An die Freude
第2次世界大戦の終わりのころ、徳島にあった外国人収容所で、歌われ、いつの間にか年末の風物詩になった、ヴェートーベン第九交響曲、合唱付き。みなさんも聴いたことがあるかと思います。

僕が唯一、こどものころから続けてきたこと、そして、きっとずっとやっていくことは歌を歌うことです。といってもカラオケではなく、合唱のことです。本格的にやったのは大学のころですが、卒業後も、何年かに一度は、母校のコーラス部の演奏会にOBとして出演したり、市民合唱団に入って歌ったりしていました。そして、初めてこの第九交響曲も5年前に歌いました。この歌、意外と難しいのです。そのときはまだ歌いこなせてないなぁ、という印象でした。そこで、東京での生活も、安定してきた今年、年末に向けて歌ってみようと思い始めています。

この第九、思い出の演奏があります。まだ、大阪にいたころ、平成2年のころでしょうか、接待から疲れてテレビの衛星放送のスイッチを何気なく入れたら、この演奏がありました。指揮者は、レナード・バーンスタイン。そして、演奏会の行われた場所は、東西統一直後のドイツ・ベルリンでした。東西統一を記念して、オーケストラも合唱団も、ソリストも、旧東西ドイツから・・決して演奏自体は「上手い」とは感じませんでした。

しかし、レニー(バーンスタインの愛称)の熱のこもった迫力のある指揮とともに、彼の思いが伝わってきたような気がしました。彼自身、ユダヤ人の血を引いていました。その彼が、ドイツで、それも、まさに、冷戦の終結を意味する東西統一の演奏会で何を感じながら指揮を振っているのかと思うと、知らぬ間に、僕は、心が震え始め、激しい嗚咽とともに泣き出してしまっていました。人類讃歌というとなんだか安っぽくなってしまいますが、人って素晴らしいと、改めて感じた瞬間でした。

今年の冬、頑張って歌おうと思います。何年もブランクがあるので、ちゃんとした、声も出ないかもしれません。それでも、北風が吹き始めたころ、あのレニーの指揮を思い出しながら、この人類を讃えててみたいと思います。