宇宙人はいるか?(SETI@homeを見て考えたこと)その1





本日はGW企画として、ちょっと毛色の変わった話題を提供してみようと思う。 GWのヒマ潰し程度にはなるので、おつきあいいただきたい。

☆日本製スパコン、久々に世界1位に   
先日、日本のスーパーコンピュータが久しぶりに世界最速の座を取り戻した。

海洋科学技術センターのスーパーコンピュータ「地球シミュレータ」が ベンチマークテストで世界最速となる35.61TFLOPSを達成したのである。 暗い話が多い日本で、技術立国再建の一歩として素直に評価したい。 (この詳細は 「地球シミュレータ」世界最高の演算性能を達成 海洋科学技術センター、“地球シミュレータ”が世界最高の演算性能を達成と発表 で見ることができる。)

このコンピュータの真骨頂は、グリッド型でありながら 各PUがベクトル型アーキテクチャであることだ。 日本製ベクトル型スパコンは1980年代後半に性能面で世界を席巻した。 当時、これを危惧したアメリカが政治力によって強引にアメリカ製スパコンを 日本の大学等に買わせた事もあったくらいである。

(当方の先輩が東京工業大学出身で、その辺りの事情を聞かせてもらったが、 本当は日本製が欲しかったそうだ。 当時のアメリカ製は使い勝手が悪く、また低稼働率が悩みの種だったとのこと。)

しかし、後に半導体技術の進歩により、スカラーCPUをPUとした アメリカ製グリッド型スパコンが最速の座を制覇し、 日本製ベクトル型スパコンはその座を追われることになる。 それは、スパコンのアーキテクチャ改良よりマイクロプロセッサの集積度向上の方が 進歩の速度が格段に早かったためと言われている。

スパコンの性能競争は、マイクロプロセッサを使用しプロセッサ数で勝負という、 いわばアメリカ型物量作戦の時代へ突入したと言われて久しい。 ベクトル型は時代遅れとされ、たるさんはそれに強い違和感を感じながらも、 事実としてスパコンランキングからベクトル型は消えていったのである。

しかし、今回の「地球シミュレータ」では、プロセッサ個数で勝負する グリッド型でも、こと科学技術計算に関してはベクトル型優位であることを 実証してくれたのである。 PU数が同レベルなら、当然各PUの演算性能が上であるものが勝つわけである。

☆無冠の帝王 SETI@home   
さて、そう考えたのもつかの間、そういえば...あるコンピュータが 無冠の帝王であることを思い出した。 SETI@homeである。 (本来SETI@homeはプロジェクト名であるが、ここではSETI@homeで使用する 分散型コンピュータもSETI@homeと呼ぶことにする。)

SETI@homeは日々刻々と構成が変わるため、スパコン・ランキングに その名が出ることはない。しかし、事実上、登場以来世界最速であり続けたと 思われる人類史上最速のスパコンである。

SETI@homeの実体は世界中のパソコンをネットで結んだ究極のスパコンである。 正確には「緩結合分散型コンピュータ」と言うらしい。 (SETI@homeプロジェクトの詳細は SETI@homeで見ることができる。たるさんのようにもう少し分かりやすい ページを希望する人は Club-HUAA サポートページ が分かりやすくていいだろう。)

さて、ではSETI@homeはプロジェクトとはそもそも何なのであろうか?  SETI@homeは The Search for Extraterrestrial Intelligence at HOME の 略語で、地球外知的生命体を探索しようというプロジェクトである。

アンドロメダ星雲
(銀河系に近い形状と言われている。)

このプロジェクトでは アレシボ天文台で受信された電波を解析して地球外起源の電波を探索するわけだが、 解析のためのスパコンが予算の関係で使えなかったらしい。 そこで、全世界のネットユーザーにボランティアで分析を依頼し、 ネットで結んだパソコンでデータを解析するという分散型コンピュータの アイディアにたどり着いたわけである。

これが実に大当たりで、最初に予定していたスパコンを遙かに上回るスピードで 解析が進んでいったという。 おまけに、全世界のネットユーザーに「自分が世界初の地球外知的生命体の 発見者になれるかも?」という、大きな夢まで与えてくれたのである。

SETI@homeは単に学術的研究の範囲を超えて、科学啓蒙という 予期しない成果すら達成しつつあると言えよう。

☆宇宙人には分が悪い宇宙?   
前振りが長かった...
さて、このSETI@homeの事を知ってから、地球外知的生命体発見のニュースを 心待ちにしていたのであるが...SETI@homeから明らかになったのは 悲観的なニュースばかりだった。

びっくりしたのは探査終了範囲だ。 SETI@homeでは、人類と同レベルの文明で4000光年、 タイプ1文明(地球が太陽から受ける全エネルギーを恒星間通信に使えるレベル。)で 4万光年の範囲を探索し終わっているのだ。 知的生命体が見つからないのは、まだまだ探査範囲が 狭いからだと思っていたのだが...

銀河系の直径が、約10万光年であることを考えると、 ここまでの範囲を探査して知的生命体の痕跡が見つからないのは 信じられないくらい本当にびっくりである。 タイプ2、タイプ3と呼ばれる人類より飛躍的に進歩した種族は 銀河系ではほとんど見込みが無く、人類に近い レベルの種族にトーンダウンしてすら、太陽系の近くには いないという非常に寂しい探査結果となってしまった。

確か、たるさんが高校生の時読んだ本では、銀河系には 約1000種族の知的生命体文明がある計算だったはずだが... 何故、こんなに見つからないのであろうか? (たるさんは宇宙人には是非いて欲しいのである!)

実は最近の研究成果によると、銀河系内ではほどほどに辺境にある 太陽系のポジションが知的生命体発生には絶妙の位置らしい と言うことがわかってきたそうだ。

天の川
(銀河系自身を内側から見たもの。)

ちなみに、人類文明が銀河系最高の知的生命体であるという結論は、 まざに現代の天動説ではないだろうか? (キューバ危機等、全面核戦争で絶滅する瀬戸際まで行った種族が、 もっとも知的だなどとは、まさにブラックユーモア以外の何物でもない。)

☆太陽系よりさらに辺境では?   
これは、たるさんの専門外であり聞きかじり程度なのでツッコミは 無しにして欲しいのだが...

まず、太陽系よりさらに辺境の位置では 惑星を構成する元素が水素とヘリウムばかりになって 生命発生に必要な重元素が減ってしまう事が問題らしい。

生命発生のためには水と炭素が不可欠だが、これが少なくなってしまうと 当然、核酸やアミノ酸といった生命に不可欠な分子が作れないわけである。

重元素が少ないので木星型ガス惑星しか形成できず 地球のような固い岩盤を持った惑星ができにくいのも悩みのタネである。

ちなみに余談であるが、天文学の分野では水素とヘリウム以外はすべて 重元素に区分されるそうだ。学生時代に化学を学んできた たるさんにとってはビックリする話だ。 なんせLiやBが重元素扱いなんだから...

☆銀河系中心部では?   
では、逆に銀河系の中心領域ではどうなのであろうか?  先ほどとは逆に重元素はたっぷりあるらしいのだが...

今度は恒星が混み合いすぎて、惑星軌道が不安定化するのが 問題だという。 どういう事かというと、恒星数が多すぎて連星系を経験した 惑星が多くなってしまうということである。

連星系を一度でも経験してしまうと、惑星は安定した円軌道 (正確に言うと円軌道に近い楕円軌道)をとれないらしい。 連星系での惑星は非常に不安定な不定軌道を描くし、 連星系を構成する恒星がバラバラに離れた後でも、 よほど運が良くないと円軌道に近い楕円軌道にはなれず、 長楕円軌道になってしまう。

長楕円軌道上の惑星は寒暖の差があまりにも激しすぎて、 暑い時、寒い時、それぞれ生命発生に必要な条件から はずれてしまうと聞く。

つまり、銀河の中心領域は、 何十億年にわたって安定な円軌道(に近い楕円軌道)を描く、 といった条件を満たすことが難しい領域だそうだ。

☆しかし、それでも...   
しかし、それでも約1000の種族の予想が、 いきなり人類1種族のみ、なんて結論になるのであろうか?

もし、銀河の周辺領域と中心領域には知的生命体が生存できないとしても、 太陽系が属する中間領域に存在する恒星数が、全銀河の1/1000以下 ってことはないはずである。

銀河最周辺部の恒星数はもともと少ないはずなので、 ここで生命が発生できなくても全確率に対する寄与は少ない。 (恒星密度は銀河周辺部ほど低い。)

また、確かに銀河中心部分の占める質量は周辺部より群を抜いて大きいが、 それは銀河中心に巨大ブラックホールが存在するからだと聞いている。

これだけが原因とするならば、まだまだ期待が持てそうなのだが...

と言うわけで、次回に続く。




今回の天体写真は 森田 敏雄 氏のWebサイト Free Photos から著作権フリーの画像を 頂いて使用させていただきました。森田氏に深く感謝いたします。

<お詫びと訂正>
前回の「UWB通信は希望の星か?(その1)」のグラフに、 一部計算ミスがありました。
お詫びして訂正いたします。 元記事の方は訂正しておきました。