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 電子化した歴史史料の公開に取り組んできた先駆者の一人である。だが、注意して欲しい。恋塚は必ずしも電子化そのものの先駆者でない。そうではなく、電子化した史料を率先して公開したという点に彼の先駆者としての意義がある。当時、日本の歴史学界では史料の電子化は進められつつあった。事実、相当程度進んでもいた。だが、それを広く公開していくことはおよそ考えられることなく、貴重な電子テキストは職業的な研究者の世界にとどまった。その理由として、複雑な権利問題等を云々することは確かに可能ではある。だが、学界が開放性と先見性を欠いていたこともまた無視できない事実だろう。そして、その状況には、いまも大きな変化はない。残念ながら、ここ数年データが更新されることもなくなってしまったが、恋塚の仕事は、上述の文脈のなかで把握され、その意義を認められるべきものだ。あの時期に養老令、日本後紀、公卿補任、藤氏家伝上(藤原鎌足伝)、上宮聖徳法王帝説といった日本古代史研究の基本史料の電子テキストを惜しげもなく公開した彼の業績は、同じ時期に刊行されたどんな立派な装丁の歴史研究書にも劣らない。(2003-02-24記)


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