技と匠の炎を見た。(2009年年頭挨拶)   

2009年1月3日



☆今年の帰省は木曽路経由。   
皆様、新年あけましておめでとうございます。 本年もよろしくお願い申し上げます。

今年の帰省だが、せっかくスタッドレスタイヤを新調したのだから 長野経由の下道ぶらぶらドライブにしてみた。

下道ドライブならば高速道路料金が大幅に浮くし、 高速道路料金は景気回復に全然貢献しないどころか 輸送業者の足かせとなっている。 官庁天下り型無駄出費の典型例だろう。

税金泥棒の懐を暖める位ならば、これを浮かせてマザーの1枚でも買った方が景気回復には100倍も効果的。 しかも、リーマンショックによりガソリン代は大幅に暴落し高騰前の水準に戻った。 条件は整ったというわけだ。 (地球温暖化抑制には鉄道の方が効果的と言われれば、ちょっと耳が痛いが...)

国道20号経由で走るが、相変わらず長野経由は道筋が楽しくていいね。 気分良くドライブを楽しんで昼前には諏訪湖手前の茅野市へと到着した。 諏訪湖手前から愛知県へ向かう経路は杖突峠を超えての伊那谷経由と、 塩尻峠を越えての木曽谷経由の2種類あるが、 今回はスタッドレス新調ということで凍結路面への信頼度が増したので久々に木曽谷経由としてみた。 (冬季はほぼ伊那谷経由だったので冬の木曽谷ドライブは初めてである。)

幸い路面の凍結は無くて、木曽の山深い味わいを楽しむことができた。 奈良井近くで両親へのお土産に木曽の銘酒「木曽の桟」「酸茎(すんき)漬け」を購入。 木曽の桟は辛口ながらすっきりしたあとくちのお酒で、燗をつけても旨い。 そして、酸茎漬けは塩を一切使っていない天然乳酸発酵が特徴のお漬け物で、 塩分が気になる人でも食べ放題。古くからある地場食品だけど、現代的なヘルシー嗜好にも合っている。 これはBSハイビジョンで開田高原の紀行番組をやっていたときに一度見たことのある地場食品なんだけど、 旨そうだったので速攻ゲットしようと狙っていたのだ。

木曽は開田高原名物の酸茎(すんき)漬け
鰹節と醤油とマヨネーズを少しあえて食べるともう最高。
乳酸菌発酵食品でビタミンが豊富な上に塩分ゼロなのでお年寄りにもグッド。

それにしても、そもそもあのガソリン価格高騰とはいったい何だったのであろうか?

当サイトが情報源として一番信用していないソースに経済アナリスト情報があるが、 やはりというか何というか、ガソリン価格高騰に関しては最高騰期に 「石油はもはや枯渇しつつある。」という論調が経済誌に出てきて提灯記事に嫌気がさしたものである。

今この段階でも「石油はもはや枯渇しつつある。」という主張を掲げるライターが居たならば、 (当サイトとは見解が異なるとしても)信念の現れとして評価しても良いと思っている。 だが、ガソリン価格が下落を始めるとほぼ同時にこのような見解は経済誌からパッタリと姿を消してしまった。 やはり提灯記事なのか、あるいは結果から原因への逆転した因果関係を見ていたのであろう。 (前者ならば卑怯だし、後者ならば当サイト以下の無能である。) 石油の枯渇は10年レベルの長期では正しいが、今回の急騰は明らかに投機が原因である。 石油枯渇高騰説はこの投機原因説を打ち消そうという投機筋の意向を受けた提灯記事だったのだろう。

☆技と匠の炎を見ながら考えたこと。   
というわけで、今年のたき火に当たりながら考えるシリーズは、 ちょっと趣向を変えて初詣のたき火ではなく技と匠の炎にしてみた。

先ほど経済アナリスト分析の石油価格高騰に関するバカげた逆転因果関係分析を例にしてみればわかるが、 提灯記事を見抜くには洞察力が必要だ。 (今ならば石油価格が暴落しているから簡単に見抜けるが、 価格高騰期に石油枯渇説を提灯記事と見抜くことができたかという問題である。) 自分自身の主張に対する説得力も、鋭い洞察力があればこそ説得力を持つ。 その意味で、今年は洞察力を磨くべく勉強の年にしたいと思った。 で、更新ペースが落ちた旧年中のお詫びとサービスの意味も込めて、 初詣のたき火ではなくちょっと感動的で気合いの入りそうな技と匠の炎にしてみたわけだ。

そして、新年らしい気合いの入った技と匠の炎とは...

学生時代に夢想神伝流居合を習っていた事もあって、当サイトの凝らした趣向は「関の打ち初め式」の見学である。 関というのは岐阜県関市のことで、名刀「関の孫六」で有名な刀剣の名産地である。 その関市では毎年新年の2日に初打ちの一般公開が行われていて、 刀匠が刀を鍛える神聖なお姿を拝むことができるのだ。

日本刀と言えば研ぎ澄まされた切れ味では世界でも一二を争う刀剣である。 まだサイエンスのサの字も無い時代に、固相反応による不純物制御(玉鋼)、 浸炭処理(表面硬化処理)、マルテンサイト相形成(焼き入れと焼き鈍し)、複合構造(軟鉄と鋼鉄の二重構造) といった現代でも通じるハイテク技術を経験則だけで編み出していた。 この技術水準の高さは日本刀が当時の最先進国である中国にすら輸出されていた事でわかる。

また、日本刀は切れ味だけではなく見た目も非常に美しい。 まさに機能美の象徴とも言えるだろう。 これを鍛錬する刀工の腕の冴えを見学させていただくことは、 ぼんやりとたき火に当たるより相当に気合いが入るわけ。

というわけで、初詣代わりに関の打ち初め見学に出撃。 行って思ったのだけど、これはとても絵になる世界だ。 正月ネタのこの写真だけではなく、これだけで非PCネタが一つ書けそうだ。 という訳で、ネタが尽きたときにでも息抜きネタとして再度掲載してみたいと思う。

新年は技と匠の世界・関の打ち初め式から。
日本刀の鍛錬を見学していると、こちらも気合いが入る。

刀工の技の冴えを見ながら考えたことは...

こういうのを見ていれば誰でもそんな気分になるのだろうけれど、 やはりスキルを磨くということの重要性だろう。 先ほどの提灯記事の件もそうだけど、メディアリテラシーというか、 物事の真贋を見抜くのにも洞察力は不可欠だ。 というか、そもそもそういうやる気アップ効果を狙って ここ関の打ち初めを初詣代わりに選んだわけだしね。

当サイトの場合、趣味のPCマニアサイトといえども本業を持っている訳で、 しかし、そちらの方面で一流のスキルを持っているという訳ではない。 群論の勉強もそうだけど、やはり勉強の必要性を感じている訳である。

研究開発での当サイトの位置づけとは何だろう。 まず、その分野での一流人ではない当サイトが、それでも研究開発職で食べていけるのは どんなスキルによるものなのか?

あまり自慢はできないけれど、一つは腕力。 研究職にもいろいろあるが、当サイトの専門は化学。 化学は物理や数学と違って天才肌の人物でも理論だけで物性値を予測できる要素が少なく、 最終的には実際にマテリアルを作り出して物性を実地に検証する必要性がある。

天才といえどもそれは実験の成功が100回に1回が10回に1回になるという程度のものであり、 それならば三流の当サイトでも他人の10倍実験すれば同じ実績を上げられるというわけ。 この業界に通じている人ならばわかると思うけれど、いわゆる「絨毯爆撃」という手法である。

良いか悪いかを言えば決して自慢できる手法ではないのだけど、 学会と違って企業では成果さえ出せば理論的背景は求められない傾向があるので、 これでも何とかなってしまうのである。

二つ目は、中身は浅いが多方面の分野の知識があること。 つまり、スペシャリストではなくゼネラリストとしての資質である。

当サイトよりもスキルの上な技術者は化学分野でも固体物理学分野でも電子工学分野でも社内に掃いて捨てるほど居るが、 化学分野も固体物理学分野も電子工学分野もそこそこ理解できる人物が意外に少ない事で何とか食べていけている。 たとえば化学屋で回路図が読める人はほとんどいないし、電子工学屋で材料の物性制御ができる人はほとんどいない。 こんな例は他にもあるが、(仕事の話だけにこれ以上は書けないが)妙な知識が役立つことはあるんだね。

だが...この程度のスキルでこの不況を乗り切れるだろうか?という不安は感じている。 不況となればリストラだけど、研究職では当然スキルの低い人から切られる。 逆にその企業のコア技術を支えている人物ならば、 技術流出を抑える意味でどんな不況でも首を切られる心配はない。1) 二流技術のつぎはぎが最先端分野で通用するか?と言われれば、 スキルゼロよりましだけど各分野でトップの人材よりは数段格下扱いなのだ。

という訳で、真のスキルとはなんぞや...という話になるわけだけど、 そんなわけで群論の勉強をしている訳なのだ。

☆座学ほど役に立つものはない。(ただし、役立て方を知っていればだが...)   
いつもはおちゃらけた話をおちゃらけた文体で書いている当サイトだけど、 新年なので今回はちょっとまじめな話をしてみる事にする。

では、当サイトの分野で一流の人材とは... これが、やっぱり(真の意味で)知識のある人なのだ。

学生が企業に入って大学時代の座学が役に立たないという話を聞いたことがあると思う。 逆に役に立つのは研究室に入って実際に測定器をいじって経験した事だとも... 当サイト自身も会社に入ったときはそう思っていた。 「大学の授業で学んだ知識なんて全然役に立たないねぇ。」ってね。

ところが最近は自分がまじめに勉強をしてこなかった事に強い後悔の念を感じている。 座学が役に立たないって? いやいや...

当サイトの読者には学生さんも多くいらっしゃるようなので今回はまじめに書くけれど、 座学が役に立たないなんて大ウソもいいところである。

座学が役に立たないという話は座学の役立て方を知らないだけで、 役立たせ方を知っていれば座学は本当に威力があるのである。 特に基礎が大事だ。 大学の研究室で得た知識は、座学に実地体験が追加されているので 無意識のうちに役立て方がわかっているというだけの話なのだ。

当サイトは絨毯爆撃でかろうじて首を切られない程度に成果を出しつつも、 絨毯爆撃の限界を感じている今日この頃なのだ。 仕事の話だけに詳しくは書けないが、 腕力勝負の絨毯爆撃は三流技術者の証拠であると悟ったのだ。

という訳で、遅まきながら再勉強をしている今日この頃である。 今更の付け焼き刃的な勉強でどこまで身につくかは不透明だが、 やらなければ進歩ゼロであることは明らかだ。 当サイトのコラムを読んでいる学生さんに一言アドバイスするとすれば、 もし技術者を目指しているならば座学は本当に役に立つから、 大学でも是非まじめに勉強して欲しいという事だ。

これは当サイトのPCコラムでも言える。 知識が無いこと、知識の活用法を知らないこと。 これが、ネタの発想に対する独自性を消し去っている。 どこかで聞いたような話にならないようにするためには、やはりまじめに勉強するしかあるまい。 これも最近強く反省している点だ。

追加すれば、まじめな勉強は一朝一夕で身につくものではないので 簡単に身につく小手先技の取得に走る傾向が最近の学生に見受けられる様だが、 これも完全なる誤りだろう。確かにまじめな勉強が身につくには時間がかかるが、 これは一度身についてしまえばライバルが追いついてくるのに 一朝一夕では追いつけないという事の裏返しでもある。 小手先技はライバルも小手先で簡単に追いついてくるのだ。

☆口先人を反省し、日本刀の切れ味を目指して。   
という訳で、今年の新年の目標は2つ。

一つは当サイトのネタ的には関係ないが、群論の勉強をやり遂げて配位子場理論を理解すること。 特に対称性と軌道分裂の関係を完全理解することだ。 (群論の教科書は帰省先にも持ち帰っている。) 幸い対称性に関する研究でノーベル賞受賞者が3人も出たから気分的に三日坊主にはなりにくい。 ありがたい話だね。

PCマニアサイトとしては、妄想レベルを打破するためにもう少しちゃんとした理論ベースの勉強をすることだね。 実際のCPUのベンチマークで性能を評価する方向性とは 少し違った、技術的な背景に対する考察的方向性が当サイトのテイストなのだから...

具体的に言うと、ヘネパタ本の完読(部分的には読み終わっているが...)と その筋のプロが書いた論文を月1〜2報位は読むことと思っている。 プロの論文というものは同じプロ向けに書いたものだからPC雑誌などよりレベルが格段に高く、洞察力も身につく。 今後のPCトレンドを読む上で必ずや役立つであろう。

という訳で、今回はいつものちょっとおちゃらけた書き方を避けて、 まじめに書いてみた。熱い鋼を鍛錬する姿を見るにつけて、 付け焼き刃的口先人になりかけていた事を反省だ。今回は いつか当サイトのコラムも研ぎ澄まされた日本刀のような切れ味を...という意味を込めてみたい。 趣味だってスキルアップには役立つ方向性が必ずやあると信じているからだ。



1)
過去日本のDRAMメーカーが不況時に有能な技術者を切ってしまい、その結果韓国企業が それらの方々を再雇用する事で日本企業に技術的に追いついてしまったのは有名な事実である。 後は当時の日本側経営者が投資判断のできない醜態を晒したため、投資判断力の差で負けてしまった。