これからの危機管理佐々淳行氏の講演から |
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8月30日、長野市内で行われている人間ドック学会を聴講しました。医学会なのですが、最近は一般者を対象にした所謂「市民公開講座」というのがしばしば行われます。その中で、初代・内閣安全保障室長の佐々淳行さんの講演がありました。(本学会より、おもしろかった!)とても、おもしろかったので、中身をご紹介します。佐々淳行さんのHPは (http://www.jade.dti.ne.jp/~sassa/ です。)
〈 講演要旨 〉 危機管理と対をなすことばに、安全管理があるが、この安全管理の基本は、「定期点検」と「安全報告」つまり、「異状なし(Negative Report)」である。つまり、人間ドックというのは、まさしく、フィジカル(身体)の定期点検であろう。しかし、意外となされていないのは、後者の「安全報告」である。例えば、Boss(院長とか社長)が外出し、帰宅後、秘書と |
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そして、危機を予見し、その意見がもっとも賞賛されなければならない。安岡正篤・漢書霍光伝より「ある旅籠にある曲がった煙突の近く(火の粉が飛んでいる)に置いてある薪をみた旅人がいて、火事が起きるかもしれないと思い、薪を移動させた方がよい、といった最初の旅人に対し、その旅籠の主人は『何余計なこと言ってるんだ!』と相手にせずお茶も出さなかった。この旅人の言うとおり、やはり火事になってしまった。とすると、別の旅人が、頭を焦がしながら、火事を消した。この第2の旅人には | ||||||||||
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旅籠の主人は、上げ膳据え膳で上客としたが、この行為に対し、周りの人から「本当に感謝しなければならないのは、『こんなところに薪を置いていたら火事になる』と忠告をしてくれた最初の旅人でしょう。」と非難の声が挙がり、旅籠の主人は大いに反省したという故事を紹介。人間ドックなどで、異常値を指摘すると患者(本人は病気と思っていない。思いたくない。)は、「まだこれくらいだったら、大丈夫」だとか「人を病気みたいに言って!」といい、異常値を指摘してくれた医師に怒ったりするひともいるが、そんな患者は、実際、心筋梗塞などが起きて、助けてもらったりすると、そのお医者さんには、お礼をしたりする。本当は、逆でしょうね、異常値を指摘してくれた最初の医者にこそ、感謝しなければいけない。ここに人間ドックの必要性がある。
情報管理のプロの後藤田正晴が上げられるの五訓というものがある。
とくに、危機管理においては2の悪い情報を早く吸い上げるのが必要である。さらに、「悪い報告は、早く、良い報告はゆっくりでも良い。」ということを徹底しなければならない。これは、ナポレオンも同じことを言っている。悪い事態が発生したときこそ、トップの決断・判断がひつようであるからだ。しかし、現実は、全く逆で、悪い報告をすると、怒り出す上の人間も少なくない。また、悪いことは早く報告した方がよいと思って、深夜になど連絡をすると「何で今頃!」とたいていのbossは怒り出す。(よど号ハイジャックのときの首相がそうであったらしい。)また、正確な報告を求めては行けない。「六何の原則(5W1H)は捨て、一何の原則」で報告させよ。つまり状況をすべて知るまでは時間がかかる。それを待っていては、手遅れになる。(阪神大震災のときの首相が、そうであった。)地下鉄サリン事件そんなとき、機敏に動いたのが尊敬する「聖路加国際病院の日野原重明先生であった。まだ、原因が不明だったとき、松本サリン事件の時に治療に当たった医師と自衛官(医師)からの報告で「きっと、これはサリンだ!」と判断し、大宮にあった防衛施設にあったアトロピンを緊急輸送し、患者の治療に使った。(まだ、お国が右往左往し会議をしていたときに、日野原先生は自分が独りで責任を負うということで、行動に移した)さらに、危機管理に置いては、「起承転結」ではなく、まず、結論を言え。「こうしろ!」という強いリーダーシップが必要である。 そして、Bossは本当の危機が起きたときは、寝なければならない。一睡もしないなんてとんでもない。睡眠不足では、正しい決断は出来ない。ほんの僅か、二,三時間でも睡眠をとると、頭脳が回復し、良い知恵が浮かぶことが多い(湾岸戦争の時のパウエル参謀議長が、言っていたらしい。) さらに、危機が発生したとき、Bossは往々にして、「原因管理」になりがち。再発予防のために、原因の分析は必要であるが、「結果管理」を重んじなければならない。つまり、地下鉄で原因不明の事件が起きた。「どうしてそれが起きたかということを最初に考えるより」も、「どうしたら、3800名もの患者を救えるか」を考えなければならない。」(よど号ハイジャックのときの首相は、完全な『原因管理』のひとだった。」 1分30秒の責任 過激派闘争が激化しているとき、皇太子の警護責任として三重県警察本部長を務め、約3000人の警護組織を編成した。部下への訓辞で「おそらく、皇太子が、君たちひとりひとりの前を通るのは14日間のうち、たった1分30秒だろう。君たち、ひとりひとりが、その1分30秒の間、過激派と皇太子の間にたち、護衛の任務を全うしてくれれば、14日間の責任は私が取る」と言った。これは、医療の現場でも同じで、どんな名医のいる病院であれ、医師、看護師問わず、自分の持ち場の責任を全うすることが危機の回避に繋がる。 Never Say Never 人は間違いを起こすものである。二度と・・決しておきません。なんてことは、言うな。それを求めるな。それを肝に銘じておくことも必要である。
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