ジャンクで作るカーナビシステム





さて、パソコン自作などを趣味にしていると、 古いパソコンが不良債権のように増えませんか?

たるさんなどは、会社でも怪しげなパソコン自作マニアであることが 知れ渡っているのか壊れたパソコンを寄付されることがよくある。 会社に着いて机に向かうと、いかにもジャンクなボードが 机の上に置いてあったこともあるくらいだ。 口の悪い友人にいわせると「パソコン最終処分場」なんだそうだ。

が、さすがに捨てるくらいだから、パソコンとしては もう使えないくらい遅いスペックのマシンが多い。

では、そのまま本当に最終処分場に行ってしまうのか?

建前としては、そんなアンチエコロジカルな発想で良いのであろうかという 疑問から...そして本音としては、日々の酒代にすら困窮している 貧乏人たるさんにとって、それは非常にもったいない話なのではないか?  なにかおこづかい節約に役立てないか?

というわけで、パソコンとしてはもはや役に立たない旧型マシンを役立てて、 余生を恙なく送っていただくための再生法について検討してみた。

−カーナビへの変身−

最初の再生マシンはメルコのMVK−S513だ。 このマシンはコンパクトデスクトップの走りとも言える製品で、 800*600のDSTN液晶モニタとAMDの5X86-133MHz-P75搭載の 省スペース型デスクトップのセットである。 今オフィスで流行のコンパクトデスクトップ+液晶モニタという スタイルの走りとも言うべき製品である。

しかし2001年現在では、さすがに486互換CPUでWindowsを動かすのは少々 (いや、少々どころではないか...)しんどいと言えよう。 持ち主も、さすがに使い物にならないと見て新型機に買い換えた。 そして、浪々流転の末に、余生を求めてたるさんのうちに流れてきたわけである。

このマシンの特徴は液晶モニタにあるわけだから、これを利用した再生方法を 考えねばなるまい。そこで、このマシンを市販品には無い大画面カーナビに 再生する方法について検討してみることにした。 (まあ、カーナビの自作自体はそう珍しい事ではないけれど...)

−改造手順−

まず、本体は助手席の床下に収納するのでケースはこのまま使用することとした。 (下図が助手席下に収納したパソコン本体である。 撮影のため助手席は限界まで前方に移動してある。通常は後席にいても見えない。)



改造しなければならないのは主にGPSユニット部と電源、 それに液晶のダッシュボードへのマウントだ。

GPSユニットも本体に劣らず旧式である。 ここではMicroNetworkCorp製のPCNAVI-01を友人から譲っていただいたので、 ありがたくこれを使用した。これはSONYのIPS-5000と中身は全く同じである。 ただし、ソフト側が対応している機種ならば、 接続はこのユニットに限るものではない。

さて、問題はPCMCIA接続のユニットをどうやってCOMポートしかない 本体に取り付けるかである。 ここでは秋月で売っているSPC232ACPを使って、TTLレベルの信号をRS232Cレベルに変換しCOMポート接続とした。 この世界では王道とされているきわめてオーソドックスな方法であり、 多数の実績もある。 回路は秋月(秋葉原にある老舗のジャンク屋だよ。)でSPC232ACPを買うと、 回路図も付いてくるので、それをそのまま作ればよい。

次に電源部であるが、本体をばらしてSW電源を取り出してみた結果、 +5V6.5A、+12V2.0A、−12V0.3Aの3系統であることがわかった。(下図の右側に分離してある回路が本来のSW電源)



従って我が愛車プリメーラカミノの+14V電装系から+5V、+12V、−12Vの3系統の電源を作り出さなくてはならない。

まず、 +12V用チョッパ型レギュレータHPH12002Mの出力電圧可変端子を 出力端子に直結し+5V出力として使用した。 これも、秋月で売っていたパーツである。




こいつの出力は2Amaxであるため出力電流が不足している。 このため3個をパラにつないで使用することにする。 (正しくはこれでも0.5A不足するが、実際には問題無い。)

+12Vはカー電装用三端子レギュレータLM2940C12を使用した。 こいつは少ない入出力電圧差でも安定動作する電源を作り出すことができる。

ここでは、普通の3端子レギュレータは使用しない方がよい。 電圧降下が大きいので、高い入力電圧が必要となり14Vのカー電装系では 電圧マージンが少なすぎる。

実際、たるさんが普通の3端子レギュレータでテストしたところ、 エンジンONでは問題なく動作したが、エンジンを切りアクセサリ位置で 動作させると、入力電圧が低すぎて必要な電圧を確保できないため (HDD起動時のスピンドルモーターの突入電流によると思われる。) HDDの誤動作が頻発した。

−12V系は+5V系チョッパ型レギュレータのLに蓄えられている電力を横取りする形で作りだした。 実際には、チョッパ型レギュレータをばらし、フェライトボビンにエナメル線を 40ターン巻き、これを起電力が負となるように整流した後、 三端子レギュレータを通した。 −12V系はRS232Cしか使わないので消費電力が少ない。このため、 このような間に合わせ的方法でもとりあえず問題はないのだ。

ただし、Lから電力を横取りしたレギュレータではLの見かけのインダクタンスが 変わってしまうため、並列接続でつないでいる他のレギュレータとの負荷バランスが 取れなくなり、このレギュレータだけが集中的に発熱することがわかった。 このため、パラ出力部の負荷平準化抵抗を、こいつに繋いであるやつだけ抵抗値を 高くして、他の2個の抵抗値を相対的に低抵抗とすることで負荷の平準化を行っている。

これらの回路は上図のように元々あったSW電源を取り出したスペースに組み込む。 こうすることで、外見がかなりすっきりする。

以上の記述で回路図を想像できない人は無理して自作電源を組み込む必要はない。 たるさんの場合はこうして手作りでマシンを再生すること自体が楽しみなのであるが、 こうした自作の苦手な人のために良い方法がある。

このような工作が苦手な人は、 バッテリーからAC100Vを作り出すアダプタ(DC-ACインバータ)をDIY用品店で 買って来ても動作する のだ。(実際に確認済み。ただし、結構なお金(7000〜8000円)を取られる上に、効率が悪い方法なので発熱が多い。

あと、運転中にナビの画面を凝視することは法律で禁止されているので 音声ガイダンス機能が必須となる。 このため、サウンド機能の無いこのパソコンにサウンドカードを 取り付け無くてはならない。 メルコのMVK−S513にはISAバスが1個付いているだけなので、 ISAサウンドカードを取り付ける。 (WAVEファイルで音声再生ができればよいので、物理的にケースに入り、 対応ドライバがあればカードの種類は何でも良い。) たるさんは秋葉のジャンク屋で¥300でせしめた 謎のOEMカードを使用している。

スピーカーは小型の物を運転席側のヘッドレスト後方に取り付ける。 こうすると、音量が下げられるので同乗者との会話の支障にならない。

あと注意する点であるが、下記の通りである。

CPUの放熱には注意

メルコのMVK−S513のCPUには放熱板が付いているだけである。 この状態でたるさんがオリジナルCPUのまま使用したところ、 車内では数時間の使用で熱暴走する事がわかった。 対策として放熱板をはずして薄型CPUファンを付けよう。



ファンには空気の通り道として、ファン上の金属板(HDD固定用)に通風口を空けると 良い。これによって、成田−名古屋間を下道経由で12時間かかって 移動しても熱暴走しない堅牢なシステムとすることができた。

HDDは2.5inchタイプに換装するのがよい。

本来のHDDは3.5inchであるが、筆者がテストしたところ 走行距離に比例してディフェクトが発生した。搭載にあたって、 取り付けねじの間にゴム製の緩衝材を入れたにもかかわらずである。

この原因を推測すると、HDDがケースの関係で 車体と平行に搭載されることになるのが悪いのであろう。 この場合、車の上下動とヘッドが磁気メディアを傷つける方向が一致し 衝撃の度にメディアを痛める事が原因らしい。 車の受ける衝撃は圧倒的に横方向より縦方向が大きいので HDDを垂直に立てて使いたいところであるが、ケースの関係でそうもゆかない。

次善の策が2.5inchHDD搭載である。まず、2.5inchHDDはノート搭載を前提に 設計されているので元々耐振動性が高い。 それに相まって、サイズが小さいので固有振動数が高く、 車の上下動と共振しにくくなっている。 (ただし、上の写真でもわかるとおり、ディフェクトの発生状況をモニタするため、 今は3.5inchHDDに戻した。今でも徐々に不良クラスタが増えている事が 確認されている。)

ナビソフトにはナビンユーVer3.5を使用している。 これは旧品が投げ売りで安かったことと、購入当時の最新Ver.である ナビンユーVer4.0では負荷が高すぎて応答性が悪くなるのではないかと 危惧したためである。

OSはWindows95である。メモリーがナビンユーの最低動作条件である32MBしか搭載されていないので、少しでも軽いOSを使用する必要があると判断したためだ。

CPUが遅いのでCD−ROMからのマップ検索では検索時間が長くて イライラするだろう。そこで、マップをHDDにコピーするのがショボい マシンで快適なカーナビを作成する秘訣である。

なお、ナビンユー以外ではプロアトラス2000でも動作を確認している。

パソコンの設定だが、キーボードはジャマなため設定終了後は外してしまおう。 このためにはBIOSのエラー設定でキーボード無しでもエラー検出に 引っかからないように設定する必要がある。マウスは使えないので、 代わりにトラックポインタを使用する。

液晶部分だが、マウント重量を軽く作らなければならないのでそのままでは使えない。 というわけで液晶モニタ部分はバラバラに分解して液晶ユニットと コントラスト調整部、バックライト用高圧インバータを取り出して使う事とした。

少しでも軽く作る意味と、バックライト用高圧インバータの漏電事故を防ぐ意味で 土台を合板で作る。 (バックライト用高圧インバータの絶縁はくれぐれもしっかり行ってください。)

また、DSTN液晶は視野角が狭いので、液晶と合板の左右の取り付けねじの高さを わざと変えて、液晶の正面が運転席側に向くように工夫もしている。 枠は液晶内部の保護金具をそのまま流用している。 これはインパネと同色に塗装して一体感を出すのが良いだろう。



液晶のマウントには少々テクニックが必要だ。

まず、マウント位置であるが通常のカーナビの定位置 (フロントコンソール左上のダッシュボード)はまずい。 液晶が大きすぎて運転視界を狭めてしまうのだ。 それにこの位置だと、万が一助手席エアバックが作動した場合、 液晶モニタが顔面に吹っ飛んでくる可能性もある。

一番良いのはカーステ・エアコンパネルの前だ。 ただし、固定してしまうとカーステやエアコンが操作できなくなってしまう。

そこで、下図の通りカーテレビ取り付け架台を用いて液晶パネルを 開閉できるようにしよう。



なお、合板の裏側を塗装していないのは手抜きではない。 このような大画面カーナビである。もしメーカー品と間違われれば、 あっという間に盗まれてしまう危険がある。 少々みっともないが、合板の裏側をあえて塗装しないことで 盗んでもカネにならない自作品である事を強調しているわけだ。

表側をきちんと塗装すれば、走行中には無塗装部分は見えないので、 それほどみっともない感じもしない。 おかげさまで、完成以来一度も盗難には遭っていない。

下記の取り付け例はたるさんの愛車プリメーラ・カミノの場合である。



が、他車でもあの位置に小物入れが付いている車ならば 基本的には同様の方法が可能のはずだ。

具体的な手順であるが、まず、1DINの小物入れを外す。

内部の小物入れ取り付けねじ穴にLアングルを取り付けアームを前方に伸ばす。

そこに、もう一本のLアングルを横方向に取り付けカーテレビ取り付け架台の 土台とする。

これだけだと、車の振動で画面が揺れる。 そこで、このLアングルにマグネットチャックを取り付けて固定時に 液晶パネルが揺れないようにする。

マグネットチャックなのでカーステ・エアコン操作時には簡単に 開閉ができるという仕掛けだ。

これで完成だ。

−使用感−

大画面ということで、複雑な市街地でも詳細まで見やすいのが非常に気に入っている。 ただ、DSTN液晶はやはり昼間でのコントラストが不足で、 直射日光が当たると画面が見えなくなってしまう。

あとは、コンパクトデスクトップパソコンの液晶は(当然のことだが) 野外使用を想定されていない。このため、 液晶のカラーフィルタが紫外線に弱いという意外な弱点があることが分かった。 最初はパネルをそのまま放っておいたのだが、 日がたつにつれカラー(特に赤)が薄くなってきたのだ。 液晶内のカラーフィルタ用色素が紫外線で退色しているようだ。 そこで、夏のハンドル焼け防止用カバーを改造して、紫外線カットカバーを作った。

処理速度であるが、バードビューで若干のCPUパワー不足を少々感じるが、 平面図ではまったく問題がない。 (ちなみに、本来のCPUはAMD製5X86−133MHz−P75であるが、 このマザーはベース50MHzが安定して通る事が分かったため、 ベース50MHzのDX4−100MHzに換装してある。 パワーはオリジナルより若干落ちるようだ。)

設定が面倒ではあるが、音声ガイダンスも良好である。最初は486ということで、 音声ガイダンスが間に合うのかという疑問があった。 嘉門達夫のギャグではないが、目標の交差点を通り過ぎてから 「さっきの交差点、右!」と指示でもされたら、 さすがにマシンをぶち壊したくなるであろう。 しかし、幸いなことに、そのようなことは全くなかった。

それ以外の欠点といえば、ジャイロがないので秋葉原のようなビルの谷間では 衛星をロストしてしまい、位置がわからなくなる事と、Windowsマシンなので 起動にやたら時間がかかることだ。

まあ、いろいろと欠点はあるが、ジャンクの486マシンでも市販のナビに 遜色のない装備が完成したわけだから良しとすべきであろう。 (しかも、市販品に無いこの大画面は魅力である。)

というわけで、コンパクトな液晶デスクトップマシンは、 たるさん専用のカーナビとして余生を送ることとなった。めでたし、めでたし。



−注意事項−
この記事を参考に自分でカーナビを作ろうと考えている方々へお願い致します。
お約束になりますが、すべて自己責任で行ってください。
問題が発生した場合でも責任は一切負いかねますので。

特にバックライト用高圧インバータの絶縁には十分注意してください。
運転中に感電すると重大な交通事故を招く危険性があります。