖尿病」という状態になっていなくても、インスリンの分泌不全があるということがわかっています。遺伝的素因がある人は、定期的に、糖尿病の集団検診をうけ、血糖状態の管理をすることが必要ですが、食生活を振り返って、「過食・間食」はしない、アルコールの摂りすぎには、気を付け、また、適度な運動(一日30分の歩行など)を心がけ、ストレスや疲労をためないなどの点も注意する・・・ということです。

糖尿病になるとどうなるか?糖尿病とは、神経と血管がぼろぼろになる病気です。神経障害や、血管障害を起こして、手足の壊死を起こしたり、インポテンツを起こしたりします。また最近問題になっているのは、糖尿病性腎症で人工透析になってしまう患者の急増や、糖尿病性網膜症で失明に至る患者さんが増えていると言うことです。

また、糖尿病の患者さんは、極々初期の病態でも、健常の方に比べ、動脈硬化の進展が顕著であることがわかってきました。故に、糖尿病の患者さんは、心筋梗塞・狭心症といった虚血性心疾患や脳卒中の発症頻度が高いと言われています。

次に、糖尿病になったらどうしたらいいか?(2次予防)です。

糖尿病の治療の目的は、上記の糖尿病の合併症の発症・進展予防です。そのための基本は食事・運動療法です。ただし、運動療法は、糖尿病の重症度によって(病態が進行していると)リスクを伴いますので、運動の量を専門医に相談する必要があります。また、食事療法は、とても辛いでしょうが、医師と同意の上決めた、総エネルギー量を守ることが、何よりも優先される治療法です。

さて、薬物療法ですが、インスリンを外から、注射で補給する薬(インスリン製剤)、膵臓を刺激してインスリンを出させる薬(スルフォニルウレア製剤)、食事でとった糖の流入をゆっくりさせ、量の少ないインスリンを効率利用する薬(αグルコシダーゼ阻害剤)、インスリンの利用率をよくする薬(インスリン抵抗性改善剤)などがあります。いずれの薬も、一長一短ありますので、専門医に相談の上、医師・薬剤師の指導の通りに服薬する必要があります。

あと、アルコールの摂取は、ビールで中瓶1本、日本酒1合です。アルコールそのものもエネルギーの摂りすぎになってしまうのですが、それよりも、一緒に食べる「つまみ・肴」が、過剰のエネルギーになってしまいます。

最後に繰り返しますが、糖尿病の治療の基本は、食事療法です。この成功がなく、長生きはできません。