高脂血症

会社などの検診で総コレステロール(以下TCと記述)やトリグリセリド(中性脂肪:TG)が高いと指摘されたことのある人はいませんか?特に男性では40代半ばからTGが高くなる人が増えてきます。(女性では閉経後)

炭水化物、タンパク質と共に3大栄養素の一つの脂質なのですが、脂質のうち、今問題にされているのはコレステロールです。このコレステロールが高いと動脈硬化になり、ゆくゆくは心筋梗塞や狭心症、脳梗塞や腎機能障害などの病気になってしまうということが言われています。

コレステロールはLDLコレステロール(LDL−C)とHDLコレステロール(HDL―C)に分類されます。通常、LDLーCは「悪玉」、HDLーCは善玉といわれています。ですから、本来検査ではLDL―Cを測定すべきだったのですが、LDLーCを直接測定することができなかったため、総コレステロールを測定していました。(最近では、直接LDL―C測定可能になりました。)TCもLDLーCも通常は、同じように使われているので本日はTCの話を中心に進めていきます。

どれくらいのTCであればいいか?動脈硬化学会では220mg/dLという基準を出しています。通常であれば、その値を超えることはありませんが、最近は、生活の欧米化などの様々な環境要因の変化で、高脂血症の患者さんが増加していると言われています。現在日本の死亡原因は、悪性新生物(癌)によりものがトップですが、第2位の脳卒中と第3位の心筋梗塞などの心疾患死を合計したいわゆる、「血管死」は堂々第1位です。その原因として高脂血症に伴う血管の硬化、つまり動脈硬化といわれます。

その悪玉とされるコレステロールですが、食事によって20〜30%が吸収されると言われています。残りの殆どが肝臓で生合成されます。コレステロールはエネルギーの保存場所になったり、体の細胞膜の構成成分になったり、いろいろなホルモン(男性ホルモンなど)の成分になったりする大切な働きがあります。何らかの原因で悪玉のコレステロールのLDLーCが増加するとそれによって動脈硬化が起こり、心筋梗塞や脳卒中などの「血管病」を引き起こすと言われています。

そのコレステロールを多く含む食品には卵・いかやカニなどの魚介類などが多く含まれているようであります。特に卵にはたくさんのコレステロールが含まれており、一日一個の卵で必要量のコレステロールが補給できます。言い換えれば、一日一個の卵を食べると他の食品に含まれるコレステロールはすべて過剰のコレステロールになってしまいます。通常は少しくらい摂取するコレステロールが多くても、いろいろな組織で代謝されたり肝臓で蓄えられたりするわけですが、「なんなかの原因で」その機能がうまくいかなくなってしまうと、高脂血症になってしまうわけです。

そのコレステロールを下げるにはどうすればいいか?まずは食事療法です。食事を是正すれば20%前後はコレステロールは低下すると言われています。しかし、高脂血症も「生活習慣病」です。なかなか生活習慣の一つである食事を変えるのは困難なことです。故に、「薬物療法」ということが行われるわけであります。

今コレステロールを下げる薬物としてHMGCoA還元酵素阻害薬がたくさん使われています。この薬はそれほど重い副作用もなく安全性は高く、かつ、確実にコレステロールを低下させてくれます。日本でもっともたくさん使われている薬効群ですが、今、4種類の薬剤が販売されています。最近の薬剤は効果がさらに強力になり、また、同時に使われることの多い薬剤との相互作用の少ない薬剤が開発されました。ほかにも、最初に記述したTGを下げる薬剤など様々な薬剤が開発されています。

いずれにせよ、この優秀な薬剤の効果を確実に出すためには確実な服薬が必要です。