レベルより、まず客観視。(2008年頭挨拶)   

2008年1月2日



☆今年の初詣はPCマニアにふさわしい場所・大須観音。   
皆様、新年あけましておめでとうございます。本年も、よろしくお願いいたします。

旧年は月休二日制なんてこともなく、この冬休みも1/29〜1/6までしっかり休める予定。 住所ファイルを誤って1990年代の古い情報で上書きしてしまうアクシデント(住所再入力は結構きつい。)があったものの、 年末は年賀状もちゃんと書けたし、久々に部屋の大掃除もできた。

一昨年は超の付く激務でほとんどゾンビ状態だったわけだが、 旧年は人間らしい生活でOK。 もっとも、仕事とはできる人間に集中するものだそうだから、 今年のお気楽生活は喜んでよいものやら悲しんでよいものやら。 (まさかリストラの前兆現象なんて事は無いだろうな。) それにしても我ながら落差の大きい人生だと思う。

もちろん、いくら休みが自由でも窓際族では意味がない。 適度に仕事が回ってきて、リストラの恐怖に怯えなくてもいいように、初詣でお祈りしよう。

というわけで、今年の初詣はどこへ行こうかな?

正月休みというと、PCマニア「たるさん」が行く先と言えば、実家のあるここ愛知県では当然のごとく大須である。

うん? 大須といえば大須観音ではないか? 悩むことなんて全然なかったな。大須の初売りに行って、そのまま大須観音に初詣すればいいわけだね。

名古屋におけるPCマニアの聖地と言えば大須。大須といえば大須観音。
大須の初売り(左図)に出撃後、大須観音(右図)に初詣。PCマニアにふさわしい初詣ではないだろうか?

というわけで、元旦は大須の初売りに出撃。 同時に大須観音に初詣して、たき火に当たりながら考える。 いや...正直言うと大須観音には危険防止のためか、たき火はなかった。 仕方ないので露店で懐かしの駄菓子を買って食べながら考える。 今年の年頭挨拶はどういうネタにしようかね〜。

う〜ん、たき火の御利益がないせいか、ネタと言うよりは思い出話しか思い浮かばないな。 なぜって、年末から新年にかけて実家に帰って何をしていたかというと、 こんなものを各種読んでいたわけ。 (スパコンの性能評価論文やPC用電源の設計解説等。)

年末に読んでいた論文各種。
旧年の目標は「脳みそのしわ+3本」だからね。

旧年の年頭挨拶は情報の質を考えたわけだけど、 その意味ではプロの論文に直接当たるのが一番質が高いわけである。

ところが、論文というものはプロが同業のプロ向けに書いたものであるから、 内容は当然そのまんまプロレベルである。 つまり、門外漢のアマチュアがいきなりこれを読みこなすのは正直とても難しい。 (プラス、当サイトは英語が苦手だし...)

当然、読解ペースは自分の専門分野の論文を読んでいる場合の数倍遅いペースとなるわけである。 なんか、こんな遅いペースで論文を読んでいると、学生時代に研究室に配属された年を思い出すねぇ。 と言うわけで、ネタを考える前に思い出話で頭の中が一杯になってしまうのだ。

☆学部4年生時代の思い出。   
というわけで、まずは思い出話を少々。

理科系大学生の方や理科系出身の方ならばおわかりになると思うけれど、 大学4年生になって研究室に配属されると必ず論文を読まされる。 しかも、ただ読まされるだけではなく、読んだ内容を研究室の皆に説明する会がある。 これは輪読会とか輪講とか抄読会とか大学によって呼び方は様々だけど、 理科系研究室ならどの大学でも100%必ず行われる授業の一環である。

当サイトの出身大学の場合、週1回のペースでこれが行われており、 また年2回のペースで他研究室合同の会があった。 研究室配属直後はまだ直接に論文なんて読んだことはあまり無いわけだから、 これがほとんどの学生がドツボにはまる地獄の入り口となるわけだね。

この論文の紹介説明なのであるが、研究室配属直後というのは本当に鬼門なのだ。 なぜって、研究室には口の悪い助手やらドクターコースの学生やらが居て、 ほとんどの4年生は叩きのめされるわけ。

この発表における学生の戦闘スタイルというのも実に性格が表れるもので、おもしろい。 ちょっと難しい質問をされるとすぐに戦意喪失する奴、担当のドクターに暗に助けを求める奴(甘い! 実際は助けてはくれない。)、 反撃に出てカウンターパンチを食らう奴、クリンチで逃げ切ろうとする奴、etc.

学部4年生レベルでこれを逃げ切れる学生はほぼ皆無であり、 下手をすると初回質問ではまって秒殺もあり得る。 後にマスター、ドクター、助手と進むような当サイトとはレベルの違う一番優秀な同期生でも、 研究室配属直後の段階では判定負けにするのがやっとという状態なのだ。

ちなみに、当サイトがどういう学生だったかというと... それはもう皆様のご期待通りの学生だったらしい。

質問する側から見ると、すぐに戦意喪失してしまう学生の場合は論争相手としてはつまらない。 また、学部4年生としては精一杯パンチを放っているつもりだけど、 そのレベルでは当然テクニシャンにもハードパンチャーにもなれないんで、 助手・ドクターコースレベルから見れば簡単にガードできる。 その上で、学部生は相手の放ったカウンターパンチをもろに食らって論破されてしまう。 いや、それ以前に論理構成の立て方ってものも知らない段階だもんね。

だが、当サイトはトリ頭だが、倒れても倒れても起き上がってくるタイプなので、 口の悪い助手やドクターコースにしてみると、これはもう「鴨がネギ背負って飛んでくるような学生」だったらしい。

実際、立て続けに浴びせられる質問に対し果敢に説明を試みる当サイトに対し、「いや〜、××君、ガッツありますね〜。」 と言っていた教授も、最後の頃になると「いや〜、××君、ガッツだけですね〜。」と言ったとか言わなかったとか。

このとき教授は助手やドクターコース学生と違って質問する側だけではなく仕切り役兼任である。 だから、助手やドクターコース学生からの質問で学部生がパンチドランカー状態1)になっていたとしても、 ちゃんと予習をしてきたと教授が判断してくれれば 「もう時間も無いから終わりにするけれど、答えられなかった質問は後でちゃんと調べておけよ!」 なんて言われて、いわばリングにタオルが投げ入れられる形で次の発表者と交代となるわけだね。

なぜって、ちゃんと予習をしてきたとしても口の悪い助手は質問のレベルを上げてくるだけなので、 予習をちゃんとしてきてもドツボにはまらないで済むことはあり得ない。 だから、誰かが仕切らないと永遠に終わらないからだね。 (ちなみに、万が一、予習をサボって本論を流し読んだだけで引用文献のチェックもせずに発表すると、 教授はタオルすら投げ入れず、無間地獄の刑に処せられる。)

このとき、学部生の間では「誰が質疑応答で一番ドツボにはまるか?」で盛り上がっており、 ドツボ競争トトカルチョの仕切り役学生が全員の質疑応答時間を計っている。 もちろん当サイトは本命または対抗位の予想になっている場合がほとんど。 実際、予習不足で無間地獄の刑のケースを落馬失格として外せば、 当サイトは毎回優勝またはそれに準ずる成績であった。トホホ。

ちなみに、ドクターコースの学生も一応まだ学生なんで発表をするわけだが、 さすがにこれくらいのレベルとなると助手といえども数回に1回はカウンターを喰らってしまうので、 うかつには手を出さない。

というわけで、まずは簡単な質問でジャブを放って相手の理解度を探り、 苦手そうな分野がわかったらそこから腰の入ったパンチを放っていく。 発表者側もドクターコースともなると論文を読めば一番質問が多そうな領域が事前にちゃんとわかるので、 関連文献でデータを補強し弱点を潰してある場合もある。 誘いの隙で想定通りの質問を誘い、クロスカウンターを放って逆転KOを狙ってくるわけだ。

模範を示すという意味でドクターコースの場合は発表のトリを務める場合が多く、 自分の順番が終わってホッとしている学部4年生は真打ちの登場を見守るわけだ。 (このとき、学部4年生も質問してかまわないわけだが、 自分の発表が終わった直後でアタマ真っ白な状態なわけだし、まぁ、大抵の場合は返り討ちだわな。) 学部4年生と違ってこちらはさすがに秒殺というケースはきわめて希で、 ドクターコースと助手クラスのこのバトル、いやはや学部4年生には見応えのある虚々実々の論戦が展開されるのであった。

いや〜、今から十数年前の懐かしい思い出ですな。

☆必要レベルに基準がない。   
というわけで、少しでもレベルアップを図って直接プロの論文を読んでいるわけだが、 異分野だけにこれが悪戦苦闘の連続なのだ。 もう学部4年生に戻ったような感覚の連続である。

正直言って当サイトの情報関連のレベルとはどれくらいだろう?  自分で考えてみるに、大学の情報学科でいうと、大学入学直後の教養学部学生に勝つ自信はあるが、 卒研生と比較したら明らかに負けるというレベルだと自覚している。 異分野とは言え、論文を「ひえぇ〜。」とか悲鳴をあげながら読んでいるわけだから、 研究室配属直後の学部4年生に届くか届かないかといったレベルであり、 順当に考えて情報学部2〜3年生レベルかな?と思っている。

しかし、論文とか読んでレベルを上げるにしても、どこまで上げればいいのかな?

たとえば、Webなんかは割と酷評系が多いので「この程度の事もわからないで...」なんて 書き込みをよく見かけるのだが、その場合の基準は多くの場合で「現在の自分のレベル」だ。 正直、これは語るに値しない低次元な基準だと思う。

たとえば、当サイトが無理して専門外の論文を読んでも、その筋のプロから見れば今のトリ頭が少しマシになる程度の事である。 「この程度の事もわからないで...」なんて書いている人も、プロから見れば本人自身が「この程度の事もわからない低次元な人」自身だ。

もっと上を見れば、たとえその筋のプロだってセイモア・クレイフォン・ノイマンから見れば格下の存在だろう。 そのフォン・ノイマンだって、この宇宙のどこかに存在するであろう人類より格段に進化した種族のレベルから見れば、 1+1=2をようやく理解したレベルのように思えるに違いない。

逆に下を見てもきりがない。

たとえば、当サイトはスパコンネタを扱うが、よく見かけるアマチュアの意見としてこんな意見がある。 「PS3なんかをネットでたくさんつないで計算すれば、スパコンなんてもう不要。」なんて話だ。

これはプロ間ではもう決着が付いている話である。 そういう分野も確かにあるけれど、それだけですべての分野をカバーできない事はちゃんと定説になっている。 (通信のレイテンシは距離と光速から決まる遅延時間を原理上超えられない。 だから、アプリの粒度がかなり粗くないとこの方法での高速化には限界がある。)

しかし、だからといって当サイトがそういうサイトに直リンを貼って「この程度の事もわからないで...」なんて書いた事は一度も無い。 自分のレベルを評価基準に他人を叩くのは、「人を呪わば穴二つ。」だからね。

もちろん、PC雑誌なんかが意図的に事実をねじ曲げる形で結論を誘導したりといった場合は叩くこともあるが、 これは内容のレベルという意味ではなく、真実を知りながら事実をねじ曲げる形で報道するという動機不純を叩いているつもりだ。 (マルチコアがPC用途では4コア程度までしかリニアに性能が向上しない事は 情報関係の学会情報をちゃんとワッチしていればわかることである。 なぜに提灯記事を書くのかね?)

要するに上を見ても下を見てもきりがない。

プロの場合は一定水準のレベルを維持する基準として博士号等があるわけだけど、これはあくまで学会レベルの話。 (PC雑誌の場合はお金を取っているわけだから、対価に見合う情報を提供する義務はある。)

しかし、学会ならばともかく、Webの個人サイトに基準はない。 上を目指すことは大切だが、一定の合格ラインがあるわけではない。

☆主観を客観に見る。   
と言うわけで、なんか思い出話に花が咲いてしまって、肝心の話を考えるに至らなかった。 レベルアップも基準がハッキリしないようでは、あまり新年の挨拶にはなりそうもない。 こりゃまずいと言うことで、その帰り道、近所の神社に行ってたき火に当たることに...

当サイトがたき火に当たりながら考えるに、 レベルアップを行う以前の問題として、まず、別の基準がある事に思い当たった。 すなわち、第一に客観性に思いをはせるのが大事だと今年は考えてみたい。

たき火に当たって考える...というフレーズのために、
帰り道ご近所の小さな神社にも行ってきた。

正直、意味無いけどね〜。

どういう事かというと...

内容の当否以前の問題として、モノの考え方がそうあって欲しい結論に誘導されないように 客観的に考えるという点だ。要するに動機の問題である。

例えば、自分でいろいろな考察を行ってある結論を導き出したとしよう。 その結論が自分がこうあって欲しいという方向と異なっていた場合でも、 ちゃんと客観的結論を述べることが出来るかどうかと言う問題だ。

Aという論理にデータを放り込んだとき、そうあって欲しい結論に至らなかったとする。 その時、判断基準をBに切り替える。 別件では都合の良い結論が得られたので論理Aそのままで行く。 よくあるダブルスタンダードという奴である。

当サイトは技術談義には壁を作るべきではないと思っており、 純粋に技術や論理に基づく議論なら喧々囂々やっても構わないと思う。 だけれど、その場合は自分の考えに沿って主張していた場合でも、純理論的 あるいは客観データに沿った形で主張を述べる事ができるハズである。

もちろん人間である以上、この手の話は程度問題である。 多かれ少なかれ誰にでも考え方の偏りはあり、人間である以上純粋客観視という視点はあり得ない。

しかし、本人がそうありたいと思うのと、そんなのは無視して意図的に議論をねじ曲げても 恥じないというのではまったく次元が違う。

今年の目標は去年の目標をもうワンランク上げるのではなく、 逆にもっと根源的にワンランク下に下げて見ることにした。 つまり、客観視への努力だ。 かっこつけて西田幾多郎風に言うなら「主観を客観に見る。」って感じかな?

当サイトが何かを書く場合は、一定の主張に合うように後付で論理を組み立てないこと。 これらは、内容のレベル以前の問題としてとても大切なことである。

いくら知識レベルを上げられたとしても、少なくともそれがサイエンス&テクノロジーに関する話題である限り、 結論から組み立てる論理は一切あり得ない。 「粗にして野だが、卑にあらず。」という名文句があるけれど、そこまでは行かなくても アホではあっても、詐術ではない...と言う点を今年の目標にしてみたいと思う。



1)
脳みそを揺さぶられて頭の中が真っ白になる...という意味では、 「KOパンチ」も「難しい質問」も同じ破壊力を秘めている。 発表終了直後、ほとんどの学部4年生はアタマ真っ白状態である。