つながり始めた二つの世界。(確かにARMは手強すぎるが...)   

2011年1月30日



まずはいつもの余談から。

資格試験に向けて勉強の週末なのだが、頭の悪い当サイトは集中力が2時間と続かない。 一応、問題集とかをやり遂げるスケジュールとかをカレンダーに書いているのだけれど、計画からは遅れる一方。 なので、せっかく北総地方に帰ってきたのに週末もアキバに行けないでいる。

遅れを挽回すべく土日も終日勉強に計画変更したのだが、9時頃から勉強を初めてもやはり昼まで集中できない。 なので11時頃にいったん気分転換として1時間ほど散歩に行くことにしている。 で、散歩・昼食後に2時間ほど勉強すると、3時頃にやっぱり脳みそが臨界点に達して眠気が襲ってくる。 問題集によだれがポタリ... 仕方ないので、ここで軽くお菓子を食べてまた30分ほど散歩。

これは体重減らしの意味もあるのだけれど(ならば「お菓子食べるな。」とは言わないでくださいな。)、歩いていて感じたことが一つ。 ここ北総地方は何というか当たり前というか、やはり静岡よりはかなり寒いね。

寒さは散歩時の風景からでもよくわかる。 下記の散歩風景は左が静岡で右が北総。 森の中の枯れ木割合が全然違うのである。

常緑樹と落葉樹の比率が全然違う静岡地方と北総地方。
左図は静岡で12月下旬、右図は北総で1月下旬の散歩時に撮影。

静岡では森の木々のほとんどが常緑樹。なので、冬でも森は緑色。 お茶の木ももちろん常緑樹なので、森の風景は夏冬あまり変わらない。 しかし、ここ北総地方では森の半分以上が落葉樹。 なので、初冬に入ると森が完全に冬景色化してしまうのであった。

これを北総地方の方が寒々しい風景と見るか、春夏秋冬の季節感があると見るかは人それぞれなんだろうけれど、 当サイトの大好きな映画監督・アンドレイタルコフスキーの作品「惑星ソラリス」のラストシーンが 冬枯れしたロシアの(疑似)風景なので、こういった落葉樹林も当サイト的には深い風情があって悪くない。 (タルコフスキー好きならバッハのBWV639やBWV244を聞きながら歩くという手もあるね。)

ただし、当然のことながら散歩していると北総地方の方が気温的には寒いのであった。 同じ千葉県でも南総地方ならば黒潮暖流のおかげで冬でも静岡並に温暖なのだけれど...

と言うわけで、アキバに行けない週末。 今回の試験は前回受けた公害防止管理者(水質1種)より難試験なので、 現段階では過去問の正答率が合格基準に全然達していないのであった。 息抜きと言えば久々にアキバ圏内に戻ってきたのだから時間が取れれば週末はアキバに行きたいのだけれど、 合格が全然見込めないようでは我慢して勉強するしかないかな?  トホホ。

☆intelにとってありがたいことに、PC業界では売れなくなったAtom。   
というわけで本題へ。(と言いながらこんなサイトの更新やってたら、間違いなく試験に落ちるな〜。)

当サイトは今現在i7-920マシンをフラッグシップとしている。 しかし、エンコード系の処理はあまりしないし最近はゲームにはまっているわけでもないので、 その処理能力を生かし切って使っているわけでは無い。

ただ、ネットを見たりWebサイトを更新したりメールをやりとりするだけならば完全なオーバースペック状態なので、 (これらの用途向けにi7-920マシンを自作する前のフラッグシップだった)Core 2 Duo T7200マシンを作り替えることにした。

まぁ、作り替えるとは言っても用途が用途だから投資はSSDの購入のみ。 (景気も回復傾向だから、今回は貯金を減らしてまで市場活性化を狙う意図もない。) OS搭載用の小容量SSDを1台買ってCドライブをSSD化し、 それ以外はi7-920マシンに奪われたグラフィックをグラボ搭載マザーに入れ替えて復帰させるなど、 古いマシンからの再活用だけである。

で、組み上がってみると、マルチスレッド対応アプリを使わない限りi7-920マシンとも大差はつかない。 ベンチマークの数値上では遅いことは遅いのだけど、体感的には微差であり実質的には何の不満もないのであった。 (マルチスレッド対応アプリ以外で盲検テストをしたら、区別のできない人も結構出ると思う。)

ただ、以前お遊びで買ったD945GCLF2(Atom330搭載マザー)はさすがに簡易なネット用途でも若干非力さを拭いきれなかった。 SSDも搭載してみたのだけれど、ブラウザでさえ表示が時々パラパラするのがどうしても気に入らなくて、 このためこちらをメインマシンにする意欲は喪失。 D945GCLF2は実家帰省時のパソコンとして実家に引っ越す事になった。

世の中でのAtomの売れ行きも完全に決着が付いたようだ。 Atom出現当時にはAtomのバカ売れを予想したPCマニアも多かったが、それは結局ネットブックの一過性ブームで終了。 その後、通常のノートPCが低価格化するにつれてAtom系ネットブックの売れ行きは完全に「蛍の光〜、窓の雪〜。」状態。 ネットブックブームは完全に終了し、PC用途でAtomが売れまくっていると考える人は一人もいない状況だ。

たとえば、こんな記事をご一読いただければ簡単に事実を把握できる。 同記事によれば「ノートPCカテゴリのなかでも2008年から2009年前半にかけて高い人気を得ていたネットブックは、 「トップ10どころか、トップ20にも入っておらず、ネットブック人気の衰退は、 2010年に入ってさらに拍車がかかっている」とカカクコムでは見ている。」 とのことである。

SSD搭載ネットブックのHDD化について説明したときに少しだけ書いたことがあるけれど、 当サイトはネットブックブームを次のように考えていた。

当時の最新OSであるVistaが非常に重かったという事情があるにせよ、 Atomは主流用途には若干非力であったことに間違いはないだろう。 CULVノートの低価格化により一般ユーザーはAtom搭載ネットブックから完全にそっぽを向いたのだ。

ここで、おもしろいのはSSDの状況との類似性だ。 SSDも多くのPCユーザーに爆発的普及を予想されながら、現状はかなり伸び悩んでいる。 今この時点で「SSDモデルPCが売れまくっている。」と考える人は一人もいない。 この状況は、同様に爆発的普及を予想されながら急激に失速したネットブックと同じだ。

その最大の原因はHDDとの容量単価競争で負けている事である。 製品の売れ行きや普及を支配する最大の要因は、ネットブックとCLUVノートとの関係同様 「価格の相対ポジション次第」なのである。

☆メディアでのAtom評価の入れ替わり現象。   
ところで、このAtom。これらの事情を反映するかのように PC雑誌系での評価が発売開始時と現在とでガラリと変わってしまったのがおもしろい。

出現当時、AtomはPC雑誌でベタ褒めに近い状況だった。 当サイトがAtomを性能面ではあまり評価しないコラムを書いたときには、 一見当サイトへの反論とも思えるベタ褒め記事が直後に掲載されたこともある。 (当サイトの意見がPC世論に直接の影響力があるとまでは思い上がっていないので、 掲載時期が直後なのは偶然であろうとは思うけれど...)

そんな記事を読んで当サイトはこう思ったものである。 「いくら提灯とは言っても何でも誉めれば良いってものではないぞ。 こんな事を書かれて一番困るのはintel自身じゃないか。 何が起こっても知らないぞ〜。」

ちなみに、当サイト自身は「お金が無くてもメインマシン用途にはAtomではなく、せめてCore 2の一番安い奴を買うべきだ。」 と主張していて、これは実のところintelの希望にも合った内容だった。 当サイトはそういう状況を最初から正しく認識できていたからこそ、AtomがPC用途で若干非力と主張したこのコラムの文章には 「当サイトはいわゆる「共食い。」を防ぐ意味でintelの提灯持ちをするつもりは全く無いが...」 の一文が添えられているのである。

それから、2年とちょっとが経過。意外な景気回復により(タブレットの普及により海外では伸び悩みが見られるものの)ノートPC市場は持ち直し。 しかし、ネットブックは(新興国市場を除けば)完全に失速したままである。 当時以降Atomのデュアルコア化もなされたが、それでもネットブック市場には復活の兆しが全然無い。

PC仲間での評価もそれほど良いものではなく、当サイトの友人からは 「Atomのネットブックでオフィスを使うと、重いので使いにくかった。」 という意見もあった位である。(エンコードやゲームといった話ではない。オフィスレベルでも、ですぞ。)

そんな市場動向を考慮してAtomはPC需要の最下層しかカバーできないことにようやく気づいたからなのか? Atomをベタ褒めしないことが業界の意向に沿った意見であるとようやく気づいたからなのか? ...どちらが原因なのかはわからないが、メディアのAtom評価も当サイトの評価とようやく一致するようになった。

☆ARMは本当に手強いらしいが...直球勝負か、変化球か?   
では、Atomが進むべき王道は?と言えば、本来の目的であるタブレット市場。 これらを狙うためには低消費電力化と低価格化が必須事項になる。 つまり、当サイトの以前からの主張は、Atomが市場の覇者たり得るためには、 低消費電力化と低価格化が絶対の必須項目であるという考え方であった。 (「どうでもいい。」と言っては言い過ぎかもしれないが、 当時PCマニア層の主流意見であったマルチコア化の優先順位はほとんどゼロに近い。)

しかし、その市場で今Atomが苦戦しているという。 ライバルであるARMが相当に手強いのだそうだ。

ARMの強みは安さと低消費電力。 まさに当サイトが主張しているAtomが目指すべき姿そのものである。 それに加え、PC界では絶対優勢である「x86であるというメリット。」をタブレット市場では生かし切れていない。 x86がPC市場の覇者たり得る最大の強み、それは勝っている事が勝ちを呼び込む常勝サイクルが回っていること。 つまり、命令セットがx86であるという最大の武器がこのジャンルでは生かし切れていないというのは intelの必勝パターンに持ち込めないことを意味しており、確かにかなり痛い状況だと思う。

また、当サイトは以前Atomのマルチコア化について 「どうしてもマルチコア化したいならばWebサーバーのようなマルチコアが効く用途を狙い、 まかり間違ってもこれでPC需要を掘り起こそうなどと思ってはならない。」 と主張している。

つまり、PC用途でAtomをクアッドコア化やオクタコア化しても酷評されるだけで 全然売れないと予想したが、それらのマルチコア化されたAtomはWebサーバーなどの用途 ならば売れる可能性が高いと当サイトは予想していたのである。 (ちなみに、マルチコア化されたAtomはWebサーバー用途で従来機よりも 高性能・低消費電力を発揮できるというシミュレーション結果が当サイトの掲載後に発表されている。 また、直近ではMicrosoftのデータセンターグループから同様のマルチコアAtomがサーバー用に適しているという発表がなされた。)

ところがである。Webサーバー用マルチコアAtomが販売される前に先手を打って 逆にARMがWebサーバー用途を狙って進出してきたのである。 まだ研究段階とはいえ、ARMサーバーの出現はintelにとって一見すると大きな脅威に見える。 進むべき道で苦戦しているだけではなく、(Atomが担ってきたわけではないが) 今までの既存市場に対してまで反撃を受けることになる可能性が高いのだからね。

言ってみれば、タブレット市場にAtomというストレートパンチを浴びせようとしたところ、 逆にカウンターパンチを放たれたような状況。 しかし、当サイトはPCマニアサイトなので、ARMがライバルだと評価がよくわからない部分が出てしまう。 Atom vs ARMの戦いの勝者はARMで決まりなのであろうか?

序盤戦がARMの勝ちなのは、すでに確定事項なので反論の余地はない。 ただ、当サイトは反撃のチャンスはあると考えている。 その根拠は、必要性能がタブレットなどでも少しずつARMサイドからintelサイドへと移行するだろうという点だ。 当然、ARM側はチップの性能を高めてくるだろうが、それは消費電力や価格でのARMの強みが弱まることも意味する。 (実際、NVIDIAのDenverプロジェクトではCPUコアのシングルスレッド性能アップを目指している。 単純にスペック上の処理能力を増やせばいいだけの話ならば従来のARMコアでマルチコア化すれば良いだけの話である。 だが、そうはなっていない。シングルスレッド性能の重要性が正しく認識できていれば、この違いの意味がわかるはずだ。)

ただ一つだけ言える事は、Atomの今後の目指すべき道が 低価格化と低消費電力化である事には間違いがない事が証明できたものの、 その努力目標値が当サイトの予想以上に厳しいものであったという点だ。 要するに、当サイトは定性的には正しい判断をできたのであるが、定量的にはまだまだ読みが甘かったのだ。

Atomの進むべきベクトルが低価格化と低消費電力化であるという当サイトの主張は、 ある意味でまだまだ甘い考え方であった。 より正確に予想するならば、下記の通りだと思う。 恐るべきは、タブレット市場のようなPC市場に需要が重なる分野にARM系メーカーが牙城を築いてしまうと、 将来的にはそれがPC市場を食い破るベース基地になる可能性があることである。 (今までは組み込み用とPC用は市場が遠く離れていたのでそれぞれ別分野での覇者であり、市場が重ならないので両者が競合することがあまりなかった。) 単純にPC市場に他業界からいきなり参入することは、勝っている事が勝ちを呼び込む常勝パターンに逆行するので 万に一つの勝ち目もない参入者側必敗の事業参入となる。 しかし近い分野に自分の必勝市場を築いてしまえば、 そこをベース基地に何度でも突撃していくことができる。 (もちろん逆パターンもあって、今まで無敵だった組み込み市場に 逆に食い込まれる直通路となってしまう可能性もあるわけだが... 今のところその方向へうまく動いていないのがintelの悩み所だ。)

Atomの低価格化と低消費電力化を当サイトは高く評価してきたが、 それはx86という範疇だからこそ成り立つ評価だったのかもしれない。 いずれにしても当サイトはPCマニアサイトであるから、ARMに勝って欲しいとは思っていない。 市場の覇者は常にPCから、技術革新は常にPCから...というのが、当サイトのPCマニアとしての希望である。

ただ、幸いなことにAtomがPC市場で売れなくなったと言うことは、 ARMがこのパターンでPC市場に食い込むにはシングルスレッド性能上まだかなりの時間が必要だという点だ。 (この市場ではWINTEL連合を分離させてOS対応する必要があるが、こちらは行われた。ただ、これは必要条件であって十分条件ではない。1)) PC市場での要求性能は飽和気味ではあるが、仮にタブレット市場からPC市場へ食い込みを狙ったとしても まだARMが参入するには要求性能が高すぎる世界である。 当サイトの予想は、ARM参入の話はディフェンスとしてのフェイント狙いであって、 現段階で積極的にPC市場参入を狙っている訳ではないと思う。 intelに揺さぶりをかける事によって意識をPC市場へと向けさせ、その間にまずタブレット市場を制覇しようという陽動作戦だろうと思う。

なぜかというと、タブレットでも近い将来に必要性能の中心点がARMサイドからintelサイドへと高性能側にシフトするからだ。 ARMが市場を制覇しようと思ったら、時間がたつにつれて勝機は失われていく。 これらの高性能化は単純なマルチコア化では実現不可能だからである。

要するに、ARM側からPC市場を攻めるにはまだ結構大きなタイムラグがあるが、 intel側からタブレット市場を攻める時間的障壁はあまりなく、やり方次第で速攻が可能という時間的非可逆性がある。 つまり、現状こそARM側優勢とはいえ、市場の要求性能アップによる焦りがARM側にもあるわけだ。 また、その意味で今後の市場環境的にはintel側にも勝機があるとも思う。 タブレットに要求される性能次第では今後Atomですら性能不足となり、 ましてARMでは...という状況になる可能性すら考えられると思っているのだ。

相手が相手だけに非常に厳しい戦いなのは十分に認識させていただいたが、 しかし今後の舵取りさえ誤らなければ、PC市場をx86で守り抜き、またタブレット市場に食い込める可能性も十分にあると思う。

ちなみに、当サイトの客観的な予想はと言うと...上記の通りx86が勝つ可能性もあるけれど、もっとも可能性が高いのは、 タブレット市場はARM主導のままx86の食い込みは劣勢、逆にPC市場ではARM側完敗という、 おもしろさには欠けるが極々当たり前の誰もが予想する状況になると今のところ予想している。 PC市場と共食いにならないようにタブレット市場に進出するというのは口で言うのは容易いが、 ビジネスモデル的に見て実際に実行するのには極めて高い決断力・判断力が必要だからだ。 「言うは易く行うは難し。」の典型例だね。


1)
VistaにおけるXPとの互換性問題でさえビジネスユースでは大いに嫌われたのである。 正確に言うとこれはOSの違いが原因ではない場合がほとんどなのであるが、 たとえそうでも「互換性に自信が持てない。」という主観だけでもビジネスユースでARM版Windowsは嫌われる可能性が高い。 (逆に言うとARM版Windowsを普及させるためには、技術的互換性問題ではなく、むしろ顧客心理としての主観的な信頼度を高める工夫が重要だと思う。)