SSDはHDDの影を追うべきか?   

2008年11月30日



☆秋葉原の衰退。   
さて...今月は月の半分以上がホテル住まいという開発業務の当サイトには珍しい勤務形態だった。 とは言っても海外ではなく国内工場への出張がメイン。 出張先は、北は風光明媚で日本酒とハタハタの旨いところとか、 南は温暖で鰹とか海老とか海産物とお茶のうまいところとか... 仕事抜きで観光で行くのだったらどこも最高な場所なんだけどね。 (と...さりげなく更新遅延の言い訳をしておいてと...)

と言うわけで、先週の3連休は久々にノンビリする事にした。 なぬ? 今月は1度も更新しないつもりか? サボっていないでWebサイト更新してくれって?  いや、3連休でも何のかんので実質普通の週末と変わらないんだな。 今週は土日出勤だし、そう言わないで少しぐらい休ませてくださいな。 (なんか温泉とか行きたくなってきたよ。「あぁ〜生き返る〜。」って奴で癒したい。)

この3連休だが、今回は休日が実質2日分しかなかったので効率よく芸術の秋も秋葉原の秋?も楽しむ方針。 まず常磐線をつかって北小金で途中下車。 紅葉名所で有名な本土寺で紅葉狩り。そして、常磐線普通はそのまま地下鉄千代田線に連絡なので、一気に乃木坂へ。 国立新美術館で日展鑑賞。鑑賞後は日比谷線六本木駅から一気に秋葉原へ。 (温泉に行けないこと以外は)それぞれ乗り継ぎ無しで全部回れるスケジュールを組んだわけだ。

本土寺は千葉では有名な紅葉狩りの名所。 今回はタイミングも良く、美しいもみじを楽しむことが出来た。

本土寺のもみじを楽しむ。
ここ千葉県ではかなり有名な紅葉名所である。手近に楽しめる立地も良し。

そして帰り際には運良くお祭りの行列に遭遇。 元々写真を撮りに行ったわけではないので、連絡通路の上から適当に斜め撮り。 (何のお祭りだろう?)

お次の国立新美術館では当サイト秋の恒例・日展鑑賞で癒しの時を過ごした。 去年から日展は開催会場が変わって下記の通り大きな会場規模になっているが、 混雑が解消へむかっているのはじっくり鑑賞する意味で本当にありがたい。

本土寺の帰り際、偶然お祭り現場に遭遇。
右は日展会場の国立新美術館(黒川紀章氏設計なんだそうで。)

で、秋葉に行くわけだが、こちらは盛況とは言い難い。 PC分野は特にそうで、おそらくは不景気や貸し渋りによるのだろう、 資金繰り悪化で九十九電機が民事再生法申請から営業停止にまで... 我が聖地、秋葉原でも悲しいことにPCショップは次々と消えていくわけで、最近はいい話を全然聞かないね。

☆PCマニア未だ健在なり。   
いや、そうでもないのかな?

噂のCore i7が深夜発売された。 自作PCの趣味はピークを過ぎてPCパーツショップ閉店、PC雑誌休刊と冬の時代かと思いきや、 500人以上のPCマニアが集まったと言う。自作PCの時代はまだまだ続いているらしい。 同じPCマニアとして心強い限りだ。

Core i7は当サイトもいずれ購入する予定だが、深夜販売はさすがにパスせざるを得なかった。 今月は多くが出張先のホテル暮らしだったという事情もあるが、Atomマザーを買ってしまった直後だし、その際にVistaも1ライセンス追加購入で完全に予算オーバー。 そして何よりも当サイトの場合Core i7の性能を必要とする負荷の高い用途がほとんど無い。 (エンコード系はあまりやらないので4コア8スレッド対応が生きないんだね。)

と言う訳で、当サイトがCore i7を買う予定なのはNehalemのアーキテクチャ予想をいろいろ書いてきたという マニア上の理由からであって、残念ながらCore i7の高性能が必要な事情があるわけじゃない。 このWebもCeleronM-440マシンで書いているし、ゲーム以外の用途ならばこのCeleronM-440マシンでまったく事足りている。 Core i7が抱える最大の問題点とは「エンコード、マルチスレッド対応3Dゲーム系以外ではその高性能を必要とする用途が未だ未開拓状態。」という点だろう。 当サイト的には「マルチスレッド対応でガンガン使いたくなるキラーアプリは無いものかねぇ。」状態だし、 おそらくintel自身も同じ思いだろうね。

でも、用途から見て購入の必然性が無いとわかってはいても、CPUパワーバリバリの最新鋭CPUはやはりマニア心をくすぐるものがある。 NehalemはCPUコアはそれほど斬新な改革がなされたわけではないのでワクワク感にはちょっと欠けるけど、 「最新最速」というキーワードがアマチュアスピリッツに火を付けないわけがない。 Vista追加ライセンス購入で消耗したお小遣いを稼ぐため、予定していたSSD購入予算をCore i7予算に回すことにしてしまった。

と言うわけで、今回はアマチュアらしく初心に返って夢物語ネタ。 Core i7予算を貯め込まなければならないのでSSDまで手が回らない貧乏人の愚痴話でもあり、 シロウトっぽい未来予想で夢を見る話でもある。

☆VistaでのボトルネックはCPUパワーでは無いようだ。   
ところで、当サイトがCore i7を買ったらやってみたい実験がある。 それはVistaとWindows2000での体感速度差テストである。

なぜそんなことをやってみたいと考えているかというと...

最近Vistaの設定をいじっているのだが、これがなぜかというとHDDアクセスが頻繁すぎる不満を解消するためだ。 Vistaは負荷が高いOSとして有名だけど、当サイトの感覚ではCPU負荷という意味では意外に重くない。 ゲーム以外ではCeleronM-440マシンでまったく事足りているという事情がそれを表していて、 当サイト的な最低合格ラインは(ライトユースならば)Atom330である。

ではVistaの何が重いかというと、CPU負荷よりもむしろHDD負荷である。 Vistaはユーザーのアプリ使用に無関係に恒常的にHDDアクセスを行う悪い癖がある。 それはインデックス作成だったり、SuperFetchだったり、デフラグだったり、いろいろな事情があるが、 ともかく本人の意志に関係なく強烈なHDDアクセスが勝手に始まるという状態にはちょっと違和感を憶えるわけだ。 (Vista導入直後には「まさかウイルスに感染したんじゃあるまいな?」という心配まで生じた。)

これは、今ではPCマニア間で一番有名なVistaの不満点になっているようで、 この問題を解消するためにネットを調べてみた感じでは、 同様の不満を抱いているブログや記事が山のように検索に引っかかる。

この中で特に秀逸なのは Vistaが「遅い」と感じませんか?と言う記事。 これは日経ソフトウエアの記者が書いた「読んで納得、まったく同感。」という記事である。 同記事の「マルチコアを生かしたい気持ちはわかる...(中略)...でもディスクは1台しかない。」 という表現がVistaの重さの核心を一言でズバリ表現しており、PCではマルチコアが効かない理由に対する鋭い洞察になっている。

ちなみに、後述するとおり、HDDアクセスを頻発させれば例えマルチコアでなくても 動作がもっさるするのは当然と当サイトは考えていて、この事情はマルチコア固有の事情というものではないと思う。 Vistaがもっさり動作なのはCPUのコア数によらない現象である。 だが、マルチコアではそれがより強調されて現れる事も事実であろう。 というわけで、今回のネタはこの事情がマルチコアではより強調される事を前提に考えている。 (マルチコアで無いと改善効果が得られない改善提案も書いたので...)

というわけで、ある意味で上記の記事をお読みいただければ当サイトがゴチャゴチャ追記する必要もないのだが、 今回のネタはこの記事の内容があまりに当サイトのツボを突いたので考えてみたくなった。 (内容がパクリっぽくなるので他人の記事と同じ主張を後から取り上げるのはできればしたくないのであるが、 問題点抽出としてあまりに秀逸なネタなので今回は例外として取り上げてみたい。)

で話を戻して、と言うわけでそれらを参考にHDD負荷が下がる設定になるようにいろいろといじっているという段階だ。

で、最初の検討項目に戻るわけだけど、 現状のCeleronM-440マシンならばそもそもCPUパワーが低くてHDDアクセスによる邪魔が入ってもロス分は少ないが、 Core i7ではその無駄が無視できないレベルになるのでは?  とか、HDD負荷が減ったらCPUパワーが生きないか?という疑問があるわけ。 (なぜならばHDDアクセス中はCPUパワーはほとんど生かせないから。)

だったらCore i7のようにCPUパワーがバリバリな状態を生かすためには、 CPUにとっては事実上ほとんどデッドタイムであるHDDアクセスを減らす事が体感速度的には効果あるのでは?と思うわけですよ。

もちろん、バックグラウンドでのHDDアクセスもユーザーに何らかのメリットがあるから行うわけで、 それを取り除いたら意味が無いと言われればまさしくその通りではある。 だが、PCを起動した直後にガ〜っと10分間以上もHDDが連続アクセスする状況は、 常駐ウイルススキャンを例外とすればユーザーにそれほど多くのメリットをもたらすものではないと感じている事も事実。 それよりも、ユーザー氏自身が行いたい作業に対してHDDアクセスがバッティングするダメージの方が大きいのだ。

☆メモリとHDDの階層の違い。   
ここでHDDアクセスについてメモリ階層の観点から考えてみよう。

当サイトはCPUの演算パワーと実性能の関係についてスパコン等を例に考えてきたが、 たとえばスカラ方式のCPUのコストパフォーマンスを生かすためにはキャッシュアクセスを 高めるように良く練られたプログラミングが必須であることを強調してきた。 逆にキャッシュアクセスが生かせない高B/F比なアプリでは、 キャッシュに頼らないベクトル機が依然効果的とも書いてきた。

ここで重要なのは、CPU−メモリ間には一連のメモリ階層があって、 スカラ方式の場合はメモリ階層がCPUコアに近い側のアクセス比率を高めることが 実性能向上に欠かせない作業であるという事実である。 通常のPCでのメモリ階層は1次キャッシュ−2次キャッシュ−メインメモリ−HDDとなるわけだが、 階層が上位ほどバンド幅もレイテンシも良好である。

と...ここでVistaのHDDアクセスを考えてみよう。 バックグラウンドでHDDアクセスを頻発させるVistaの設計思想は、 メモリ階層上位ほどCPUコアの性能を生かせるというスカラCPUの本質を無視した、 非常に筋の悪い設計思想である事を簡単に類推できるであろう。 一番アクセスしてはならない低階層のアクセスを頻発させているわけで、 メモリ階層の意義を無視している。 これではせっかくのCPUパワーをわざわざ殺していると言わざるを得ない。 現代CPUの性能を生かす根本は一度HDDにアクセスしたら可能な限り2度とアクセスしない事、 およびバックグラウンドのHDDアクセスがメイン用途のHDDアクセスを阻害しないことである。

とすると、どうだろうか?  まず、マルチメディア処理のような場合はマルチコア化は極めて効果的だけど、 Vistaでマルチコアを生かそうとした場合は(マルチスレッド対応の件を別にしても) 頻繁なHDDアクセスに対応可能なメモリ−HDD階層の再構築が必須という事になる。

最近買った2.5inch-HDDはSATA-IF
コラムの内容から言ってSSDの写真も撮りたかったのだけど、Core i7用追加予算と消えた。トホホ。

ちなみに、SSD-HDDのハイブリッド・ドライブならば問題ないのでは?という意見が出る事が予想されるが、 おそらくは時代のあだ花で終わるだろう。 ハイブリッドドライブはIFがHDD用になるわけであり、HDD-IFの制約から脱却できないからだ。 マルチコアがバッティングさせないでディスクアクセスを行うのはマルチスレッド対応アプリでディスクアクセスまで管理されている場合のみであり、 通常の使い方でマルチスレッド動作する部分があったとしてもディスクアクセスまでマルチで動作するわけではない。 (これは、先ほど紹介した記事で指摘されている通りである。)

同様に、残念ながらReadyBoostでも力不足だ。 なぜならばReadyBoostはある種のキャッシュ動作であり、 頻発する多重HDDアクセスには対応力が原理的に劣るからである。 (頻発するメインメモリアクセスでキャッシュが有効かどうか考えてみればわかる。 CPU内のキャッシュはメインメモリへのアクセスが頻発しない状況の方が効果的だ。)

メインメモリへのアクセスが頻発する状況下ではキャッシュ階層の追加よりも メモリのバンド幅増強が効果的なように、HDDアクセスが頻発する状況下では HDD-IFの性能強化が有効な事は容易に類推できる。

また、先ほどの記事の例では高速HDDに期待されていたが、 残念ながら高速HDDは高価・高発熱・高騒音と3拍子揃っていて諸刃の剣だ。

当サイトが考える対応策とは、まずHDD-IFのSSD専用回路化。 これは要するに多重アクセス対応であり、メインメモリで言ったらデュアルチャネル化に相当する方法などが考えられるが、 要するに半導体メモリであるフラッシュメモリの性能を最大限に発揮出来るメモリ的なIFへの転換だ。 また、複数のHDDアクセスとメインメモリとCPUがなるべく競合しないで同時動作できる仕組みも必要だ。

幸い時代のトレンドはこれを可能に出来る方向に進んでいる。

たとえば複数同時アクセスに対応すべくHDD-IFを並列化しても、これは通常の磁気記録型HDDでは対応が難しい。 通常のHDDは複数のヘッドを持つが、ヘッドは磁気ディスクに対して個別に動くことが出来るわけではないからだ。 (ヘッドAはデータAを読みに行って、同時にヘッドBはデータBを読みに行くというアクセスが出来るわけではない。)

複数のヘッドはモジュールとして一体化しており、まとまってシークされる。 これはヘッド+回転磁気メディアという組み合わせを取らざるを得ないHDDでは対応が難しい。 ヘッドをアーム毎に個別に動かすことが原理的に不可能というわけではないが、極めて高コストとなってしまうだろう。 (容量単価が安いというHDD最大のメリットを殺してしまうことになるから、事実上はあり得ない。) また、HDDを2台に分ければ運が良ければ技術的には同時アクセス可能になるが、 同時に同じドライブに読みに行ったらアウトだ。

しかし、SSDならばどうだろうか?

現状のSSDはHDDの置き換えとして同じIFが搭載されているが、 原理的にSATAにしなければならないという事情は一切無い。 とりあえず現状のマザーに搭載するためには旧来のHDDに合わせたIFに規格を統一しなければならないというだけの事情である。

これは、現状ではHDDが数量ベースで圧倒的に優勢で、SSD側がこれに規格を合わせるという形で市場開拓が進んでいるからだ。 だが、HDDに対してSSDの市場規模が同程度になればHDD用に作られた規格にSSD側が合わせなければならないという事情は無くなるはずだ。 (もちろんフラッシュメモリはチップ単体での転送速度はHDDに負けるわけで、 現状でも複数チップの並列アクセスで転送レートを稼いでいるという背景はあるにせよ。) 特に、実使用ではシーケンシャルアクセスよりもランダムアクセス性能が重要な場合が多いので、 この場合は多重アクセス機能の追加は非常に重要になる。 小さなファイルを沢山読み込む場合には、転送速度の大きさよりもレイテンシの小ささが効くからだ。

従って、将来的にはSSDというよりはフラッシュメモリ専用IFがマザーに搭載されてしかるべきであるというのが今回の当サイトの主張点だ。

☆SSDとしての制約から解き放ち、フラッシュメモリ専用IFを搭載するという手は考えられないか?   
フラッシュメモリ専用IFが開発されるとしたらどうなるだろうか?

Vistaのボトルネックで言えば、HDDが複数同時アクセスに弱い弱点は半導体メモリであるSSDならば十分に解消できる余地がある。 今後のSSD大容量化はチップの集積度向上や多値化の進歩だけではなく搭載チップ数も増える事は間違いないから、 データAとデータBを同時に読みに行く事は技術的に十分に可能だろう。 (もちろん、単一アクセスしかありえない用途では全チップ同時アクセスで転送レートを稼ぐモードを選択出来るようにする。) メインメモリで言うところのデュアルチャネル化なら現状で十分であり何の技術開発も必要ないだろうし、 もっと細粒度の同時アクセスでも、SSD-IF用チップに相応の回路を上位階層のメモリシステムをまねして搭載すれば十分に開発可能だろう。

また、いっそメインメモリのようにDIMMっぽいソケットに差し込むような形にすれば、 2.5inch-HDDや1.8inch-HDDをまねた外部形状よりもずっと実装コストを下げることが可能だろう。 最初からメカ機構を持たないSSDならば、ソリッドステートなんだからDIMM同様の形状でも何ら問題ないハズだ。 (HDDを置き換える事を前提としているから、あのような外形寸法にならざるをえないわけだしね。)

そして、CPUにより近くなるという意味でも専用IF化は意義がある。 メモリコントローラがCPU側に搭載されただけでD-RAMアクセスは大きく高速化した。 より外周部の事とはいえ、SSDをメモリと捉えて専用IF化することはCPU側とより密に結合する事を意味するからだ。 フラッシュメモリは通常のD-RAMよりアクセスの制約事項が多いため、ボトルネックを解消した柔軟なアクセスを行うためには CPUやメモリコントローラとの緻密な結合が必要だと思われる。 (現状ではSATAの制約でSSD側の事情だけでコントロールせざるを得ないわけだし、アクセスの柔軟性には乏しい。)

SSDがHDDと対立する製品としてHDDを置き換えるという意見が正しいか間違っているか 各方面で議論が続いている。当サイトの考えはSSDが低容量側を喰う分だけHDDは高容量側に逃げるという考え方で、 両者は勝ちもせず負けもせず追いつ追われつの戦いを繰り広げるという考え方である。 HDD側には動画という現状のSSDでは絶対に喰えない領域が残されており、 おそらくSSDはこの領域に浅く踏み込んだレベルでHDDを追い上げられなくなると考えている。1) ただし、HDDも完全には逃げ切れず、現状の差が広がるでもなく詰まるでもなく消耗戦が続くのだろう。

しかし、フラッシュメモリ専用IFが開発された暁には、SSDはHDDを追う立場と言うよりは、 HDDとメインメモリの中間の記憶素子階層として定着するのではないかと想像(妄想)している。 (一時期ReadyBoost機能をオンボードで搭載しているマザーがあったが、あれの発展形みたいなものだ。)

なぜ?って...当サイトがまだDOSでPCをいじっていた頃、21世紀にはHDDは半導体素子に置き換えられて 完全に消滅しているって予想されていたんだよね。 ところが、この経済アナリストたちの予想は完全に間違っていて、 HDDはというと、薄膜ヘッド→MRヘッド→GMRヘッド→TMRヘッドとどんどん先へ逃げていって、 この記録密度の向上ペースはつい最近までムーアの法則すら上回るペースであった。2) というわけで、半導体素子は追いつくどころか一時期は完全に逃げ切られてしまったわけ。

最近、NAND型フラッシュの微細化が想定以上に進んでようやく21世紀初頭の予想が10年遅れでようやく復活する段階になったわけで、 フラッシュが一方的に追い上げているというのは最近の事情しか知らない人たちの偏狭な見方なのだ。 (周回遅れだった半導体側が1周分挽回しようやく追いついたという段階であり、 実態は半導体側が一度完敗した後での10年遅れのリターンマッチなのだよ。)

今、韓国の某フラッシュメモリメーカーがNAND型フラッシュによりHDDは消滅すると主張して 某アメリカのHDDメーカーが反論する事態になっているわけだけど、 当サイトに言わせれば「半導体メモリがHDDを喰う。」って話は、出てきては消え、出てきては消える、 まさに都市伝説であり、何を今更?って感覚でしかない。

要するに、フラッシュメモリをSSDという形でHDD対抗と位置づけること自体が時代遅れの発想であり、 SSDを本来の不揮発性メモリの一種ととらえ直すことでお互いを相補的な位置づけに再構築することが可能だと考えてみたい。

単にIFの転送レートとかレイテンシ、いやもっと言うならHDDベンチマーク数値とかに囚われていてはSSDは高速低容量HDDでしかない。 SSDをHDDベンチマークで評価するという感覚そのものに根源的な問題がある事に気づくべきだと思う。 同時に中間階層のバッファ(キャッシュ)という考え方でもダメだろう。 キャッシュ的に常時書き換え可能かというと多値化が進めば進むほど書き換え回数の制約は増えるだろうし、 技術革新でそれらが乗り越えられるかというと、乗り越える早さよりも容量アップに向けての制約が厳しくなる分の早さが厳しくて、 トータルでは行ってこいになるのではないだろうか?

SSDは単なる高速HDDでいいのか?と言えば、いずれはノーと言わざるを得なくなる。 (もっとも、現状NAND型フラッシュはチップ単体ではHDDの速度に負けるけど。) それよりもHDDでは難しい多重アクセス対応とか、CPUコア毎に並列アクセスできうるメモリ-SSD-HDD階層の構築とか... 要するにメカ的制約の少なさを利用した機能面での多機能化、高付加価値化を考えないといけないと思う。 夢物語と言ってしまえばそれまでだけど...やっぱPCテクノロジには夢がないとね。

SSDは実態は半導体メモリでありながらDriveという扱いを受けている。 しかし、ドライブアクセスはあくまでHDDの特性を前提にしたもので、メモリ的なアクセスを考えてはいない。 夢物語風ではあるけれど、メカ機構の制約から逃れたSSDの潜在能力を生かすためには マルチコアのコア数に比例した多重処理能力が必要であり、それには専用IF化がベストだと思う。 Driveの制約からSSDを解き放ち、再度半導体本来の自由度を持たせる事がSSDの将来を実り豊かなものにすると考えている。

また、新たなメモリIFはメインメモリとのアクセスがメインになるだろうから、 最終的にはD-RAM用のメモリコントローラと同一チップ上に統合するのがよろしかろう。 現代CPUのトレンドはCPUとメモリコントローラをオンチップで統合する事にあるから、 新IFもオンチップ統合されると思えばよい。

どうせチップに搭載されるトランジスタ数は余っているのだから、 使われもしないCPUコア数を増やすよりはよほど現実的な選択ではないだろうか? (接続ピン数が増えてしまうのは問題だけど。)

この場合、HDDはSSDではカバーしきれない大容量データを扱う下層記憶領域となるわけだが、 多くの場合で大容量ファイルは画像・動画ファイルである。 これらのファイルはシーケンシャルアクセスが高速であればそれで良く、 HDDの欠点があらわに表に出ることはない。 両者に都合良く棲み分け出来ているではないか...

話は最初に戻るけど、手元のCeleronM-440マシンではHDDアクセスを減らすべくVistaの設定をいじっているわけ。 だが、正直に言えばこんなのは対症療法に過ぎない。SSDを装着しSSD本来の性能を生かせるフラッシュ専用IFがあれば、 VistaのHDDアクセスも放っておいてなんら体感速度に影響を与えない理想の設計思想になるハズである。 そうなれば、当サイトが否定しているマルチコアの効力も、ひょっとしたらかなり改善する可能性もあるだろう。

そういう時代が近いうちにやってくることを願ってやまないし、 そう遠くない将来に実現に向けてなにがしか動き出すだろうというのが当サイト的予想である。

それにしても、先ほどの 日経ソフトウエアの記事にあった以下の台詞は秀逸だ。

「ただ,「ちょっと勘違いかなあ?」と思うのは,マルチコアになっても,多くのパソコンのハード・ディスク・ドライブは1台であるということだ。 デュアルコアのパソコンでVistaを使っても,二つのコアを完全に使い切ってCPU使用率が100%になることはほとんどない。 それより,ハード・ディスクの読み書きに時間がかかっているんだろうと思わせることの方がはるかに多い。 」

この名台詞が当サイトの言いたいことをすべて代弁していてくれる。 マルチスレッド対応アプリを使わない限り、現状のPC事情では動作のボトルネックは決してコア数ではないのだ。

今回はちょっと夢物語風になってしまったが、SSDはHDDの影を追うべきではないと思う。


●補足追加(2008/12/8)

☆あまりにもビックリしたこと。   
昨日(12/7)当サイト恒例の養老渓谷紅葉狩りに行ってきたのだが、その帰り道に今回のネタについてかなり驚いた事があったので追記したい。

当サイトはPC雑誌を毎月1冊買っている。 これは予算の関係で全部は買えないためだが、先月は仕事が忙しく11/29(土)、11/30(日)は休日出勤。 そして、今月も12/6(土)も休日出勤。仕方がないので、12/7の紅葉狩りの帰り道途中、茂原市で偶然見つけた本屋で1冊選んで買って帰る事にした。

で、どれを買うか(とは言っても最近はPC雑誌も休刊が多くて、実質二択状態なんだけど。)立ち読みしていてビックリ仰天。 なぜって...WinPC2009年1月号のp71をごらん頂きたい。 これ、文章が1ページ以上にもなるので全文を書き写して引用するのは手間だし文章が長すぎて引用の限界を超える可能性があるので内容は省略するけれど...

いや〜、当サイトもPCマニアサイトを起こして長いけど、こんな事は初めてだ。 何かというと、手元にこの雑誌がある方は71ページの「Q 2010年には現行バスで速度が完全に足らない?」という章をぜひぜひご覧頂きたい。 内容が当サイトの記事とほぼ同じ。(プロのライターの記事なのでレベルは雑誌が遙かに上だけど。) この内容で特に注目なのはフラッシュメモリはDIMMのような形状で実装するという計画がintelで以前からあったという話の記載である。

今回のネタで当サイトにとって都合が悪いのは雑誌の発売日が11/30で当サイトの記事掲載が同日だけど深夜であること。 時間的には発売日の朝一で本屋に行って雑誌を買って文章を書けば同じ内容のコラムを書ける。 いや、11/30は早朝から会社で仕事をしていた事は同僚が証明してくれるから、もし記事を読んで書いたとしたら、 終業時刻から帰宅途中で本屋に立ち寄って見て2〜3時間で書いた事になる。 掲載があと3時間早ければ無実を証明できたのだが...

つまり、この記事を読んだ人はあまりに内容が似ていておそらくは当サイトがこの記事を参考にしたと思ったに違いない。 (自分だって、立場が逆だったら「自分の記事を参考にしたんだな。」と思うよ。それ位内容や発想が似ている。) 実際、PC雑誌の内容を丸々コピーしたり、コピーしなくても同じ内容を完全オリジナルな意見として主張するのは違法だけど、 雑誌記事を参考にすること程度は違法ではない。(情報をお金で買っているわけだし。) ネタを書くときにPC雑誌を見たり他サイトの意見を検索することは誰だってあることだろう。

だが、今回のネタに関しては一言だけ言わせて欲しい。 天地神明に懸けて誓って言うけれど今回のネタはこの記事を一切参考にしていないのだ。(書いたときには、まだ読んでいない。)

技術ネタに関することを書けば異なる人間が異なる経路を辿って同じ結論に至ることはよくある。 たとえば、当サイトはCELLの数少ない問題点はメモリのバンド幅不足にあると主張したが、 後日RAMBUS社のSteven Woo博士が全く同じ事を主張している事でもわかる。 (もちろんSteven Woo博士が当サイトのコラムを参考にしたなんて事はあり得ないだろう。)

しかし、これがSteven Woo博士が当サイトより先にCELLの弱点を指摘していたとすれば、 信用の有る無しから見て当サイトが博士の意見を参考にしたと思われるだろうね。 これと同じで、DIMM形状の話とか、コントローラ内蔵の話とか...ここまで内容が同じとは自分でも信じられない。 まるで当サイトが同雑誌記事をまねしたかのごとくであり、 似て非なる内容ならばともかく、内容・発想がここまで似ているとおそらく誰にも信じてもらえないだろう。 (情報ソースが同じだった可能性はある。)

けれど、もう一度書くけれど、天地神明に懸けて誓って言うけれど今回のネタはこの記事を一切参考にしていないのだ。 (参考にしたのは、自分でWebからググった内容と、同じPC仲間からの口コミ情報のみ。) つまり、当サイトはintelの技術者にいくらか遅れて同じ結論にたどり着いたことになる。 こんな事って、実際にあるんだね。



1)
フラッシュメモリに代表される半導体技術と、HDDに代表される磁性体技術。 どっちがより進化していると聞かれれば半導体技術かもしれない。

当サイトは化学系エンジニアだから微細化とは別の視点、つまり物性面で半導体と磁性体を比較してみよう。 某固体物性論の教科書によると、 半導体技術が物性面からはバンド・エンジニアリングと言われ、完成の域に達したバンド理論により、 もはやサイエンスではなくエンジニアリングの領域に踏み込んでいると言う。 当サイトも同感だ。

ところが...磁性体を物性面から見ると、とてもエンジニアリングと呼べるレベルではないように感じる。 最近はスピン・エレクトロニクスという言葉が流行だけど、エレクトロニクスという段階は半導体ではすでに20世紀に完成の域に達しているわけ。 スピン・エレクトロニクスとかスピン・エンジニアリングとかはごくごく最近のごく最先端の領域の言葉であり、 今になってようやくエンジニアリングとか言われるようでは 磁性体関連の技術は半導体技術に立ち遅れているように感じてしまうわけである。

だが、立ち遅れている分だけ今後の伸びしろの大きさでは磁性体技術が勝るように感じる。 半導体技術は完成の域に達している分だけ技術的に先が見えているとも言える訳で、また微細化による投資規模の拡大という意味でも課題が大きい。 フラッシュメモリは今が進化の加速度最大領域であるが、恐らくこのペースは来年後半〜再来年頭頃には減速に転ずるだろう。 というわけで、わかっていないことがまだまだ沢山あるという意味ではHDDの方に伸びしろがあるように感じるわけである。 事実、垂直磁気記録化が進んだ以降も、CPP-GMRヘッド、レーザーアシスト磁気ヘッド、マイクロ波アシスト磁気ヘッド、パターンドメディア等々、 といった新技術開発課題の話題性には事欠かないHDD業界であるし、 強相関電子系に象徴されるようにサイエンスの面でもスピンに関する電子物性は半導体を超えてエキサイティングな未開拓最先端分野である。

2)
ムーアの法則は「チップ上のトランジスタ密度は18〜24ヶ月で2倍になる。」というペースだったが、 HDDは最盛期には12ヶ月に2倍のペースで記録密度を増しており、 半導体メモリとの差は詰まるどころかどんどん開いていった。 一方、フラッシュメモリには「チップ上のトランジスタ密度は12ヶ月で2倍になる。」という黄の法則があるが、 これはムーアの法則よりも速いものの、最盛期のHDDの技術革新速度を抜くものではない。 近年差が詰まったのはHDD側の記録密度向上ペースが鈍ったからである。(敵失で周回遅れを挽回できたわけ。)