導電性高分子コンデンサに3つの利   

2007年11月20日



☆当サイトの「芸術の秋」は日展。   
ようやく秋も深くなってきたが、秋と言えば「食欲の秋」。 と言うわけで前回は巻頭余談がお蕎麦の話だったわけだが、今回は「芸術の秋」が余談である。

当サイト管理人である「たるさん」は毎年日展に行っているのだが、 文展から受け継がれた日展が100周年になったのを記念して今年から会場が上野の東京都美術館から乃木坂の国立新美術館に変わった。 秋葉原からは遠くなったので芸術の秋のついでに秋葉原って訳にはいかなくなったのが当サイト的には少々面倒。 上野なら鑑賞後すぐに秋葉原へ直行できるわけだが、今回からは地下鉄で何駅も移動しなければならないわけである。 当サイト的にはちょっと行きにくい場所になった。

ただし、良いこともある。展示場が広くなって芋洗い状態が解消されたのは本当にありがたい。 人混みの中で芸術作品を鑑賞するってのは疲れるからね。(他人の視線を遮らないように移動するだけで気づかれするから。) また、会場が広くなったせいもあるのだろうけど、今年はお気に入りの作品数が増えた。 審査員のご意見をWebで見た限りでは「内容は今ひとつでありました。」との事だが、 個人的には日本画で例年よりお気に入りの作品が多かった。

日展鑑賞も当サイト的な財政状態を反映していて、学生時代にはお金がないので帰り際にはアートガイド的なものしか買えなかった。 だが、会社勤めが始まってからは毎年日展図録の日本画版と洋画版を買うことができるようになった。 図録だとその年の全入選作品が掲載されているので、巨匠の作品しか掲載されていないアートガイドに比べると 自分のお気に入り作家の作品が必ず見られるのは嬉しい限りだ。

個人的には芸術の入門としてはお勧めできる公募展だね。 行ってはみたけれど、鑑賞後に???という気分になるような玄人向けの抽象絵画はあまり無い。 一部に選考基準が保守的との批判もある日展だが、保守的というのは決して悪い意味だけを含んでいる訳じゃないと思う。1)

ともあれ、当サイト流の芸術の秋はこれで終了。 日展が終わると冬入りというのが当サイト流の季節感である。

☆帰ってから気がついた...   
と言うわけで日展を見てきたわけだが、遠回りとは言え当然のごとく秋葉原へ行ってきた。 今回の戦果だが...メモリが大幅に安くなってきたのでメモリも1GBを2枚購入。 ほぼ最安値を確保できたんだけど、実はちょっと問題が...

実は今回のネタは久々の電源ネタなのである。 電源ネタは当サイト的には由緒あるネタであり、実はスパコンネタに次いで人気ネタでもある。 しかし、なんせ実験を伴うネタだから時間に余裕がないとできないネタでもある。

去年は仕事があまりにも多忙で週末は完全に埋まってしまい時間がとれなかった。 と言うわけで、このネタは一時的に中断状態になっていたわけ。 だが、今年からは激務のプロジェクトが終了したことで検討の時間がとれるようになった。 と言うわけで、久々にいじってみようと思ったわけである。

また、中古のパーツが安くなったことも大きい。 秋葉原のジャンク屋ならば数百MHzクラスのCPUを缶コーヒー2〜3本分で買えるわけで、 失敗を恐れずにいくらでも使い捨て覚悟で実験ができる。

で、以前改造したパスコン強化CPUで再実験を...と思ったわけだが、なぜかマシンが起動しない。

おや? 何で??? と思ってケースの蓋を開けてビックリ。 最近はあまり聞かなくなった台湾製電解コンデンサの爆裂事故が起きているではないか?  台湾製問題児電解コンデンサは電圧をかけていなくても爆裂するんだな、これが。 う〜ん...中古CPUは缶コーヒー数本分で買えても、中古マザーはそういう訳はいかないんだよね。

と言うわけで、話は最初に戻ってコンデンサの購入話になるわけだ。 電源ネタをやる上で高周波対応ばかりを考えていたので、低周波用のコンデンサを補充していなかったのだ。 実験の前にまずはマザーを修理しないといけないわけだが、手持ちの電解コンデンサは以前の修理で品不足のまま補充してなかったのがそもそもの間違い。 古いマザーだから最近は起動する事が全然無くて、秋葉原から帰ってきてから故障に気づいたというわけだ。

古いマザーだから壊れてもOK的なノリで実験しようと思ったら、そもそも最初から壊れているとは...トホホ。

テスト用マザーが最初から故障!
見事に電解コンデンサが爆裂。一見まともな物もよく見るとすでに兆候が...
テスト中に壊れてもOKなやつ...なんて考えていたら、なんと最初から壊れてた。

☆導電性高分子コンデンサの3つの利点。   
ところで、最近はマザーボードで使われる電解コンデンサの種類が変わりつつあることに皆様はお気づきだろうか?  そう、電解液を使ったアルミ電解コンデンサの使用が減って、 高分子固体電解質を使った導電性高分子コンデンサの使用が増えているのだ。

もちろん、高性能コンデンサだからといってその分以上に総容量を減らせば意味はないわけだが、 一般論として言えば導電性高分子コンデンサを使用したマザーは通常のアルミ電解コンデンサを使用したマザーよりも お勧めできると思うし、当サイト的にはこれは三つの意味でとてもすばらしいことだと思う。

一つは、導電性高分子コンデンサはきわめて低ESRであってマザーボード上の電源品質を高めることが可能であること。 (高性能であるが故に使用数を減らして、電源性能を維持したままトータルコストを下げる方向性もある。 この場合は同じ性能のマザーをより安く買える。)

アルミ電解コンデンサは電流媒体がイオンであるためそもそも有効質量が大きく、その上に溶媒和の影響も受ける。 これはたとえて言うならメタボリックなおデブが泥の中でむりやり反復横跳びするようなものである。 (元々素早い動きが苦手な上に足元の抵抗が大きいので、むりに 反復横跳びのペースを上げると「そんなに早く動けっかよ〜。ボケぇ!」と逆ギレする。これが過剰リップル電流による破裂に相当するわけだね。) このためアルミ電解コンデンサでは、どうしても電子(またはホール)のような電流媒体の高速移動が動作原理上不可能なのである。

電圧に対する電流の応答性が悪いということは、つまりコンデンサ内部での損失が大きいという事であり、これはコンデンサ本体の発熱を意味する。 これをごまかすためにアルミ電解コンデンサではエネルギー的に必要な容量以上の容量を搭載しなければならない。 要するにESRが高い分を並列接続によって見かけ上低抵抗にするのである。

また、電解質の溶媒は基本的には有機溶媒であるが、低ESR化のために水分を加えるという手もある。 だが、今度は信頼性の低下が心配になる。 水分には(ちょっと難しい話で恐縮だが)プロトン・トンネリングという作用があり、イオンの見かけ上の易動度を上げて電解質を低ESR化できる。 だが、欠点として高温で内部のアルミ箔を浸食する作用があるためである。

結局、低ESR化はコンデンサの複数並列化による物量作戦に頼ることとなり、 マザーボード上ではアルミ電解コンデンサの容量はCPUに供給する必要エネルギー量よりもはるかに大容量が搭載されている。

だが、もしESRの非常に小さいコンデンサであればこれほどの大容量は必要ないとも言える。 導電性高分子コンデンサはこの期待に応えられる製品であり、こと低ESR化という意味では完成の域にある。 先の例でたとえて言うなら、導電性高分子コンデンサは反射神経の良いオリンピック級スプリンターを整った陸上競技場で反復横跳びさせるようなものである。 現実問題としては、導電性高分子コンデンサはもはやESRではなくESLが性能限界を決める領域まで入り込んでいるとも言えるだろう。 (余談だが、NECトーキンのプロードライザという製品がある。この製品はすばらしい周波数特性を誇っているが、 このESLの限界を構造的な革新で乗り越えることで導電性高分子コンデンサの限界域を高周波領域まで拡大した製品といえる。)

二つ目は電解液を使っていないので通常のアルミ電解コンデンサに比べて寿命が長く故障の心配が少ないこと。

上記のような電解コンデンサ爆裂事故は導電性高分子コンデンサでは非常に発生しにくい。理由としては 物質の三態として固体・液体・気体があるが、一般的にはエレクトロニクスと一番相性が悪いのが液体だからだと思う。 液体は当然のごとく漏洩を心配しなければならないし、それでなくとも液体の採用は信頼性が低下する場合が多いからである。 先にも述べたが、電解液の低ESR化には水分の添加が有効だが、これはコンデンサの信頼性を下げる副作用がある。 逆に一番筋の良いのは固体。考えてみればわかるけれどエレクトロニクスの別名はソリッドステートだからね。(笑) つまり、通常のアルミ電解コンデンサでは性能と信頼性がトレードオフの関係になるが、 導電性高分子コンデンサにはこのようなトレードオフは基本的には無い。 導電性高分子コンデンサは半導体と同じソリッドステートだから、当然グッドな方向性なわけである。

三つ目は導電性高分子コンデンサは日本メーカーの独壇場であることだ。

DRAMや液晶パネルでは韓国・台湾勢の追い上げが厳しく、日本勢の技術的な優位性は失われつつある。 現実に量的にはもはや追い越されているしね。 しかし、実は意外なことに導電性高分子コンデンサの分野は日本勢の独壇場なのである。 少なくとも当サイトの知る限りでは海外勢で導電性高分子コンデンサを量産しているメーカーは無い。 (日本勢の海外工場での量産はあるが、技術漏洩を心配してこれさえもごく最近に始まったことである。)

海外勢が追いつけない理由であるが、これはDRAMや液晶パネルのような生産規模や投資規模の問題ではない。 純粋に日本勢の技術力が優れているからである。 導電性高分子コンデンサの製造には通常のアルミ電解コンデンサよりも非常に高い技術力が必要で、 海外勢は投資資金はあっても導電性高分子コンデンサの量産に(今のところ)手が出せない。 特に高い技術力が要求されるのは、表面処理したアルミ箔の上でモノマーの重合反応を行って 導電性高分子とする工程で、この工程は秘中の秘、ノウハウの固まりである。

コンデンサというと半導体よりも一見ローテクのように思われるかもしれない。だが、 ハイテクの定義にはいろいろあるかと思うが「他社が技術的に容易に追いつけない。」という意味では 意外に思うだろうけれど半導体・液晶パネルの製造よりもずっとハイテク産業なのである。

また、導電性高分子コンデンサはアルミ電解コンデンサよりも高価なのが最大の弱点で、 従来はこれがマザーボードへの採用を控えさせる悪要因となってきた。 しかし、ここ最近の普及は導電性高分子コンデンサの低価格化の影響が強いと言われている。 コストダウンに対する技術力でも日本勢の優位が続いている分野でもある。 (も一つ補足すると、導電性高分子コンデンサの基本概念はほぼすべて日本発であり、日本発のオリジナル技術という意味でも意義がある。 そもそも導電性ポリマーそのものが白川英樹先生の発明によるものであり、言うまでもなくノーベル化学賞受賞研究である。)

と言うわけで、導電性高分子コンデンサの普及は良い意味で日本経済に活を入れるのだ。

☆簡単に追いつかれた太陽電池、簡単には追いつかれない導電性高分子コンデンサ。   
ここでちょっと本題からはずれるが、太陽電池事業との比較をしてみようと思う。 このところ経済誌を見ていて気づいたのだが、この海外勢に対する技術的な耐性は 太陽電池事業の急速な海外勢の追い上げと表裏一体だと感じたからだ。

太陽電池事業は導電性高分子コンデンサ同様に今まで日本が世界をリードしてきた分野である。 さらに、地球温暖化が叫ばれる今、その重要度は従来より格段に増している。 特に当サイト的に注目しているのは太陽電池の期待発電量が太陽電池生産のための消費エネルギーをついに上回った点である。

今までの太陽電池は、寿命を迎えるまでに発電できる想定発電量が太陽電池生産で消費されるエネルギーを下回っており、 一見エコなようで実は太陽電池生産のために必要なエネルギーをそのまま発電に使った方が効率が良かった。 つまり、太陽電池がエコだと言われていたのはウソだった時代が長かった。

しかし地道な改良の結果、ついに太陽電池は発電量が生産に必要なエネルギーを上回り、真の意味でエコになったのである。 自然エネルギーはエネルギー密度が低く時間変動も大きいので発電用としては役に立たないと言われた時代が長く続いてきたが、 ようやく日の目を見そうな時代になったのだ。

ところがである。 ようやく高い壁を乗り越えてついに普及時代へ...と思った瞬間、海外勢の猛烈な投資攻勢で日本勢の市場シェアは 一気に下落しつつあるのだ。今のトレンドが続けば、せっかく長い日陰時代を地道な研究開発でくぐり抜けたにも関わらず、 おいしい果実だけを海外勢に奪われるという事になりかねない。

なぜそんなバカバカしい事になったのだろうか?

それは、太陽電池事業では太陽電池本体の製造事業と生産設備の製造事業が分離してしまった点が一番大きいと思う。 つまり、ノウハウの無い海外勢でも、製造設備を事業とするメーカーから製造設備一式を買えば、 その機材の中に過去日本勢が苦労して開発した製造ノウハウがぎっしり詰まっているからだ。

これと対照的なのが導電性高分子コンデンサの製造なのである。 少なくとも当サイトの知る限りでは導電性高分子コンデンサの製造設備を外販している製造器メーカーは無い。 特に心臓部であるモノマー重合工程は電解コンデンサメーカーの究極奥義であり、 製造設備が外販されない以上、海外勢は独自開発するより無いのだ。

で、結果として独自技術で導電性高分子コンデンサを開発した海外勢が当サイトの知る限りにおいては存在せず、 また、全く経験の乏しいはずの太陽電池事業に海外勢がいきなり膨大な投資攻勢をかけられる現状は、 日本の技術開発はどのようにあるべきかを如実に語っているような気がするのである。

そう...当サイトが思う日本の技術開発のあるべき姿とは、製造と製造機器の非分離である。 もちろん、全工程の製造機材をすべて自社開発というのは現実的には無理があるわけだが、 その製品の心臓部は何かを見極め、コア技術を製造機器メーカーに外注しないこと。 コア技術は完全に自社開発して、少々経費がかさんでもブラックボックス化することであると思うのだ。

☆導電性高分子コンデンサ化を試してみる...予定。   
と...能書きをたれたところで自分のマザーボードを見てみると... 通常のアルミ電解コンデンサが使われているではないか。 せっかくだから導電性高分子コンデンサに置き換えてみようかね?なんて考えてみた。

もちろん、本来の回路は通常のアルミ電解コンデンサ向けに設計されているわけだから、 単純に置き換えることが有効かどうかは一概には言えない。 特に電圧フィードバック回路への負帰還の位相は問題である。 最悪の場合、万一位相が反転するようなことがあればPWM制御回路は異常発振してしまう。 アルミ電解コンデンサでは、なまじESRが高いことが周波数の高い領域での自然発生的な ダンプ回路になっているわけで、その意味では設計的に楽ができるのだ。

安全策としては容量値を減らすことである。(そうすればトータルでのESRが増える。) もちろん、容量値を減らしすぎると導電性高分子コンデンサを使用した意味が無くなってしまうから、 リスク回避と効果の両面を睨みながら調整する事になる。 大雑把な目安としては改造前後のESRが同じ程度になるように容量値を低下させ、そこから様子を見ながら容量を増やすことだろうね。 同じ容量値まで増やさなくても十分に高性能化するハズなので何とかなるだろう。 (自分でマザーの電源回路を調べて位相補償回路を再設計できる腕があればベストだが、化学屋の当サイトにさすがにそこまでの腕はないので。)

そんなわけで、早速修理を開始...で、話が最初に戻るわけだが... あぁ、導電性高分子コンデンサを買い忘れた〜。

...本題は次回と言うことで、今回は前振りでお願いします。 本当は週末にコンデンサを買いに行って、修理してから話を書こうと思ったんだけど、 本日、会社のPC仲間に会ったら「早くWebサイトを更新せぇ。」と怒っておりましたんで...



1)
もっとも、ずいぶん昔の話だが森田茂画伯のアフリカを題材とした作品があって、 最初はパッと見、黄色の陰影が眼前にあるだけで一体何を書いてあるのか全然わからなかったという経験がある。 あんまり記憶が確かではないが、作品名は確か「アフリカの砂嵐」だったかな?

で、視線を変えながら数秒間作品を見つめていたら、突然、エジプトの古代遺跡と砂漠を行くラクダの隊商の衝撃的な映像が眼前に飛び出てきた。 いや〜、ビックリしたぁ。(画集だと全景を一瞬で視界に納められるから何とかわかるが、美術館のように至近距離だとわからないんだな...これが。)

見えない...いや、眼前に絵はあるわけだから見えてはいるハズだが、認識できないもの。 それが突如認識できるようになり、しかもそれが芸術的に完成の域に達していると、もう後頭部をバットで殴られたような衝撃的な印象を受けるわけだね。 それは、あたかも視界の効かない砂嵐を歩いているうちに突如エジプトの古代遺跡にばったりと出くわしたような印象を与えるわけで、 あまりにもよく練られた視覚効果に「ほぇ〜。なるほど〜。」と感動。

あとで思ったけど、「見える」という能力は視覚脳力の問題だけではなく頭脳の認識問題なんだね。 絵画というものは映画と違って動かないから時間的な変化は無いという先入観があるわけだが、 動かない絵画で時間的変化を表現するという発想はどこから出たのか、これはもう恐るべき才能だなと...

あの絵をコンピュータでパターン認識させることは、最新IT技術をもってしても絶対に不可能だろう。