一般公開見聞録(国土技術政策総合研究所&土木研究所編)   

2011年12月4日



☆この円高だからこその国内温泉旅行。   
まずはいつもの余談から。

今回は久々の一般公開ネタとなるわけだが、 じつは1ヶ月ほど前に久しぶりの親孝行として実家の両親を連れて温泉旅行に行ってきたので、 その紅葉風景を簡単に紹介。

このご時世、この円高なのだから旅行と言えば定番は海外旅行となるわけだが、 当サイトの考えはこのご時世だからこその国内旅行。 古風な定番観光地の中から果敢に奮闘している場所を選択して、 国内経済をサポートしようという考え方だ。

で...選んだのが昼神温泉。 国内温泉街というと今や衰退期というイメージが強いのだが、 ここ昼神温泉は結構奮闘していると思う。

スキー場用ロープウエイから見る紅葉風景。
天気が雨降り直前で良くなかったが、それでもこの絶景。

目的地は長野県飯田市から恵那山へ向かう途中にある。 当サイトは下道ぶらぶらドライブだったが、中央自動車道を使えば名古屋から園原IC直下で一発到着も可能。 (山里の割には交通がかなり便利な立地状況。) 近くに「ヘブンスそのはら」というスキー場があるのだけれど、 このスキー場用のロープウエイが紅葉シーズンには絶景となるので、 冬だけではなく秋も良い観光地になるとのこと。 紅葉風景を楽しんだ後に温泉一泊で一息という古風な秋期定番観光となった。

実際、紅葉風景はかなりグッドで、当日は雨降り直前で運悪くお天気は決して良好とは言えなかったにも関わらず、 写真の通り眺望の良い紅葉風景を楽しめた。 ロープウエイなので短時間で終わりかと思いきや、意外に長時間風景を楽しめるのも好感が持てる。 (地面との距離がロープウエイとしては低めで、高所恐怖症の当サイトでもそれほど恐怖を感じなかったのも良し。)

当サイトの日常生活とは全然異なる風情を楽しむ。
温泉街の隅に従業員用と思われる小さなアパートが...

温泉街も海外旅行に対抗してサービス奮闘中で、夕食は旨味だけではなく量的にも食べきれないくらいのサービスだった。 (この料理の量、まるで中国での宴会みたい。中国出張中の宴会を思い出したよ。) このサービス精神なかなかグッドだけれど、逆に言えばこれだけサービスしないと客寄せできないという 円高苦境の表れとも受け取れるような気も少々。 いやいや、このご時世...当サイトの仕事は製造業なので、この超円高で大変な状況だが、 国内観光業も同様に大変だ。(お互い、ある意味で腕の見せ所でもある。)

ちなみに、昼神温泉街の温泉はかすかな硫黄臭の漂うお肌ツルすべの良泉。 当サイトは泉質が気に入って、夜だけではなく朝にも再度入りましたよ。 硫黄臭は濃すぎると逆に不快感を感じるだけに、薄くもなく強烈過ぎもせず、仕事疲れを癒すのにはベスト濃度。 癒しタイプの温泉としてはベストな泉質だと思ったね。

また、温泉街では朝市が行われていて、当サイトの実家がある新興住宅街などでは 絶対にあり得ない安値で野菜・果物が売られていた。 往路復路で立ち寄った道の駅より安かったと言えば、その安さがおわかりいただけると思う。 観光面だけではなく、実利面でも評価良しだ。

余談だけれど、温泉街の一番奥に二軒のアパート(写真左)があった。 客向けでは無さそうなのでおそらく旅館の従業員が住んでいるのだろうけれど、 このアパートを見ながら「温泉街で働いて温泉街で過ごす人生って、どんな人生なんだろう。どんな生き方なんだろう?」 なんて事を考えてしまった。価値観は人それぞれなので他人が口を挟む話では無いとはいえ、 今の自分の人生とは全然違う生き方なんだろうしね...

と言うわけで、紅葉・温泉での癒しあり、安値野菜の実利あり、人生観の再考あり... といった深みのある週末であった。

☆当サイトも体感した事のある低騒音路面の開発元。   
余談はここまでにして、本題へ。 今回は本当に久しぶりの一般公開ネタである。 つくばにある国土技術政策総合研究所土木研究所の一般公開を見学してきた。

この二つの研究所であるが、一般公開日は11月18日に一番近い週末(今年は11/19の土曜日)に行われる。 11/18は土木の日なんだそうで、なぜ11/18かと言うと、土木の土の字を分解すると十と一になり、 木の字を分解すると十と八の字になるから十一月十八日。というわけで11/18が土木の日なんだそうだ。 (女忍者「くノ一」の由来を思い出してしまった...)

当日は残念ながら雨日で、業務の関係上広い地域を持つ研究所を見学するのには天気に恵まれていなかったが、 幸いにして研究所が巡回バスを用意してくれていたのでそれほど苦労なく一回りする事が出来た。

まず最初に見学したのは、やはり今回の大震災の関係で液状化現象のデモ実験。 水と液状化現象を起こしやすい砂状の土を入れて 透明な大型容器に水道管などを想定したパイプを内部に入れ、地上部分には家の模型を置く。

で...振動装置で強引に容器を揺するのかと思いきや...

なんと、その容器を素手で数回ドンドンと叩いただけで液状化現象が発生。 一度液状化が始まると、もう土ではなく完全に液体のような挙動で、 家の模型はどんどん沈没していくし、逆に内側が空洞の配管はどんどん浮き上がっていく。 液状化現象はいったん始まってしまうとそれほど大きな揺れが無くてもどんどん進行していくといった印象だ。

おもしろかったのは、容器の内部がよく見えるように完全に透明なので、 液状化している地盤としていない地盤が完全に区別して見分けられるということだ。 砂状の土壌の中で液状化している部分と固形を維持している部分がはっきりと区別できていた。 この様子だと、液状化現象というのは揺れに比例して徐々に流動性が上がっていくというイメージではなく、 がっちり固化していた部分が耐えきれなくなって一気に液状化するというように思える。 プロの解説員のお話によると、土壌を構成する粒子の粒度分布が均一であるほど液状化しやすいのだそうだ。

たとえば、今回の大震災では浦安などで大規模な液状化現象が発生したが、 この地区に住む知り合いの話によると、液状化が酷かった新しい埋め立て地と比べて 埋め立て時期が異なる古い埋め立て地では道路一本隔てただけで液状化のレベルが全然弱かったとのこと。 この話を聞いて、当サイト的には埋め立て期間が古い場所だと徐々に水が抜けて土が固まり、 埋め立てが古い地域ほど液状化しにくいのかな?と思っていたのだが...

専門家の説明によるとそうではなく、埋め立て地域が違うと液状化のレベルが違うのは 多くが埋め立て時に使用した土質の違いによる差なのだそうだ。 つまり、埋め立てに使用した土質が液状化しやすい性質のものだと、 古い埋め立て地でも液状化の可能性は十分に高いとのこと。 (原理上は埋め立て期間の違いでも液状化レベルの違いが生じるが、 それには最低でも数万年程度の時間がかかるのだそうだ。)

これ以外にも、地震による揺れを抑えて被害を弱める免震装置の模型実験や、上下水道の浄水化システムの説明、 子供向けにコンクリートによる模型の作製実演なんて公演も行われておりました。

で、なんせ研究内容がこの分野なので広い敷地が必要のため、巡回バスで各場所へ移動。

この赤い色の巡回トラック、なんと完全自動の無人運転。
他、巡回バスが移動する途中、こんなレーシングコースのような道路も...

最初に訪れたのは、道路の路面を研究する施設。 説明があったのは路面の濡れによるスリップを抑える路面で、 この路面を使うと雨によるスリップの可能性を大幅に減らせるとのこと。

この路面は路面を構成する部分に意図的に隙間が出来るようになっていて、 この分に雨水が吸い込まれて微細な排水路のような機能を持っている。 重要なのは、このような構造にしても路面自身の強度は落ちないようにするという工夫。 従来の路面と同じ方式で隙間だらけにすると当然のことながら路面が崩れやすくなって、 スリップは防げても最悪の場合路面の崩壊で事故が起きるという本末転倒な事態になってしまう。

実際、この研究成果は高速道路などで既に実用化されている。 当サイトも東名高速でこの路面を体感したことがあって、 雨の日に走っていてジャーという水音のする古い路面を通り過ぎて、 最近舗装し直した新しい路面に入った瞬間にタイヤの騒音が静かになり、 何となく滑りにくくなったような感覚を感じたことがある。 騒音が静かになるのは、水抜けのための隙間の中を騒音が乱反射して 伝わる内に吸音されるからだそうで、 当然のことながらスリップ抑制だけではなく低騒音化も高速道路における重要な機能なんだそうだ。

で、それらの機能を研究する際にどれだけの期間機能を維持出来るかどうかテストするのが重要なわけだが、 耐久性試験を現場状況でテストする場合、人による運転では手間と費用がとてつもなく大きくなってしまう。 そこで、写真の通り完全無人運転によるトラックでテストするというわけ。 最初、無人運転トラックを見たときには無人でないと危険な車両テストをやっているのか?と思ったのだけれど、 テストしているのはトラック自身ではなく路面の方だったというわけだね。

あと、なんせ研究分野が研究分野なので、移動中にこんな路面もありました。 まるでレーシングカーの競技場みたいですね。 ちなみに、この路面だと通常の走行速度ではハンドルを切る必要性はまったく無いのだそうで...

次に訪れたのはダムの研究設備。 写真の通りダムの模型が作られていて、研究が行われていた。

模型でダムの研究を行う設備である。(写真は重力式ダム。)
右図のようにダムそのものだけではなく下流の河岸が精密に再現されているのが興味深かった。

現場では研究員によりダムの基本が説明されていた。 ダムには重力式、アーチ式、ロックフィル式などのいくつかの構造があるが、それぞれ一長一短がある。 たとえば、アーチ式はコンクリートの使用量が少ない割に強度が高いという利点があるが、 その応力をダム両端の岩盤が支えるためダム周囲の岩盤が強固である事が大前提である。 つまり、アーチ式は周囲の地盤が軟弱な場所では設置できない。 要するに現場の状況に適した構造を上手く選ぶことが重要とのこと。

あと、別の研究施設ではあるが、土石流の実演デモも行われておりました。 土石流防災設備のある模型と無い模型とで、人家に与える損害がどのように違うかを見せるデモ実験である。 土石流発生地点から人家の模型まで何の防災設備もないモデルの方だと、 写真の通り人家が土石流に飲み込まれてしまうが、 写真の右端の橋やビルの模型部分は上流に防災設備が設置されている側で、 人家のある部分までには土石流は阻止されている。

子供向けのデモ実験ではあるが、おとなにもわかりやすい解説でした。

子供にもわかりやすく土石流の影響を示すデモ。
防災設備がない側は人家が土石流に飲みこまれてしまう。

☆津波被害者ゼロ達成を目指して。   
お次はまたべつの巨大な建物の中へ移動しての津波実験のデモ。 その大きさは写真の左で奥の方に黒っぽい服を着た操作担当の研究員の方が わずかに姿が映っている状況からおわかりいただけると思う。

興味深かったのは津波は水深が深い段階ではそれほど大きくは感じられないという状況で、 実際、写真右端の津波発生装置がドンと動いた直後では、「えっ、その程度で津波なの?」 という感覚であった。 で、その波面が地上に近づいてくるにつれてだんだんとそれなりに津波っぽくなってくるのが興味深かった。

ここの実演は我々シロウトにもわかりやすいように実機デモだけれど、 最新の研究ではもちろんスーパーコンピュータを使ったシミュレーションなども行われていた。 これらのシミュレーション結果等から地震による津波被害を最小化するのが ここの研究チームの最終目標。 また、今回の東日本大震災ではリアルタイムの調査も行われていて、 津波の状況を迅速正確に把握して今後の防災に役立てようというわけだ。

東日本大震災では、ハザードマップを信用しすぎてマップの想定被災地域外で津波被害に襲われた人たちが多かっただけに、 この研究が進歩すれば緊急地震速報による東北新幹線事故ゼロと同様に緊急津波速報による 津波被害者ゼロを将来実現できるのではないかと当サイトも大いに期待している。

津波発生装置による津波デモ実験。
コンピュータシミュレーションによる研究と組み合わせ、将来は津波被害者ゼロを目指す。

今回は東日本大震災の発生もあって研究所でも津波や液状化現象といった 防災研究の解説にかなり力を入れている印象であった。 当然のことながら日本は地震国であり、防災はトップクラスの研究課題となっている。 この研究成果が今後生かされて行けば、東海地震が3連動型で発生したとしても その被害を東日本大震災に比べて大幅に削減できる可能性は十分にあると思う。

命の価値は金銀の問題ではない故に、この研究成果を後世に生かすことが出来れば 土建分野といえどもその税金投入は決して無駄金にはならない。 天災抑制の技術的難易度がいかに高いかは十分に承知しているが、 土木研究を防災に生かす事が出来て命を救うことが出来れば国民に対して大金星達成だと思う。 防災技術開発の目標達成のため、大いに頑張って研究して頂きたいと思った。

というわけで、土木の日をつくばで楽しんだ久々の一般公開見学なのでした。