トレンディーなマザーボードの死因?(前編)   

2002年11月10日




週末はいつも秋葉に行くか、ぶらりとドライブでも楽しむかで 悩む事になるたるさんである。

しかし、貧乏人のため長躯の宿泊旅行がありえないたるさんの場合、 3連休だと日程をどうするかで悩む必要が無いのがありがたい。 3連休だと、ドライブに行くか秋葉出撃+翌日組立作業にするか悩む必要が無く、 両方行えるのである。

という訳で、ちょっと旧聞の話で恐縮だが 先週末の3連休での行動パターンは下記のとおり。

初日:開催初日の日展1)に行く。(開催地は上野の東京都立美術館) ついでに秋葉でちょっとお買い物。
   (秋葉に行くついでに日展に行ったわけではない。お間違いの無いように。)
2日目:霞ヶ浦→茨城県の富士見湖2) →涸沼→北浦 と湖めぐりのドライブ
3日目:秋葉原で買い出ししたパーツを元にパソコン組み立て&工作

う〜ん、日展に行って秋葉行ってドライブ行って、最後にマシンを組み立てる。 何も悩まずに日程がOK。なんてわかりやすい人生なんだ。

というわけで、最終日は秋葉原で買ってきたパーツで工作である。 と言うのも、友人からもらったAthlonマザーK7T-PROを修理していたが、 復活の目途がつきそうだからだ。 まだ完全とは言えないが、手持ちの死体マザーがゾンビ状態にまで復活したので、 経過報告をしたいと思う。

☆マザー死因の時代的変遷   
半年ほど前、会社の同期からAthlonマザーが不調との連絡を受けた。 BIOSが起動しなかったり、CMOSエラーが頻発すると言うのである。

たるさん的には「はは〜ん。こりゃ、初心者向けのFAQだ。」とピンと来て、 CMOSバックアップ用Liバッテリーの交換をしておいた。 連絡を受けた症状がバックアップ電池消耗の典型症状なので、 あまり深く考えなかったのである。 (そのときはバッテリーの交換でBIOSが起動したのでOKと思ったのだが、 今から思えば甘かった。)

実は、その同期も何台もの自作機を作っている結構マニア度大な奴だ。 だから、彼のスキルで何故そんなことを聞くのかという事を 疑問に思わなかったのは今から思えばまったくの不覚だった。

と言うわけで、思慮が浅けりゃ当然結果も浅薄。 数日後、全然症状が直っていないという報告(苦情?)と共に、 「新品のマザーを買い直したから、欲しけりゃ壊れたマザーやるよ。」 という連絡が入ったのである。 そのマザーが、これ。MSI製のK7T-PROである。

マザーの故障と言えば昔はBIOSアップデートの失敗が第一の原因であった。 しかし、最近はこのようなBIOSアップデートの失敗は相対的に 少なくなってきているようだ。 (今回の例でもBIOS系は無実であることが後に明らかになった。)

最近よく聞く死因とは、焦げ臭い死臭が漂う電解コンの破裂と MOS-FETの焼身自殺である。 秋葉でよく見かけるDELLのジャンクはこの手の焼死体が多いし、 仲間内でも特にAthlon系のマザーでこのような故障話を よく聞くような気がする。

これは、コストダウンの影響ともCPU消費電力の増大が原因とも言われている。

☆先入観とは恐ろしい。   
さて、この故障マザーであるK7T-PROは、たるさんの初代Athlonマザーでもある。 今はお世話になった先輩の家に嫁入りしているが、 購入後1年以上に渡って当家最速の地位を確保したマザーだ。 Athlon(雷鳥)の出始めに秋葉原で気を失って、気が付いたら購入していただけに、 思い入れも大きい。

友人も同時期に意識を無くしたか、正常な判断能力を失ったかしたらしい。 たるさんも同期もAthlonマザーといえばMSI製のK7T-PROか FIC製のAZ-11の二者択一しかなかった頃に初物として購入しただけに、 両者共に同一マザーとなるのも別段不思議ではないわけだ。

で、死体マザーを貰ったはいいけれど、 Li電池の交換などというトンチンカンな指示を出した失敗の埋め合わせとして、 なんとかこれをたるさん的に再生せねばならない。

と言うわけで、原因探しが始まったわけだが、 本人のタコさ加減も加わってこれがまた難航した。 外見上焦げ臭い部分が無かった事も先入観の原因だ。 (普通は電源が焦げるとまったく起動しない。 起動するけど動作がおかしいという事は無いのだ。) また、症状がCMOSバッテリーの消耗にそっくりだったため、 CMOSバックアップ回路の故障だろうと勝手に思いこんでしまったのである。

最初に考えたのは、バックアップ回路の疑似ショートである。 バックアップ回路の一部(とくにバイパスコンデンサ内の エレクトロマイグレーションを疑っていた。)に 擬似的な内部ショートが発生し、これがCMOSバックアップ電池の 消耗を早めているのではと疑ったのである。 今から思えばあまりにもバカバカしい視野狭窄に陥っていたわけだが、 先入観というものは本当に恐ろしい。

ところが、どこをどう探してもそれらしき原因箇所が特定できない。 ついに、電池を完全な新品に交換した後2〜3週間ほどほったらかしにして、 その後電圧を再測定したりしても電圧に何の変動もない事を確認するに至り、 ここが問題ではない事に確信を持つに至った。 そして同時に自らのウデの至らなさを暴露してしまったのである。

しかし、マザーは相変わらず起動したりしなかったり。 BIOS設定画面で文字が化けまくったこともあったっけ。 とにかく、起動毎に症状が違うのが特徴である。

というわけで、このマザーにチャレンジした週末は必ず枕を涙で泣き濡らす 羽目になるのである。(という程落ち込んだワケではなかったが...)

☆染之助・染太郎ファン   
転機は最近やってきた。 それは、 EPoXからi845PE搭載マザーが2製品!廉価版にはコンデンサ部に謎のファンを搭載 という記事を見た時であった。

記事では何故こんな所にファンが...と疑問が呈されていたが、 たるさん的には何の不思議もないことである。 最近のCPUは消費電力が増えているのに駆動電圧は下がっている。 これがなにを意味するかというと、駆動電流の急増である。

駆動電流の急増はCPU用オンボード・レギュレータの MOS-FET&電解コンデンサの負担増を意味する。 電流が大きくなれば、リップル電流の増大でコンデンサは自己発熱するし、 MOS-FETは自爆的に発熱破壊モードに突入してしまう。 これが、最近のマザーで電源系の故障が増えている原因だ。

だから、ファンで冷却するというのは、 (ファン故障を考えればスマートな解答とは言えないが) あり得ない選択肢ではない。

事実、スイッチングとシリーズの違いこそあるが、 たるさん自身が過去ソケット7時代に同じ事をやっていたのである。 それは、ずいぶん昔のことであるが、たるさんがGigaByte製のGA-586HXを 使っていた頃のことだ。

GA-586HXはCPU電源の駆動回路がシリーズレギュレータであった。 (当時はスイッチング電源は珍しかった。) だから、まだCPUの消費電力が今ほど大きくない時代ではあったが、 シリーズレギュレータの動作原理上、 大消費電力時のレギュレータ発熱はものすごいモノがあった。

そこへ、何の縁があってか友人から6X86MX-PR200をもらい受けたのである。 6X86系CPUは知る人ぞ知る「発熱大王」の異名を保つCPUだ。 特に6X86-P200+が酷かったらしいが、こいつでマザーを焼き焦がした 噂も当時のいい酒飲み話であった。

というわけで、何となくイヤな予感がしながらこれを早速乗せたところ、 山洋製大型CPUファンを付けたにもかかわらず、 なんと10分保たずにOSごとシステムが落ちた。 CPUではなくシリーズレギュレータの冷却が追いつかず、 レギュレータIC内の保護回路が作動したのだろう。

で、焼死体マザーを出さないように考えたのがこれである。 当時のGA-586HXでは写真は撮っていなかったので、手持ちの類似マザーによる 再現構成写真である。

染之助・染太郎ファン
レギュレータを冷却するため、一本足で取り付けられたファン
GA-586HXは嫁入りしたため、シリーズレギュレータ搭載マザーによる再現映像

CPU電源用レギュレータに取り付けられたファンは不要になった486用ファンから 取り外したモノである。 我々の仲間内では、一本の足に取り付けられたファンがレギュレータ上で クルクルと回る様から、当時誰言うと無くこれを 「染之助・染太郎ファン」と呼んでいた。

6X86系CPUの発熱は当時そこかしこで噂になっていたため、 たるさん的にはこれでも心配であった。 そのため、ファン駆動電圧の高電圧化で 「いつもよりよけいに回す」事も考えたが、その必要はなかった。 ファン付き放熱板の冷却能力はすばらしく、 それ以降マザーが落ちることはなくなっていたのである。

☆Athlonの発熱と電源負荷   
またも話が脱線してしまった。(いつものことだが...)

と言うわけで、その記事を読んだ時、ふっとひらめいたのである。 たとえ外見上問題なくとも 電源の不調で同じ症状が出るかも! 電源の異常=焼死体、という先入観がいけなかったのだ。

まず、同期の家で使っていたATX電源とたる家のATX電源は異なるユニットだから、 これが同時にイカレるという事は考えにくい。 また、両者共に何台もの自作経験があるから、ちゃんとAthlon対応電源を使っている。 だから、Athlon系マザーでFAQのATX電源品質問題では無いことがわかる。 しかも、友人宅でも最初はちゃんと動いていたのである。

では、他に動作を不安定化する電源があるのか...

そう、それはCPUに電力を供給するオンボードSWレギュレータである。 たとえこれが焦げていなくても もし、これが経時劣化すれば...

そうか、こいつが不調の原因か!?  と言うわけで、早速その周辺を探ってみた。

まず、このマザーの問題点として考えられるのは 電解コンデンサの配置である。 写真の通りCPUソケットを取り囲むように電解コンデンサが取り付けられている。

K7T−PROの電解コンデンサ配置
熱風排気がどれかの電解コンに必ず当たる。

このようにCPUソケットを中心に3方向に電解コンデンサが取り付けられていると、 フィンに風を送り込む形式の通常型ファンである限り どのような排気方向のファンを取り付けても、どれかの電解コンデンサに 必ず廃熱がぶつかる事になる。 これを防ぐには排気が垂直方向になる吸い出し型のファンを付けるしかない。 これは設計上の配慮不足である。

例えば、当家で使っているPentium4マザーP4S5Aを見ていただこう。 電解コンデンサは基本的にCPUソケットに対して縦1列で並んでいる。 これならば、写真で上下方向に廃熱が排気されるファンなら、 廃熱で電解コンデンサが加熱される心配がない。

また、トロイダルコアもP4S5Aの方が数が多い。 これは磁気的飽和による加熱を防ぐための措置であると考えられる。 このように、時期的に後発のP4S5Aの方が電源対策がしっかりしている。

P4S5Aの電解コンデンサ配置
排気でコンデンサが加熱される心配が少ない。

Athlonの発熱排気で電解コンデンサが加熱される。 それに加え、オーバークロッカーでもあった同期の設定変更で マザー上のスイッチング電源により大きな電流負荷が加わる。 それが、大きなリップル電流となって電解コンデンサの自己発熱を発生させ、 電解液の蒸発によりさらに寿命を縮める。

なんだか、ありそうなシナリオではないか!?

☆少しずつ改善される症状   
まず、電源回りであるが電解コンデンサの爆裂でも発生していれば 簡単に見分けが付いたのであろうが、 電解液の容量の漸減だとすると外見上ではわからない。 実際、目視観察では電解コンデンサには何の異常も見られなかった。

では、もしそうだとするとどんな対策が有効だろうか?  電解コンデンサの電解液異常としては、容量抜けとESR増大が考えられる。 容量抜けは主に電源電圧の変動を、ESR増大は主にノイズの増大をもたらす。 (というのはあくまで理屈で、実体はそれほど単純ではないが...)

そこで、まず電解コンデンサを載せ替える前に、少し高周波対策を行ってみた。 電解コンデンサの容量減の症状としては、DC成分の電流容量不足が発生する以前に、 ESR増大により、まず高い周波数でのノイズ(主にスイッチングノイズを予想)や 負荷変動(主にCPUの消費電力変動を予想)に対処できなくなるのではないか? と考えたためである。(ただし、このうちCPU負荷変動に関しては 電解コンデンサがまともであっても除去できないほど高い高周波成分が 含まれているはずである。対策も気休めかもしれない。)

対策としては、電解コンデンサよりも高周波特性に優れるチップコンデンサの 追加搭載を行ってみた。 電源回路の出力側に耐圧16Vで2012サイズ1μFのチップコンデンサを11個 並列で、電源回路の入力側に耐圧50Vで3225サイズ1μFのチップコンデンサを 8個追加搭載した。(マザーの絶縁皮膜は紙ヤスリで削り落とす。)

また、他にもマザー上のすべての電解コンデンサに並列に1μFのチップコンデンサを 追加搭載してみた。

K7T−PROに追加したチップコンデンサ
最短距離でGNDへ

入力側の方に高い耐圧のコンデンサを付けたのはリップル電流による発熱耐性を 考えてのことである。また、出力側に小さいサイズのコンデンサを取り付けたのは 低ESL・ESRを考慮してのことである。 (高周波特性を考えるならば、同一容量ならば小さい方が一般に特性がよい。 ただし、発熱耐性は小さくなる。)

また、数をたくさん取り付けたのは低ESL・ESR化のためであり、 容量を稼ぐ意味ではない。 容量的には電解コンデンサ3900μF/個 (もちろん経時劣化で容量は低下しているだろうが...)の前には、 10μF程度の増援部隊なぞ、なんの役にも立たないからである。

ちなみに、低ESR・ESL化を目指す場合は、 写真の通り「べたGNDに最短コースで半田付け」が基本である。3) ここで、リード線などを使って接続すると何の意味もなくなる。 (例えば両端をべた配線でつなげない場合は、次善の策として 写真の通り銅箔を使って配線するとよい。)

このような対策を施したところ、完全復活とまでは行かなかったが 症状が緩和した。 毎回、色々なエラーが出て起動に失敗していたのであるが、 まずCMOSエラーが出なくなった。 そして、すべてのビデオカードやメモリで安定というわけではないが、 テストした4枚のビデオカード、5枚のSD-RAMのうち、 Savege4と64MB-SDRAMという組み合わせでは、BIOSは安定して起動するという 事がわかったのである。

Savege4と64MB-SDRAMは試した中では最も消費電力が少ないと考えられる 組み合わせである。 う〜む、確かに電源が問題点のようだ。

というわけで、完全復活とまでは行かなくとも ゾンビ状態程度までは復活したようである。

マザー再生に目処が付きつつあるので、 次回には電解コンデンサの交換などを試して結果を報告したい。 ただし、今の段階ではチップコンの追加搭載までしかやっていないので、 結局失敗したという爆死報告になるかもしれないが...(続く)




1)
意外に思われるかもしれないが、日展には(大学受験の2年間を除き) 中学以来毎回鑑賞に行っている。 開催日初日は混雑も少なく狙い目である。

また、開催初日は出展者の画家が多く出入りするのも楽しい。 立ち聞きは品が良いとは言えないが、 そこかしこから画家の内輪ネタ話が耳に入ってくるのも楽しい。

2)
富士見湖は採石場の跡地に湧水が溜まってできた湖である。 水質が非常によいのが特徴で「関東の摩周湖」の異名を持つ。 確かに透明度は非常に高かった。 逆に霞ヶ浦では透明度は30cmも無い。

この富士見湖であるが、既に産業廃棄物処分場への工事が始まっている。 たるさんの目の前でも湖水の排水が行われていた。 この美しい湖を見るなら、今が最後のチャンスなのだ。

たるさんは産業廃棄物処分場と聞いただけで何でも反対の、 いわゆる「アンチ」の立場は取らない。 必要ならば建設もやむを得ない場合もあるという立場だ。

しかし、その立場から見ても、ここへの処分場建設は どうしても正しいとは思えない。 処分場にするには、あまりにも美しすぎる。自然が豊かすぎる。

透明度の高い水質・富士見湖
写真中央下に透けて見える湖底が写っている。
それほどに透明度は高い。

3)
高周波でも1点アース等、高度な技が各種存在する。 しかし、これらの技は付け焼き刃では かえって状況を悪化させるだけである。 (低周波では有効な1点アースであるが、高周波では実装上の腕次第で かえって改悪になってしまう。何度泣いたことか...)

だから、たるさん的初級レベルでは 「べたGNDに最短コースで半田付け。」という基本を忠実に守るのがよい。

なお、この辺りの奥義をお求めの方は、まず伊藤健一著「アースとベタパターン」を お読みすることをお勧めする。平易な書かれ方の読みやすい本ではあるが、 「プロの入門書」レベルの内容がある名著だ。 三歩歩むとすべてを忘れるトリ頭たるさん的学習には十分すぎるレベルだ。

(訂正)
K7T-PROと同時期に出たマザーがSD-11と書いてあったが、AZ-11の誤りだった。 お詫びして訂正したい。SD-11はSlotA時代のマザーだ。