本日はひな祭り。(真壁のひな祭り編)   

2007年3月3日



☆旅行気分に必要なもの。   
さて、本日はひな祭りだ。

寒い季節はお祭りが一番少ない季節だが、お祭り見物好きの当サイトには厳しい季節でもある。 そんな中、先日数少ないこの時期のお祭りとして真壁のひな祭りに行ってきた。

PCネタというのは技術的にはおもしろいけど、残念ながらWebネタとしては季節感のもっとも乏しいジャンル。 なので、本日は3月3日を記念した息抜きネタとして非PC系お祭りネタを掲載してみたい。 (PCマニアとは言っても日本人なんだから、花鳥風月・雪月花といった季節感は是非味わいたいよね。)

真壁と言っても全国区ではあまり有名ではないかもしれないが、 筑波山の麓、桜川市にある旧家や蔵が懐かしい古き良き街並みで有名なところだ。

ひな祭りは歴史は浅く今年で5年目だそうだが、古い街並みをプラプラと歩いて回るのは大好きなんで、 ひな祭りの有無にかかわらず一度行ってみたいと思っていた町である。 当サイトの住処である成田市からは車で約2時間弱。 流しドライブで日帰り旅行気分を味わうにも適したお気楽な距離である。

この、距離というのは意外に大切で、どんなにすばらしい所でもあまり近いと旅行気分が味わえない。 例えば、香取市佐原の山車祭りは祭り自体はとてもすばらしいので毎年行っているし、 街並みもCMの撮影に使われるほどすばらしい風景だが、車で約20分と近すぎて当サイト的には旅行気分には浸れない。

人によって感覚も異なるのだろうが、当サイトの場合、最低でも1時間半位は車を走らせないと 「遠くにきた〜。」という気分になれないのだ。

と言うわけで、ここ真壁は近すぎもせず、遠すぎもせず(一泊旅行だと¥がかかるし。)、 また筑波山に温泉を控えるベストポジションでもあるのだ。 (旅行帰りに露天温泉は基本。)

さて、渋滞で有名な国道6号線を避けて、阿見町からつくば市を突き抜けるコースで筑波山を目指す。 ここ北関東では筑波山は目立つ山だから道に迷うこともあまりない。 国道408号を抜けて県道つくば益子線に入ると、あとは一本道だ。 真壁町にはひな祭りに備えて案内板や駐車場が整備されているので、すぐ近くに無料で駐車する事ができた。

そうそう、つくばエクスプレスが開通して東京の人もとても行きやすくなった。 秋葉原から快速ならつくば駅まで45分。つくば駅からのバスの本数が少なめなのが弱点だが、つくば駅からは40分強だそうだ。 はっきり言って当サイトが電車で秋葉原に行く時よりも近い。

☆古き良き街並みとひな祭り   
真壁の街並みを歩き始めてまず思ったこと。 物心ついた頃にタイムスリップして戻ってきた...という感覚...

古き良き街並みとは言ってもいろいろあって、 例えば以前紹介した妻籠、奈良井といった街並みは 江戸末期から明治初期を彷彿とさせる街並みである。 レトロないい雰囲気の街並みではあるが、 当たり前のことだが実際にそうした街並みで子供時代を過ごした経験が無いので、 懐かしい思い出を思い出すことはない。

しかし、当サイトにとっての真壁の街並みとは、今は消え失せてしまった 幼稚園時代の思い出に帰ってきた...という感覚である。 当サイトの生まれは新興住宅街であるが、子供の頃、 旧市街地の友達の家に遊びに行くと周囲はまさにこんな感じであった。

本格一眼レフからカメラ付き携帯まで、観光客全員がにわかカメラマンになる町。
小学生時代には消滅してしまったレトロな赤いポストが懐かしい。母親に手を引かれて初めて書いた年賀状を投函しに行ったっけ。

また、真壁は蔵の街としても知られており、下記の通り多くの蔵が保存されている。 蔵が多いと言うことは、その昔には商工業の町として栄えていたことを示しているんだよね。

実際、真壁は石の町として知られていて、今でも石の切り出しが地場産業の一つである。 あとで述べるけど、今回のひな祭りでも石造りのひな人形なんてのが出展されていて、 一級技能士の資格を持つ石工の方々が腕の冴えを披露していた。

レトロな街並みの要、あちこちに蔵のある街。
旧家には歴史的繁栄を象徴する蔵がある。

蔵以外にもレトロな建物はいくつかあって、 例えば旧真壁郵便局(写真下中央)とかは本当に味のある建物だ。 作られた折にはおそらくもっともモダンな建物として建築されたのだろうが、 今となってはその無骨なコンクリートそのものの造りというのは、 まさに昭和初期の風味そのものである。

他にもめがね屋さんの建物が味があって良かった。 この建物も昭和初期のレトロな雰囲気だね。

昭和初期を彷彿させるレトロな建造物たち
中央は旧真壁郵便局。昭和2年建築で、最初は銀行として作られたのだとか。今は案内所として再利用されている。
一番右の蔵はレンガ積みに至るまで一般的な長手積みではなく正統派イギリス積みであった。さすがだ。

なんだかひな祭りなのにひな飾りの話題になかなか進めないがお許しを。

なんせこんな街だから、「これなら時代物のドラマでも撮影できそうな街並みだな〜。」 と思いながら歩いていたら...うん? あれれ...

「ドラマのロケでもできそうな街並みだ。」と思って歩いていたら、なんと本当にロケをやってた。
レトロな派出所を使って撮影中。テレ東のサスペンスドラマの撮影なんだそうだ。

あっ、あれは...ひょっとして...

なんと本当にドラマのロケをやっていた!

町の人に聞いてみたら、ここ真壁ではよくドラマなんかの撮影が行われるそうで、 そんなに珍しいことではないそうだ。さもありなん。

☆おひな様が百数十種類。   
で、ようやくひな祭りの話になるわけだが、 真壁のひな祭りで飾られるひな飾りは全部で百数十種類にもなるそうである。 まじめに全部見ていたら日が暮れてしまうので、道すがら見物できるものだけにするが、 それでも4時間以上クルクルと歩き回ることとなった。

真壁自体はそれほど大きな市街地を持つわけではなく、 1km程度の比較的小さな街である。 普通なら1時間半もあれば十分にすべて歩ける広さだ。 しかし、ちょっとした古民家にも何気なく飾ってあったりして、 古い味のある街並みとひな飾りを見て歩くと時間の経つのをつい忘れてしまう。

おひな様がいっぱい。
左は大正7年作のおひな様、中央は階段をひな壇に使用。(2階へ行くときはどうするのかな?)

飾り付けも工夫を凝らしていて、玄関から真っ直ぐ伸びた家の階段に飾り付けたり、 土間の横に時代順にいくつも並べてあったりした。 下右の写真はおもしろくて、1階のひな飾りを見たあとで2階への吹き抜けを見上げると、 吹き抜けの周囲に飾られたおひな様がこちらを見下ろしていた。

江戸時代のものはさすがに色あせて古くなっているものが多いが、それがまた歴史を感じさせていい。

左は江戸時代の古風な古いおひな様。(色あせ具合が歴史の重み。)
右は、古民家の吹き抜けから上を覗くと、おひな様がこちらを見下ろしていた。

時代的にはやはり平成・昭和のものが多いが、大正、明治のものも結構ある。 中には享保雛に代表されるような江戸期のひな飾りもあったりして、 ここまで来ると歴史の重みというか、かなりの見応え

おもしろいのは、昔のおひな様ほどデフォルメが効いていかにも人形しているのだが、 最近の作になるに従ってリアルな生き人形系に近づく傾向があることである。 単に製作技術のレベルが上がっただけとは思えないものがあった。

時代物のひな人形を歴代展示
丸くかわいらしい左の作品は大正13年作、中央と右は江戸、明治、大正と歴代の作品が一同に。

先ほどにも簡単に述べたのであるが、ここ真壁は石の町でもあり、 一級技能士の資格を持つ腕の良い石工さんが石造りのひな人形を展示していた。 これが、顔の丸みとか石造りとは思えない滑らかさで、おもしろい。 他にも花屋さんが花人形のひな飾りを出展していた。

石造りのおひな様と花のおひな様
左、中央左は一級技能士の資格を持つ石工さんが制作とのこと。腕が冴える。
中央右はお花屋さん制作の花ひな人形。右は案内板に貼ってあった折り紙ひな人形。

興味深かったのは、ひな祭りは元々観光客誘致のための 町おこし的な手段で行われたのではないと書かれていた話。 街にきていただいた方々に対する感謝の気持ちを表すためのものだそうだ。

この手の話は立前である場合も多いのだが、 確かに保険代理店とか美容室といったひな祭りで 恩恵があるとは思えないお店でもひな飾りを展示していた。 おみやげ屋や飲食店ならば観光客が来れば儲かるわけだけど、 真壁に観光に来たついでに自動車保険に入っていこうとか、 髪を切っていこうという人はいないわけで、そういうお店も積極的にひな祭りに参加しているのは ひな祭りがお金を稼ぐ手段ではないという話に信憑性がある証拠だと思う。

とは言っても、ここまで観光客が集まるなら、これを町おこしに使わない手も無いと思う。 地方と都会の経済格差は広がる一方なので、地方経済活性化は地方財政の面からも急務である。 その意味で、真壁のひな祭りは古き良き街並みとのマッチングという好例を示していると思う。 大規模開発で観光地化するのは論外だが、今の街並みのまま口コミで客が集まる状態なら、 それで正々堂々と観光収入を得て街を活性化させればよろしいかと...

☆真壁はすいとんが旨い!   
さて、こんな旅行では地元の名物も楽しみだが、 車なので残念ながら地酒はお持ち帰りのみ。 到着直後の腹ごなしには軽くそばを食べたが、 ここ茨城は全国でも一二を争う良質なそば粉の産地なのだそうで、 そばの本場といえば信州だとばっかり思っていたので少々驚いた。

当サイトはそばについては全然シロウト1)なので、帰宅後にネットで検索してみた。 そうしたら、茨城産のそば粉は「常陸秋そば」と言って、 それを使ってそば打ちしている事を売りにしている名店・老舗そば屋がたくさんある。 それほどそば通には名が知られているらしい。 そば通のサイトにも茨城の特に旧水府町や金砂郷周辺は全国でも最上級のそばの産地と書いてあったりして、 どうやらこの話は本当みたいだ。

意外...と言っては茨城のそば栽培農家に失礼かも知れないが、 そば通にこそよく知られているが我々一般人にはあまり知られていないそばの本場なんだね、これが。 (隣県に日本でも一二を争うそばの名産地があった事を今まで知らなかったとは不覚だったなぁ。)

で、4時間以上も歩き回ったので、帰り際にも軽く一食することに。 真壁はすいとんが名物らしいので、これを食する事にした。

すいとんというと、戦時中の代用食というイメージがあって、 生まれてこの方食した回数はたぶん一桁だろうという、 当サイト的には珍メニューの一種である。 失礼ながら名前からしてあまり旨そうな印象が無い料理なんだけど、これは嬉しい誤算だった。

食べたのは二葉というお店の粋(すい)とんセット。 本来は地元民御用達といった観光客とは無縁な感じのお店で、 客が10人も入ったら満員の小さな小さなお店である。

真壁は北関東なので醤油味の濃い田舎風味を想像していたのだが、この予想は嬉しい意味で外れた。 食べてビックリなのだが、まるで京料理でも食しているかのようなとても上品で洗練された薄味。 出汁も関東風の濃い醤油色ではなく、ほぼ無色透明。 北関東の味付けってこんな風味だっけ?

すいとん自体も旨いが、特に丸々1個入ったカブに出汁が染みていてもう最高。 ご飯もじゃこ飯で、これがまたほんのりといい風味(山椒系の隠し味?)がして相当に旨い。 前半戦でそばを食べていなければもう一食追加を頼むとこだね。これは。

二葉の粋(すい)とんセット
これは掛け値無しで旨かった。ちなみに、そばは写真取り忘れました。すんません。

☆締めは露天温泉で。   
というわけで真壁を後にしたわけだが、日帰り旅行の締めは当然温泉である。 真壁は筑波山の麓にあるので、筑波山に向かって少し走るだけで温泉には事欠かない。

特に天然温泉の露天風呂がええじゃないかというわけで、 筑波温泉ホテルというとこで露天風呂に入ってきた。 ここは単純泉なので硫化水素臭とかは無く、泉質的には普通のお風呂とあまり変わらない感じなのだけど、 別途購入しなくてもタオル代が料金に含まれていたのはグッド。 ちょっとぬる湯なのが関東の熱湯風呂が苦手な当サイトにはベストマッチであった。 (猫舌でぬる湯好きなもんで...)

それに露天風呂なのに人が少なかったので、貸し切り気分なのがとてもお気楽でいい。 いくら露天風呂でも芋洗い状態では気分台無しだもんね。

温泉でポカポカの体に顔だけ寒風が吹きあたる感じも冬の露天温泉の醍醐味でたまらない。 ふうぅ〜、いいお湯〜。

それにしても、真壁のひな祭りは観光スポットとしてこれからもっと人気が出ると思う。 真壁のひな祭りは味のある昭和のレトロな古い街並みに興味のある方なら とてもお勧めのスポットである。 おそらく、観光客数も年々順調に増えているのではないかな。2)

目立つレジャー施設とかは全く無いので、 レトロな建物を見て、蔵を見て、おひな様を見て、ごく普通のローカル飲食店ですいとんを食べるだけになる。 要するにいい意味での単なる田舎町なんだが、今では逆にそれがとても貴重な存在だ。

今の日本はちょっと人気が出ると巨大開発をやってレジャー施設化してすべてを台無しにしてしまうわけで、 観光地感が薄くそれが素朴でレトロな感覚を映えさせている真壁は真の観光地として貴重だと思う。 あの、「懐かしの田舎町」という好印象をいつまでも続けて欲しいものだ。

最近は日本人の季節感も薄くなって、女の子がいる家でもおひな様を飾らない家も 増えていると聞くが、それが逆に真壁の価値を年々高めていくのだろうね。



1)
そばについてはシロウトではあるが、そばは大好物でもある。 ただ、そば通と違って「三たて」(挽きたて・打ち立て・茹でたての意。)しか許さないとか、 「そば本来の香りを殺すからわさびは入れない。」とか、 「腰が弱くなるからかけそばは食べない。」とかのこだわりはない。 旨いと思えば、ただそれでOK。

数年前、青森に旅行した時にむつ市で焼き干しの出汁を使った すごく薫り高く旨いそばを食べたけど、焼き干しの香りがそばの香りより強くても全然不満は無かった。 焼き干しの香りはとても食欲を誘う芳ばしい香りなので、そばの香りより強くても何ら問題無いと思ったのだ。 (あの薫り高いご当地そば、もう一度食べてみたいぞ。あれはお世辞抜きで旨い。)

余談だが、当サイト我流の食べ方としてそば湯の混ぜ方がある。 そば湯は静かに置いておくとそばの成分が沈殿して下の方が濃くなるので、 上澄みをそばとっくりに移して、下層部分だけをそばつゆに混ぜて楽しむのだ。

そば湯は時間が経つと成分が全部沈殿してしまって、普通にそば湯をそばつゆに混ぜると 白湯でそばつゆを薄めて飲んでいるのと同じになってしまうけど、 これならそばの風味が無くならないもんね。しかも、箸でかき混ぜる方法よりそば成分が濃縮されてグー。 そば通の方々からは「不作法だ〜。邪道だ〜。」って怒られそうだけど。

2)
一つだけ苦言があるとすれば、それはトイレが不足していることだ。 これから観光客がもっと増えるとすれば、トイレの増設は欠かせないところだ。 おそらくこんなに観光客が押し寄せるとは町自体が思っていなかったためだろうけど...