シンプル vs 複雑の2案!?(京速計算機考4)   

2006年10月11日



☆京速計算機が2案に絞られる。   
さて、今回も更新間隔が延びたが、またも中国某所に出張していたためだ。 ホテルの周囲を20分ばかり散歩しただけだが、今回は仕事の合間に少々写真が撮れたので掲載してみたい。

おもしろいのは、日本企業を誘致するための看板である。 写真の通り日本人向けに日本語が書いてあるのだが...なんだか日本語が怪しい。(笑) (「外国商人に対して賃貸しすゐオフィス。」ってなに?  堺の商人じゃあるまいし「外国商人」なんて言葉は今時時代劇位でしか使わないよね。しかも、「」と「」がごっちゃになってるし...)

あとは、走っている自動車がピンからキリまでもの凄い格差があることである。 ベンツやアウディー(しかもでかい方)がガンガン走っていると思えば、 昭和30年代を彷彿とさせるオート三輪トラックがドコドコと焼き玉エンジンのようなけたたましい音を立てて走っていたりする。 いや、現地スタッフによると早朝にはオート三輪どころかロバがリヤカー引いているのも 見かけるらしいから、実質は昭和30年代どころではない。 日本では格差社会化が問題になっているが、そんなものはこの現実の前では比ではない。 とても共産主義国とは思えない、とてつもない所得格差がそこにはあった。

繁華街は道すがら少々歩いただけだが、日本と全く遜色のない品揃えも十分な巨大デパートがあるかと思えば、 写真の通り子供の頃を彷彿とさせるレトロな繁華街もあった。 ちなみに、当サイト管理人は日本風近代デパートよりレトロな繁華街風景の方が居心地良く落ち着く。 物心ついた頃には日本もこんな風景だったんだよね。(あっ、歳がバレるね。)

今回は結構一流ホテル住まいでした。(でも、やはり缶詰生活だけど。)
ホテルからの景色では工事中のビルが多い。やはり中国は経済発展中だ。
 
なんか子供の頃を思い出す懐かしい繁華街風景。(写真左)
右の写真は日本人ビジネスマンを当て込んだ賃貸オフィス付きホテルの意味なのか?(日本語が変。)

しか〜し、土日を含む出張なのにやはり電子城(中国版秋葉原)へ行く暇は全く無し!!! (日本人サラリーマンの鏡というか...最近、キリギリス人生に憧れてます。)

あぁ、中国の秋葉原、電子城ネタを掲載できる日は来るのであろうか...フゥ。(ため息)

..........

さて、今回は読者から依頼の多い京速計算機ネタである。 (こんな専門性の高いネタ、なんでシロウトに書いて欲しいんだろ?と思うのだが... x86-CPUネタの方がアマチュアらしいネタと思うんだけどね。)

それはともあれ、 次世代スーパーコンは富士通,NEC+日立の2案を比較検討へ によると京速計算機のプランが2案に絞られたという。 一つは富士通案、もう一つはNEC-日立連合案である。 このプランについては詳細は非公開であり、アーキテクチャの詳細については現時点ではわかっていない。 (これを読むためにはTECH-ON!への登録が必要。)

そこで今回は、予想サイトとしてこの2案について技術的な予想を元に 京速計算機のシステム構成を考えてみたい。 (最初にお断りしておくが、これは当サイトの個人的な技術予想であって、 当たるも八卦当たらぬも八卦のアマチュア予想に過ぎない事をお断りしておく。 あくまで、あるべき姿の予測である。)

☆当サイトが考えるあるべき姿からNEC-日立連合案を予想する。   
まずはNEC-日立連合案について予想してみよう。

このプランの特徴は2社企業連合が受注を目指しているということだ。 この意味を考えてみよう。

端的に言えば、2社連合ということはこの構成は複合機を目指していると考えるのが妥当だろう。 例えばSONY-東芝-IBM連合でCELLが開発された経緯もあるから、 複数社連合でも巨大単一機という可能性もゼロではないが、この場合は可能性は低いと思う。

なぜならば、NECと日立には共通の技術目標も共通の技術ベースも無いからである。

例えば、CELLの場合はSIMDベースのシンプルコアで構成されたマルチコアで 浮動小数点演算性能を高めるという構想がSONYにあって、しかし、 SONY自身にはそれを実現する開発陣が不足しているという御家の事情があった。 このため、東芝とIBMという企業連合を組んでチップを設計した。

この場合重要なのは、IBMの設計技術、プロセス技術が CELLの開発に必要不可欠だったことだろう。

しかし、NEC-日立連合の場合はどうだろうか?

スパコンに関してはどちらも専門の部隊を持っていて、 単一機を開発する上ではリソースが不足している部門があるとは思えない。 NECは単独でベクトル機SXシリーズを販売しているし、日立は疑似ベクトル機SRシリーズを販売している。

そして、一方は純粋なベクトル機に見切りを付けCOTSプロセッサベースの疑似ベクトルに方針転換し、 もう一方は日本最後のベクトル機ベンダーである。 巨大単一機で協業する理由は見つからないのである。

と言うわけで、このプランはおそらく複合機を目指していると予想できる。

では、どのような複合機を目指しているのだろうか?

両者が現行機種として販売しているスパコンの複合機を考えてみよう。 NECは純粋ベクトル機であり、日立は疑似ベクトル機であるから ベクトル−疑似ベクトルの複合機がまず思いつく。

しかし、これはあり得ない複合機の構成だろう。 水と油はよくなじむ(京速計算機考その3)に書いたが、複合機の構成としては当サイトでは 本命プランをベクトル−専用機複合、対抗プランをベクトル−スカラ超並列と予想した。ベクトル−疑似ベクトルという複合機は両者の長所短所が似ているが故に 複合機には不向きであり、このような方式では複合機のデメリットを覆すだけの メリットが得られないと考える。複合機としてはあり得ない組み合わせなのだ。

では、どのような構成が考えられるのであろうか?

上記の当サイトの予想を考えてみると、本命案、対抗案いずれにもベクトル機が含まれている。 そうすると、複合機の内、1機種はベクトル機と考えるのが妥当である。 (担当はもちろんNECだろう。NECは日本唯一のベクトル機ベンダーであり、 ベクトル機開発の人的開発リソースを保ち続けている唯一の日本企業だからだ。)

当サイトは科学技術計算におけるバンド幅の重要性を主張する立場なので、ベクトル機を複合機に含めるのは賛成だ。 (ベクトル機が絶対とは思わないが、高メモリバンド幅は一定の科学技術計算分野では絶対であると思う。) しかし、ベクトル機の高価格、高消費電力という弱点を複合機でカバーするとしたら、 組み合わせる相手が疑似ベクトル機である可能性は極めて低いと考えざるを得ない。

とすれば、日立が担当する部分は疑似ベクトルではあるまい。 それは、当サイトの技術的予想からすれば専用機かスカラ超並列機でなければならない。 これは技術的予想から導き出される必然的帰結である。

では、日立が担当する部分は専用機とスカラ超並列のどちらなのであろうか?

正直どちらもあり得るかと思うが、はっきり書くのが当サイトの特徴だから ズバッと書いてしまおう。当サイトの予想は専用機である。

理由は二つ。

まず、 世界最高速のLSIの開発に成功- 世界初のペタフロップス級計算機の実現に道筋 - を読めばおわかりいただけると思うが、 日立がMDGRAPE-3の開発に携わった事があり専用機チップの経験が豊富であること。 専用機はチップの内部構成が特徴的だから、おそらく性能を引き出すのにも 単純なスカラよりも多くの設計・製造経験が必要と思われる。この点で日立のノウハウが生かされる。

また、実は最初に示したニュース記事 次世代スーパーコンは富士通,NEC+日立の2案を比較検討へによれば、 「2案の大きな違いはマイクロプロセサ1個の演算性能とそれをいくつ利用するか,の違いにある。」と書かれている。 これが大きなヒントになる。

もし、ベクトル機の相棒がスカラ超並列だとしよう。 ベクトル機は地球シミュレータに代表される通り、高性能のチップを少数使う方式の代表である。 地球シミュレータの特徴の一つに、高い理論ピーク性能の割にノード数が少ないという特徴が上げられる。 対するスカラ超並列はそれなりの性能のチップをたくさん使う方式の代表である。 代表例はBlueGene/Lであり、なんと65536ノードという多数のノードを使う。

もし、複合機がベクトル−スカラ超並列複合機だとすると、 比較的高性能なチップを少数使う方式でも、それなりの性能のチップをたくさん使う方式でもなくなってしまう。 つまり、ベクトル機が高性能チップを少数使用し、スカラ超並列は低性能チップをたくさん使う方式だから、 システム全体では両方をミックスしたシステムになるからだ。

では、ベクトル−専用機2機種複合機だと考えてみよう。 専用機の日本代表はもちろんGRAPEシリーズであるから、 この中から最も汎用性が高いと思われるGRAPE-DRを例にしてみる。

GRAPE-DRの特徴はメモリバンド幅をあきらめる代わりに理論ピーク性能を極限まで高めるという事にある。 つまり、Byte/FLOPの高い領域で戦うことを放棄する代わりに、 Byte/FLOPの低い領域で誰にも追いつけない極限の高性能を目指すことを目標にしている(と当サイトは解釈している)。 このため、1チップあたりの理論ピーク性能は極めて高い。

前回のコラムでCELLが科学技術計算用途で高い性能を出せる事を書いたが、 科学技術計算で重要な倍精度演算での理論ピーク性能で言えばCELL以上である。 つまり、少数の超高性能チップで比較的少数のノードという構成でシステムを統一するならば、 ベクトル機の相棒はスカラ超並列よりも専用機の方が相性が良いであろう。

では、当サイトの予想する方式が固まったところで、両者の性能比を予測してみよう。 京速計算機の理論ピーク性能は約10PFLOPSであるそうだ。 では、ベクトル機と専用機の理論ピーク性能比はどう配分したらベストなのであろうか?

これには、まず二つの背景がある。

一つは、コストがかかるのはベクトル機の側だから、コスト的に安い専用機の側に 重点的に浮動小数点演算性能が配分されなければわざわざ複合機とする意味合いが薄くなると言うこと。 つまり、比率をどれくらいに取るのがベストかはアプリ次第だろうが、 いずれにせよ専用機の側に大きな理論ピーク性能を配分させなければならないと思う。

また、シロウト思考で行く(京速計算機考) で書いた通り、ベクトル機の場合は1PFLOPS程度でハードウエア量的な限界が訪れると 当サイトでは予測している点が重要である。つまり、当サイトの予想ではベクトル機側の理論ピーク性能は1PFLOPSが上限となる。

この2点を考慮すると、当サイトの予測はベクトル機に1PFLOPSを配分し、 専用機に9PFLOPSを配分するというものだ。

また、この配分比率は偶然にも筑波大学の複合機「宇宙シミュレータ」での配分比率にも一致する。宇宙シミュレータは専用機であるGRAPE6に1OTFLOPSを、そしてXeonを使ったスカラ機に1TFLOPSを配分する複合機である。つまり、当サイトの1:9という配分比率に近い1:10という配分比率になっている。宇宙シミュレータは銀河形成問題を念頭に作られた機種ではあるが、一般論として考えてもこの程度の配分比率に意味があると思う。

つまり、コストパフォーマンスを担う専用機部分が理論ピーク性能の大部分を担わないとシステム全体が低コストにならないが、 しかし、専用機以外の部分があまりにも低い理論ピーク性能でかまわない場合はスパコンではなくPCクラスタ機で十分であろう。

例えば、GRAPE-DRの場合を考えてみよう。 GRAPE-DRはメインメモリがDDR2であることから、 GRAPE-DRを苦手な高Byte/FLOPの用途に使用した場合でも最悪1チップ当たりでパソコン程度の性能は出せるハズである。

つまり、専用機部分と非専用機部分の配分比率が1:100以上に専用機側だとした場合は、 専用機による巨大単一機でもGRAPE-DRを高Byte/FLOP側にも使用することで複合機にあまり遜色無いような性能が出せると思う。

しかし、専用機部分と非専用機部分の配分比率が1:1程度になると ベクトル機側で該当する性能を達成するのが難しくなるのに加えて、 高Byte/FLOP側での性能ボトルネックは解消されるものの 逆にコストメリットが無くなってしまうという問題が生じる。

専用機はコストパフォーマンス面にメリットがあるので、 これを生かす場合はチマチマとした性能を与えるのは逆効果であろう。 メリットを生かすためにはある程度大きな演算性能を付与する必要があると思う。

その結果として、1:1でも1:100でもなく、1:10程度の性能配分には複合機の存在意義が発揮しやすい利点があると予想する。 (範囲としては1:30〜1:10程度を予想しておきたい。)

というわけで、NEC−日立案は1PFLOPSベクトル機−9PFLOPS専用機の 2機種複合機と予想する。 もちろん、これは当サイトが論理的に予想した物ではあるが、 水と油はよくなじむ(京速計算機考その3)において 最良の複合機をベクトル機−専用機2機種複合と予想した事もあって、 実はその予想が的中して欲しいという希望的観測も含まれているのだが...(^^;)

☆当サイトが考えるあるべき姿から富士通案を予想する。   
では、もう一方の案である富士通案について予想してみよう。

このプランを予測する上で重要なことは、報道から推測するとこちらの案は それなりの性能のプロセッサを物量搭載するBlueGene/L型の方式をとるという事だろう。

つまり、CPUの規模とクロックはある程度抑制し、これにより消費電力を抑える。 そして、これにより性能が低下した分は物量作戦で性能を稼ぐのである。

とすると、いくつかの制約事項から考えられない方式がでてくる。

まず、インターコネクトとしては地球シミュレータのような単段クロスバ網は考えられない。 以前から指摘している通り、物量プロセッサ作戦では単段クロスバはハードウエア量爆発が発生して実装不能になるのだ。 また、コスト的制約事項を抑えるため、CPUにDRAM以外のすべてを押し込んだBlueGene/Lのような構成を考えざるを得ない。

ただし、高Byte/FLOPアプリで全く性能のでないBlueGene/Lの弱点を考えれば、 京速計算機が汎用機を名乗っている以上、メモリバンド幅とインターコネクトバンド幅の点で何らかの改良が必要であろう。

また、ベンダーが富士通であることからベクトル方式はあり得ないと思われる。 富士通は過去評判の良かったVPPシリーズを放棄してまでスカラ機にこだわったメーカーだからである。1)

このような推測を積み上げると、比較的性能が低くその代わりに低消費電力化したCPUを用い、これを物量作戦で多数連結したシステムと予想できる。 CPUアーキテクチャはマルチコア化したスカラまたはVLIWであり、なんせ物量搭載を目指すのであるから超低消費電力設計である事が絶対条件となる。 ネットワークトポロジはスケーラビリティーから考えてメッシュか多段クロスバが必然となるが、 多段クロスバは日立のお家芸なのでおそらくはメッシュであろう。

さて、このような背景を認識した上で、まずはCPUから考えてみようか。

CPUの消費電力を下げるためにはクロックを下げなければならない。 しかし、単純にクロックを下げると性能も下がってしまう。 これを解消するためには、CELLのようなマルチコアが都合がいい。 とすると、低クロック型のマルチコアであろう。

また、前回のコラム「CELLの相対評価と絶対評価」を自己評価する。で書いた通りCELLのLSはキャッシュよりずっと 科学技術計算向きである。つまり、キャッシュベースアーキテクチャを 選択するのは誤りであり、スクラッチパッドメモリベースのCPUであった方がよいと考える。

ただし、スクラッチパッドメモリベースのアーキテクチャはキャッシュに比べると 過去の採用例がほとんど無いので、過去の設計を流用する上ではキャッシュの方が都合がいいわけである。 当サイトは断然スクラッチパッドメモリを推薦するが、実際の実装としてはやむなくキャッシュという選択肢が採用される可能性が高いと思う。

CPUコアはSIMDを超強化した単純なスカラ方式か、 あるいはそれほど命令長の長くないVLIWを予想する。 当サイトは初期の段階のCELLプロトタイプのような単純なスカラを推したいところだが、 富士通はFRシリーズに代表される組込用チップでVLIWの経験が長いのでVLIWも十分考えられると思う。 (こんな記事が参考になると思われる。)

CELLの巨額な開発コストを考えれば、これらのCPUを京速計算機のためだけに専用開発する事は難しい。 従って既存の組込用VLIWチップ等をベースにSIMDを強化したコアをマルチコア化したCPUを考えるのがコスト的に妥当ではないだろうか? おそらく、こんな所 をベースに改良したチップとなるのではないだろうか?と予想している。 (同記事の中で「もともとFR-Vファミリーは、(株)富士通のスーパーコンピューター“VPPシリーズ”で培われたノウハウを元に開発されたCPUで」 とあるようにスパコンと関係が深いCPUだしね。いずれにせよ、SIMDは超強化バージョンとなることは必然であろう。)

余談だが、このチップは消費電力がたったの3Wと書いてある。 物量搭載を前提とした方式ではこのような低消費電力チップであることが最重要課題だから、 この点でも富士通の優れたVLIW技術はこのような用途に向いていると思う。

もう一つ大切なことは、レジスタを可能な限りたくさん装備するという事であろう。 クロックをそれほど上げない事が前提なので、ポートが増える事がシステム全体のクロックを律速する可能性は少ない。 従って、半導体集積度の許す限りレジスタを増やすことは、レジスタ溢れを抑制し、また疑似ベクトル処理も可能とする事で高性能化が期待できるからだ。 (完全新設計はコスト的に難しいので、既存コアの内でレジスタの最も多い物をベースにチューンする事を考えるべきだろう。)

コモディティープロセッサとしてのx86がどうして科学技術計算で高性能を発揮できないのか?という問題を考える上で、 キャッシュベースアーキテクチャであるという点と、 キャッシュに頼ってメモリバンド幅が疎かである点を指摘したいが、 シロウト考えなのかもしれないがx86はレジスタが少なすぎる点も大問題であろうと考える。

また、CPUにはメモリコントローラを内蔵させる事が必然となると予想する。 これは上記FRシリーズもそうであり、組込用プロセッサでは普通に行われている事なので問題はないだろう。 科学技術計算ではメモリのアクセスパターンがパソコンとは異なる。 レイテンシ問題をカバーするために大きなキャッシュを装備するという パソコン用CPUで使われている手法があまり有効ではないからだ。 (Core 2 Duoの様にメモリコントローラ外部実装で巨大2次キャッシュを装備する位なら、 たとえ2次キャッシュ量が減ってもAMD64の様にメモリコントローラを内蔵させてレイテンシとバンド幅を改善した方が(科学技術計算用途では)100倍マシであろう。)

インターコネクトも内蔵させた方が都合がいいが、これについては低価格化とインターコネクト問題を一挙に解消させる方式が考えられる。 当サイトは共有メモリ方式によるインターコネクト回路とメモリコントローラ回路の共通化を考えている。

インターコネクトの結合トポロジを2D or 3Dメッシュとして、 インターコネクトを共有メモリ方式としてみよう。 すると、メモリインターフェイスとインターコネクトが共有され、回路を単純化できる。

また、メモリのバンド幅とインターコネクトのバンド幅がほほ同一の値になるので、 BlueGene/Lのようにインターコネクトのバンド幅が律速段階になる事がない。

さらに、隣接間結合における通信は実質メモリへの読み書きとなるので、消費電力的にも非常に有利となる。 隣接間ならばメモリとCPUとの距離がノード内とノード間でそれほど違わないので、 通信に必要なエネルギーが通常のメモリへの読み書きと大差ないからである。 (なんせこの方式ではノード数が極端に大きくなるから、通信のエネルギー消費を減らす工夫が欠かせない。)

メッシュの次元を2次元とすれば現状の技術水準でもプリント基板上に簡単に実装できるメリットがあるし、 これで次元が低いことが性能的に問題になるようならば3Dメッシュとして日本得意の実装技術で1次元分の実装を工夫する事になるだろう。

問題はノード数が増える事による総和計算などの遅延の増大だが、 これは遠隔ノード間をつなぐインターコネクトに一部の演算機能を肩代わりさせる事で対策すると思われる。

遠隔ノード間結合は富士通得意の光ファイバー化で回路規模を縮小する。 トポロジとしてはBlueGene/L同様なグローバルツリーで十分だろう。 隣接ノード間を共有メモリとすればバンド幅の必要な通信はほとんどこちらに振り向けられるだろうから、 光インターコネクトの回路規模は非常に小さくて済むと思われる。 つまり、ノード数が巨大な規模になっても光ファイバによる高バンド幅対応と相まって対応は十分可能であろう。 (ただし、光コンピュータが実用化されていない以上、光インターコネクトのままで計算は出来ないわけで、 光電変換の手間を考えたら最初から最後まで電気ってこともあり得るかも?)

と言うわけで、BlueGene/Lに近い回路構成ながらネットワークの方式を共有メモリとした方式を予想してみたのだが、どうだろうか?

ちなみに、この方式はCELLを2Dメッシュ接続して、グローバルツリー方式のインターコネクトを追加実装した方式に近い。 実はこの方式は当サイトがCELLを使ったスパコンの予想を練っていた時に考えた方式をベースにしているからだ。 富士通案は単独ベンダー案なのでCELLの採用は考えられないが、 実は巨大単一機を考えるならばCELLのFlexI/Oを使ったメッシュ+演算機能付きグローバルツリーという方式は十分考えられると予想している。

コモディティーCPUであるCELLの採用による低コスト化、 そしてメッシュトポロジによるスケーラビリティーの確保、 さらにCELLの高い演算性能と高いパフォーマンス/ワットは スパコンには最適であると思う。

もっとも、悲しいかなCELLスパコンはアメリカが先に名乗りを上げてしまった訳だが...

☆シンプルと複雑の戦い。   
こうしてみると、京速計算機の2案はシンプルな構造の繰り返しによるスケールメリットを前提とし、 それを阻害する消費電力問題等の要因を解消しようとする方式と、 特徴ある複雑な構成を組み合わせてお互いの短所を補い合う方式のバトルであると当サイト的には予想している事になる。

スパコンの性能向上は結局はボトルネックとの戦いであり、 それを克服する方法の考え方の違いが原点にある。 その原点を考えてみると、結局は並列性で勝負するか、 プロセッサ性能で勝負するかになり、それぞれの代表選手が最後の2案として進化しながら生き残ったという事だと思う。

まぁ、偉そうなことを言ってはいても、蓋を開けたら予想がことごとく外れているという可能性もあるわけである。 当サイトはトリ頭のアマチュアだから、今回の予想がことごとく外れたら、「あぁ、たるさんの奴、またやらかしやがった...」と 食べかけのお昼ご飯を噴き出しながら笑って許してやって欲しい。 (ともあれ、この予想が正しいかどうかは数ヶ月後にはわかるだろうから、 わかった時点で予想の当否を掲載してみたい。)

当サイトは予想に関してはかなりはっきり書く方だから、 この予想もトレースキャッシュの採用を予想したCore 2 Duo予想のように思いっきり外すか... あるいはCELLの性能ボトルネックを予想したときのようにズバリ的中するか...おそらくどちらかであろう。 (2案の内一方をズバリ的中、もう一方を大外しという中途半端はあり得るが...) 思いっきり外しても、それはそれでネタにはなるだろうから、その場合はお祭りってことでよろしくお願いしますね。


●補足追加(2006/10/17)

予想は外れるらしいが、それもまた良きかな。
当サイトの予想が こんなところ で取り上げられていた。 このサイトの管理人は言わずと知れたGRAPEシリーズの開発者の一人であり、日本を代表するプロ中のプロの一人である。

引用すると、「ここ の京速についての予想、技術的には真っ当と思うけど 技術的に真っ当な予想が当たるほど世の中は甘くないというか甘過ぎるというか、、、 」だそうだ。 当サイトの予想は技術的には真っ当だが、技術的ではない理由(政治的理由かな?)によって外れるらしい。

残念ながら予想は外れるらしいが、当サイトのようなトリ頭なシロウト意見が このようなプロに「技術的には真っ当」と認めていただけるなら、それもまた良きかなである。 なぜって、このようなプロに「技術的には真っ当」と認めていただけるうれしさは、 予想が外れる悔しさを補って余りあるから...

あと、この予想を書く上では、同先生のコラム スーパーコンピューティングの将来で勉強させていただいておりますので、この場をお借りしてお礼申し上げます。



1)
地球シミュレータのグランドデザインを行った三好先生は、NWTの実績から富士通の技術力に大きな期待を寄せていたと言われている。 しかし、富士通がベクトル機から撤退したので富士通案はスカラ機ベースとなり、 その結果「流体問題で高性能を出すにはベクトル機しかない。」という三好先生の信念と合致せず、NEC案に敗れ去った。

当時の時代背景ではスカラ機が時代の趨勢と言われており、 それを考えれば当時の選択としてはスカラ機という判断もあり得るとは思う。 しかし、結果論ではあるが地球シミュレータの成功からすれば 富士通のベクトル機撤退は非常にもったいない話であるような気がするのである。 なぜならば、市場でのVPPシリーズの評判はかなりよかったらしい。