年の瀬恒例・2005年末決算   

2005年12月31日



☆今年の総決算   
早いもので今年ももう終わりである。 雑誌社系のPC関連サイトも更新が終了し、当サイトもWebサイト巡回の頻度が減ってきた。 読者の皆様の中にも、実家に帰ってくつろいでいらっしゃる方も多いと思う。

さて、今年最後の更新は恒例の予想ネタ総決算で締めくくりたい。 アマチュアのPCマニアが、ドッグイヤーの中、どこまで世の中の進歩を予測できるのか?  それなりに的中するのか? バカ丸出しなのか?

まずは、今年の記事と予想の当否を一覧表にしてみた。

日付 題名 予想内容 当否 実際
2005 12/30 年の瀬恒例・2005年末決算 本記事である。 過去の予想の当否判定記事である。 判定記事
2005 12/8 ひっくり返る常識。(アムダールの法則と問題規模) 特に予想は無し 特になし 特になし
2005 12/8 スカラの逆襲は道半ば?(後編) 効率面でのスカラの追い上げは道半ばである。 プロの間でも見解が分かれる。 神のみぞ知る。
2005 12/4 冬の熱気・2005年秩父夜祭り 秩父夜祭り旅行記につき予想は無し 特になし 特になし
2005 11/23 スカラの逆襲は道半ば?(前編) BlueGene/Lは物量作戦に耐えられる設計である。ただし、汎用性が犠牲になる。 おそらく的中 プロの方々にも類似意見が多い。
2005 11/11 邪法のおかげ。(紅葉旅行記その2) 郡上八幡・大正村旅行記なので予想は無し 特になし 特になし
2005 11/9 失敗だらけの南アルプス山麓訪問。(紅葉旅行記その1) 南アルプス紅葉旅行記なので予想は無し 特になし 特になし
2005 10/30 タイヤ交換で思ったUWBとフロアノイズレベルの関係 -70dBm/MHzという規制値ならUWBの干渉問題は回避できそう。 不明(推進派は厳しすぎると主張し、反対派はこれでも緩いと主張。) UWB推進派はこの規制値の猶予を願い出ている。
2005 10/10 ふやけた解凍済み命令(CPUマニアのぼやき編) Net-Burstの弱点はキャッシュヒット率の低さにある。 現時点では不明。 現時点では不明。 (ただし、トレースキャッシュ12K-μOPsは通常キャッシュで8KB〜16KB相当。)
2005 9/25 垂直統合とコモディティー(スパコン趣味の効能) LINPACKシェアでベクトル機が縮小傾向なのは垂直統合モデルだから。 現時点では不明。 プロの指摘としては「価格が高いから。」という意見が多い。 ただし、実効性能に換算すると逆に安いという指摘もNCAR等から出ている。
2005 9/4 ガマの油と手堅い予想(Merom予想の途中経過編) intel論文から推定したMeromの構造 現時点では不明。 現時点では不明。
2005 8/22 Net-Burstは死なず。(Meromのアーキテクチャ予想) MeromはNet-Burstのアーキテクチャを一部引き継ぐ。 Meromについては誤り。 今年最大の大はずしかと思われたが、なんと...
2005 8/11 2005・脱ドッグイヤー・汎夏祭り主義 夏祭り旅行記につき予想は無し 特になし 特になし
2005 7/25 死んだ子の歳を数えてみる。(シングル・デュアル仮想対決) デュアルコアが有利だからTejasやK9がキャンセルされたのではなく、TejasやK9が本命だったが何らかの事情で作りたくても作れなかった。 現時点では不明。 現時点では不明。(AMDがK9をキャンセルした理由が知りたい。)
2005 6/28 あるメモリ・ハンターの哀れな末路 メモリの裏事情話のため、特に予想は無し 特になし 特になし
2005 6/12 CPUのリストラ(スパコンに似てきた?) 今後のCPU開発ではバンド幅が最大の問題になる。 おそらく的中。(同様の指摘はプロにも多い。) ソフトウエアの並列化、キャッシュコヒーレンシ、バンド幅が今後の三大難問らしい。
2005 5/23 一般公開見聞録(理化学研究所編) ベクトル・スカラ複合機が今後のスパコン界のトレンド 的中 京速計算機、連結階層シミュレータ、東工大グリッド等、次世代機はすべて複合機。
2005 5/8 一般公開見聞録(臼田宇宙空間観測所編) 64mパラボラ見学記なので予想は特になし 特になし 特になし
2005 4/28 一般公開見聞録(地球シミュレータセンター編) 連結階層シミュレータの紹介なので予想は特になし 特になし 特になし
2005 4/10 CPUのリストラ効果(x86とCELLの比較で考える。) バンド幅問題はILPに頼らずに非演算ユニットをダイ内からリストラし動作効率を上げた結果生じる。 おそらく的中。 それ以外にも、用途変化の問題も指摘されている。
2005 3/15 定期調査・2005年マザーのフェーズ数 Pentium-Mマザーがすべて2フェーズなのは負荷変動が大きいことが理由 完全に誤り。 1フェーズでも問題ないとの指摘あり。(すべて2フェーズである理由は不明。)
2005 2/21 CELLの相対評価と絶対評価 CELLの最大の弱点はメモリバンド幅の不足 的中 後日出版された日経NEにて同様の指摘あり。
2005 2/2 2005年のキーワードは「疑似ベクトル」 VIIVは疑似ベクトル方式を意味する。 完全な間違い。 VIIVはデジタルメディアプラットフォーム向け新ブランド名だった。
2005 1/16 プロから見た地球シミュレータの実力 論文を引用してベクトル機の高効率を紹介した記事なので、予想は特になし 特になし 特になし
2005 1/1 シームレスな趣味(PC自作は立派な趣味) 年頭挨拶なので特に予想は無し 特になし 特になし

☆今年、大きくはずした予想の大賞   
今年は前年ほどには予想が的中しなかったが、一番大きく外したのはどの予想だろうか?

当サイト自身は、最初はやはり Net-Burstは死なず。(Meromのアーキテクチャ予想) だと思っていた。実はハナから相当な反論を予想した上での掲載だったからだ。

だが、予想に反してこの記事に関しては読者の見解も真っ二つである。 Web上で名指しで批判されたこともあるかと思えば、某将棋ソフト開発者の方に 「納得できる内容です。」とお褒めの言葉を頂いた事もある。

肝心の真相に関しては、intelのイスラエル開発部隊が秘密主義であるため 未だに明らかとならないが、今まで小出しにされた情報から状況証拠を集めてた結果、 おそらく間違いというのが現時点での結論だ。

しかし、この予想については後日談がある。

実は、この予想はMeromについては確かに外れという線が濃厚だが、 ポストMerom世代では的中しているかもしれないという線が 急浮上してきたのがとてもおもしろい。 (例えば ポストMeromとなる「Nehalem」と「Gilo」 という記事等をご参照ください。)

intelのポストMerom開発部隊にはオレゴンのチームが復活し、 マルチスレッドアーキテクチャ推進派のGlew氏が復活したと報道されている。 この線から考えると、単なるマルチコア派以外の考え方を持っている人たちが プロにもいるという事を物語っており、 ある意味で当サイトの見解の逆転大復活の目もあるわけだ。

intelがどんなアーキテクチャを採用するかは別として、 クライアントPC用途での理想CPUを考える上で シングルスレッド性能は無視できない というのは当サイトの信念でもある。 というわけで、当サイトの当該記事内容は予想としてはおそらく間違いだが、 理想としては破棄しないつもりである。

ということで、本人が一番外していると考えている内容は実は上記のものではない。 本人の意識と読者の評価の2点で考えてみよう。

読者の評価で評判の悪かったのは、 死んだ子の歳を数えてみる。(シングル・デュアル仮想対決)だ。 各種ご感想メールを頂く中で、あまり賛同意見をいただけなかった内容である。

これ、当人としてはクライアントPC用CPUとしてはシングルスレッド性能が いかに重要かを強調する意味で書いたのであるが、どうなんだろうか?

例えばintelでは、メニーコアとは言ってもホモジュニアスマルチコアは考えていない。 (注意:デュアルコアはコア数2個のホモジュニアスマルチコアだ。) 当サイトでは、マルチコアがクライアント用途で有効だとすれば、それは ヘテロジュニアスマルチコアしかありえないと主張してきたが、 intelの開発方針を見てもCELLのアーキテクチャを見ても、 今のところその通りの展開になっている。

見えてきたIntelの5〜10年後のCPUアーキテクチャ 〜ホモジニアス命令セット&ヘテロジニアスマイクロアーキテクチャへ という記事において、intel研究部門統括責任者Rattner氏が 「大きなアウトオブオーダ(out-of-order)型コアは、シングルスレッドパフォーマンスのために、マルチスレッドパフォーマンスがトレードオフとなる。メニイコア設計では、(大型コアと小型コアの)2つのタイプのバランスを取ることが重要となる」と主張されているが、これには全く賛成である。

と言うわけで、(ご批判も多いのだが)当サイトは 現状のマルチコアにはあまり魅力を感じないのである。 なので、これが今年一番の大外しとは認めたくないという気持ちが強い。

余談だが、来年のヨタ記事第一報は年賀挨拶を別にすれば、 このメニーコア設計における大型コアと小型コアのバランスをどう取るかが ベストかについて考えてみようと思っている。

と言うわけで、本人の意識としては実は一番外したと考えているのは、 2005年のキーワードは「疑似ベクトル」 においてVIIVを疑似ベクトル方式の略記と予想した事だ。

意外に思われるかもしれないが、 Net-Burstは死なず。(Meromのアーキテクチャ予想) については、先にも述べた通り敗者復活戦勝利の可能性が残されている。

しかし、ブランド名についてはまったくの間違いであった。 VIIVはデジタルメディアプラットフォームの新ブランド名というのが正解だ。 言葉の類似性とマルチコアの関係からの推定は 穴を掘って入りたい1)レベルの間違いである。

と言うわけで、今年のワーストはVIIVの予想内容に決定。

☆数少ないずばり的中編   
では、ずばり的中したものはというと、個人的には何と言っても CELLの相対評価と絶対評価 であると思っている。 なぜならば、後日、日経NEに同様の趣旨のCELL特集記事が掲載されていたからだ。

日経NEの記事では、「メモリバンド幅」だけではなく、 「メモリバンド幅+チップ間接続インターフェイスのバンド幅」で 定義されていた。だがそれでもPentium4にも負けるデータ/FLOPSであり、 データ供給能力不足である事には変わりがない。 この手のマルチコアは原理的に内部演算性能は高くできるが、 メモリバンド幅増強にはこれといった決め手がないのが現状である。

この記事は2005年の記事の中では人気に関しても上々で、多くのメールを頂いた。 日経の記事同様に「メモリバンド幅+チップ間接続インターフェイスのバンド幅で考えるべき。」 というご指摘は多く頂いたが、それを除けばすべて賛意であり反対意見は一通も無しである。 やはり最新鋭次世代CPUということで、PC用途ではないにもかかわらず関心も高いようだ。

2005年のマイフェイバレットもこれであり、当サイトは記事の内容が極端に振れる傾向にあるが、 これに関しては旨く行く方向に振れてくれたようだ。

☆5年目になって...   
当サイトにとって、今年は力を貯める1年だったように思う。 内容のレベルアップももちろん頑張らなければならないし、 またデュアルコア趣味の無い当サイトにとってはPCは既存マザーのままで延命に次ぐ延命の1年でもあった。

年末も羽田に降り立った師匠の回収を兼ねて秋葉原に出撃したが、 購入したのは破損した愛用キーボードの代替品購入位なもの。 ボーナスは当サイトの心の琴線に触れるCPUが現れるまで貯金だ。

それにしても、当サイトの心の琴線に触れるCPUとは何だろう?  性能さえ高ければいいという訳でもなく、今流行のX2でも響かない。 それは「技術的におもしろい。」という事に尽きると思う。 最後に琴線に触れたのはCrusoe2)であり、絶えて久しいではないか?

というわけでPCの更新こそほとんど無かった1年だが、 今年は全部で25本のネタを書き、そのうち4本が非PCネタである。 月2本が目標で非PC息抜きネタを数本予定していたので、 ペースとしては及第点だった。

だが、内容的には今一歩であり、中だるみの兆候もあるのが反省点かな?

ただ収穫もあって、たとえばプロの論文を読解して考える事で 信頼できる情報ソースをベースに考えを巡らす事ができたというのもその一つだ。

ネットワークの世界では接続ノード数の2乗でネットワーク全体の情報価値が 決まるという説があるが、当サイトの今年の感想を言わせてもらうと、 ネットワークの価値は情報量だけではなく情報信頼度でも決まる。 なぜならば、通信のS/Nに例えれば情報信頼性のS/Nこそが重要で、 信頼の置けない情報は情報量が多くてもほとんど価値がないとも言えるからだ。

多数のガセネタに埋もれた真理は発掘が難しい。 情報量が少なくても信頼できるソースに当たる事が情報価値を決める決定打という印象だ。 その意味で、プロの論文は読解がメチャクチャに難しいとはいえ、そして英語が大の苦手とはいえ、 非常に価値ある経験だったといえるだろう。

ん? そう考えると、当サイトの内容はほとんど価値の無いものなのかな?  ははは。自爆ネタでしたか...

☆今年もお世話になりました。   
ともあれ、今年はアクセスカウントも60万アクセスを突破し、 お読みいただいている皆様には感謝感謝である。 去年の年の瀬には30万アクセスの感謝を述べた記憶があるので、 過去4年分を1年で達成したことになる。

当サイトは、通常のパソコンマニアサイトとはかなり毛色が変わっている。 これこそが、低レベルながら当サイトがそれなりのアクセスを頂いている理由であり、 ニッチ市場の発掘という意味での存在価値であろう。

アクセスカウントに見合う内容をお届けできているとはとても思えない低レベルな当サイトだが、 来年こそは数少ない方向性のCPUマニアサイトとして情報発信していきたい。

来年への抱負だが、読者様の要望で多いのがスパコンネタ電源ネタである。 このうち、プロの論文を手に入れて勉強することで今年はスパコンネタについては (内容の低レベルさを無視すれば)ご期待に応えられたと思う。 だから、来年は電源ネタをできるだけ増やしていきたいと思う。

最後に、今回も写真が1枚も無いのが寂しいので、 いつもの下道帰省で撮影した写真を掲載しておく事にした。 (この記事も実家で書いている。接続が今更の56kモデムなのが悩みの種だ。) 来年の記事レベルが南アルプスのように高くなる事をお祈りして、 帰省中に撮影した雪山景色にしておく。

トコトコと下道を走って雪山を見る楽しみというのは、趣味でCPUをワッチするのに似ているかもしれない。 それは、山の頂上にいる人と、山を遠くから眺める人のみが絶景を見ることができ、 当サイトのように中途半端な思い入れのあるポジションでは絶景が見られないという点だ。 開発当事者の頂点に立つことはあり得ないから、個人的な思い入れをなるべく排除して徹底的に 客観・俯瞰の立場で物事を見られるように眼力を養いたい。

道の駅「はくしゅう」で撮影した甲斐駒ヶ岳
楽な東海道経由ではなく、あえて中央道経由を選択した価値がある風景。
高遠から伊那に向かう道程で撮影した木曽駒ヶ岳
高遠から伊那に抜ける裏道で撮影したもの。

では皆様、今年1年お世話になりました。 良いお年を...皆様にとって来年も良い年でありますように。



1)
「穴があったら入りたい。」どころではなく、穴が無くても掘ってでも入りたい、という意味。

2)
性能の高い低いはともかく、そして、一瞬「うっ!」と考え込む天然ボケ動作はともかく... 動作原理から考えてこれ以上独創的なCPUは近年に無かったと思う。 Crusoeの二番煎じでなければPARROTも琴線に触れる所だが、 Crusoeマシンが既に手元にあるのでイマイチである。