進化する新型CPU搭載マザー(フェーズ数の増加傾向転換を喜ぶ。)   

2004年1月18日




☆高品質による日本勢の復活   
本日は以前予告したとおりマザー電源のフェーズ数調査を行ったので報告してみたい。 調査に使用した参考資料はDOS/V POWER REPORT誌2004年2月号の マザーボード特集である。 同誌は毎年2月号でマザーボード特集を組んでいるようで、 ちゃんとマザーの写真も掲載されているので定期的な調査には都合がいい。

さて、最近のマザーであるが電源系の品質問題に 注意が向き始めたのは良い傾向であると考える。 特に一時期は電解コンデンサの品質問題でマザー上の電解コンデンサが 多数膨らむという大クレームが多数発生しているだけに、 電源品質こそマザーの品質を決定づけるものとなりつつある。

台湾製電解コンデンサは日本製よりも確かに安いが、 このようにクレームが1回起こるだけで 回収・修理費用ですべての利益が吹っ飛んでしまうわけである。 品質こそ工業製品の基礎であるとともにメーカーの死命をも制する大問題 なのだ。 (安きゃいい路線の弊害に警鐘を鳴らすものとして、 専門分野こそ違うが、場末の窓際技術者であるたるさんも他山の石としたい。)

電解コンデンサ破裂事故については台湾製電解液の不良によるものだそうだが、 その理由がおもしろい。簡単にまとめるとこうである。 日本製電解コンデンサメーカーから技術を盗んでコピー商品を作った技術者が、 台湾で電解コンデンサ用電解液を売り歩いたそうである。 だが、すべてのノウハウを盗みきっていなかったため 水素ガス発生を抑制するノウハウが不足し、内部で水素ガスが発生して 電解コンデンサが破裂するんだそうである。

技術というのものは、やっぱ付け焼き刃じゃダメということである。 人間相手なら口先一つで騙せても、工業製品相手に通用するのは 本物のウデだけということだろう。 この事件を契機に「電解コンデンサは日本製を使え。」 がIT業界の合い言葉になっているそうだ。 例えばマザーならば、サーバー用途向けは日本製電解コンデンサ、 廉価版OEM品は台湾製電解コンデンサと使い分けているメーカーもあるそうだ。

マスコミでは「日本はもうダメ!」と切り捨てられているが、 サムスンとかハイアールといった一部の優良メーカーを別にすれば、 品質面で優秀な工業製品を多数送りだしているのは今でも日本製が多い。 1) 一時期安値攻勢で台湾製に押されまくったCD-RやDVD-Rも 最近は品質面の優位性により国産勢が巻き返しているそうであるし、 某国製の粗悪CD-ROMドライブでひどい目にあった のはたるさん自身が経験している。

韓国・台湾・中国の価格攻勢で日本製品の優位性が落ちていると言われているが、 こと品質に関してはまだまだ優位性があるということである。 品質に対する意識を持ち続ける限りまだまだ日本製造業復活の可能性もありそうだ。 腐りきった土建・金融業界とは異なり、少なくとも製造業は それほど悲観したものでもないということで、ちょっと安心できる話ではある。

ちなみに、電解コンデンサの品質については、 当サイトと相互リンクしていただいている MKKさんのサイトで 特に詳しく解説されている。当サイトのへっぽこ記事よりは そちらをご覧いただいた方が100倍はためになると思われるので 推薦しておく。

☆復活傾向にあるフェーズ数   
さて、本題に入ろう。

今年で3年分の調査資料となるわけなので、まとめて3年分で表示してみよう。 まずは一番消費電力が多いと思われるPentium4用マザーのフェーズ数調査結果だ。 調査方法は以前の報告通りオンボードレギュレータ用チョークコイル数をカウントし 1個を引いた値をフェーズ数と推定する方法でカウントしている。 従って、ある程度の誤差が入り込んでいる可能性はご承知おきいただきたい。 (以前報告したが、この判定方法は的中率100%ではない。)

3年間分のPentium4マザーのフェーズ数
(チョークコイル数からの推定値なので、たぶん少々誤差があることはご承知おきください。)

今回のグラフを見るとマザーのフェーズ数が復活傾向にある事が裏付けられた。 たるさん的には「ほほぅ、いい傾向だねぇ。」と言いたくなるような、 久々の明るいニュースである。 なぜならば、一般論ではあるがフェーズ数は多ければ多いほど 負荷変動に強い電源になるからだ。

前回の報告ではコストダウン優先のためフェーズ数は逆に減らされる 傾向にあることがはっきりしたわけで、憂慮すべき事態であった。 (だから、「Pentium4マザーが退化している。」と警告を発したわけである。)

ちなみに、平均フェーズ数の年変化を表にしておいたので参考までにこちらも ご覧頂きたい。

年次 平均フェーズ数
2002年
2.95フェーズ
2003年 2.40フェーズ
2004年 2.94フェーズ


最近のintel製CPUの消費電力はうなぎ登りである。 電源系をコストダウンのため簡易化した2フェーズ方式のマザーはたるさん的には 推奨できない。(intelのデザインガイドラインにも2フェーズ方式は記載がない。) なるべく3フェーズ以上、 できれば4フェーズ以上のものを購入すべきと考える。

また、当サイトではフェーズ数に注目している訳だが、先に述べた電解コンデンサの 品質問題も重要である。たるさんは国産品愛用の民族主義者という訳では ないのであるが、少なくとも 電解コンデンサについては国産品搭載マザーが安心である。 特にOSコン系の固体電解質を使用したものは高周波特性も良好で低ESRであり、 安心して使用できると思われる。

MKKさんのサイトでは日本ケミコン製が一番良いとお書きになっているが同感で、 たるさんの自作経験からも日本ケミコン製・三洋電子部品製・ニチコン製は お勧めできる銘柄である。

☆重要度を増すオンボード電源系のデザインコンセプト   
もう一つの傾向として、Athlon64用マザーのCPU電源用入力電圧の 変更は重要な事件だと考えている。

実は以前から不思議であったのだが、 たるさんの周囲ではオンボード電源の故障確率は Pentium4マザーよりAthlonマザーが高かったのである。

AthlonXPはPentium4に比べてコストパフォーマンスが良いから、 我々のような貧乏人にはお勧めなんだけど、 実は資金に余裕のある人にはどちらかというとPentium4系を勧めてきた。 それは、原因は定かではないが、たるさんの周囲では Athlon系マザーの方がよく壊れるためである。 Pentium4の方が性能がいいからといった理由ではない。 (CPU自体の総合性能はほぼ互角で拮抗と見ている。)

たるさんの周囲にいるPC仲間ではPentium4系使用者とAthlon系使用者では Pentium4系使用者やや優勢といった人口比率なのであるが、 Athlon系マザーが3枚も壊れているのに対し、Pentium4系マザーの故障は皆無 である。ただし、なぜかPentium3系マザーが1枚、電解コンデンサ破裂で 飛んでいるが... (ちなみに、公平を期すためたるさんが秋葉原で買ってきたジャンクマザーは この中にはカウントしてない。)

故障マザーのサンプリング数が多くないから 偶然ばらつき誤差と言えなくも無いが、 AthlonマザーはPentium4マザーより電源系が壊れやすいのではないだろうか?

消費電力的に見たら(クロック周波数にもよるが)平均的にはPentium4の方が 大食らいで、なぜPentium4用マザーが壊れないのか今までずっと不思議だった。

まあ、一つの解答は平均フェーズ数はAthlonマザーよりPentium4マザーの方が 多かったというのが理由であるが、上図を見れば分かる通り 少なくとも2003年ではPentium4マザーでも2フェーズは多かった訳で、 イマイチ理由が釈然としなかったのである。 2)

しかし、Athlon64マザーのCPUレギュレータへの供給電圧がAthlon系の5Vから 12Vへと変更になった事を聞いて、 「なんでこんな事に今まで気づかなかったんだろう?」 とハッとした。

入出力電圧差が高い場合は、電圧の精密な制御という面では苦労が多いが、 急激な負荷変動に対する動作マージンという意味では逆に余裕度が高い。 Pentium4系マザーではハナから12V供給となっているわけで、 この点で動作の余裕度が大きいのだろう。 Athlon64でレギュレータへの供給電圧が12V化されたのも、 この点を考慮しての事だと思われる。

マザーボード上のオンボードスイッチングレギュレータ回路は、 ほとんどがチョッパ型スイッチング回路を構成単位としたマルチフェーズ方式 である。 この場合、出力電圧はスイッチング用FETのON-TIMEとOFF-TIMEの比率で決まる。 だから、瞬間的な過負荷状態で電圧降下が発生し、それをうち消すために ON-TIMEを伸ばそうとした場合は入力電圧が高い方が有利な傾向にある。

つまり、今までの5V系電源では負荷変動に対する余裕度が小さくなりがちで、 その結果、オーバークロック等によって 故障につながるような瞬間的な過負荷状態が頻発していたのでは?と 考えるとつじつまが合う。そして、この推理が正しければ、 Athlon系マザーと異なりAthlon64系マザーは故障率がPentium4系マザー並に 低下するのでは?という期待を持っている。

各CPU用マザーのフェーズ数
(チョークコイル数からの推定値なので、たぶん少々誤差があることはご承知おきください。)

これはフェーズ数の面からも言える。 同じ2004年のマザーでもAthlon用マザーよりもAthlon64用マザーの方が フェーズ数が多いのである。

Athlon系マザーの平均フェーズ数が2.23フェーズなのに対し、 Athlon64系マザーのフェーズ数は2.67フェーズである。 Pentium4系マザーの平均フェーズ数に比べるとわずかに低いが、 今までのAthlon系マザーに比べると十分に高い。

フェーズ数の面からもAthlon64マザーはAthlonマザーより 進化しているわけで、これも嬉しい傾向である。

☆CPUの消費電力増大に対抗して   
今回の調査ではフェーズ数の面では退化傾向から進化傾向への 転換が見られた。 久々に嬉しい変化である。

今、IT業界はコストダウンの嵐で信頼性がないがしろにされる傾向があり、 この傾向をずっと憂慮してきた。 「安かろう悪かろう。」が大手を振って秋葉原を闊歩しているのである。

例えば、たるさん自身が引っかかった事があるのだが、 値段に引かれて激安350W電源を購入してしまった事があった。 この電源はソケット370マザーでは問題なく動いたのであるが、 Pentium4対応を明記されていながら、Celeron-2GHzでは何度も起動中にこけた。 (この外部電源は手に取ると異様に軽い。)

ジャンク品の様に不良品である可能性を承知の上で購入する場合はいい。 しかし、新品の製品でハナから定格が足らないという悲惨な話さえ 漂ってくる世界なのだ。 コストダウンが定格性能すら危うくしているのである。

よほどのブレークスルーが無い限り、 今後のCPUは全般的傾向としては消費電力が高まることはあっても 低下する事はないと思われる。 その意味に於いて、2004年マザーのフェーズ数が増加に転じたのは、 コストダウンから能力重視へ転換せざるを得ない状況なった事に 気づいたからと言えるのではないか?

この新たな傾向が、このまま続くことを望みたいものである。



1)
それにしても、マスコミはなんで「日本はすべてダメ!」って 書きたがるんだろうか? 

国別国際競争力ランキングによると、2003年は 日本の順位が30位から11位に一気に回復したそうである。

日本のワースト項目は「政府債務残高の対GDP比率」・ 「財政赤字の対GDP比率」・「ニューヨーク比の物価水準」・「雇用創出力」 とかである。いずれも政府の無策に起因する項目だ。 少なくともワースト20項目以内に製造業に起因する項目はない。

逆にポイントを稼いでいるのは「特許許可件数」(世界1位だそうで...)・ 「研究開発費の対GDP比」(世界2位だそうで...)・ 「製品輸出額」(世界3位だそうで...)・ 「外貨準備高」(世界1位だそうで...)・ 「コンピュータ演算能力の世界シェア」(世界2位だそうで...)とかである。

外貨準備高は日銀の為替介入(ドル買い)の影響もあるが、 それ以外はすべて製造業の寄与が非常に大きいものばかりだ。 11位への回復の原動力は製造業の寄与が大きい。

2)
intel・AMD双方のデザイン・ガイドラインを読んで分かったのであるが、 intelの方がデザイン・ガイドラインがキッチリと規定されている という事も関係あるのかもしれない。技術力のないメーカーでも ガイドライン通りに作ればそこそこのものが作れるからだ。