ハイブリッドカーから学ぶもの(ハイブリッドドライブは過渡期の技術か?)   

2009年7月20日



☆ギネス認定・世界最大の陶製狛犬だそうで...   
まずはいつもの余談から。

この3連休は週末\1000のETCを利用して愛知の実家に帰省した。 朝の7:30に静岡を出て、渋滞は音羽蒲郡〜豊田間で約15km。 通常より+30分の所要時間。

渋滞はさらにひどくなる様な傾向だったため、ここは東名高速を避けるのが良い選択と推測。 という訳で、渋滞回避のためちょっと遠回りだけど豊田ジャンクションから愛知環状自動車道を利用してみた。

この愛知環状自動車道、ETC週末\1000値下げが始まる前は常時ガラガラの閑古鳥路線との地元情報なので、 東名高速の豊田〜名古屋よりは断然走りやすいだろうとの判断。 走行車線は東名高速よりは山深くて、周囲はちょっと深めの里山となっている。 車が少なければかなり快適なドライブが楽しめるラインで、 流しドライブには最適かもしれない。

しかし、今回は渋滞とまでは言わないまでもそこそこの走行車数となっており、 ゆったりまったりドライブにはほど遠い。 高速を走り慣れていない人がトロトロと追い越し車線を低速走行しているので 所々で行き詰まってしまう。 高速道路は走行車線と追い越し車線に分かれているとは思っていないようで、 2車線併走道路と思っているかな?

ただ、閑古鳥の行政・土建屋癒着道路状態よりはマシな訳で、 確かに値下げの効果を確認できた。 こんなローカル路線でも価格さえ安ければ意外に走行需要はあるんだね。 (ちなみに、低価格の重要性が今回のメインテーマだよ。)

で、せっかく愛知環状自動車車道を使ったのだからと、東濃地方のローカルぶらぶらドライブを楽しんでみた。 行ったのは土岐市の田園風景見物。東濃地方と言えば美濃焼の本場で、ほどよい田園風景が続くところ。 とても住みやすそうに見える。

道の駅・土岐美濃焼街道から見る東濃の田園風景。
道の駅は国土交通省の仕事としては珍しくいい仕事をしていると思う。

余談だけど、国土交通省と言うと土建癒着の典型と言われ、その多くの事業が典型的税金の無駄遣いと言われている。 (当サイトも同感である。)だが、「道の駅」は数ある税金をドブに捨てる事業の中では例外中の例外で、 このアイディアは国民向けの良い投資になっていると思う。 今回は高速利用だが。ご存じの通り当サイトは長距離移動も下道経由が多い。 トイレが利用できるだけでも大変ありがたい施設なので、 移動中の一休みどころとしていつも事前に場所を把握してからドライブに出かけている。

今回の写真は、道の駅・土岐美濃焼街道から撮影したものだ。 ここ土岐美濃焼街道では地元が美濃焼の名産地なので、当然ながら美濃焼がたくさん販売されていた。 これらの陶磁器産業は日本得意のセラミック系ハイテク産業の地盤となったものである。

世界最大の陶製狛犬。
ギネスブック認定なのだそうで...

そして、ここから南東へ5〜6kmほど行くとそれを象徴するようなものがある。 が...ここまで来たらデジカメの電池が切れてしまった。 なので当日の写真が無く、残念ながらこれは昔行ったときの写真だけど、これ世界最大の陶製狛犬なのだそうである。 (ギネスブック認定済みとのこと。)

焼き物というとセラミックだが、ハイテク系セラミック産業は日本が新興国にあまり追いつかれていない 数少ないハイテク分野。 セラミック産業は半導体と異なり現象が複雑で理論的な解明が進んでおらず、理論で物性を予測することが難しいジャンル。 このため、現場で腕を磨いた熟練工無しにはまともな製品が作れない。 その底力の底流にあるのが各地に存在する陶磁器産業の伝統というわけ。

固体物理学の分野では三大ジャンルとして半導体・誘電体・磁性体という分野がある。 (先生によっては、これに超伝導体を加えて四大ジャンルとする方もいらっしゃいますけど。) 日本は今やハイテク系で凋落の一途という感覚をPCマニアの方々はお持ちだろうけれど、 それは半導体分野だけを見ているからそう見えるのだ。

と言うわけで、じつは誘電体・磁性体の多くは日本人が発明し、産業としてもいまだ日本企業が世界を席巻している分野なのだ。1) 誘電体はセラミックコンデンサ、磁性体はインダクタや永久磁石として、地味だけどエレクトロニクス産業には欠かせない 縁の下の力持ちなんだね。

☆SSD-HDDとエコカー開発の類似性。   
という訳で本題へ。 今回はSSDとHDDの関係について考えてみた。

さて、SSDとHDDはライバル関係にあるというのがPCマニアの標準的な見方であるという意見に異論のある方はほとんどいらっしゃらないだろう。 当サイトは過去にここで書いたように例外的立場で、 もともとライバル関係ですらないという考え方。 直接に競合する段階には到達すらしていないという主張だ。

余談で高速道路の話を書いたので、これを車に例えてみよう。 HDDはガソリン車、SSDは電気自動車あるいは燃料電池車と考えるとわかりやすい。

SSDの登場でHDDは駆逐されるという考え方は、 初期の電気自動車あるいは燃料電池車に対する考え方と発想がきわめて類似している。 燃料電池車という概念が一般的になった頃、 ハイブリッドカーは過渡的な技術として短期に終息製品となるという意見が多かった。 考え方としては、これと同じである。

確かに長期の技術展望で見ればこの考え方は正しいと当サイトも思う。 ハイブリッドカーはエコカーとしては永遠に続く概念ではない。 いずれはハイブリッドカーから 電気自動車・燃料電池車の時代になる事には(定性的には)間違いない。

ただし、定性的な技術動向だけ見て時間感覚を見失うと判断を誤ると言うのが今回の話題。 その典型例が現在のハイブリッドカー・ブレークである。

トヨタのプリウス、ホンダのインサイトのバカ売れぶり。 これが今自動車業界の一大トレンドとなっている事はカーマニアではない当サイトですら知っている。 逆にカーマニアがPC自作業界におけるSSDの大ブレークを知っているかというとかなり疑問。 という点を考えれば、ハイブリッドカーによるトレンド転換はSSDの比ではない一大転換点である事がわかる。

しかし、先に述べたとおり、初代プリウスが出たときには ハイブリッドカーの時代は過渡期のみという意見が多かったのだ。 定性的には燃料電池車の方が潜在ポテンシャルが高いし、よりエコだからだ。

しかし、ハイブリッドカーが過渡期の技術と見る向きは今やかなりの少数派となった。 事実、短期的な経費節減による経営立て直しに専念した日産は、 ハイブリッドカーの開発費用を大幅に削減したためハイブリッド技術競争で完全に負け組化。 当然、経営もジリ貧となり、一時は高く評価されたゴーン効果ももはや神通力は無い。 (ゴーン社長の手法は経営の短期立て直しには有効だが、 長期の技術開発ではトヨタ・ホンダの息の長い日本型技術開発経営の方が優れていると思う。 ゴーン社長も経済誌も日本型経営を時代遅れと舐めていたためトレンドを読み違えた。 その結果が、現在のハイブリッド技術格差なのだろう。)

今や世情は「ハイブリッドカーにあらざればエコカーに非ず。」という状況である。 ハイブリッド技術は決して過渡期の技術ではなく、 今やハイブリッド技術を有しているかどうかが社運を左右する存在になったのだ。

さて、これと同じ事をSSDとHDDの比較で考えてみよう。 「HDDはもはや負け組。これからはSSDの時代。」 という意見がPCマニアの主流意見であるが、 当サイトはこの意見に異を唱えたいと思う。

当サイトに言わせれば、それは時間感覚を見失った考え方であると思う。 いずれ最終的にはそのような時代が来るとは思うが、 短期間で一気にSSDへ置き換わるかというとそれはあり得ないと考える。 要するに、燃料電池車の試作車ができた段階で、「これからは燃料電池自動車の時代。 ガソリン車はもう時代遅れ。ハイブリッド車は一時的な製品。」と主張するのと同じに思えるからだ。

では燃料電池車は急速に普及したかというと、一台数億円という高価格が災いして 商品の体をなしていない。SSDも事情は同じで、HDDの20倍近い容量単価の高さが災いして 現段階ですら秋葉原需要(PCマニア需要)に止まっており、秋葉原の壁を超えて急速に普及する段階ではない。

しかも、ネットブックに至ってはSSD化が進行するどころか逆にHDD化が進行中なのだ。

☆ハイブリッドカーの技術開発から学ぶもの。   
では、PCマニアがハイブリッドカーから学ぶものがあるとすれば、 それは何だろうか?

以前掲載したとおり、 当サイトはまさに「ハイブリッド技術」そのものであると予想する。 つまり、OSを搭載した小規模低容量のSSDをシステムドライブとして搭載し、 デジカメ画像や動画などを扱うデータドライブとしてHDDを搭載する複合機だ。 (ハイブリッドドライブと言うとHDD自体に一部フラッシュメモリを搭載したドライブを意味する場合が多いが、 ここではハイブリッドドライブを上記の複合ドライブ方式として定義させていただくこととしたので、その点ご注意ください。) SSD側に搭載するのをOSとユーザーにとって使用頻度の高いキラーアプリに限定すれば、 廉価低容量SSDでもSSDの高速性をかなりの部分生かせると考えている。

ハイブリッドドライブ方式は一見するとSSDが大容量化した段階で消え去る 過渡期の技術のように思えるかもしれない。 しかしそれは、燃料電池車の潜在能力に引きつけられるあまり 時間感覚を見失ってハイブリッドカーを過渡期の技術と見下した、 (トヨタ・ホンダ以外の)自動車業界の過去の判断ミスと同様に思える。

燃料電池車も電気自動車も、その最大の問題点は「価格が高い。」という点にある。 それはまさにSSD最大の問題点でもある。 (ハイブリッド車もガソリン車に比べれば高価だが、 燃料電池車や電気自動車に比べれば安い。) 価格が高いという問題点はデメリットとしては最強に近い。 厳然と存在する秋葉原の壁、つまりPCマニア市場の壁を超えられないからだ。

では、SSDは大幅な低価格シフトを実現できるのであろうか?

これに対する当サイトの見解は、 NAND型フラッシュは容量単価の下落ペースを維持できないというのが、 当サイトの予想である。無理すれば容量自体は増やせるかもしれないが、 価格と信頼性が維持できない。特に信頼性は重大問題である。

SSDの信頼性はもはやHDDを上回ったという意見がある。 当サイトはこれがウソとは思わないが、 信頼性が問題になるのはむしろこれからとプロ間では指摘されている。 微細化・多値化が進む場合の最大の問題点は書き換え可能回数の低下であるからだ。

当サイトは容量単価の低下ペースは鈍るという意見だけど、 書き換え可能回数の低下という品質問題を放置して解決しようとしなければ 容量単価の低下ペース維持はおそらく可能だろう。

たとえば、NAND型フラッシュメーカーはSSDの次の市場としてBlu-rayの置き換えを宣伝している。 一般的にはこれは容量単価下落ペースが維持できるので、 その分新規市場を開拓しなければならないためと思われているだろう。

けれど、当サイトの考え方はちょっと違う。

おそらくその最大の要因は、光ディスクの置き換えならば書き換え回数が SSDほど必要ではないので、容量単価下落ペースを維持した場合の 書き換え可能回数低下がこの用途ならば あまり問題にならないという要因が最大の理由と考えている。 要するにSSDの使用に耐えない低書き換え可能回数なメモリでも、 光ディスクの置き換え需要ならば耐えられるからだろう。 この場合、光ディスク置き換え用メモリの価格は急速に低下していくが、 SSDの容量単価下落ペースはこれに比例して下落しないと思われる。 (書き換え可能回数が大きいメモリは多値化も微細化もワンランク落とすか、 あるいはエラー訂正機能を強化してそちらに回す記憶容量を増やす必要が生じるから。)

あるいは、高価だけど高信頼性な高品質SSDと、 低価格低信頼性の廉価SSDに二極分化するかもしれない。 低価格SSDでは書き換え回数をワッチして、そろそろ寿命が...という段階になったら ドライブを買い換えてOSやデータを移し替えるようにOSが警告を出す。 そんな方式になるのではないだろうか?

問題は、この信頼性低下が容量単価下落が進めば進むほど深刻になることである。 フローティングゲートという基本概念に基づく問題点なので漸近改良では突破が難しく、 何らかのブレークスルーが成し遂げられない限りSSDの価格下落ペースは維持できないと考えている。 SSD用途に限れば黄(ファン)の法則は中期的には破綻の危機に直面していると考えるのが妥当だと思う。

では、HDDはどうか?

HDDは容量単価下落ペースが今しばらくは維持できることがはっきりしているらしい。 長期的な技術展望を予測するのにはノーベル賞級の頭脳が必要だから 当サイトの能力では全然予測不可能だけど、 中期までならば容量単価は現在のペースで低下していく。 もはやこれ以上容量が増えても使い切れないという問題点意外には、 大きな問題点は無い。

しかも、最近はネットブックでさえHD動画の再生がどうのこうのと言われているのである。 当サイトはハイビジョン番組を録画する様になったが、 250GBでは瞬殺だった。以前SSDとの比較用に買ったHDDで近々1TBを追加予定だが、 これも単なる時間稼ぎでしかない雰囲気だ。(早く追加のNASを組まねば...) つまり、現状では再生のみがメインだから低容量でも問題ないが、 もしネットブックでもHD画像を保存するようになったら、 将来の容量拡大を見越してさえSSDでは完全に破綻してしまう。 (先ほどBlu-ray置き換えの件を書いたけど、HDD置き換えの場合はBlu-rayディスク1枚、2枚保存できれば良いわけじゃないからね。)

つまり、今後今しばらくは去年のSSDの急速な普及期とは逆に、 SSD側が劣勢に立たされる時代になるというのが当サイトの予想である。 そして、仮にSSD化が予想外に進行したとしても、 HD動画の取り扱いが通常用途として一般的に普及すれば SSDからHDDへの逆パラダイムシフトすら発生する可能性があるのだ。

SSDはHDDとの容量単価比較という意味ではここ数年は劣勢のままと予想され、 また容量需要が200GB前後で伸び悩みという現状は動画の保存状況の変化次第で いつ如何様にも崩壊する可能性を秘めている。 PCマニアは性能が良ければ何でも許してしまう傾向があるが、 一般市場では価格の影響を無視しては市場動向は読めない。 価格は安いが性能もその分低いAtomがintelの大ヒット商品になったことは PCマニアにも周知の事実だ。

しかし、PCの性能を一番左右するCPUにさえ「価格が安ければ性能は妥協する。」 という判断をしたネットブックユーザーが、 SSDに対してのみ「これだけ高性能ならば高価でも気にならない。」 などという判断をすると本気で思いますか?  これは当然書くまでもない事で、 容量単価が安いというHDDのメリットを決して見くびってはならないと思うのだ。

という訳で、SSDがHDDを置き換えるという普及の仕方は世間一般のPCマニア予想より かなり遅くなると考えている。 しかし、SSDを使ってみて高速性で大きなメリットがあるのも事実である。

この場合参考になるのが、話を最初に戻してハイブリッドカーと同じ ハイブリッドドライブ技術と考えている。 SSDの高速性はOSをSSDに搭載するだけでもかなりの効果がある。 もちろんすべてをSSDに移し替えれば一番だけど、それには容量単価の壁がある。 OS+使用頻度の高いアプリ程度ならば32〜64GBもあれば十分で、 これなら高価なSSDでも近いうちに予算的有効射程距離内に入るだろう。

高速性というSSDのメリットと低容量単価というHDDのメリットを組み合わせて価格と性能のバランス点を探る技術。 ハイブリッド車と同様にこれを単純に過渡期の技術と見るのは短絡的と考えている。 潜在的に優位な製品が出現すると、直ちに「もう××の時代じゃない。これからは○○の時代だ。」という主張が必ず出てくるが、 これは時間感覚を見失った判断なのではないだろうか。

要するに、過渡期の技術は無条件で短期間で収束する技術との安易な推定を下さないこと。 つまり、ハイブリッドカーの技術を過渡期の技術ではなく意外に長く続く技術と見たトヨタ・ホンダの先見の明に学ぶことが 重要だろう。ハイブリッドドライブ方式の時代は意外に長く続くのではないだろうか?



1)
科学的にも産業としても最も重要な誘電体はチタン酸バリウムという強誘電体であるが、 これは戦時中にアメリカ、ロシア、日本の研究者によってそれぞれ独立に発見された。

磁性体はさらに日本人研究者の寄与が大きい。 KS鋼、MK鋼といった磁性鋼板、現在も廉価磁性体の主流であるフェライト、 2種類あるサマリウム−コバルト系磁石のうちで2-17系、 そして、現在世界最強のBH積を誇るネオジウム−鉄−ボロン系磁石。 歴代トップの磁性体ほぼすべてを日本人研究者が発明している。

「日本人は基礎研究が苦手で他国の物まねで経済発展した。」という批判は、 こと誘電体・磁性体に関する限り、まるで当てはまらないのだ。