メモリも時代は軽薄短小





少しばかり旧聞に属する事だが、たるさんのパソコンが久しぶりに更新された。 いや、ぼろパソコンはジャンクにより日々更新されているのである。しかし、 メインマシンを更新する気になったのはAthlon-700MHz以来のこと。 本当に久しぶりである。

CPUは、大方の予想を裏切ってPentium4とした。 実は、個人的にはAthlonXPと思っていたのであるが、 Pentium4関連のコラムをたくさんアップした手前、 「本人がPentium4を買っていないのに、ああいった記事はマズイのでは?」 というありがたい指摘もあったためである。

まあ、これを認めてしまうと、発表前のCPUの予測記事とかは 一切書けない理屈となってしまうので、それこそマズイのであるが、 元々どちらのCPUにするか迷っていたくらいであるから、 ありがたく進言をお受けする事とした。 (法律上は実機を持っていなくても「信ずるにたる根拠」があればいいそうな。)

マザーは定番のASUS製と思ったが、評判が良いためなのか、 価格が他社品の4割り増しもする。 台湾製が安かろう悪かろうの時代は既に過去のものであり、 台湾製でも定番としての高評価を得たマザーは高価格ということらしい。

と言うわけで、ネット上での評判はイマイチながら購入したのは、 ECS製のP4S5Aとなった。 SiS645チップセット搭載マザーでは一番安かったためである。



SiS645チップセットに走ったのは、まあご愛敬。 安定性よりも性能に走るのは、たるさんのビョーキであり、 「わかっちゃいるけどやめられない。」といったところである。

先輩には、「二日酔いになって、二度と酒は飲まないって後悔しておきながら、 目の前に酒をおかれると迎え酒を始めるアル中患者みたいな奴!」と言われたが、 けだし名言。 過去、性能に惹かれて安定性の基本をはずし後悔した回数は限りなし。 こいつを買ってから言うのもなんだけど、 マザーはやっぱり安定性が基本である。

さて、このマザーを買って良かったと思う点を一つ。 メモリスロットがSDRAM用とDDR用に2種類分けて搭載されている事である。 これには2つのメリットがある。

SiS645とDDRの相性問題は有名だから、保険が掛けられると言う事が一つ。 それから、メモリを交換してのDDRとSDRAMの比較検討が同じ土俵でできると 言う事が一つ。

で、早速メモリ比較をと思ったのだが...む〜、DDRだとかなり不安定。 早速、相性問題の洗礼を浴びる事となってしまった。 ちなみにSDRAMだと、数種類試したがすべて問題なく動作した。



やはり、クロック・エッジの両端で同期させるのは技術的に難しいのであろうか?

☆DDRIIメモリスロットの形状問題   

とは言いながら、世間ではDDRメモリの規格変化が凄い。 韓国の最大手メーカS社に至っては「DDR400」とまで息巻いている。 メモリバスの駆動周波数がグングン高速化しているのだ。

こうなると、DDRIIも安穏としてはいられないはず。 DDRIIは400からの予定であったが、533への繰り上げだってあり得るだろう。

と言うわけで、尻に火がついた形のDDRIIであるが、 メモリスロットの形状規格でゴタゴタがあり、もめているらしい。

腹案としては、以下の3種があるそうだ。
1.DDRに近い形での、フルサイズDIMM形状
2.SO−DIMM形状
3.マイクロDIMM形状


さて、この規格であるが1.がデスクトップ用で2.3.が ノート用というわけではないらしい。 あくまで、デスクトップ用マザーの標準規格としてである。 ユーザーとしては、複数規格の乱立だけは避けて欲しいところだが なぜこんな事になったのであろうか?

では、ここでたるさんの推理を述べてみよう。

以前、たるさんは キャッシュを制するものはCPUを制す。(その1) において、「パーソナルユースでは高速メモリの大量実装など不可能。」として 高速メインメモリ実装不可能説を掲げた。

そして、それは基板誘電率の問題から 高速メインメモリの実装は、 「高集積度を誇るDRAM系メモリでは何とかなるかもしれないが、 低集積度のSRAM系メモリでは物理的に収納できなくなるのは間違いない。」 という配線遅延問題に突き当たるため発生すると解説した。

ところが、意に反した急激なCPUのFSB向上によって、 DDRIIのようなDRAM系メモリでさえ 配線遅延の問題に直面せざるを得ない状況に追い込まれた ということなのであろう。

配線遅延の厳しさはメモリバスの駆動周波数に比例するから、スタートから DDRII533としてしまうと、 現状では問題なくとも後々のFSB向上によってメモリバスの駆動周波数が上がり、 メモリスロットが付いてゆけなくなるおそれがある。

規格策定は、現状だけでなく将来の性能向上まで含みを持たせておく事が重要 だから、この点にはかなり腐心しているはずだ。

で、配線遅延を解決する方法にはいろいろあるが、 もっとも手っ取り早いのは配線長を短くする事である。 メモリスロット形状をなるべく小さくする事は、安易ではあるが有効な方法だ。

しかし、DDRIIの規格は元々ノート専用というわけでは無いのであるから、 外形寸法を小さくしてわざわざ作りにくくする事はない。 いくらコンパクトデスクトップが流行だからといって、デスクトップPCでは DIMMがSO−DIMMに変わってもスペースメリットはあまり出ない。 できる事ならば大き目に造って、コストを下げたいと言うのが本心だろう。

その軋轢の結果が、上記の3種類のメモリスロット規格 なのであると考えるのである。

規格策定委員の中にも、コスト重視派(配線遅延は別の技術で解決可能と判断)と 配線遅延重視派(コストアップしても高周波数駆動安定性を重視)が居て、 意見がまとまらないという事ではないのか?

☆FSBとサイズ効果   

メモリ分野での当面の技術課題は、 メモリバス駆動周波数向上に伴うバンド幅の増大がメインとなると思われる。 なぜ周波数向上に躍起になるかといえば、それは今後ブロードバンド通信の普及に 伴って、データストリーム処理が増えるからである。 データストリーム処理は他の処理と異なり、バンド幅の向上がモロに効くからだ。

通常の処理はレイテンシが支配的であるが、データストリーム処理に限っていえば バンド幅の向上したメモリは実に効果的に機能するのである。

しかし、現状のDDRやDDRIIでは、メモリバス駆動周波数 こそ向上するがメモリセルの駆動速度は ほとんど変化しない。これは、レイテンシ的には向上しないと言う事を意味する。 メモリセルの駆動速度を高めるのはバス駆動周波数向上に比べ技術的ハードルが高く、 一朝一夕ではなし得ない。

だから、メモリではレイテンシの向上よりもバンド幅の向上に主眼がおかれた 改良が当面の間のトレンドになるであろう。 たるさんの考えでは、DRAMセルのレイテンシ改善はCPUへのDRAM混載が 実現するまで不可能であるように思う。

また、バス駆動周波数向上の他にバンド幅を増やす方法としては 多値伝送技術もある。しかし、 これはマザーボード設計にアナログ的感覚が要求されるため、 現状の技術者はかなりいやがるはずである。 この方法がメモリのような汎用規格に採用されるのは、技術的にかなり 行き詰まった場合に限られるだろう。

その結果として、DDRIIのメモリスロット規格は高周波数駆動型に進まざるを得ない。その結果、既存の形状を捨ててまでも、 高周波数に耐える規格を安く手軽に与える選択肢が要求されているのである。

実は、小さく造ると速度を速くできるというのは、 CPUのミクロンルールでもプリント基板でも同様である。 つまり、バス駆動周波数向上の方法論として配線長の短縮は効果的なのだ。

今後、高駆動周波数化されたメモリが登場すれば、 配線遅延の問題はますますシビアになる。 というわけで、サイズ効果で改善を狙うのは、 枯れた技術で対応できる妥当な選択肢であるのだ。

そこで、このDDRIIスロット形状の規格について、たる流に予言を述べてみたい。

−たるさんの予言−
DDRIIのメモリスロット形状は現行のDDR形状よりコンパクトになるだろう。 規格統一できず、出始めは複数規格であったとしても 最終勝者はSO−DIMMかマイクロDIMMである。 フルサイズDIMM規格は時代の流れに取り残され、廃れるだろう。


「軽薄短小」はIT産業では、 いまだ廃れていない合言葉なのである。




4/14:誤解を招きやすい表現を修正しました。
(FSB周波数=メモリバス周波数と取られかねない部分を修正)