忘 れ 得 ぬ 思 い 出 2

お正月番組の中に「初めてのおつかい」というのがあります。僕の大好きな番組の一つなんです。今年もビデオに撮って、見ていたのですが、心の中で「がんばれ!がんばれ!」と応援せずには、見ることが出来なかった女の子のドラマがありました。

5歳3ヶ月の京都に住む女の子の「初めてのおつかい」を伝えていました。5歳3ヶ月といえば、この日の放送では、一番年長さん。3,4歳の小さな子がきちんとおつかいをする中、その5歳の女の子は、1時間以上も、お母さんから離れようとしません。彼女は、ある理由があって
「バイバイ」が大嫌いなのです。

その理由とは、彼女が3歳になる前に、病気でお父さんが亡くなってしまったらしいのです。その時「さよなら、バイバイ」というのが、最期の言葉だったそうです。

まだ5歳なのに、もう「永遠の別れ」を経験してしまった彼女。以来、一時でも、お母さんと離れるのを嫌い、公園に遊びに行くのも、友達の家に行くのも、幼稚園に行くのもお母さんと一緒だそうです。その女の子が、お母さんに励まされ、立派におつかいをやり遂げる姿を伝えていました。

その女の子の様子を見ながら、僕が子供の頃に経験した「初めてのサヨナラ」を思い出していました。

僕が小学校に入ったとき、僕の横にはいつも敬蔵君がいました。苗字も並んでいたし、背格好も同じくらいで、体育の時も一緒でした。彼は、お母さんが看護士をしていて、鍵っ子だったのですが、小学校1、2年の時、僕は学校の宿題を終わらせると一目散に、いつも彼の家に遊びに行き、まるで兄弟の様に過ごしていました。

しかし、2年生の夏休み、事件が起きました。彼のお父さんが交通事故で亡くなってしまったのです。そして、3年生に進級する春休み、彼は、お母さんの実家に、引っ越しすることが決まったと彼から伝えられました。

やがて、彼の引っ越しの日がやってきました。3月24日でした。

どんな経緯か憶えてはいないのですが、親父に
「今日、敬蔵君の引っ越しやろ?見送りに行くで。」
と言われ、車に乗せられたのを憶えています。近所の彼の家の前に行くと、丁度、玄関から、よそ行きの服を着せられて出てきた敬蔵君を見かけました。親父が、
「挨拶するか?」と言ったのですが、
「いや、いらない。」と答えたのをはっきり憶えています。敬蔵君とは、喧嘩もたまにしちゃったのですが、泣いちゃったのはいつも彼。車の中からは、彼のその泣き顔が見えていました。

今思えば、きっと僕の初恋だったんでしょうね。敬蔵君とサヨナラした後、友達と遊ぶのが苦手になってしまってみたいです。母親も、笑わなくなって心配した時期があったと、後から言われたことがありました。

今でも、僕は、生意気に、ひとりぼっちを楽しむくせに、その反面、とても寂しがり屋です。不意に、ひとりぼっちになってしまうと、今でもはっきり憶えているあの春の「初めてのサヨナラ」が、きっと過ぎって(よぎって)しまうのでしょうね。

2003/01/23