不思議な電源挙動の解析   

2008年1月12日



☆ハイビジョン恐るべし。   
当サイトの慣例に従って、今回もいつもの余談から。

実家にも液晶テレビを親孝行して数週間になるが、自室の液晶テレビにもほぼ慣れてきたようだ。 自分の分として買ったのは東芝のレグザ(47Z2000)だが、これを購入したその後の感想を少々。

当サイトは映画観賞用にこれを買ったわけだが、最初は大満足だった。 が...自分でも思っても見ないことが起こった。

元々映画鑑賞がメイン用途だからテレビ視聴用としては写ればいい程度に思っていたのだが、 ハイビジョン番組の画質を少々見くびっていたようだ。 もともとテレビはあまり見ない人だったのだが、ハイビジョンで自然紀行番組とかお祭り番組が放送されるのでこれをボチボチ見るようになった。 だが、一度ハイビジョン番組をそのままの解像度で見てしまうとDVDの画質が何とも汚く思えて不満なのだ。

これは液晶テレビには何の落ち度もなくてDVDの根本的な画質規格が原因なのであるが、 人間とは絶対評価は鈍感だけど相対評価は最新ハイテク測定器並みの能力があるのが良し悪しである。 DVD単体で見ているときは全然気にならなかったのだが、常時ハイビジョン映像と見比べる環境になってしまったのが悪かった。 気になり出すと気になってしょうがない。

というわけで、せめてハイビジョン番組だけでも同じ画質で録画できるように 次世代DVDレコーダー購入の予算積み立てに向けて動き出すことにした。1) レグザにはNAS接続録画機能があるので当面はこれでカバーできるだろうが、 ハイビジョン番組だと単位時間あたりのデータ量が格段に多いから手持ちのNAS(250GB)では瞬殺で満杯になってしまう。 長期的には次世代DVDメディアへの録画機能が不可欠なのだ。 (その分、自作PCに回せるお小遣いが減ってしまうのが痛い。)

世間的にはフルHDパネルの液晶テレビを買ってもDVDレコーダーを次世代DVD対応に買い換えようという人はほとんどいないらしいが、 当サイトの場合はメーカーの狙い通りの罠にはめられた気もするね。

次世代DVDレコーダーはさすがに思い立ってすぐ買える値段の家電ではないし、想定外の話なので予算もない。 そして、そもそも今年は仕事が忙しくないので年収が激減の予定。 去年は自分にも親にも大画面テレビをご馳走したので残業代の備蓄も底を突き、いつもの貧乏人に逆戻り。 (それでも一応正社員だし、年収200万以下などというワーキングプアな方々から見ればまだまだ十分恵まれているのだろうけど。)

ただ、お金が貯まるまで様子見する猶予があるのは不幸中の幸いだった。 BDとHDの勝負の行方はおそらくBDの勝利と予想しているが一応決着を確認しなければならないし、 コピーワンス問題一つ見ても回数緩和された新規格に対応する前に購入するのもバカバカしい話。 その間に次世代DVDレコーダーの価格が大幅下落することを祈ってますぞ。 (もっとも、IT分野では「欲しいときが買い時。」という意見も説得力がある。悩ましいところだ。)

それにしても、大画面テレビの画質について、やれ液晶だPDPだ、IPSだVAだ...なんて言っているけれど、 根本的な映像ソースの画質レベルの方が数千倍影響度が大きいと実感。 これは地デジとアナログの比較でも同様で、よく言われる事だけど一度地デジを見てしまうと二度とアナログには戻れない。 (特に当サイトの特殊環境として成田空港の近くに住んでいるということがある。 地デジだと航空機によるゴーストの影響を受けないので圧倒的に画質が良くなる。)

それにしても、この件で思ったことが一つある。

今PC業界ではSSDが話題だ。サムスンなんかは、これからはSSDの時代でHDDは消えゆく存在なんて言っている。 それに対してSeagateなんかは、まだまだHDDの時代は続くと反論している。

だが、PC業界ではSSDの影響力は拡大していくだろうが、HDDが消えて行く事なんて万に一つもあり得ないとはっきりとわかった。 当サイトはSeagateの見解を支持だ。

なぜって、小型低容量分野をSSDに食われても、廉価大容量という家電分野では当面SSDは歯が立たない。 そして、今回の一件で家電分野の容量需要はまだまだ拡大すると確信するに至ったからだ。 よくあるあまりおもしろみのない常識な結論ではあるが、HDDはSSDに低容量分野を喰われるが、 それ以上に大容量分野に逃げる事でトータルでは市場拡大を続けるという構図が当分続くことになりそうだ。

☆電源ノイズから見るPCの起動。   
と言うわけで、本題である。新年最初のネタは電源ネタ。 ただし、例年ならばフェーズ数を数えたりするのであるが、 省電力化が進んだ最近のCPUではあまり無意味。 今回は、去年の電源修理のタネ明かしである。

旧年の修理では電源ノイズが修理前より修理後の方が大きかった件について書いた。 まずは、この謎解きを考えてみよう。

まず、調べたのはマザーボードの起動の仕方だ。 電源スイッチを入れてから、ノイズの状態がどのように変化するかを観察してみた。

すると...まずわかったことは、CPUはいきなりBIOS設定通りに起動する訳ではないということである。 電源スイッチを入れた瞬間、一瞬だが設定通りではない起動の仕方をするのが見えるのである。

これはほんの一瞬のことであり、如何に分解能帯域幅を広げても スペアナでスキャンして状態を取り込んでいる時間的余裕はない。 (分解能帯域幅を広げるとフロアノイズレベルが上がってしまって、 観察したいマザーボードからのノイズ信号をブロックしてしまうので、 非常にノイジーな画像になってしまう。 また、ビデオ帯域幅も分解能帯域幅と同じ設定にする必要性があるので、 これまたノイジー度が増してしまう。)

なので、残念ながら証拠写真は無いのであるが、要するにCPUはまず基本設定で立ち上がり、 そのあとでBIOS設定通りの状態に移行するというステップを取って起動していくのである。

例えば、CPUのクロック設定にはクロックのスペクトラム拡散機能が付いているのであるが、 当サイトはこれを普通はONで使用する。 ノイズによる妨害には高次作用による誤作動が考えられるが、 スペクトラム拡散を行うと高次モードでの相互変調などが抑制されるため、 こちらの方が安定動作すると見込んでのことである。

スペクトラム拡散を行っても、クロックノイズの全積分強度は原理上は変化しない。 しかし、相互変調はピークパワーの2乗、あるいはそれ以上で作用する非線形効果を含む場合が多く、 この場合は全積分強度が変わらなくてもピーク強度を下げれば影響度が減るのだ。

わかりやすいように、スペクトラム拡散機能をONにした状態と、OFFにした状態の 電源ノイス成分をクロック周波数そのものの周波数で観察してみたのが下図である。 左図の場合はスペクトラム拡散無しなので、このような半値幅の狭い状態の 電源ノイズが観察される。しかし、スペクトラム拡散有りの場合はどうだろうか?

クロック周波数での電源ノイズ成分
左図はスペクトラム拡散OFF。右図はスペクトラム拡散ON。
テストに使用したCPUはAthlon-1GHz(Thunderbird)

BIOS設定を変えて起動後にスペアナでスキャンして観察すれば両者の違いを簡単に見分けることが出来るので、 それで写真を撮ってみたのが上図である。

スペクトラム拡散を加えると、電源ノイズもデルタ関数的な尖ったピークプロファイルから、 写真右図の通りに拡散されたプロファイルになる。 肝心なのはノイズのピーク強度が10dB以上減っていること。 これにより、全積分強度でノイズレベルが減っていなくてもノイズによる誤作動の可能性を減らすことができうるわけだ。

だが、実際はスペクトラム拡散を行うBIOS設定にしていても、ただちにこのような状態で起動する訳ではない。 一瞬左図の半値幅の狭い状態で起動した後に幅広なスペクトラムになるのである。 (それにしても、直接クロック信号を観察するのではなく電源ノイズからでもクロック信号を間接的に観察できるのね。)

ちなみに、これはクロック周波数自体も変更されるみたいである。 つまり、高い駆動周波数のCPUは一瞬低い周波数で起動し、BIOS情報を読み込んで簡易なPOSTをしてから CPU本来の駆動周波数で動かされるように(電源ノイズ成分からは)見える。

これは直接にクロック信号を観察した結果ではないので絶対に正しいかというと少々自信がないのだが、 以上が修理を終わったマシンの起動状態を電源ノイズから観察した結果推定できたことである。

☆電源ノイズから見た謎解き。   
ここで、最初の謎を考えてみよう。 電解コンデンサを修理交換する前の状態では、おそらく起動直後の低い消費電力の状態で立ち上がるハズである。 なぜならば、おそらくはクロック周波数の低い状態で起動するからである。

次にPOSTが終わって、クロックのスペクトラムを拡散し、クロック周波数を正規の周波数に引き上げる。 この段階で、当然消費電力が増えているハズである。 なぜならば、CPUのアクティブ消費電力はクロック周波数に比例するからだ。

注目して欲しいのは、正しく起動しない状態の電源ノイズは、 ただ単にノイズレベルが低いだけではなく、ノイズ成分の半値幅がきわめて狭いことである。 (参考のため以前掲載した図を下記に再掲しておく。)

修理前後でのマザーボードの電源ノイズ成分
左図はOS-CON搭載前。右図は搭載後。

つまり、OS-CON搭載前は負荷変動がほとんど無い状態でハングアップしていた事になる。 (写真の図はビデオ帯域幅が分解能帯域幅よりずっと広帯域に設定されているため、 時間変動の平均値を見ている事になる。)

起動過程の経時変化を観察しているとわかることであるが、 ノイズの状態は随時変化している。 (だから、ここで掲載した写真は分解能帯域幅よりビデオ帯域幅を低周波数にとって、 時間変動を平準化している。) 負荷変動がないと言うことは、ハングアップ時の状態が 一定の負荷状態で保存されていると考えるのが妥当だろう。

これらを考えれば、なぜ修理前の方が電源ノイズが小さいのかというと、 クロック周波数が低く消費電力が少ない状態には耐えられても、 クロック周波数が高く高消費電力状態には耐えられない中途半端な修理状態であったと考えれば 説明できるのではないだろうか?

つまり、修理が中途半端で起動途中の消費電力が低い状態でハングアップしていたと考えれば説明がつくと思う。

では、修理後のマザーにもっと高消費電力のCPUを取り付けたらどうなるのだろう。 と言うわけで、実際にCPUを交換してみた。 テストに準備できたのはAthlon-1GHz(Thunderbird)とAthlonXP-1700+(Thoroughbred)で、 TDPはmax値でそれぞれ55.1Wと49.4Wである。

各種CPUでの電源ノイズ成分
左図はAthlon-1GHz(Thunderbird)。右図はAthlonXP-1700+(Thoroughbred)。

見ての通り、消費電力が大きい方がノイズ成分が大きくなっている。 もちろん、クロック周波数の高いCPUほど消費電力対応が進んでいるから、 クロック周波数に比例して電源ノイズ成分が増えるわけではないが、 電源ノイズとの相関関係はあきらかだろう。

ちなみに、せっかくだから電源オフ時の待機電力状態も観察してみた。

PC電源OFF時の電源ノイズ成分
PC上から電源を切っても電力消費は完全にはゼロにはならない。
(ちなみに、電源ケーブルを抜けばこのノイズは消える。)

完全に電源ケーブルを外した状態のノイズレベルはスペアナ自身のノイズレベルを示しているわけだけれど、 PCをシャットダウンにした状態では待機電力による電源ノイズ成分がちゃんと見えるのが面白い。

パーツの交換などでは電源をOFFにしただけではダメで、電源ケーブルを抜くのが常識になっているが、 図らずもこの状態での動作が電源ノイズ的に観察できたわけである。

☆まだまだ謎は多いけれど...   
と言うわけで、電源ノイズ成分はちゃんと正しい動作をしている状態が 負荷が一番重いのでノイズも大きいという事がわかった。 異常動作になればノイズも大きいだろうという先入観が最初の疑問を呼んだわけであるが、 コンデンサを付けることで負荷の大きい状態でも正しく動作できる様になったため、 正常動作によって消費電力が増えた状態で動くようになり、 それによりかえってノイズ成分が増えているわけである。

では、OS-CONを追加搭載した場合にノイズが減らない理由がちょっとわかりにくいのであるが、 これに関しては追加して実験結果を報告していきたい。 (現段階では、ノイズを吸収するという意味ではCPUから離れすぎている部分のコンデンサだからだと考えている。)

というわけで、マザーの修理は終了。 完全動作するようになったわけだし、とりあえずは万々歳。

なのだが...今後のテストはソケット370で行う予定だ。

なぜって、CPUコアがシリコンむき出しのソケットAはCPUを何度も取り外しする このような実験には全然向いていないのね。 実際、今回のやり取りでDuronを1つコア欠けさせてしまった。トホホ。

ソケット370なら中古CPUがMHz単価1円程度で買えるし、 何よりダイむき出しではなくちゃんとヒートスプレッダ付きなので CPUファンの交換時にコア欠けする可能性が無い。 マザーボードも一時期秋葉原のジャンク屋で乱売されていた DELLの中古マザーを使えばPC仲間からいくらでも調達できる。 (DELLのマザーは電源が特殊な場合があるが...)

こちらの方が安心して実験できるという訳だね。



1)
当サイトはもともとテレビはあまり見ない人なのだが、ハイビジョン系番組は意外に当サイトの好みに合う番組が多い事を発見。 自然紀行番組は今まであまり見る気がしなかったのだけど、 これは番組のモチーフに興味がないわけではなく画質の悪さが意欲を無くす原因だったというわけだ。 同じ番組でもNTSC画質で写るのと、ハイビジョン画質で写るのは、はっきり言って全くの別次元。ハイビジョン画質なら、 紅葉風景とか、冬山風景とか、雪景色とか、桜風景とか、そのまま額に入れた写真のように静止画像として壁掛け表示したい位の質感である。