初夢コラム(鳥の視点と虫の視点)   

2004年1月2日




☆治部坂峠は雪景色   
新年あけましておめでとうございます。 本年もよろしくお願い致します。

今年の帰省は東名高速はもう飽きたので中央道経由にしたのだが、 最後の最後でピンチに遭遇した。

実はボーナスで17inch液晶モニタを買ってしまった1)ので、 高速代を少々ケチって下道経由で帰ったのだ。 とは言っても山梨・長野は景色もきれいだし、 本人はいたってドライブ好きなので11時間の道程もまったく気にならない。

こういうときはインターネットは便利なもので、山梨・長野と 降雪や根雪の無いことを確認してから出かけられるのだ。 実際、道程上一番北の岡谷でも路肩にわずかに雪が残る程度。 念のためチェーンは持っていったが、ノーマルタイヤで楽々走れる。

伊那路を南へ下って飯田市までは順調そのもの。 あとは三河越えで地元へ帰るだけ、と思っていたら最後の最後に とんでもないことが起こった。 なんと、ずっと北の岡谷でさえ小雨だったのに、 長野最南端の治部坂峠で吹雪となってしまったのだ。

うっ、ずっと緯度の高い岡谷が雨なのに長野最南端が雪とは!  治部坂峠の頂上近くまで来ていたので下りもこのまま行けるやろかと心配になり、 グリップを試すために後続車のいないことを確認してブレーキを踏んでみた。 すると「ガガガガガ」とABSの作動を示す震動がブレーキペダルに響くではないか。 このまま下りに突っ込んでいたら、間違いなく死んでたな。

はい、これまで。勝負あり! 

車を駐車帯に止めて、あえなくチェーンの取り付けとなった。 吹雪の中で...寒い...つらい... 取り付け作業でジャンバーの裾は汚れるし、山間部を舐めたバチか? (でもチェーン持ってきて良かったよ。)

ちなみに治部坂峠は愛知と長野の県境からやや長野寄りだが、たるさん同様 チェーン付け作業中のお仲間は名古屋ナンバーや尾張小牧ナンバーだった。 たとえ市街地に雪が全然無くても、 この季節長野県民や奥三河の住民にはスタッドレスは常識なんだろうな。 インターネット情報だけで、路面状況をすべてわかった気になっていた たるさんがバカでした。

そんなこんなで散々の帰省だったが、やはり実家はくつろげる。

今年は実家にCADの仕事を持ち込むこともなく、ぬくぬくとお正月を楽しんでいる。 年越し蕎麦&すき焼き、牡蠣フライ、お雑煮etc. (たるさんの実家では年末・新年はすき焼きを食べる習慣なのだ。) 体重はたった1日にして+1kg! ちと、マズイ。

で、元旦の今日は運動を兼ねて初詣は神社まで歩くことにした。 子供の頃遊んだ懐かしい田舎の風景を楽しみながら歩くこと片道1時間。 この間の往復で、普段あまり考えないこともいろいろと想をまとめる事ができた。

新年の初夢コラムは鬼笑い10年後のPC界を予想してきたのであるが、 3回目の新年となると同じネタでは飽きが来る。 10年後の世界予想が毎年変わるはずもないし...

というわけで、今回は新年にふさわしく、謙虚に 自分のサイトのあり方について考えてみた。

☆鳥の視点と虫の視点   
そもそも、たるさんがなぜこのようなサイトを立ち上げようと思ったか?  それは、このような記事を読みたいと思ってもなかなか記事が無いからだ。 Webを見渡しても、 独自の視点でのアーキテクチャの説明サイトは非常に少ない。

もちろんPC雑誌を購入すればいいのだが、ライター自身の独自意見が少ないので あっちこっちと内容を比較することができないのは寂しいものである。 (アーキテクチャ解説で「このライターはいい腕だ!」とお勧めできるライターは 片手で足りるというのが正直な感想である。 メーカー発表の鵜呑み説明なら多いのだが...)

AMDとintelなんてプロ集団のハズだが、そのプロであるはずの両者でも アーキテクチャは全然違うことからもわかるとおり、 アーキテクチャにはこれと言ったコンセンサスは多くはない。 もっと多様な意見があってしかるべきハズなのである。

また、ほとんどの記事がベンチマーク指向で、新聞で言うところの 「虫の視点」で書かれているのも何とかならないだろうか?  ベンチマークだけなら我々アマチュアだって非常に優れたサイトがたくさんある。 お金を出しても読みたいと思う記事は、アマチュアでは手が付けられないような広い 俯瞰的視点、つまり「鳥の視点」で書かれた記事である。 (念のため言っておくと、ベンチマーク指向が悪いと言っている訳ではない。 それはそれで立派である。治部坂峠で吹雪にさらされた事でもわかるとおり 「虫の視点」抜きで「鳥の視点」だけに頼って、知ったかぶりしても失敗する。 記事が「虫の視点」に偏りすぎなのが問題なのだ。)

ここで、本論に入る前に「虫の視点・鳥の視点」について説明しておこう。

「虫の視点・鳥の視点」というのは、新米新聞記者がベテラン記者にしごかれるときに言われる台詞だそうだ。 新聞記者には2種類のタイプがあるらしい。 それが、「虫の視点・鳥の視点」である。

「虫の視点」というのは地を這う地道な取材でコツコツと情報を 積み上げるタイプで、いわゆる「足で稼ぐ」という奴である。 地に埋もれがちな情報から点と点を結んで線となし、線と線を結んで面とし、 全体の骨格を地道に下から組み上げてゆく方法だ。

「鳥の視点」と言うのはその逆で、高みに立って 俯瞰的視点から世界を眺める方法である。 タカが獲物を空中から狙うような視点で、全体像を刻んでから徐々に 細部に入ってゆく方法である。

この話を読んだとき、ベテラン記者は新米記者に「虫の視点」で記事を書き、 「鳥の視点」で書く事を戒めるのではないだろうか?と思って、 この話を読んでいたのである。「記事は足で稼げよ!」と。

が、結果は違った。 新聞記者には2つのタイプがあるが、新米記者に「おまえはどちらを目指すのか?」 と質問したのである。二つのタイプには一長一短があり、新聞社全体としては どちらも必要な人材だと言ったのである。

「虫の視点」にも欠点はある。それは「木を見て森を見ず。」な 状態になり勝ちな事である。 俯瞰的視点も大局を見る意味で非常に効果的なのだ。2)

☆意外に少ないぞ。CPUアーキテクチャについて俯瞰的に語るPC雑誌やマニア層は...   
「虫の視点・鳥の視点」の意味はそのようなものだが、 PC雑誌の視点を見ると「虫の視点」が多いのに驚かされる。 ベンチマークはまさに花盛りだ。 考え方の証拠固めとしてベンチマークを測るのはいいが、 ベンチマークそれ自体が目的と化している雑誌の何と多い事よ。

逆に「鳥の視点」記事は本当に印象が薄い。 メーカー説明を鵜呑みしているので、「鳥の視点」記事は 独自色が薄れてしまうためと思われる。 PC雑誌やWeb記事では「鳥の視点」は萎縮しているのである。

しかし、その弊害は大きいと思う。

例えば、ベンチマーク一つを見てもそうだ。「鳥の視点」が無ければ ベンチマークを動かしてこれは速い、これは遅いといった比較はできるが、 「なぜそうなるのか?」とか「今後どう改良すべきであるか?」 といった根本を追求することが難しいからだ。

オーバークロックをするとしよう。 このロットはOC耐性が大きい。 それはそれで、一つの戦果ではある。 しかし、なぜそうなのかを考えなければ経験則から一歩も抜け出せない ではないか。 日本刀の刀匠のように経験則だけでハイテク製鉄業顔負けの傾斜機能材料を 作り出してしまう匠の技もあるが、それは例外中の例外であろう。3)

「虫の視点」も必要な視点ではあるが、それだけではダメなのだ。 「鳥の視点」と「虫の視点」を併せ持つことが理解への最短コース であると思う。

で、たるさんなりに「鳥の視点」的サイトを探して見たのだが、 CPUアーキテクチャに関してはアマチュアのサイトはほとんど無かったのが実情だ。 これは凄いと思われるサイトはたった数サイト。しかも、そのうち1つは毎年 マイクロプロセッサフォーラムに出席なさっている様だから、 明らかにプロの方である。

たるさんはふっと思う。 我々は所詮アマチュアなんだから、間違えたっていいじゃないか。 知ったかぶりはマズイが、それぞれが知恵を絞って考えた結果なら、 結果として推測が間違っていたって仕方ないじゃないか、と。

プロはお金を取って記事を書くわけだから、いわば情報を売っているわけである。 対価としてお金を取るならば、対価に値するだけの情報品質でなければ 粗悪品販売と何ら変わらない。

たるさんが、Hyper-Threadingの記事に苦情を呈したりするのは、 対価に相当するだけの記事を書いて欲しいからだ。 たるさんはPC雑誌をお金を払って買っており、決して万引きしている訳ではない。 ちゃんと対価を払っているのだ。 メーカー発表鵜呑み記事ならばお金を払うつもりはないのである。

しかし、我々アマチュアはどうだろう? このサイトだって情報料を取って公開して いるわけではない。言論の自由があるわけだし、読み手に誠実でありさえすれば もっと自由にいろいろと考えを述べてかまわないと思うのだが...

失敗を恐れず不足しがちな「鳥の視点」を加えることで視野を広げられれば、 当サイトの意図は成功したも同然と言えるだろう。

☆オン・ザ・ホビー・トレーニング   
「虫の視点・鳥の視点」以外にも自由に意見を述べるメリットは沢山ある。

OJTという言葉をご存じだろうか? オン・ザ・ジョブ・トレーニング (on-the-job training)の略である。

これは、実際に仕事をしながら業務に必要な知識・経験を積ませる というトレーニング方法である。

たるさんはこれに対抗してオン・ザ・ホビー・トレーニングというのを 考えてみた。趣味とは元々息抜きであり、勉強とは違う。しかし、楽しみながら 知識や経験が積めればそれに越した事はない。

心理学的にも楽しみながら学んだことは、嫌々学んだことよりも 身に付くことはよく知られている。 分数すらできないようなおバカな女子高生でも、 アイドルのプロフィールはちゃんと憶えてるもんね。(^^;)

幸いにして、パソコン分野は最新ハイテク分野でもある。 趣味で勉強した事柄でも、極めれば世間で立派に通用するスキルとなりうる。 例えば、たるさんの仲間では薬剤師免許を持っていながら、趣味が高じて i-TRON系のSEに転職した仲間がいる。 (i-TRONは制御分野では主流であり、不景気にも関わらず人材は不足しているそうだ。)

事実、日本のハイテクを支える人材の多くが マイコン時代またはアマチュア無線時代を経験している。 これは、たるさんの経験則であるが、非常に高い的中率を示しているのである。 趣味も極めれば本職になりうるという証拠の一つである。

もちろん、たるさん自身はIT分野に転職しようと言うわけではない。 (本職は化学系エンジニアだ。) しかし、そこで学んだスキルは技術の裾野を広げ、窓際技術者からの 脱出にも役立つのではないだろうか?との思惑を持っている。

例えば、地球シミュレータ見学記なんかは典型例だろう。 あそこで実際に見聞きしたこと、およびそれをWebにアップするために 勉強したこと。これらは間違いなく本人の血肉になっている。 タコ技術者はタコ技術者でも、美味しくない冷凍輸入物ダコから 明石の真ダコクラスにはなったのではないかな?と思う。

実際、記事内で書いた予想も的中率が徐々にではあるが上がってきている。 タコ技術者でもそれなりにトレーニングの効果が 出てきているような気がするのである。

このようなサイトを立ち上げるメリットの一つに、本人のスキルアップに役立つ という効能がある事は重要だろう。

☆「鳥の視点」で俯瞰しながら、本人と読者のスキルアップができればこれ幸い。   
というわけで、当サイトの目標である。Webサイトで不足しがちな 「鳥の視点」を取り入れつつ、本人と読者のスキルアップに 結びつけることができればベストだろう。 ただ単に趣味のパソコン談義をするだけではダメで、 楽しみながら勉強できるサイトを目指したい。 もちろん、本人のレベルを考えれば非常に難しいことではあるが...

なお、「虫の視点」で書かれた記事は、こんなタコサイトの記事を 読まずとも、検索をかければいくらでもアマチュア優良サイトが見つかる事は 正直に報告しておく。

また、これを機会に俯瞰的視点から書かれた優良サイトが増えて、 当サイトがそれらの陰に埋もれてしまうようになったら本物だ。 当サイトのアクセスカウントが最近増えてきたが、 これはこの手の視点で書かれた優良サイトがほとんど存在しないという 事実を如実に表している。

いわゆる需要と供給の関係って奴で、 もっとレベルの高いサイトで記事を読みたいと思っていても、 レベルの高いサイトが多くないという事実が、 やむなく当サイトのような低レベル放言サイトへの アクセスに走らせているのではないかな?

初詣は陶彦神社へ
磁器技術をもたらした当時のハイテクセラミック技術者が祀られている。

まぁ、いろいろなことを考えながら歩いていたのであるが、 どうやらそろそろ深川神社に着いたようだ。 ここに併設されている陶彦神社には今から800年ほど前の 当時のハイテク技術者が祀られている。 たるさんの初詣にはふさわしい神様だ。 タコな頭脳が少しでもマシになりますように御加護をお願いして初詣とした。



1)
パネル面積のでかい液晶テレビが流行っている。 この結果、利幅の薄いモニタ用液晶パネルの需給関係が 大幅に供給不足となりつつある。 液晶モニタは値上がり必至な情勢だ。

モニタ用液晶パネルでは韓国勢に押されてしまったが、 テレビ用液晶パネルはモニタ用と異なりパネル以外の部分でも高度な 技術力が必要である。 このため、テレビ分野では国産勢が優勢で(特にシャープ)、 好景気に沸いているらしい。

と言うわけで、液晶モニタはこの冬が最後の買い時であると思う。 CRTが壊れたら購入しようと思っていたのだが、 たるさんも慌てて買い出しに出かけた次第だ。

購入したのはシャープのLLT17D4H。「やっぱ液晶はシャープが一番でしょう。」 と、かっこつけて言いたいのだが、ホントは新製品の登場で型落ちが 安く買えたからである。 (LLT17D4Hは廉価版モデルで、残念ながら この製品の液晶パネルはシャープ製ではないと言われている。)

2)
典型例がベトナム従軍取材である。 俯瞰的視点を「地に足がついていない。」として捨て去り、 「虫の視点」にのみ徹した結果どうなったか?

アメリカ軍のベトナムでの横暴を暴いたのは「虫の視点」の 勝利ではある。しかし、その結果あたかもベトコン側が 民主勢力であるかのごとき誤解を与えるという大失態をやらかしている。

後のベトナムがカンボジアへの侵攻をやらかしたり、ボートピープルを 多数出したことから見ても分かる通り、結局両方ともが 人々の立場に立った勢力ではなかった。

ベトナムが民主化されるのは、それからずっと後世の話。 ドイモイ政策発表以後である。

3)
たるさんは学生時代に居合道をやっていたのでよく聞かされたのであるが、 日本刀は「折れず、曲がらず、よく切れる。」と言われている。 実はこれ、日本刀の内部がハイテク傾斜機能材料になっているから可能な事だ。

冶金学の世界的権威が、「世界一切れ味の鋭い刀はサムライソード(日本刀)と ダマスカスソードである。」と言ったことでもわかるとおり、日本刀は その性能には世界的に定評がある。

日本刀は均一材質の鋼材ではない。「折れず、曲がらず、よく切れる。」の 各機能を別々の性質の鋼材が機能分散する事で成立している。 「折れず」は日本刀の中心部分にある軟鉄が受け持っている。 軟鉄は柔らかく柔軟で折れない。 しかし、軟鉄は強度や切れ味がない。 「曲がらず」は側面の鋼鉄が受け持っている。 これはまさに鋼のように強靱で日本刀を曲がりにくくしている。 「よく切れる」は刃先の部分が担当し、非常に固く焼き入れされているため 切れ味は抜群だが、もろく欠けやすい。 このため、芯金の軟鉄と皮金の鋼が刃先を側面と背面から包み込むことで 刃先のもろさをカバーし「よく切れる」状態を維持しつつ 「折れず」と「曲がらず」を実現しているのである。

古代には電子顕微鏡もX線回折装置もEPMAも無かったわけで、 経験則だけでこれだけの品質を作り上げていたわけだ。 古代の刀匠には尊敬の念を禁じ得ない。

−お詫びと訂正−
治部坂峠は愛知と長野の県境からわずかに長野寄りでした。 お詫びして訂正致します。 元記事は訂正済みです。