今の秋葉原には壁がある。(あえてi7-920を買った背景。)   

2010年1月12日



☆視聴率争奪戦の背景で楽しむ正月。   
まずはいつもの余談から。

今年のお正月は雪の関係で元旦〜2日とでかけられず3日に初詣。 初詣の後は自宅に帰ってコタツで一息。 すると、実家のテレビがNHKの大河ドラマ「龍馬伝」になっていた。

当サイトは大河ドラマはあまり見なくて、番組が戦国物の時だけ時々見るという感じである。 戦国物の時だけ見るというのは、マニアと言うほどではないが戦国好きの一面があるから。 それに、なんと言っても当サイトは愛知県出身者だしね。 (織田信長・豊臣秀吉・徳川家康は全員愛知県出身者である。)

と言うわけで、高知県・鹿児島県・山口県だったら明治維新好きが多いんじゃないかな?と想像して、 これらの地方では視聴率高いんじゃないかな〜なんてぼんやりと考えていた。 ちなみに、坂本龍馬は確かに国民的人気を誇る大人物であるから興味はあるのだけれど、 戦国物ではないから今年はたぶん大河ドラマを見ることは無いんだろう。 (高知へ友人と旅行したときには有名な坂本龍馬像を大喜びで見たけれど...)

で、大河ドラマが終わったら某民放で龍馬暗殺の謎解き番組をやっていた。 同じ龍馬ネタと言うことでついつい見てしまった。 (本当は実家に持ち帰ったまじめな本を読むべきなんだろうけど...いや、相変わらず三日坊主のダメ人間である。) で、これを見てフッと思ったのだけど...

この番組は龍馬暗殺の謎を仲間の裏切りによる殺害という仮説で説明しようとしていたのである。 その過程で龍馬の立場を説明していたのだけど、それはイギリス系武器商人のエージェントとして スパイ活動をしていたというもの。

この番組、ある意味とてもおもしろかったね。

いや、番組自体は各種ある龍馬暗殺説の一つに過ぎず、しかもかなり異説の類である。 これが正しいかどうかは明治維新マニアではない当サイトにはわからない。 龍馬が陰の実力者に操られる凡人っぽく描かれるのには、 高い評価を得る人物には必ず通説を否定する異説が出るという背景が背後にある。 (通説では名将となっている山本五十六を凡将扱いする異説があったりするのと同様な状況。) 正直な話、番組自体はそれほどおもしろいものではなかった。

では何がおもしろかったかと言うと、それは番組の背景だ。

NHKの大河ドラマでは主人公を悪人扱いする事はほとんど無い。 だから、龍馬伝でも通説に基づいて維新の基を築いた大器として描かれると思われる。 で、この番組の初回放送直後にぶつける形で龍馬を非常にみみっちいスパイとして描く番組が放送されるのが偶然か? と考えるとおもしろくてならないのだ。

前回の大河ドラマ「天地人」は直江兼続が主人公だった。 正直、かなりの戦国マニアでしか名前を知らない人物である。 だがこれで平均視聴率は20%ほど。 子役の加藤清史郎がこの番組で大ブレークしたのは芸能界情報に疎い当サイトですら知っている有名な逸話である。

直江兼続でこの視聴率ならば、歴史人物人気No.1を誇る龍馬が主人公だったらどうだろう?  民放がNHKの視聴率に恐れを抱いたとしても不思議ではない。 こうなると、大河ドラマ初回放送直後に放送されたこの番組で龍馬に対して「スパイ」とか「エージェント」という 人物を貶めるフレーズが頻発する背景も容易に想像できる。

どうですか? 視聴率争奪戦の背景、非常におもしろいと思いませんか?

☆あえてi7-920を買うのは趣味だから。   
と言うわけで、本題へ。 今回は延々と先送りを繰り返してきたフラッグシップ更新ネタである。

このフラッグシップ更新。 リーマンショックからの復帰を宣言した意味もあって購入した。 最近は巣ごもりとか何とか言われていて倹約・節約志向が流行のようだが、 合成の誤謬を考えればこれは愚策の極み。 正しくは好景気時にしっかり貯金して、こういう時こそガツッと消費すべきなのである。 (好景気の時に貯金する洞察力が無いから、リーマンショックになって慌てて貯金しようとするわけだ。)

っと、まぁ偉そうなことを言っても当サイト自身がリーマンショックを見抜く洞察力は正直なかったわけ。 人のことをとやかく言う権利は無いのだった。 だけど、幸いPCを更新できる程度のボーナスは出たので、ここは有言実行である。(リーマンショック以前と比べれば大幅減額だけどね。)

最大の楽しい悩みはCPUに何を購入するか?だったね。 ここで書いたとおり、何にするか楽しく悩んでいた。

久々にフラッグシップPCを更新した。
用途を考えればi7-860の方がずっと正しい選択だけど...あえてi7-920を購入。

で、結局購入したのは...i7-920である。

他にマザーはGIGABYTEのEX58-UD3Rを購入した。 これは消費を宣言したもののボーナス激減だからやむを得ない。 なので、廉価版でもコストパフォーマンスの良さそうなものから選択した。 価格が安いのは電源のフェーズが8フェーズと少なめだからだが、 そもそも8フェーズでさえオーバースペックっぽい面があるから大丈夫。

Pentium4の時代、当サイトが「2フェーズでは少ないから3フェーズ以上のマザーを買った方が良い。」と書いただけで 「フェーズ数が多いマザーが良いというのは間違いである。」なんて某PC雑誌に書かれたことがある。 その状況を思い出せば、今のPC雑誌のフェーズ数に関する記事はいったい何なんだろうね。 24フェーズとかが高品質マザーとして紹介されていたりするが、当サイトにはオーバースペックとしか思えない。 それにしてもフェーズ数の過剰を指摘する時代が来るなんて、当時を思い出せばまさに隔世の感がある。

ディスクは以前の主張通りハイブリッドドライブ方式である。 以前SSDの評価用に買った64GB-SSD(PE64GS25SSDR)にOSを搭載しデータ用は1TB-HDD2台でミラーリングして保護してある。 プチフリが懸念されるコントローラの古いSSDだけど、狙っていたintel製は残念ながら売り切れだったのでやむを得ない。 まぁ、売り切れは人気のintel製だけで、普通のSSDは山のように在庫があったわけだけど...

CPUファンが純正品ではないのは、冷却性能アップを狙って...と言うわけではなくて、 マザー拡販のためか同じGIGABYTE製のCPUファンだと超激安価格で買えたから。 メモリは当然3ch分搭載。通常用途でこの高バンド幅が生きる用途は少ないが、承知の上である。 その他、電源、グラフィック、ケース、DVDなどは古いマシンからの流用。

で、まず最初に言っておきたいのは、当サイトの用途ではi7-920は正しい選択ではないということである。 通常のPC用途では3chメモリの強力なバンド幅が生きる用途はほとんど無いし、LGA1366ソケットはマイナー気味。 Turbo Boostの効果面でも同系列の後発CPUに負けているし、消費電力も高い。 同一予算ならばi7-920よりもi7-860の方が良い場合がほとんどだろうし、 価格性能比で言えば最大のお勧めはi5-750である。 (今買うのならば、Calrkdale系のGPU内蔵タイプもあるのでもっと悩むことになる。)

つまりこれは、最適ではない事を承知の上であえてi7-920を買ったのだ。

なぜかというと、それは趣味だから...としか言いようがない。 実利で考えれば正しい選択ではないのだから... あえて言うならば、一つは初志貫徹の意味。 もう一つはサーバー用途やHPC用途でしか生きないとは言え、 高いバンド幅がLGA1366系i7最大の強みなのだからこれを試してみたかったというもの。

☆「ガラパゴス化」する秋葉原。   
で...この自分自身の購入選択を振り返って思うのだけれど、 もはや秋葉原需要は一般PC需要の先行指標では無いと考えた方が良いのではないかな? (ちなみに、当サイトがPCパーツを買ったのは秋葉原ではなく静岡でだが、ここで言う秋葉原とはPCマニア市場の象徴としての意味である。 地理的な意味ではないので、その点はご注意ください。)

今までの秋葉原というものは一般PC市場の試金石であった。 その昔にはアンテナショップ的なものもあったりして、 秋葉原需要は一般需要より一歩進んだ先行市場だったのだ。

だから、秋葉原での売れ行きを観察することはPC業界にとって重要な情報収集源だったし、 事実、まだCPUが486とかだった頃には秋葉原でマザーボードを売って 大口顧客確保のためのトレンドを探っていたマザーボードメーカーがあった位である。

ところが、ここ1年ほどの傾向を見るにつけ、一般市場の先行指標としての秋葉原... という意味合いがどんどん無くなってきているのではないかという印象を感じる。 PCマニア市場が一部の特殊市場化しつつあるのではないかと思えるのである。 (今流行のフレーズを使うならば、いわば「ガラパゴス化」である。)

たとえば、SSDはわかりやすい例だろう。

SSDは一昨年秋葉原で大ブレークした。 「SSDは一度使えば絶対にやめられない。」と言われ、飛ぶように売れまくった。 SSDを搭載したネットブックも売れに売れ、 去年にはさらに盛り上がること必至のジャンルと言われた。 PC雑誌でも大絶賛され、PCマニアのブログでも「数年内にHDDは消えて無くなる。」 なんて意見が次々と書き込まれたのである。

ところが、2010年現在の時点で家電量販店に行ってみるとSSD搭載のネットブックは店頭に置いてない。 本当の話、SSD搭載モデルを探し出すのが大変な状況なのである。 (ここ静岡では店舗規模が首都圏ほど大きくないという事情があるにせよ、 多くの場合で1店舗で1機種置いてあるかないか程度。3機種以上見つけたことは一度もないし...) つまり、PCを実用用途にしか使わない非PCマニア層ではSSDはその存在すら忘れ去られようとしている状況なのだ。

また、PCマニア間でブレークした製品は近い将来一般PCでも普及するという先行指標の役割が担えていない製品がもう一つある。 それはクアッドコアCPUである。

マルチコア否定派最右翼である当サイトですらi7-920を買ったわけだから、 当サイトのフラッグシップは今では(Hyper-Threadingを含めれば)8スレッド対応PCとなった。 つまり、PCマニア層ではクアッドコアは当然の時代である。 とすれば、クアッドコアはそろそろ一般PC需要としても拡大普及期に入っていなければおかしい。

ところがである。 非PCマニア層の一般需要ではクアッドコアは全然売れていないのだ。 しかも、売れていなくても少ないなりに需要の増加が見られれば良いのだけれど、 徐々に売れつつあるという状況でもないようだ。

その結果、秋葉原需要だけが飛び抜けてハイスペック需要となっており、 一般市場との乖離は広がる一方なのである。

☆乖離するPCマニア需要と一般PCユーザー需要。   
この乖離はなぜ起こったのか...という点を考えてみた。

当サイトの意見は、自作PCが「趣味と実益」の段階から「完全な趣味」の段階に入ったからというものである。 その背景には、CPUが進歩しすぎてもはやその性能を実際に必要とする人が急減しているという事情がある。 ムーアの法則が実需拡大ペースすら追い抜いてしまったという考え方だ。

たとえば、ずいぶん昔になるが当サイトがフライトシミュレータにはまっていた頃には 自作PCはゲーム機として実益上の観点からもトップクラスの性能である必要性があった。 だから、愛車プリメーラを買うときに複数ショップで競合させて値下げ競争に持ち込み、 その際に得た差額で当時8万円近くしたPentium-166MHzを買ったのだ。

そして、これは当サイトがCeleron-266MHz(懐かしのSlot1です。)を400MHzにOCするまで 実用の意味を外すことは一切無かった。 当時はCPUの性能が実需に対して劣勢だったので、常に速いCPUを買い続ける意味が十分にあったのだ。

そしてもちろんPentiumマシンやSlot1マシンはPCマニア需要から少し遅れる形で一般PC需要としても売れた。 当時は秋葉原需要が一般市場の先行指標として機能していたのである。

ではなぜ当サイトがi7-920を買ったのかというと、実需として性能上このCPUが必要だから と言うわけではない。正直な話、現行で使っているCeleron-M 440でほとんどの場合十分だし、 今までのフラッグシップであったCore 2 Duo T7200ならばすべての用途で十分だった。

確かにi7-920はCore 2 Duo T7200より速い。 しかし、Core 2 Duo T7200ならば実用上非力と感じたことはタダの一度もない。 要するにi7-920は確かに速いけれど、その性能が必要な状況はほとんど無く、 結局は趣味で買ったとしか言いようがない状態なのだ。 (楽しかったから十分満足しているけれどね。)

「趣味と実益」が「趣味だけ」になれば一般市場の先行指標にならない事も十分に説明できる。 たとえばオーディオマニアには今でも真空管アンプが使われているそうで、 秋葉原に行くとオーディオマニアショップに真空管アンプが高値で売られていたりする。

しかし、だからといって今後真空管アンプが一般市場でバカ売れする時代が半年後に来るかというと、 だれもそんな事は考えない。要するに真空管アンプは趣味用としては良くできているが、 一般市場向けとしては実用性に欠けるからである。

i7-920は確かに速かったから真空管アンプに例えるのは失礼かもしれないけれど、 エンコードを多用したりマルチスレッド対応ゲームを楽しむ方々を例外とすれば、 おそらく4つのコアを日々酷使しまくっているという人はほとんどいないハズである。 実際、当サイト自身がガジェットにCPUメータを貼り付けて負荷の状態を常時観察しているのだけれど、 対応アプリ抜きで4つのコアがフル負荷になった事がどれくらいあっただろうか?

と言うわけで、必要であろうと無かろうと高性能であれば買ってしまうPCマニア需要は、 一般市場の先行指標として機能しなくなったと当サイトでは考えている。 従って、秋葉原需要も一般市場の先行指標ではなくなりつつあるのだろう。

☆救いの道は現状認識にあり。   
その意味で当サイトが考える今もっとも重要な問題は、 市場ニーズと技術シーズの乖離からの脱却だ。

確かにマルチコアによる性能向上は潜在能力を高めるという意味では技術的に継続しやすい面がある。 これにしがみつくのは技術的にはわからないわけではない。 しかし、PC用CPUベンダーに求められるのは、市場ニーズが秋葉原と一般市場では 異なってしまったと言うことを素直に認め、市場規模が大きい一般市場に適合した製品を作る べきと認めることであろう。

幸い、その兆候はある。 それは、直近で発売開始となったGPU混載CPU、つまりi5-670〜i3-530といったCPUへの方向転換である。

これらのCPUはネイティブでのGPU混載ではなくPentium-PROと同様にMCM方式である。 しかし、この流れから将来的にはネイティブGPU混載により 真の意味でワンチップ化の進んだSandy Bridgeへと進化していく。

当サイト自身がGPU混載をずいぶん以前から主張していたことが背景にあるとは言え、 当サイトはこの流れを高く評価する立場である。 特に、多くの一般ユーザーにほとんど意味のない単純なマルチコア化の進行、 という方向性から脱却した意義は非常に高いと言える。

Calrkdale系のCPUはまだ発展途上のMCMだから本当の意味での混載ではないが、 おそらくSandy Bridgeはヒット商品になるのではないかな?と予想している。 特に廉価版となるデュアルコア版は数量的にはかなりのヒット商品になるのではないだろうか? (これらが発売されるようになったら、GPUを混載しない単純なクアッドコア、オクタコア系と、 これらのCPUの販売量比率には特にご注目頂きたいと思う。 これを見れば当サイトの予想が正しいかどうか有無を言わさずはっきりするだろう。)

逆にAMDはFusionで構想段階ではintelに先行していながら、 実機開発でintelに追い抜かれてしまったのは非常に苦しいと考えている。 経営状態から見て開発投資増額が難しい状況ではあるが、 ちょっと無理をしてでも構想通りのスケジュールでやるべきだったのでは? と考えているのだが...

ちなみに、ここでも秋葉原需要と一般需要の乖離が起こるだろうと予想している。 つまり、GPU混載系CPUはGPU性能から見てPCマニアがたくさん購入するとは思えない。 おそらくはGPUが非力だ何だと言われてPCマニアからはあまり良い評価は得られないと思う。 しかし、それはマニアだからこその評価。

そんな評価をあざ笑うかのように一般市場でSandy Bridgeは売れると当サイトは予想する。 その理由は混載によるトータル消費電力の抑制とコストの削減効果だ。 特にトータルコストの低減は非常に強力な武器となるだろうと考えている。1)

秋葉原にはベルリンの壁ならぬPCマニアの壁が出来つつあって、その中と外とでは需要動向が異なってきているというのが 今回の当サイトからの意見表明である。 秋葉原はいわゆる需要の「ガラパゴス化」により孤立化傾向にあり、 もはや秋葉原需要は一般PC市場の先行指標的存在ではなくなりつつあると思う。 PC系ベンダーは秋葉原での売れ行きを一般市場の先行指標と思って耳を傾けすぎたりすると、 おそらくは市場動向を見誤って日本製携帯電話と同じ製品状況になってしまうのではないだろうか?


1)
ちなみに、いくら低コストと言ってもAtom系はPC需要の中心点としては若干性能不足であろう。 PC用に使われたとしても現段階でのカバー範囲はローエンド以下に限られると思う。 Atomの性能が強化されればいいが、おそらくその際には Atomのメリットである低消費電力性が失われる可能性があると思っていて、簡単な話とは思えない。

目標性能が同じ場合、ローエンド向けCPUの性能を高めた製品とハイエンド向けCPUの性能を落としたCPUで コストパフォーマンスや消費電力がどうなるかは非常に難しい問題のようで、 当サイトもまじめに考えてみたがよくわからないというのが実情だ。 誰か専門家が記事を書いてくれるとありがたいのだが...