FTTHは夜明け前がもっとも暗い(ADSL導入編)   

2003年4月5日




ようやくの長い道のりだった。 ここ、たるさんの住みかにもようやくADSLがやってきた。 あまりにもど田舎のためIT化に見捨てられた現代の秘境 と化していたのであるが、 フレッツADSL(8M)とYahoo!BBが競うように開通したのである。 苦節数年、ヨダレを垂らして友人のADSL化を見ているだけの「おあずけモード」が 長く続いていただけに感慨深いものがある。

ほとんどの皆様には「えっ、今頃ADSLの話題なの?」と笑われそうなのであるが、 しばしお付き合いいただきたい。

加入したのはフレッツADSL。 一見すると12MのYahoo!BB方が高速に思えるが、 このど田舎では8Mだろうが12Mだろうが、 10G(もしそんなものがあったとしたらだが...)だろうが、 シャノン限界から考えて実効レートは大差ない値となるハズだ。

選択の決め手は速度ではなくユーザーに対する姿勢である。 (たるさんはADSL未開通期間に評判を調べて回ったのだが、 尊師...じゃなかった、某氏のプロバイダはユーザー放置や 回線握りで評判があまりよろしくなかった。)

やってきたフレッツADSLは8Mタイプである。 この田舎度を考えれば1.5Mの方が分相応とも言えそうだが、 まあISDNよりは十分速いようだからこの際贅沢は言わないでおこう。

交換局とは距離5.2kmで減衰量42dBだ。 距離の割に減衰量が少なく好成績の部類である。 最初は5.2kmと言うことでReachDSL系もやむ無しか?と考えていたのである。 しかし、これなら5.2kmとは言ってもフレッツADSL(8M)で十分接続可能圏内 であろう。

と言うわけで、本日は現状報告並びにADSLの進化とFTTHの行方について考えてみた。

☆今更ですがADSL導入してみました。   
ADSLモデムであるがレンタルとした。 距離の割に減衰量が少ないことは先に報告したが、 それでも5.2kmという距離に恐れをなしたためである。 自己調達では、もしつながらなかった場合モデム 購入代金丸損となってしまうからである。 (ヘタレたるさんと呼んでくだされ。)

ADSLモデムを使用する場合、選択肢は大雑把に言って4つあると思う。
さて、判断の基準は将来もっと高速な規格が導入されたときどうするかである。 判断材料は、現状の規格でどれくらいの速度が出るかである。 現状の規格で上限に近い速度が出ている場合は、将来高速な規格が導入されれば 更に高速になる可能性は高い。

しかし、たるさんの住む寮のように、実効レートが規格上限よりかなり低い レートであれば、将来高速な規格に切り替わったとしても、 これ以上高速になる可能性は低い。 いや、その場合ADSLの性格上かえって低速になってしまう可能性すらあるのである。

従って、モデムを購入するかレンタルするかは、 自分の家でどれくらいのレートが出るかの判断によるのである。

しかし、Webで減衰量を調べて予想値を知ることはできるが、 正しい値を事前に知ることは難しい。 また、PCマニアと言えどADSLモデム(orADSL付きルーター)を複数もっている奴は ほとんどいない。毎日使う物だけに、 友人に「レートを調べたいから2〜3日貸して!」と頼むわけにもいかないのだ。

従って、現状最善の策は「まずレンタルして速度を測定し問題点を洗い出し、 問題点を解消してから短期でレンタル契約を 解約して、そのデータを元に最善の機器を買う。」だと思うのだ。

で、実際に使ってみた結果がこれだ。

アナログ回線なのでトラブルを期待していたのだが、 わずか10分の設定変更であっさり接続完了。 安定性に関しては苦情の非常に多いADSLだけに、この点では 珍しく非常にラッキーだった。

なぜならば友人の報告によれば、「通信中に電話がかかってくると落ちる。」 とか「音声通話後は通信状態が挙動不審。」とか 「モデムの電源を切ると、再起動しても速度が極端に遅い。」 と言うような何かと不安定な様子が漏れ伝わってくるからである。

実測レートは下記の通りである。

SPEEDTEST
データサイズ = 2 M バイト
受信時間 = 14.33 秒
平均速度(バイト/秒) = 140 k バイト/秒
平均速度(ビット/秒) = 1.117 M bps

受信データ量 = 1.717 M バイト (推定値)
受信時間 = 12.168 秒
平均速度(バイト/秒) = 141 k バイト/秒 (推定値)
平均速度(ビット/秒) = 1.129 M bps (推定値)


「ブロードバンドスピードテスト」や「インターネット回線速度調査」等でも 試してみたが最低1.1Mbps、最大1.4Mbpsと言ったところである。 平均してみると概ね1.2Mbps程度と考えていいだろう。 (MTU等の調整はまだやっていない。生のままのデータである。)

Yahoo!BBに加入している後輩によると Yahoo!BBの12M設定では平均1.2Mbpsとのことだ。 つまり、ここでは予想通り伝送ラインの減衰が速度限界を決めているようだ。 当家のポジションでは8Mや12Mや将来の50Mと言った高速化競争は意味のない 別世界の話なのである。

結論から言うと、それでも事前に予想していた速度より速く、 距離の割には良好な結果と思っている。

☆期待していなかった分、感激したISDN。期待していた分、感激の薄いADSL   
と言うわけで、早速ADSL環境を楽しんでみた。 何せ、ISDN時代と比べると約20倍の世界だ。 さぞや、使い心地も良くなるだろう...と思いきや。

で、結論から言うと... 体感的には速いことは速いのだが、期待していたほどには速くない。 特に接続開始時の遅さは印象的である。 さすがにモデムとは比べものにならないものの、 ISDNよりは明らかに遅い。トホホ。

PCの能力がADSLの速度に追いついていけなくなったのか?とも考えて、 CPU負荷率を見てみたのだが、ヘビーサイトで100%に達してしまうものの、 たるさん的によく行く軽めのPCマニア系サイトでは余力がある。 (ヘビーサイトでは確かにCPUパワーが必要で、この手のサイトに よく行く方ならばCPUパワーを上げるのは意味がある選択肢である。)

ともかく、これは意外な結末だった。 ストレートな伝送は速くても、ネゴが律速で遅く感じているのかな?

こうなるとバカにしていたのは間違いだったと気づかされるのが ISDNである。 実はISDN化した時は、ハナから期待していなかった分、 思ったより速くて安定なISDNに感激したのだった。

速度こそ約50%UP程度とそこそこだったが 特にネゴの速さは印象的であった。 (モデムは56kbpsと言われているがこれはアメリカの規格の場合である。 パワースペクトル管理の厳しかった日本でその速度が出ることは無かった。 良くて52kbps程度で、たるさんの場合は46kbps程度だった。)

ADSLが全然開通しないのに業を煮やしてフレッツISDNにした時は 「所詮ADSLまでのつなぎ。」と思って始めたのだ。 だが、そのネゴの速さ・テレホーダイタイムを気にしないで使える 使い勝手の良さ・モデムとは比較にならない安定性の3点で 十分に満足させてくれるものだった。

しかし、今回はその逆なのだ。 ISDNと比較した場合の速度こそ速いものの、8Mという上限からはほど遠い速度。 ネゴは遅く、(当家ではOKだが)安定性は悪く、 常時接続性はフレッツISDN時代と変わらない。 (ちなみに、セキュリティーを考えて常時接続にはしない方針。)

総合的に見れば確かにISDNより劣っているとは口が裂けても言えないのであるが、 あまりにも期待感が大きかったためか (ダウンロードでもやりまくらない限り)思ったより感動しなかったのは確かだ。 ちなみにISDN時代には、巨大ファイルのDLは自動DL自動切断をセットして 寝てしまっていたっけ。と言うわけでISDNでも特に困らなかったのだ。

今まではISDNだったので「隣の芝生は青く見える」状態で、 速度という大きな甘いエサによって幻惑されていたのだが、 下り速度に目がくらんだその陰で小さな代償を積み重ねて失血しているのが ADSLユーザーの現状であると悟らされたわけである。

☆絵に描いた餅のADSL爆速アナウンス   
では、現在はともかく将来の技術革新でこれらの問題は解消されるのであろうか?

まず最大の関心事、速度から考えてみよう。

例えば、速度に関して言うとADSLの最大速度は今ガンガン上がっている。 先だって50Mbpsの発表があったばかりだ。 その気になればFTTHを上回る速度も技術的には可能である。

だから、それらの技術が導入されれば、たるさんもADSLでFTTHを越える 超高速ブロードバンドを楽しめる...と考えるのは早計だ。

大雑把ではあるがADSLの進化と現状のトレンドラインを考えて見たので ご覧いただきたい。

ADSLの現状と進化
高速化は距離と引き替えの出来レース
真の技術者は速度を維持したまま距離を伸ばすことの方が
100倍難しいことを知っているはずだ。


ADSLは距離が遠くなると急激に速度が落ちてしまう事は誰でも知っている。 それは、メタル伝送ラインの特性に非常に大きな周波数依存性があって、 高い周波数ほど減衰が激しい事が最大の理由だ。

ここで、速度を上げる事を考えてみよう。 シャノンの定理を見ていただくと、速度の向上にはS/Nの改善よりも 帯域増大が効くことがわかる。 なぜならば、速度は帯域に対して比例して増大するが、 S/Nに関しては対数関数的にしか効かないからである。

C=W・Log(1+S/N)

C:スループット(速度) W:使用帯域幅 S/N:通信時のS/N比


そのため、まず帯域を増やしたいわけであるが、 帯域を増やすほど減衰の大きい周波数成分を たくさん含んだ状態で使わざるを得ない訳だ。 そうした場合、遠距離通信だとせっかくのパワーをガンガン吸い取られてしまうのだ。

だからADSLの場合、帯域を増やして速度を上げれば上げるほど 最大速度の出る距離は短くなってしまう。(図のトレンドライン参照。) これは原理上の問題なので、このトレンドラインから抜け出すような技術開発は (図で言うと仮想特性)メタルラインを使用する限り 絶望的なまでに難易度が高いのである。

逆に、距離の問題をあきらめれば開発は比較的容易だ。 アパートなんかに光ファイバを引き込む時、末端でVDSLという技術が使われる。 これは既に100Mbps以上の速度が実現されている。

ADSLはこれと似たところがあって、ADSLの高速化は 先行モデルの存在するいわば出来レースなのだ。 本当の意味の技術開発とは、手探りの闇を進む開発であるはずだ。

では、この50Mbpsという速度を享受できるのはどれくらいの割合の人なのであろうか。

大都市圏では約80%の人々が交換局から距離2km以内に住んでいる と言われている。 ここで、人口密度と交換局の位置に相関がない事、および人口密度一定と仮定すると、 (250m/2000m)×0.8=0.0125だから、 計算上距離250m以内と言われる50Mbpsの速度は 人口のたった1.25%の人々しか受けられないサービス になってしまうのである。 (注:速度が低くても良いならばもちろんそれより遠距離でもサービスは受けられる。)

☆ADSLの進化とは速度向上なのか?   
こうなると、ADSLの限界ははっきりしている。 地域の1.25%程度といった極少ないユーザーしか受けられないサービスを 表看板に押し立てて高速接続をウリにするのはあまりウケが良いとは思えない。 逆に今まで低速度で我慢してきたユーザー(例えば1.2Mbpsのたるさん)が、 不平等感からイライラを募らせるだけである。

それよりも、求められる技術開発とは今の速度を維持したまま 距離や安定性を改善する事であるのは間違いないはずだ。

しかし、現状ではそれは不可能なのである。 距離と速度はトレードオフである。ReachDSLのように遠距離接続できる技術もあるが、 それは速度を犠牲にした上での話である。 ReachDSLは遠距離での減衰を防ぐため比較的高周波の部分を使わないように デザインされており、端末でのS/Nを改善するように設計されてはいるが、 それは帯域減を意味し速度の低下は免れない。 (もちろんつながらないよりは100倍マシなので、それでもReachDSLの 存在意義は十分あるのだが...)

たるさんはADSLの進化とは今日では速度向上では無いと思う。 しかし、今のADSLの進化トレンドは爆速度を競うレースなのだ。

近い将来、Webにこんな広告が出るのは時間の問題と思われる。 「当社のADSLはFTTHより高速です! 是非お試しください!」

しかし、その広告の末尾には小さな文字でこう書かれている事だろう。
「この速度でサービスを受けられるのは交換局から100m以内にお住まいの方です。」 と。(FTTH編に続く。)