今こそ財布のヒモを緩める時だ!   

2008年12月14日



☆今年の養老渓谷。(亀山湖と上総久留里城も楽しんできた。)   
まずはいつもの余談から。

前回追記で書いたとおり今年も養老渓谷に行ってきた。 今年は仕事がまたも忙しくなってきた関係で一番見頃には行けず、 ちょっとピークを過ぎていたのが残念。 ただし、そのおかげで日曜日に行ったにもかかわらず例年紅葉ピーク時に発生する大渋滞は 回避することができた。

もっともガソリンが往路分だけしかなくて、現地で入れればいいやと思っていたら 現地のスタンドの多くが日曜閉店。 行けども行けども敷地がヒモで囲われているガソリンスタンドばっかり。 燃料警告ランプも点灯して、これはマズイ...とビビリながら走っていた。

幸い養老渓谷駅前のスタンドが唯一開店していて窮地を切り抜けられたが、 これも日曜閉店だったら完全に現地の山奥でガソリンが尽きているところだったな。

ちょっとピークを過ぎていた養老渓谷と亀山湖
下から見上げる養老渓谷では青空との対比がきれい。亀山湖はバス釣りとのコラボが魅力。

今回は梅ヶ瀬渓谷(養老渓谷の一つ)が紅葉ピーク過ぎていたため軽く流して、亀山湖や上総久留里城も訪問。 特に久留里城は典型的な山城で、天守閣まで行くと標高差が150m近くあっていい運動になる。

この上総久留里城、一時期は安房里見氏の本拠地だったのだそうで、 城郭の規模こそ小さいが宿敵北条氏の城攻めを何度もはね除けた 難攻不落の名城なのだそうだ。また、築城直後にやたら雨ばかり降ったので雨城の別名がある。

天守閣付近には歴史館が整備されていて、そこの近くから城下を一望する事ができる。 写真の通り視界が開けていて、景色がとても良い。 高低差はかなりのものだが、その苦労に見合う眺望の良さだ。 (樹木に覆われている上に直壁ではないので、高所恐怖症の当サイトでも眺望の良さを楽しめるのもポイントが高い。)

里見氏の本拠地、上総久留里城。
宿敵北条氏の攻めを何度もはね除けた難攻不落の名城である。

☆時至れり! 今こそ財布のヒモを緩める時だ!   
で、本題へ...  ここ数ヶ月いい話がなかなか無い日本。 ノーベル賞ラッシュの朗報を唯一の例外とすれば、景気の悪い話ばかりだ。

当サイトの周囲も例外ではなく、製造業勤務の方々は多かれ少なかれ 不景気と円高のダブルパンチを喰らっているハズだ。 金融業界では日本が一番サブプライムローン問題の影響が少ないと言われているけれど、 トヨタの大幅減益に代表されるように日本の国際競争力を支える製造業が根幹から揺らぎ始めている。1) 早く景気を回復させないと、日本のバブル崩壊での「失われた10年」が日本を含めた世界中で起こる可能性があるだろう。

と言うわけで、読者の皆様は財布のヒモを締めていらっしゃるだろうか?  当サイトは逆に財布のヒモを緩める事にした。 これが正しい判断と思うからだ。

そちらの方面はあまり詳しくないのだが、経済学の世界では合成の誤謬という概念があるのだそうだ。 景気が悪くなったから財布のヒモを締めるというのは各家庭としては正しい判断なのだが、 消費が減って実体経済がさらに悪化し、その結果企業業績が悪化しボーナスも減ってかえって家計が苦しくなるという負のスパイラルに入ってしまう。 個人的に正しい判断でも社会全体では誤った判断となる事を言うらしい。

この問題の対策は経済学上ではケインジアンやマネタリストで対策が違うらしいが、これは専門外だし当サイト的ネタでは無いので置いておく。 庶民的なレベルでは、要するに「景気の良いときは不景気だと思って必死に貯金しなさい。 不景気になったら景気が良くなったと思ってガンガン消費しなさい。」 という極めて単純な論理だと思う。(この感覚で言うと「今日は給料日だから外食。」なんて感覚は論外である。給料日前だからこそ外食だね。)

実はこれ、メリットも大きいんだな。 たとえば、PCで言えばメモリとHDD。これらは不景気になると必ず価格が暴落する。 (しかも、円高だし。) メモリの方はVistaが全然売れなかったという理由もあるけど、 あのメモリの暴落状況もHDDの急激な価格下落も不景気あればこそ。 不景気に買えば景気の良いときに買うより得をするのだ。

と言うわけで、今回のボーナスは貯金に回す金額をいつもより大幅に減らしてOKにする事にした。 一昨年の激務で稼いだ残業代の半額が想定外収入として貯金されているから、これでも許される。

Core i7...CPUもマザーもメモリ(DDR3だから当サイトの場合流用が効かない。)も高くて総購入金額がかなり高額になってしまうわけだけど、 我ながらいい説明2)を考えたものだね。

☆CoreとUncoreの得意分野。   
と言うわけで、高額購入だけに購入までは楽しく選ばせていただく事にした。楽しい時間はできるだけ楽しまないと... 待っていればマザーもCPUもメモリも価格が下がるし、今後の不景気進行次第で円高が進んでさらに安くなるかもしれない。 買いたいときが買い時という考え方にも説得力があるけれど、当サイトの使用状況では Core i7の高性能が必要な用途はあまり無い。買いたいのはPCマニア的な物欲指向によるものだしね。

ところで、Core i7の市場での評価はどうだろうか?

Webを検索してみると用途によってかなり評価が違うようだ。 たとえば我々のPC用途では、各種PC雑誌がCore i7のベンチマーク結果の持ち上げ方に苦労している様子がうかがわれる。 ベンチマークの種類によっては従来のCore 2に負けてしまうものさえあったりする。 (特にクロックが効くベンチに弱いみたいだ。) 我々PCマニア間での口コミ情報でも、悪くはないもののあまりパッとしない。 もちろん遅いわけではないし実際最速だが、今までの期待感が強すぎて飛び抜けて速いという印象を与えられていないという感じだ。

ところが、評価が一転する分野がある。 それはHPC関連だ。

HPC分野でのCore i7の評価は非常に高いようだ。 今までAMD製CPUを使っていたCrayがCore i7の使用を表明。 理研の次世代機もCore i7を使用するし、AMDの牙城が次々と切り崩されている。

特に日本の場合はT2KやTSUBAMEに代表されるようにOpteron系がスカラ機HPCの多くを占めている。 PC市場で苦戦を強いられてきたAMDにとって、サーバー・HPC市場での躍進はintelに一太刀浴びせた形になっていた。 その最後の牙城での切り崩しは、経営環境が厳しいAMDにとってはかなりの痛手のハズである。 (HPC市場はPC市場ほど市場規模が大きくないとはいえ、 その性格上ブランドイメージ形成に一役買っているから高性能CPUを標榜するためには重要だろう。)

なぜ、このように使用分野によって評価が大きく変わるのだろうか?

当サイトの考えは、Coreの改良とUncoreの改良のレベルの違いに起因するという考え方である。

☆問題の本質はどこがボトルネックになっているか。   
Core i7の技術革新レベルはCoreとUncoreでは大きく異なる。

まず、Core部分から見てみよう。 Nehalemのコアは基本的にはPenrynの改良版だ。 Hyper-Threadingの復活とか、μOPsレベルでのLSDとか、細かい点はもちろん改良はされているのだけど、 根本的な設計思想は全く変わっていない。あくまでPenrynの改良版である。 改良版と言うことは、手堅く速くはなっているがド派手に高速化することはないという事である。

当サイトはNehalemコアについていくつかの予想をしていたが、 予想を一番外したと思ったのはNehalemでもコアのアーキテクチャが抜本的に刷新される事がなかった点である。 チックタック・モデルの順番から見ても設計チームから見ても抜本的刷新が行われると想像していたが、 この予想は見事に外れてしまった。

また、Hyper-ThreadingはCPUの内部効率が低くパイプライン段数が長いほど効果が大きい。 従って、Net-Burstよりパイプラインが短く、 内部動作の効率も良いNehalemではNet-Burstの時ほどには効果が薄いのもうなずける。 ましてコア数がクアッドでは、そもそもHyper-Threadingの出番が少ないだろう。

Uncoreに比べてCoreが相対的に弱いという状況はHPC用途に比べてPC用途では不利であろう。 なぜならば、HPC用途とは違ってコア性能の不足をコア数やバンド幅でカバーしにくいからだ。 PC用途ではやはりコア性能はイタリア料理でのトマトと同じで、 これが強力でないと根本的な意味での高性能は出しにくいと思われる。 PC用途でのキモはやはりCPUコア単体のシングルスレッド性能が基本だ。

では、Uncore部分ではどうだろうか?

Core i7では大幅な技術革新がなされていて、この分野での革新レベルは非常に高い。 まず、Core i7ではFSBが廃止されてメモリコントローラがオンチップ統合された。 これは、メモリレイテンシ短縮面でも、バンド幅のボトルネック解消という意味でも非常に高い価値を持つ。

また、QPIが装備されて3チャネル化もあってメモリのバンド幅が劇的に向上した。 これがHPC用途では極めて大きな価値を持つ。 先ほど述べたとおりHPC分野ではAMDに対するintelの巻き返しが始まっているが、 この最大の理由はCore i7におけるオンチップメモリコントローラとQPIによるバンド幅周りの大幅な改善によると 当サイトでは考えている。

考えてみればCore i7出現以前にOpteronがHPC用途で強かったのは決して理論ピーク性能の高さによるものではない。 チップ当たりの単純な理論ピーク性能ではItanium2の方が高かった。 コスト当たりの理論ピーク性能ならばintel製とほとんど差がなかったし、ましてBlueGene/Lには負けていた。

そんな中でOpteronが勝ち残ったのは、スカラ機としてはバンド幅のスペックが大きいという点が最大の理由だと思われる。 (オンチップメモリコントローラ採用の先見の明により実効メモリバンド幅ではFSB系との差はさらに広がる。) CPUの性能はボトルネック部分で決まるという当サイト的な基準をベースにすれば、 メモリバンド幅で優位なOpteronがHPC分野で勝ち残ってきたのは当然と言えるし、 AMDが何らかの対抗策を早急に打たない限りCore i7が巻き返して市場を奪っていくこともまた当然とも言えると思う。

しかし、これらの改良はPC用途では効きにくい。 メモリコントローラのオンチップ化によりメモリのレイテンシが短縮されたことは大きなメリットだけど、 これはただでさえ効果が薄い3次キャッシュの効き具合をさらに薄めてしまう。 また、バンド幅の向上に至ってはオーバースペックもいいとこである。 バンド幅それ自体を計るベンチマークを例外とすれば、バンド幅効果が劇的に得られるアプリケーション系ベンチマークはほとんど無いのではないだろうか? (この効果を顕著に見せるために姫野ベンチ等のHPC用ベンチを掲載してくる雑誌が出るかもね。)

これは、たとえばその昔メモリのインターリーブが始まった頃を思い出して頂けるとよくわかると思う。 インターリーブすればバンド幅はほぼ2倍になったが、各種ベンチマークの向上は5〜10%程度でしかなかった。 流体系のHPC用アプリではバンド幅2倍は実効性能ほぼ2倍を意味するが、 PC用途では幸か不幸かキャッシュが非常に効果的なのでバンド幅向上効果が薄められてしまうのだ。

当サイトのCore i7予想は夢とロマンが足りない。(Nehalem予想の当否) の後半部分に書いたけど、要するにPC用途では改良レベルに留まるが、サーバー用途やHPC用途では 大幅な改善が見込めるという見解だ。今のところはその見解通りに事態は進行していて、 Core i7はPC用途ではバカ売れという訳ではないがまぁまぁの売れ行き、 HPC用途ではAMDの牙城切り崩しに成功しつつあるという状況になっている。 あとはサーバー用途だが、以前書いた当サイトの予想が正しければこちらの分野でもAMDの牙城切り崩しに成功するだろう。

☆Medfieldで完全統合チップへ。   
この結果を受けて、「システムのボトルネックはどこにあるのか?」という視点が 各種予想を的中させる上でのキーワードであるという考え方には自信を深めている。

そして、これに対して追加事項が一つある。 当サイトでは進化のベクトル。(Atom330マザー購入編)において 「Atomの進化形はMoorestownといった方向性が正しい方向性であるというのが当サイトの主張で、 これはワンチップ化途上の2チップ構成統合チップと考えるのが妥当。 Atom230→Atom330といった方向性は、AtomというCPUの本質を考えた場合は亜流の方向性であり、正統派の進化形はこの方向ではないと思う。」 と書いた。

Atomのボトルネックとは決してコア数の不足では無い。 Atomのコア面積が小さいからと言って、シンプルコアのみでクワッドコア、オクタコアとコア数を増やしていくのは明白な誤りであり、 Atomの本質を見誤っている。 ネットブックを見ればわかるとおり、必要なのは価格の安さ低消費電力化だろうと言うのが当サイトの主張点だ。

で...ワンチップ化途上の2チップ構成統合チップという考え方について、掲載後に新たな進展があった。

Intel Atomの最新ロードマップが流出か と言う記事をご覧頂きたい。次世代チップ Lincroftは2チップ構成で当サイトのAtom進化の方向性予想は間違ったと一瞬思われたが、それに続くUBSのスクープ記事を読んで思わずガッツポーズ。 次次世代のMidfieldでは「プロセッサコア、ビデオ技術、メモリコントローラ、I/Oを同じシリコンチップに統合する計画」(同記事より原文のまま引用) なのだそうだ。つまりAtomの進化の方向性は完全ワンチップ構成化なのだ。

Nehalemコアが改良レベルに留まったことを予想できなかった当サイトではあるが、今回の予想はズバリ的中。 なんですか? そもそも予想の難易度が高くないじゃないかって? SoCは組み込み向けの基本だろうって?  いやいや、確かにその通りなんだけど、Atomの方向性としてマルチコア化の進展を掲げていた人はアマチュアでもプロでも多かったし、 それを事前に完全否定していたサイトは意外にも非常に少ないのだ。 (嘘だと思ったらAtomに関するいろいろなサイトの過去記事をググってみてください。)

Atom230→Atom330は進化のベクトルとして亜流であり、正しい進化の方向性はワンチップ化であるという当サイトの主張は的中した。ミクロンルールが上がって搭載トランジスタ数が増えたとしても、 おそらく今後もデュアルコア以上にコア数が増える事は無いだろう。 と同時に、コンピュータのボトルネックとはどこにあるのか?という疑問を考え続けることが 今後のCPUのあり方を考える上でのキーワードである事にも自信を持てた。

発売開始直後のご祝儀相場が続いている現時点でCore i7を買うのは予算上タイミングが悪いので少し先延ばしにするつもりだけれど、 予算内に収まった際には購入に踏み切る予定だ。 それには、Nehalem予想が自分の未来予測精度を高めてくれたという授業料も含まれているつもりである。

そして、もちろん景気回復にも効果がある。 この不景気の世の中では価格の安いPCに走るのはよくわかるけれど、 値段の安いPCばっかり買っていたら景気はますます悪くなる一方だ。 Atomの本質は安さと低消費電力にあるわけだが、 こんなご時世だからこそちょっと無理をしてもCore i7でマシンを組むことが正当化できると思ってるんだけどね。2)



1)
おもしろいのは韓国で、通貨ウォンが暴落状態。 国家経済を考えれば以前起こった通貨危機再来の懸念があるわけだが、これは 韓国の製造業にとっては朗報。一時の勢いを失っていた韓国メーカーは ウォン安効果で輸出競争力を急激に回復させている。 相次ぐ日本人技術者引き抜き(身近で経験あり)等、感心しない部分もあるが、 「ピンチをチャンスに...」という闘争心は見習うべきものがあるだろうね。

2)
別名、自分への言い訳。自分の用途でCore i7の高性能が必要か?と聞かれても返す言葉がないもんね。 いや、PCマニアだからってことで...